公開番号2024092067 公報種別公開特許公報(A) 公開日2024-07-08 出願番号2022207720 出願日2022-12-26 発明の名称水素吸蔵合金の性能予測方法及び性能予測装置 出願人株式会社ジェイテクト,国立大学法人広島大学,国立研究開発法人産業技術総合研究所 代理人弁理士法人あいち国際特許事務所 主分類G01N 33/20 20190101AFI20240701BHJP(測定;試験) 要約【課題】種々の環境における水素吸蔵合金の性能を予測することができ、かつ、予測に要する時間を短縮することができる水素吸蔵合金の性能予測方法及び性能予測装置を提供する。 【解決手段】水素吸蔵合金の性能予測方法は、温度T、圧力Pの水素雰囲気中に静置した場合における水素吸蔵量の減少速度Vを算出するステップS1と、減少速度V及び圧力Pを用いて反応次数xを算出するステップS2と、減少速度V及び反応次数xを用いて反応速度定数kを算出するステップS3と、反応速度定数k及び温度Tを用いて頻度因子A及び活性化エネルギーEaを算出するステップS4と、頻度因子A及び活性化エネルギーEaを用いて目標圧力PXにおける反応速度定数kXを予測するステップS5と、反応速度定数kXを用いて目標温度TX、目標圧力PXにおける減少速度VXを予測するステップS6と、を有している。 【選択図】図1 特許請求の範囲【請求項1】 目標温度T X 、目標圧力P X における水素吸蔵合金の水素吸蔵量の減少速度V X を予測するための水素吸蔵合金の性能予測方法であって、 前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h 0 (単位:mol)と、温度T(単位:K)、圧力P(単位:MPa)の水素雰囲気中にt秒間静置した後の前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h(単位:mol)とを下記式(1)に代入することにより、温度T、圧力Pにおける水素吸蔵量の減少速度V(単位:mol/s)を算出する減少速度算出ステップS1と、 前記ステップS1において算出された前記減少速度Vのうち、前記温度Tが共通である複数の条件下での前記減少速度V及びこれらの減少速度Vに対応する前記圧力Pを用い、下記式(2)に基づいて前記温度Tにおける反応次数xを算出する反応次数算出ステップS2と、 前記ステップS1において算出された前記減少速度Vと、当該減少速度Vに対応する前記圧力Pと、前記ステップS2において算出された前記反応次数xと、を下記式(2)に代入することにより、前記温度T、前記圧力Pにおける減少速度Vから反応速度定数kを算出する速度定数算出ステップS3と、 前記ステップS3において算出した前記反応速度定数kのうち、前記圧力Pが共通である複数の条件下での前記反応速度定数k及びこれらの反応速度定数kに対応する前記温度Tを用い、下記式(3)に基づいて前記圧力Pにおける頻度因子A及び活性化エネルギーEa(単位:kJ)を算出するアレニウスパラメータ算出ステップS4と、 前記ステップS4において算出された前記頻度因子A及び前記活性化エネルギーEaと、前記目標温度T X とを下記式(3)に代入して前記目標温度T X における反応速度定数k X を予測する速度定数予測ステップS5と、 前記ステップS2において算出された前記反応次数xと、前記ステップS5において予測された前記反応速度定数k X と、前記目標圧力P X とを下記式(2)に代入して前記目標温度T X 及び前記目標圧力P X における水素吸蔵量の減少速度V X を予測する性能予測ステップS6と、を有する、水素吸蔵合金の性能予測方法。 V=(h 0 -h)/t ・・・(1) ln(V)=ln(k)+x・ln(P/P 0 ) ・・・(2) ln(k)=ln(A)-Ea/RT ・・・(3) (ただし、前記式(2)におけるP 0 は標準圧力であり、前記式(3)におけるRは気体定数である。) 続きを表示(約 2,100 文字)【請求項2】 前記ステップS2において、2つ以上の前記温度Tにおける前記反応次数xを算出し、前記ステップS3及び前記ステップS6において、前記目標温度T X に最も近い温度Tにおける前記反応次数xを用いる、請求項1に記載の水素吸蔵合金の性能予測方法。 【請求項3】 前記ステップS3において、2つ以上の前記圧力Pにおける前記反応速度定数kを算出し、前記ステップS4において、前記目標圧力P X に最も近い圧力Pにおける前記反応速度定数kを用いる、請求項1または2に記載の水素吸蔵合金の性能予測方法。 