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公開番号
2024082334
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-06-20
出願番号
2022196112
出願日
2022-12-08
発明の名称
製鋼工程における脱硫スラグの脱硫方法
出願人
個人
代理人
個人
主分類
C21C
7/00 20060101AFI20240613BHJP(鉄冶金)
要約
【課題】 電炉製鋼における取鍋精錬に供された脱酸脱硫スラグの再使用を図る。
【解決手段】 鋳込終了時に取鍋内に残存した脱酸脱硫スラグをスラグポットに流入し、該スラグを酸素バーナーにより加熱・酸化してスラグ中のS分をSOxとして気化除去する。排ガスは洗浄等に誘導してアルカリ水溶液のスプレイ洗浄により中和する。脱硫されたスラグは直ちに元の取鍋に流入し、受鋼する。スラグがホットリサイクルされる。アルカリにアンモニアを使用すると副産物として硫安が得られる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲
【請求項1】
電炉製鋼における取鍋精錬に供された塩基性の脱酸・脱硫スラグを鋳込み終了後直ちにスラグポットに移し替え、該脱酸・脱硫スラグに溶融状態で酸素ガスを吹き込んでスラグ中のSをSOxガスとして分離・除去することを特徴とする取鍋精錬スラグの脱硫・再生方法。
続きを表示(約 250 文字)
【請求項2】
下記4条件、
1) 酸素を吹き込む方法が酸素ガスランサーと共用の酸素ガスバーナーによること、
2) 燃焼排ガスの煙道中にSOxセンサーを設けて脱硫の進行を把握すること、
3) 燃焼排ガスを洗浄塔に誘導し、アルカリ水溶液のシャワーによりのSOxを溶解除去すること、
4) 脱硫後のスラグを溶融状態で元の取鍋に直ちに回帰させること、
のうちどれか一つ以上を組み込んだことを特徴とする請求項1に記載した取鍋精錬スラグの脱硫・再生方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、電炉製鋼において精錬後半を担う取鍋精錬に適用される脱酸・脱硫スラグを脱硫して再使用する方法に関している。
続きを表示(約 2,500 文字)
【背景技術】
【0002】
電炉製鋼法における現在の主流プロセスは、屑鉄を主原料とし、アーク炉によって該原料を溶解・酸化精錬し、次いで直ちに取鍋に出鋼し、通称LF(Ladle Furnace)によって取鍋内溶鋼をアーク再加熱しつつ還元・脱酸・脱硫に適切なスラグを生成して脱酸・脱硫を終了した後、所定成分・所定温度に誘導・調整する2段処理を経て連続鋳造に供される。
【0003】
精錬後段の作業は以下の段階を経る。
1) 溶解炉内溶鋼を取鍋へ出鋼する。溶解炉スラグの一部が取鍋に流出する。
2) 出鋼中に取鍋へ成分調整材、脱酸剤及び生石灰を主とする造滓材を投入する。
3) 取鍋台車をアーク加熱装置(LF)に誘導し、再加熱し、造滓材を溶解する。
4) 取鍋底に設けた通気プラグから不活性ガスを吹込み溶鋼を撹拌し続ける。
5) スラグを還元する炭材を投入し、保持し、脱酸・脱硫スラグを生成する。
6) 測温・サンプリングし、成分調整、温度調整する。
7) 取鍋をアーク加熱装置から引き出し、連続鋳造装置の架台に上置し、鋳込に供する。
【0004】
脱酸・脱硫スラグの生成は以下の反応に依存する。
a) 上記5)の段階でスラグ組成は以下の塩基性である。
CaO45~55%、SiO
2
15~20%、Al
2
O
3
10~15%、MgO5~10%、(FeO+MnO)5~10%である。
b) 炭材の投入によりスラグ中の低級酸化物(FeO+MnO)は容易に還元される。 C+CO
2
=2CO
(FeO+MnO)+2CO=Fe+Mn+2CO
