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公開番号2024148498
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-18
出願番号2023061680
出願日2023-04-05
発明の名称溶銑の脱硫方法
出願人日本製鉄株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人
主分類C21C 1/02 20060101AFI20241010BHJP(鉄冶金)
要約【課題】本発明は、KR設備などのインペラーの回転により攪拌し溶銑中に脱硫剤を投入する脱硫処理において更なる脱硫効率を向上させることを課題とする。
【解決手段】本発明は、容器内の溶銑静止時の溶銑表面位置(溶銑表面基準位置)から、溶銑を攪拌することによって生じる溶銑表面の凹み部の最深位置までの距離をH、前記インペラーの上端までの距離をhとしたとき、溶銑表面の少なくとも2点の位置を測定し、測定した溶銑表面の位置から溶銑表面の凹み部の最深位置までの距離Hを予め設定した関数(例えば、ガウス関数、シグモイド関数、ローレンツ関数など)で予測し、インペラーの上端までの距離hと溶銑表面の凹み部の最深位置までの距離Hの比h/Hで示されるR-dipに応じてインペラー位置やインペラー回転数の一方もしくは両方を制御することを特徴し、それにより脱硫効率を向上させることができる。
【選択図】図6
特許請求の範囲【請求項1】
容器内の溶銑をインペラーの回転により攪拌し、前記溶銑中に脱硫剤を投入して脱硫処理を行う溶銑脱硫方法であって、
前記容器内の溶銑静止時の溶銑表面位置(溶銑表面基準位置)から、溶銑を攪拌することによって生じる溶銑表面の凹み部の最深位置までの距離をH、前記インペラーの上端までの距離をhとしたとき、
前記溶銑表面の少なくとも2点の位置を測定し、測定した前記溶銑表面の位置から前記溶銑表面の凹み部の最深位置までの距離Hを予め設定した関数で予測し、
前記インペラーの上端までの距離hと前記溶銑表面の凹み部の最深位置までの距離Hの比h/Hで示されるR-dipに応じてインペラー位置やインペラー回転数の一方もしくは両方を制御することを特徴とする溶銑脱硫方法。
続きを表示(約 610 文字)【請求項2】
前記予め設定した関数が、ガウス関数、シグモイド関数、ローレンツ型関数、多次関数から選ばれる一つまたは二つ以上の組合せである、請求項1に記載の溶銑脱硫方法。
【請求項3】
前記R-dipが、予め定めたR-dip目標上限値より大きいとき、またはR-dip目標下限値より小さいときに 、前記インペラーの回転数または前記インペラーの上端までの距離hの一方または両方を変化させる、請求項1または2に記載の溶銑脱硫方法。
【請求項4】
前記R-dipが前記R-dip目標上限値より大きいときに前記インペラーの回転数を増加させ、前記R-dipが前記R-dip目標下限値より小さいときに前記インペラーの回転数を減少させる、請求項3に記載の溶銑脱硫方法。
【請求項5】
前記R-dipが前記R-dip目標上限値より大きいときに前記インペラーの上端までの距離hを減少させ、前記R-dipが前記R-dip目標下限値より小さいときに前記インペラーの上端までの距離hを増加させる、請求項3に記載の溶銑脱硫方法。
【請求項6】
前記R-dipが前記R-dip目標上限値より大きいときに前記インペラーの上端までの距離hを減少させ、前記R-dipが前記R-dip目標下限値より小さいときに前記インペラーの上端までの距離hを増加させる、請求項4に記載の溶銑脱硫方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄分野において溶銑から硫黄分を除去(脱硫)する方法に関するものである。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
鉄鉱石を還元して得られた溶融鉄(溶銑)には不純物が混在しており、溶銑から不要な成分を除去し、必要な元素を添加するなどして、所定の成分を有する鋼を製造する。このうち溶銑の脱硫方法については、従来生石灰などの脱硫剤を溶銑中に投入し、インペラーにより攪拌し、脱硫剤を溶銑中に拡散させて反応させる方法(機械攪拌方法)が知られている。このようなインペラーを溶銑中に浸漬して回転攪拌させる方式を、通常KR(Kanbara Reactor)法と呼び、その設備をKR設備と呼んでいる。KR法による溶銑の脱硫方法については特許文献1~3が開示されている。以下、特に断りのない限り、単に「脱硫」とは溶銑の脱硫を意味する。
【0003】
