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公開番号
2025157159
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-10-15
出願番号
2025046597
出願日
2025-03-21
発明の名称
温度依存的に生体物質の相互作用を誘導するタンパク質セット
出願人
国立大学法人 東京大学
,
国立研究開発法人産業技術総合研究所
代理人
個人
,
個人
主分類
C07K
19/00 20060101AFI20251007BHJP(有機化学)
要約
【課題】TlpAの変異体を含み、加熱することで物質の相互作用を誘導することができるタンパク質の組み合わせを提供する。
【解決手段】温度依存的に物質の相互作用を誘導するためのタンパク質セットであって、以下のタンパク質aのN末端またはC末端に結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、以下のタンパク質b、および結合誘導タンパク質を含むタンパク質セット、または、
以下のタンパク質bのN末端またはC末端に結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、以下のタンパク質a、および結合誘導タンパク質を含むタンパク質セット;
a:特定のアミノ酸配列を有するタンパク質のコイルドコイル領域の全部または一部を含み、E180RおよびE250Rで示される変異を有するタンパク質、
b:前記特定のアミノ酸配列を有するタンパク質のコイルドコイル領域の全部または一部を含み、R179EおよびR251Eで示される変異を有するタンパク質。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
温度依存的に物質の相互作用を誘導するためのタンパク質セットであって、
以下のタンパク質aのN末端またはC末端に結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、以下のタンパク質b、および結合誘導タンパク質を含むタンパク質セット、または、
以下のタンパク質bのN末端またはC末端に結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、以下のタンパク質a、および結合誘導タンパク質を含むタンパク質セット;
a:配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質のコイルドコイル領域の全部または一部を含み、E180RおよびE250Rで示される変異を有するタンパク質、
b:配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質のコイルドコイル領域の全部または一部を含み、R179EおよびR251Eで示される変異を有するタンパク質。
続きを表示(約 1,300 文字)
【請求項2】
前記のタンパク質aが、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、E180RおよびE250Rで示される変異を有するタンパク質であり、
前記タンパク質bが、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、R179EおよびR251Eで示される変異を有するタンパク質であり、
前記結合誘導タンパク質がStringent starvation protein B(SspB)、
前記結合誘導ペプチドがSsrAペプチドであって、
C末端からZ個のアミノ酸が欠失している(ただし、Zは0以上7以下の整数)タンパク質aまたはタンパク質bのC末端に当該SsrAペプチドが結合していることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質セット。
【請求項3】
前記タンパク質aがさらにΔ1-Xで示される変異を有し、当該Xは2以上93以下であるタンパク質であり、前記タンパク質bがさらにΔ1-Yで示される変異を有し、当該Yは2以上93以下であるタンパク質である、請求項2に記載のタンパク質セット。
【請求項4】
前記XおよびYが65である請求項3に記載のタンパク質セット。
【請求項5】
前記タンパク質セットを構成するタンパク質のうち、タンパク質aに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質またはタンパク質bに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、および結合誘導タンパク質に、各々、別のタンパク質が結合または融合しており、当該別のタンパク質同士は相互作用するものである、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のタンパク質セット。
【請求項6】
前記別のタンパク質が、部位特異的組換え酵素またはCas9ヌクレアーゼの分割断片である、請求項5に記載のタンパク質セット。
【請求項7】
2つのタンパク質の距離を制御する方法であって、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のタンパク質セットに含まれる、タンパク質aに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、またはタンパク質bに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質を、前記2つのタンパク質の一方のタンパク質と結合または融合させる工程、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のタンパク質セットに含まれる、結合誘導タンパク質を前記2つのタンパク質の他方のタンパク質と結合または融合させる工程、および、