【請求項4】 目標温度T X 、目標圧力P X における水素吸蔵合金の水素吸蔵量の減少速度V X を予測することができるように構成された性能予測装置であって、 前記目標温度T X と、前記目標圧力P X と、前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h 0 (単位:mol)と、温度T(単位:K)、圧力P(単位:MPa)の水素雰囲気中にt秒間静置した後の前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h(単位:mol)と、当該水素吸蔵量hに対応する温度T、圧力P及び時間tとを入力可能に構成された入力部と、 前記入力部に入力されたデータを保持可能に構成された記憶部と、 前記記憶部に保持されたデータを用いて前記減少速度V X を予測可能に構成された演算部と、 前記演算部により予測された前記減少速度V X を出力可能に構成された出力部と、を有しており、 前記演算部は、 前記記憶部に保持された前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h 0 と、温度T、圧力Pの水素雰囲気中にt秒間静置した後の前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量hとを下記式(1)に代入することにより、温度T、圧力Pにおける水素吸蔵量の減少速度V(単位:mol/s)を算出する減少速度算出ステップS1と、 前記ステップS1において算出された前記減少速度Vのうち、前記温度Tが共通である複数の条件下での前記減少速度V及びこれらの減少速度Vに対応する前記圧力Pを用い、下記式(2)に基づいて前記温度Tにおける反応次数xを算出する反応次数算出ステップS2と、 前記ステップS1において算出された前記減少速度Vと、当該減少速度Vに対応する前記圧力Pと、前記ステップS2において算出された前記反応次数xと、を下記式(2)に代入することにより、前記温度T、前記圧力Pにおける減少速度Vから反応速度定数kを算出する速度定数算出ステップS3と、 前記ステップS3において算出した前記反応速度定数kのうち、圧力Pが共通である複数の条件下での前記反応速度定数k及びこれらの反応速度定数kに対応する前記温度Tを用い、下記式(3)に基づいて圧力Pにおける頻度因子A及び活性化エネルギーEa(単位:kJ)を算出するアレニウスパラメータ算出ステップS4と、 前記ステップS4において算出された前記頻度因子A及び前記活性化エネルギーEaと、前記目標温度T X とを下記式(3)に代入して前記目標温度T X における反応速度定数k X を予測する速度定数予測ステップS5と、 前記ステップS2において算出された前記反応次数xと、前記ステップS5において予測された前記反応速度定数k X と、前記目標圧力P X とを下記式(2)に代入して前記目標温度T X 及び前記目標圧力P X における水素吸蔵量の減少速度V X を予測する性能予測ステップS6と、を実行することができるように構成されている、水素吸蔵合金の性能予測装置。 V=(h 0 -h)/t ・・・(1) ln(V)=ln(k)+x・ln(P/P 0 ) ・・・(2) ln(k)=ln(A)-Ea/RT ・・・(3) (ただし、前記式(2)におけるP 0 は標準圧力であり、前記式(3)におけるRは気体定数である。) 【請求項5】 前記演算部は、前記ステップS2において、複数の温度Tにおける前記反応次数xを算出し、前記ステップS3及び前記ステップS6において、前記目標温度T X に最も近い温度Tにおける前記反応次数xを用いるように構成されている、請求項4に記載の水素吸蔵合金の性能予測装置。 【請求項6】 前記演算部は、前記ステップS3において、複数の圧力Pにおける前記反応速度定数kを算出し、前記ステップS4において、前記目標圧力P X に最も近い圧力Pにおける前記反応速度定数kを用いるように構成されている、請求項4または5に記載の水素吸蔵合金の性能予測装置。
発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、水素吸蔵合金の性能予測方法及び性能予測装置に関する。 続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】 【0002】 水素吸蔵合金は、水素の吸蔵と放出とを可逆的に行うことができるという特徴を生かし、種々の用途に用いられている。しかし、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させると、水素吸蔵合金中に一定の割合で安定な水素化物が形成される。そのため、水素吸蔵合金への水素の吸蔵と水素吸蔵合金からの水素の放出とを繰り返し行うと、水素吸蔵合金に吸蔵可能な水素吸蔵量が徐々に減少するという問題がある。従って、水素吸蔵合金を種々の用途に用いるに当たり、予め水素吸蔵量の減少速度を予測することが望まれている。 【0003】 例えば特許文献1には、性能予測すべき水素吸蔵合金を対象として、初期状態から水素吸収・放出サイクルを繰り返し、サイクル毎の水素吸収量の変化を初期状態を含む少なくとも3点以上にて実測するステップと、水素吸蔵合金の水素吸収量が水素吸収・放出サイクルの繰り返し回数を変数とする指数関数となることを表わす予測式において、該予測式を規定するための複数のパラメータを前記少なくとも3点の実測データに基づいて決定するステップと、パラメータの決定された予測式に基づいて、該水素吸蔵合金の性能変化を予測し、その結果を出力するステップとを有する水素吸蔵合金の性能予測方法が記載されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 特開平7-174756号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、特許文献1の性能予測方法では、性能変化を予測するために、水素の吸蔵と放出とをある程度の回数繰り返して行う必要がある。