KR法による脱硫方法を簡単に説明する。図1は、容器(溶銑容器、または鍋ともいう。)内の溶銑の状態を断面図で示したものであり、溶銑容器1中に溶融鉄(溶銑)2が入っている。静止時の溶銑の表面位置を図1中の点線6で示す。まず脱硫処理の開始に先立ち、静止している溶銑中にインペラーを装入して回転を開始する。インペラーを回転すると、それに伴い溶銑に渦流が発生し、遠心力で周辺部が盛り上がり溶銑の中央部(インペラー軸部分)が凹み、図1の溶銑位置4のようになる。
【0004】
その後、脱硫剤を投入して脱硫処理を開始する。脱硫処理の開始直後(脱硫処理の初期)は、投入した脱硫剤の温度が低いため滓化せずに溶銑表面に漂うように存在する。インペラーの回転により攪拌され高温の溶銑と接触を繰り返すことで脱硫剤は高温になり、溶銑容器から混入したSiO2を含むスラグ(以下、溶銑スラグと言う場合がある。)や脱硫剤に配合した低融点化を促す成分(例えばAl2O3、FeO)と混合され、CaO-SiO2-Al2O3-FeOなどの低融点化した複合酸化物を形成し、これら酸化物など材料の一部が約800℃以上で液化して生石灰などの固体を取り込んで固体と液体が混合したスラグとなって滓化(液状化)する。
【0005】
滓化した脱硫剤は疑似粒子となり、溶銑の渦流中に取り込まれ、インペラーの回転エネルギにより外方に飛ばされ溶銑中に拡散し、次いで溶銑流に乗って溶銑表面へ浮上する。こうして脱硫剤全体が溶銑に取り込まれ、溶銑表面から滞留脱硫剤がなくなる。これを繰り返し、脱硫剤の滓化が進むと疑似粒子の液相がCaO飽和に近付き脱硫能が向上し、この液相を介して脱硫が進行する。脱硫の進行に伴い溶銑中の硫黄と生石灰が反応して硫化カルシウムを生成し、スラグ(図1中の点線5)となって溶銑から分離される。これを繰り返すことにより、溶銑中から硫黄分を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2001-247910号公報
特開2007-262501号公報
特開2010-185114号公報
特開2004-250742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
KR設備による脱硫処理は一般に高い脱硫効率を示すが、さらに脱硫効率を上げるためにいくつかの提案がされている。特許文献1は、処理容器の内径に対する浴深さの比を1.2~2.0にすることで、さらに高い脱硫効率が得ることができると提案している。特許文献2は、渦中心の溶銑の凹み深さを、静止湯面からインペラー上端までの距離であるインペラーの浸漬深さとインペラーの高さとの和よりも大きくすることで、さらに高い脱硫効率が得ることができると提案している。特許文献3は、インペラーの浸漬深さと渦中心の溶銑凹み深さの比が0.6~0.8にすることにより、さらに高い脱硫効率が得ることができると提案している。特許文献4は、鍋中の溶銑表面レベルを2地点のマイクロ波で測定し、そのレベル差から溶銑の攪拌流動速度を演算し、求めた攪拌流動速度が予め設定された流動速度となるようにインペラー回転速度と位置を制御することを提案している。
【0008】
しかし、これらの方法を行ったとしても、投入する生石灰量全量が溶銑の脱硫に寄与しているわけではなく、さらに脱硫効率を向上させる余地がある。脱硫効率が上がれば生石灰の投入量を削減でき、その分スラグ発生量を削減できる。スラグ発生量の削減は、スラグと共に溶銑から持ち出される鉄(Fe)量を低減させることができるため、鉄鉱石に対する鋼の生産性を向上させることができる。さらにスラグ発生量の削減は環境負荷の軽減につながる。これらのことから、脱硫効率の更なる向上が求められている。本発明は、KR設備を用いた脱硫処理において更なる脱硫効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
KR設備による脱硫処理においては、特許文献3で提案されたように、インペラーの浸漬深さと渦中心の溶銑凹み深さの比を一定範囲になるよう制御することが行われており一定の効果を上げている。しかし、脱硫処理を観察していると、脱硫剤の投入直後は溶銑表面上に脱硫剤が浮遊している状態が観察される。この時、脱硫剤の大部分は溶銑中に取り込まれていないので、投入した脱硫剤は十分に脱硫効果を発揮していないと考えられる。やがて、脱硫剤が滓化して溶銑の渦流中に取り込まれ始める様子が観察される。
【0010】
実操業において攪拌中の溶銑の渦中心の湯面位置は、外部から確認することができない。例えば、インペラーが渦中心にあるため実際には正確な渦中心の湯面位置を観察することができない(図2参照)。そのため、インペラー回転数などから予め渦中心の湯面位置を推定し、その位置が操業中は一定であるとして制御している。例え溶銑容器の外部からカメラ等で溶銑表面を観察できたとしても、渦中心を見ることができないため、渦中心深さは一定とし、観察できる溶銑位置が一定になるようにインペラー回転数などを制御するのが限界であった。
(【0011】以降は省略されています)

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