2
c) スラグの脱酸によりSの分配が溶鋼からスラグ側へ移行する。
[FeS]=(FeS)
d) 炭材の一部はアーク下でCaOをも還元し、Caカーバイドを生成する。
CaO+3C=CaC
2
+CO
e) Caカーバイドはスラグ中のSを固定し、脱硫が完了する。
(FeS)+(CaC
2
)=(CaS)+Fe+2C
精錬によりスラグ中の低級酸化物FeO+MnOの濃度は約1.0%以下に低下し、
CaS濃度は0から約2~3%に増加する。その過程で溶存酸素濃度は約0.01%から約0.003%、Sは約0.03%から約0.01%に低下する。
【0005】
精錬開始から鋳込終了までの取鍋中のスラグの機能は、アークの安定化・溶鋼の大気による汚染の防止・保温・脱酸・脱硫等である。鋳込終了後、スラグは廃棄される。脱硫能が消費されたので再使用は不能である。
鋳込終了後の当該スラグは通常冷却途上で風滓化(粉体に変成)する。粉塵処理、埋め立て処理の困難等、廃棄には問題多々で、種々の策が講じられているが、いずれも産業廃棄物としての処理が煩雑且つ費用高である。
【0006】
処理方法の事例を検討する。取鍋スラグが冷却時に風砕化せず、固化するようスラグ成分を調整する。具体的には取鍋からスラグポットへの流し込み時に硼砂を主成分とする固化剤をスラグ中に混合する。しばしば実施されているが、混合性が不十分で、固化強度が地盤材として不足する、スラグ量が増加する等の問題がある。
【0007】
特許文献1には、当該スラグは通常冷却途上で風砕化するが、超徐冷すると石化するという新規の知見に基づいて、スラグを保温鋳型中で数10時間保持すると言う方法が開示されている。花崗岩に匹敵する強度が得られる。
原理は、冷却・凝固過程で平衡状態図に従う鉱物組成が凝固・析出・変態の進行に合わせて発現することであろう。
問題は、出鋼サイクルが1時間以内に対して保持時間が数10倍になり、処理スペース、
処理鋳型台数等が過大で実施不能である。
【0008】
特許文献2には、上記方法(スラグの石化)において石化時間を大幅に短縮する方法が開示されている。
それによると、脱酸・脱硫スラグの生成時に石化促進剤として廃石膏(CaS・2H
2
O)をスラグ質量の約2%を添加することにより石化時間は数時間に短縮される。本方法は実用され、製品は魚礁材に使用されている。
問題は、廃石膏の添加量は多くはないとは言え、CaSによりスラグの脱硫能が低下すること、水和水から溶鋼中へHが侵入して品質上の問題が生ずること等が挙げられる。
【0009】
特許文献3には、溶鋼ではなく溶銑に対する脱硫処理に適用されたスラグの脱硫と脱硫後の再使用方法が開示されている。
それによると、溶銑脱硫スラグは粉化せず固化する。固化したスラグを粉砕(5mm径以下)して、ロータリーキルンに装入、適切な加熱・酸化条件の下で、燃焼し、固体スラグからS分をSOxガスとして抜き取り、石灰CaOを主成分とする残スラグは製鋼工程に移送して再使用する。
脱硫スラグから安定して脱硫するためには酸化条件が重要であり、酸化が過剰であるとスラグ中の鉄粒子が酸化してFeOとなり、これが石灰CaOと反応して低融点のCaフェライトを生成し、粉粒体を溶着・固着させ、脱硫反応を抑制する。最適値が提示されている。
スラグ中の硫化物を加熱・燃焼処理してS分ををSOxとして分離する方式は非鉄精錬における金属硫化物を燃焼( Roasting )する操作と類似する。
【0010】
本方法の問題点は、1)事前にスラグの粉砕工程が必要であること、2)粉粒体を加熱燃焼させる設備(ロータリーキルン)と燃料を必要とすること、3)脱硫速度が小さいこと等、電炉製鋼への応用には魅力に欠ける。しかしスラグ中のSのガス化処理は大いに参考になる。
(【0011】以降は省略されています)
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