それ故、予測に用いるデータを取得するために比較的長い時間を要する。 【0006】 また、特許文献1の性能予測方法では、水素吸蔵合金が実際に使用される際の環境と同じ環境で性能予測を行う必要があり、性能予測を行った環境と実際の使用環境とが異なる場合には、性能予測の結果と実際の使用環境における性能との間の乖離が大きくなるおそれがある。それ故、より短時間で種々の環境における水素吸蔵合金の性能を予測できる水素吸蔵合金の性能予測方法が望まれている。 【0007】 本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、種々の環境における水素吸蔵合金の性能を予測することができ、かつ、予測に要する時間を短縮することができる水素吸蔵合金の性能予測方法及び性能予測装置を提供しようとするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一態様は、目標温度T X 、目標圧力P X における水素吸蔵合金の水素吸蔵量の減少速度V X を予測するための水素吸蔵合金の性能予測方法であって、 前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h 0 (単位:mol)と、温度T(単位:K)、圧力P(単位:MPa)の水素雰囲気中にt秒間静置した後の前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h(単位:mol)とを下記式(1)に代入することにより、温度T、圧力Pにおける水素吸蔵量の減少速度V(単位:mol/s)を算出する減少速度算出ステップS1と、 前記ステップS1において算出された前記減少速度Vのうち、前記温度Tが共通である複数の条件下での前記減少速度V及びこれらの減少速度Vに対応する前記圧力Pを用い、下記式(2)に基づいて前記温度Tにおける反応次数xを算出する反応次数算出ステップS2と、 前記ステップS1において算出された前記減少速度Vと、当該減少速度Vに対応する前記圧力Pと、前記ステップS2において算出された前記反応次数xと、を下記式(2)に代入することにより、前記温度T、前記圧力Pにおける減少速度Vから反応速度定数kを算出する速度定数算出ステップS3と、 前記ステップS3において算出した前記反応速度定数kのうち、前記圧力Pが共通である複数の条件下での前記反応速度定数k及びこれらの反応速度定数kに対応する前記温度Tを用い、下記式(3)に基づいて前記圧力Pにおける頻度因子A及び活性化エネルギーEa(単位:kJ)を算出するアレニウスパラメータ算出ステップS4と、 前記ステップS4において算出された前記頻度因子A及び前記活性化エネルギーEaと、前記目標温度T X とを下記式(3)に代入して前記目標温度T X における反応速度定数k X を予測する速度定数予測ステップS5と、 前記ステップS2において算出された前記反応次数xと、前記ステップS5において予測された前記反応速度定数k X と、前記目標圧力P X とを下記式(2)に代入して前記目標温度T X 及び前記目標圧力P X における水素吸蔵量の減少速度V X を予測する性能予測ステップS6と、を有する、水素吸蔵合金の性能予測方法にある。 【0009】 V=(h 0 -h)/t ・・・(1) ln(V)=ln(k)+x・ln(P/P 0 ) ・・・(2) ln(k)=ln(A)-Ea/RT ・・・(3) (ただし、前記式(2)におけるP 0 は標準圧力であり、前記式(3)におけるRは気体定数である。) 【0010】 また、本発明の他の態様は、目標温度T X 、目標圧力P X における水素吸蔵合金の水素吸蔵量の減少速度V X を予測することができるように構成された性能予測装置であって、 前記目標温度T X と、前記目標圧力P X と、前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h 0 (単位:mol)と、温度T(単位:K)、圧力P(単位:MPa)の水素雰囲気中にt秒間静置した後の前記水素吸蔵合金の水素吸蔵量h(単位:mol)と、当該水素吸蔵量hに対応する温度T、圧力P及び時間tとを入力可能に構成された入力部と、 前記入力部に入力されたデータを保持可能に構成された記憶部と、 前記記憶部に保持されたデータを用いて前記減少速度V X を予測可能に構成された演算部と、 前記演算部により予測された前記減少速度V X を出力可能に構成された出力部と、を有しており、 前記演算部は、前記の態様のステップS1~S6を実行することができるように構成されている、水素吸蔵合金の性能予測装置にある。 【発明の効果】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する