当該タンパク質セットを加熱する工程、を含む前記方法。
【請求項8】
前記別のタンパク質が、部位特異的組換え酵素またはCas9ヌクレアーゼの分割断片である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質セットに超音波またはラジオ波を照射して加熱することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
細胞内で物質の相互作用を制御するためのキットであって、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のタンパク質セットに含まれる各タンパク質をコードする核酸を含む、前記キット。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度依存的に生体物質(例えば、タンパク質など)の結合および解離を制御し得るタンパク質セットおよび当該タンパク質セットを用いた物質の相互作用を制御する方法に関する。
続きを表示(約 4,700 文字)
【背景技術】
【0002】
生体物質の1つであるタンパク質は、生体内で様々な機能を担っている。例えば、タンパク質同士で相互作用を行うことで、細胞内でのシグナル伝達や物質輸送などの生命の根本をなすシステムの制御に関わっている。これまでに、化合物や光により生体内におけるタンパク質間相互作用をコントロールし、遺伝子操作を行うためのツールが報告されている。光遺伝学(オプトジェネティクス)を応用したツールとして、光照射のON/OFFによって、結合および解離を制御することができるタンパク質ペア、光スイッチタンパク質が知られている(特許文献1)。光スイッチタンパク質は、光操作により、タンパク質ペアの結合/解離を通じて、細胞内におけるシグナル伝達、ゲノム編集、遺伝子発現などをコントロールすることを可能にするツールとして期待されている(非特許文献1および非特許文献2)。
光操作によって作動するツールを用いる場合、青色光(~470 nm)や近赤外光が用いられている。しかし、青色光はヘモグロビンなどに吸収されるため生体組織の透過性が低く、青色光で操作可能な光スイッチタンパク質は、生体内における光操作の使用には十分な効果を発揮できていなかった。また、近赤外光に関しても、皮下組織よりも深部に存在する組織にまで到達させることが難しいのでないかとの懸念がある。
【0003】
光の組織透過能に比べると、超音波およびラジオ波の組織透過能は高く、生体組織深部にまで到達することができ、到達部位領域を加熱することが可能である。そのため、温度変化によって結合および解離を制御し得る温度感応性のタンパク質を利用することで、生体内、特に組織深部における物質の相互作用を、超音波またはラジオ波を利用した加熱によりコントロールする熱遺伝学ツールが利用可能になると考えられる(非特許文献3および非特許文献4)。
サルモネラ菌(
Salmonella
typhimurium
)由来の転写因子であるTlpA は、N末端に存在するDNA結合領域とコイルドコイル(coiled-coil)と称されるα へリックスダイマーを形成する領域からなるタンパク質である。TlpAは、37℃付近ではホモ二量体を形成し、温度が37℃より上昇すると単量体に可逆的に解離する性質を有する(特許文献2、非特許文献5)。
TlpAの2つの単量体に、相互作用させたい2つの異なるタンパク質断片を各々結合させ、温度を変化させると、TlpA単量体の離合を制御することができ、その結果、2つのタンパク質断片の結合および解離をコントロールすることができると考えられる。しかし、野生型TlpAはホモ二量体を形成するため、上記タンパク質断片のうち同種のタンパク質断片同士が結合する場合も生じてしまう。このような状況を踏まえて、ホモ二量体ではなく、ヘテロ二量体を形成するTlpAの変異体が作出された(非特許文献6)。
【0004】
熱遺伝学的ツールを生体内で使用する場合、所望のタイミングと部位で、生体温度と異なる温度、例えば、37℃以上の温度変化が生じた際にタンパク質相互作用を生じさせ、ゲノム編集などの様々な機能を誘導させるようなツールが望ましい。しかしながら、上記TlpAのヘテロ二量体は、37℃付近で結合し37℃より温度が上昇すると解離する性質を持つため、加熱によるTlpAの二量体形成に伴って、タンパク質断片を結合するという原理を利用した生体内における相互作用を誘導するツールとしては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2015-165776
WO2007/142208号
【非特許文献】
【0006】
Kawanoら, Nature Chemical Biology 12:1059-1064 2016.
Kawanoら, Nature Communications 6:6256 2015.
Piranerら, Nature Chemical Biology 13:75-80 2017.
Paulidesら, Advanced Drug Delivery Reviews 163-164:3-18 2020.
Hurmeら, Cell 90:55-64 1997.
