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公開番号2024086520
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-06-27
出願番号2023034550
出願日2023-03-07
発明の名称糖尿病合併症発症方法及び評価方法
出願人国立大学法人山梨大学
代理人
主分類A01K 67/027 20240101AFI20240620BHJP(農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業)
要約【課題】遺伝子改変を伴わず胚や栄養環境変化によって糖尿病が誘発される動物モデルに対し、急性合併症を発症させること、及び、糖尿病合併症の予防薬、治療薬、予防方法、及び治療方法の効果を評価する評価方法を確立することを目的とする。
【解決手段】遺伝子改変がなされていないマウスの受精胚を所定の培地で培養する培養工程と、前記培養した受精胚を仮親に移植する移植工程と、前記仮親から産出子を産出する産出工程と、前記産出工程で産出した産出子を高脂肪食で飼育する飼育工程と、前記飼育工程で飼育した前記産出子に低濃度の感染性炎症惹起物質を投与する工程とを備える。
【選択図】図1

特許請求の範囲【請求項1】
糖尿病合併症を発症させる方法であって、
遺伝子改変がなされていないマウスの受精胚を所定の培地で培養する培養工程と、
前記培養した受精胚を仮親に移植する移植工程と、
前記仮親から産出子を産出する産出工程と、
前記産出工程で産出した産出子を高脂肪食で飼育する飼育工程と、
前記飼育工程で飼育した前記産出子に低濃度の感染性炎症惹起物質を投与する投与工程と、
を備えることを特徴とする糖尿病合併症発症方法。
続きを表示(約 950 文字)【請求項2】
前記所定の培地はαMEM培地である、請求項1に記載の糖尿病合併症発症方法。
【請求項3】
前記投与工程で投与する前記低濃度の感染性炎症惹起物質の濃度は、疾患を持たない健常なマウスへの投与が直接的な原因である死亡例が観測されない濃度である、請求項1に記載の糖尿病合併症発症方法。
【請求項4】
前記感染性炎症惹起物質は、リポ多糖である、請求項1に記載の糖尿病合併症発症方法。
【請求項5】
前記投与工程で投与するリポ多糖の濃度は、10mg/kgBW以下である、請求項4に記載の糖尿病合併症発症方法。
【請求項6】
糖尿病合併症の予防薬、治療薬、予防方法または治療方法のうち少なくとも一つを評価する方法であって、
遺伝子改変がなされていないマウスの受精胚を所定の培地で培養する培養工程と、
前記培養した受精胚を仮親に移植する移植工程と、
前記仮親から産出子を産出する産出工程と、
前記産出工程で産出した産出子を高脂肪食で飼育する飼育工程と、
前記飼育工程で飼育した前記産出子に低濃度の感染性炎症惹起物質を投与する投与工程と、
糖尿病合併症の予防薬の投与、治療薬の投与、予防方法の適用または治療方法の適用のうち少なくとも一つを実施する実施工程と、
前記実施工程の結果を評価する評価工程とを備え、
前記実施工程は、前記飼育工程と投与工程の間、または前記投与工程と前記評価工程の間のいずれかに実行することを特徴とする評価方法。
【請求項7】
前記所定の培地はαMEM培地である、請求項6に記載の評価方法。
【請求項8】
前記投与工程で投与する前記低濃度の感染性炎症惹起物質の濃度は、疾患を持たない健常なマウスへの投与が直接的な原因である死亡例が観測されない濃度である、請求項6に記載の評価方法。
【請求項9】
前記感染性炎症惹起物質は、リポ多糖である、請求項6に記載の評価方法。
【請求項10】
前記投与工程で投与するリポ多糖の濃度は、10mg/kgBW以下である、請求項9に記載の評価方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病合併症を発症させる方法、及び、糖尿病合併症の予防薬/治療薬/予防方法/治療方法のうち少なくとも一つを評価する方法に関する。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