Piranerら, ACS Synth. Biol. 8: 2256-2262 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、上記TlpAの変異体を含み、加熱することで物質の相互作用を誘導することができるタンパク質の組み合わせ(タンパク質セット)を提供することを課題とする。
さらに本発明は、当該タンパク質セットを用いて生体内における物質の相互作用を制御する方法を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、TlpA変異体タンパク質 (TlpA変異体1)、この変異体と二量体を形成する他のTlpA変異体(TlpA変異体2)にSsrAペプチドを結合させたタンパク質(TlpA変異体2-SsrA)、およびSsrAと結合するStringent starvation protein B(SspB)の3つのタンパク質で構成されるタンパク質セットを用いることで、相互作用を行う2つのタンパク質の結合および解離を、温度依存的に誘導し得ることを見出した。
本発明にかかるタンパク質セットの作用機構の1例を図1に模式的に示す。TlpA変異体1およびTlpA変異体2-SsrA(TlpA変異体2にSsrAペプチドが結合しているタンパク質)は、37℃付近の温度では、TlpA変異体同士でコイルドコイル構造を形成する結果、SsrAペプチドはTlpA変異体2量体によって被覆され、SspBとの相互作用が阻害される。40℃程度にまで加熱するとTlpA変異体1とTlpA変異体2が解離することで、SsrAペプチドが露出し、SsrAペプチドとSspBとの結合が誘導される。
当該タンパク質セットのうち、TlpA変異体2-SsrAにタンパク質Aを結合させ、SspBにタンパク質Bを結合させて、温度を変化させると、37℃付近ではSsrAペプチドとSspBとの結合が阻害されるためタンパク質Aとタンパク質Bは近接することができず相互作用も抑制されるが、40℃付近にまで加熱すると、SsrAペプチドとSspBとの結合が生じるため、タンパク質Aとタンパク質Bが近接し、その結果、タンパク質Aとタンパク質Bとの相互作用が誘導される。
本発明は、上記3つのタンパク質の特性に基づいて完成された。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)~(10)である。
(1)温度依存的に物質の相互作用を誘導するためのタンパク質セットであって、
以下のタンパク質aのN末端またはC末端に結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、以下のタンパク質b、および結合誘導タンパク質を含むタンパク質セット、または、
以下のタンパク質bのN末端またはC末端に結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、以下のタンパク質a、および結合誘導タンパク質を含むタンパク質セット;
a:配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質のコイルドコイル領域の全部または一部を含み、E180RおよびE250Rで示される変異を有するタンパク質、
b:配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質のコイルドコイル領域の全部または一部を含み、R179EおよびR251Eで示される変異を有するタンパク質。
(2)前記のタンパク質aが、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、E180RおよびE250Rで示される変異を有するタンパク質であり、
前記タンパク質bが、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、R179EおよびR251Eで示される変異を有するタンパク質であり、
前記結合誘導タンパク質がStringent starvation protein B(SspB)、
前記結合誘導ペプチドがSsrAペプチドであって、
C末端からZ個のアミノ酸が欠失している(ただし、Zは0以上7以下の整数)タンパク質aまたはタンパク質bのC末端に当該SsrAペプチドが結合していることを特徴とする、上記(1)に記載のタンパク質セット。
(3)前記タンパク質aがさらにΔ1-Xで示される変異を有し、当該Xは2以上93以下であるタンパク質であり、前記タンパク質bがさらにΔ1-Yで示される変異を有し、当該Yは2以上93以下であるタンパク質である、上記(2)に記載のタンパク質セット。
(4)前記XおよびYが65である上記(3)に記載のタンパク質セット。
(5)前記タンパク質セットを構成するタンパク質のうち、タンパク質aに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質またはタンパク質bに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、および結合誘導タンパク質に、各々、別のタンパク質が結合または融合しており、当該別のタンパク質同士は相互作用するものである、上記(1)から(4)までのいずれかに記載のタンパク質セット。
(6)前記別のタンパク質が、部位特異的組換え酵素またはCas9ヌクレアーゼの分割断片である、上記(5)に記載のタンパク質セット。
(7)2つのタンパク質の距離を制御する方法であって、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載のタンパク質セットに含まれる、タンパク質aに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質、またはタンパク質bに結合誘導ペプチドが結合しているタンパク質を、前記2つのタンパク質の一方のタンパク質と結合または融合させる工程、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載のタンパク質セットに含まれる、結合誘導タンパク質を前記2つのタンパク質の他方のタンパク質と結合または融合させる工程、および、
当該タンパク質セットを加熱する工程、を含む前記方法。
(8)前記別のタンパク質が、部位特異的組換え酵素またはCas9ヌクレアーゼの分割断片である、上記(7)に記載の方法。
(9)前記タンパク質セットに超音波またはラジオ波を照射して加熱することを特徴とする、上記(7)に記載の方法。
(10)細胞内で物質の相互作用を制御するためのキットであって、上記(1)から(4)までのいずれかに記載のタンパク質セットに含まれる各タンパク質をコードする核酸を含む、前記キット。
なお、本明細書において「~」の符号は、その左右の値を含む数値範囲を示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるタンパク質セットを用いることで、生体内、特に生体組織深部における物質の相互作用を効率的に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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