糖尿病などの生活習慣病の予防・治療に関する研究や医薬品開発の需要が高まっているが、糖尿病合併症に関する研究や医薬品・治療法の開発は滞っており進展していない。これまで、数多くのコホート研究や介入研究によって、糖や脂質などの代謝異常状態である2型糖尿病や脂質異常症、高血圧を有している患者では、末梢血中や対象臓器において炎症反応が過剰であることが報告されている(非特許文献1)。2020年より世界中で蔓延し始めたCOVID-19感染において、糖尿病を始めとする、慢性腎臓病や肥満、脂質異常症や高血圧などの基礎疾患患者は、疾患なしの者と比較して、COVID-19感染時における重症化率の増大および致死率が高いことが報告されており、過剰な炎症反応がその原因の一つであることが考えられている。また、他の感染症においても、糖尿病等の代謝性疾患患者への感染が、その病態の悪化すなわち重症化に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、その詳しいメカニズムは未解明でありモデル動物での実験検証が求められている。
【0003】
従来糖尿病を呈しながら過剰な炎症反応を有する適切な動物モデルは樹立していない。これまで研究に使用されてきた動物モデルには、糖尿病モデルとしてdb/dbマウス及びOLETFラット、脂質異常症モデルとしてアポリポタンパク質ApoE欠損マウス、高血圧モデルにはSHRラット等が知られている。これらは遺伝子を改変したモデルである。遺伝子を改変していない糖尿病のモデル動物としては、自然発症MEM糖尿病マウス(以下MEMマウスとも言う)が知られている(特許文献1)。MEMマウスは遺伝子改変を伴わず胚の培養や栄養環境の条件によって糖尿病が誘発されるものである。
【0004】
しかし、これらの動物モデルは、腎症や脂肪肝炎等の合併症に伴う炎症疾患は観察されず、観察されたとしても軽度であり、過剰な炎症反応状態を模倣できていない。すなわち、糖尿病患者の合併症による病態の悪化・重症化を予防・治療する薬剤や方法を評価するための動物モデルがないのが現状である。また、遺伝子を改変したモデル動物では、ヒトの2型糖尿病の合併症に伴う過剰な炎症反応惹起とそのメカニズムの評価用モデルとしては不向きである。
【0005】
従って、ヒトの2型糖尿病の合併症に伴う過剰な炎症反応惹起とそのメカニズムを解明し、その予防や治療を行うためには、遺伝子改変を伴わない糖尿病動物モデルに急性糖尿病合併症を発症させる方法を確立する必要がある。その方法が確立できれば、評価したい糖尿病合併症の予防薬、治療薬、予防方法、及び治療方法を、事前に当該動物モデルに適用しておき、その後急性糖尿病合併症を発症させることにより、糖尿病合併症の予防薬、治療薬、予防方法または治療方法のうち少なくとも一つについてその効果を評価できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2020-031551号公報
【非特許文献】
【0007】
Misaki Y, Mochizuki K, etlal. Metabolism. 2010, Kondo S.Mochizuki K.et al, Drugs R D. 21(1):91-101. 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、遺伝子改変を伴わず胚や栄養環境変化によって糖尿病が誘発される動物モデルに対し、急性合併症を発症させること、及び、糖尿病合併症の予防薬、治療薬、予防方法または治療方法の効果を評価する評価方法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の糖尿病合併症発症方法は、遺伝子改変がなされていないマウスの受精胚を所定の培地で培養する培養工程と、前記培養した受精胚を仮親に移植する移植工程と、前記仮親から産出子を産出する産出工程と、前記産出工程で産出した産出子を高脂肪食で飼育する飼育工程と、前記飼育工程で飼育した前記産出子に低濃度の感染性炎症惹起物質を投与する投与工程と、を備える。
【0010】
すなわち、遺伝子改変を伴わず胚培養や栄養環境の条件によって糖尿病が誘発された動物モデルに対し低濃度の感染性炎症惹起物質を投与することにより、前記感染性炎症惹起物質そのものの過大な刺激によらず、糖尿病合併症を発症させることができる。
(【0011】以降は省略されています)

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