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公開番号2025066715
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-23
出願番号2024229818,2022519793
出願日2024-12-26,2020-09-30
発明の名称優先的な軽鎖の対合のために操作されたCH1ドメインバリアント、およびそれを含む多重特異性抗体
出願人アディマブ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー,ADIMAB, LLC
代理人個人,個人,個人
主分類C07K 16/00 20060101AFI20250416BHJP(有機化学)
要約【課題】適切な重鎖-軽鎖対合を有する操作された二重特異性抗体を提供する。
【解決手段】カッパCLドメインまたはラムダCLドメインのいずれかへの優先的な結合のために操作されたCH1ドメインバリアント、ならびにかかる操作されたCH1ドメインバリアントを含む、例えば抗体重鎖または抗体などのポリペプチド、ならびにかかるCH1ドメインバリアントおよび/またはかかるポリペプチドを含む医薬組成物、ならびにかかるCH1ドメインバリアントを作製および使用する方法を、提供する。このCH1ドメインバリアントは、重鎖-軽鎖の誤対合を最小化し、そして同族の重鎖-軽鎖の対合を促進し、それによって多重特異性、例えば二重特異性の、抗体の生成を向上させる。また、CH1ドメインバリアントライブラリーを作製する方法、および一つまたは複数のCH1ドメインバリアントを特定する方法もまた提供する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
重鎖定常領域1(「CH1」)ドメインバリアントポリペプチドであって、EU番号付けに従って、118、119、124、126~134、136、138~143、145、147~154、163、168、170~172、175、176、181、183~185、187、190、191、197、201、203~206、208、210~214、216、および218位のうちの一つまたは複数の位置にアミノ酸置換を含み、
任意でそれによって当該CH1ドメインバリアントポリペプチドが、
(i)ラムダCLドメインと比較して、カッパ軽鎖定常領域(「CL」)ドメインと、および/もしくはラムダ軽鎖ポリペプチドと比較して、カッパ軽鎖ポリペプチドと、または
(ii)カッパCLドメインと比較して、ラムダCLドメインと、および/もしくはカッパ軽鎖ポリペプチドと比較して、ラムダ軽鎖ポリペプチドと、優先的に対合し、
ただし、任意で、以下の置換の組み合わせのうちの一つまたは複数が除外される、重鎖定常領域1(「CH1」)ドメインバリアントポリペプチド:
(a)CH1上の残基141がCもしくはLで置換される場合、残基166がDもしくはKで置換される場合、CH1上の残基128、129、162、もしくは171がCで置換される場合、および/もしくは残基147がDで置換される場合、当該CLは、アミノ酸置換を含まない;
(b)CH1上の126もしくは220位がバリンもしくはアラニンで置換される場合、128、141、もしくは168位における非システインがシステインで置換される場合、もしくはCH1置換がL145F、K147A、F170V、S183F、もしくはV185W/Fである場合、当該CLは、アミノ酸置換を含まない;
(c)CH1上の残基172が172Rに置換される場合、残基174が174Gに変異される場合、もしくは残基190が190Mもしくは190Iに置換される場合、これらは、唯一のCH1置換ではない;
(d)前記CH1置換が、L128F、A141I/M/T/L、F170S/A/Y/M、S181M/I/T、S183A/E/K/Vおよび/もしくはV185A/Lからなる場合、CLは改変されていない;
(e)前記CH1置換が、131C/S、133R/K、137E/G、138S/G、178S/Y、192N/Sおよび/もしくは193F/Lからなる場合、これらは、唯一のCH1置換ではなく、および/もしくはCH1ドメインを含有する二重特異性抗体において、同一のヒト免疫グロブリンのサブタイプまたはアロタイプのものである;
(f)前記CH1置換が、145D/E/R/H/K(IMGT位置26)からなる場合、129D/E/R/H/K(IMGT位置18)に対応するLC置換は存在しない;
(g)前記CH1置換が、124K/E/R/Dからなる場合、176において対応するLC置換は存在しない;
(h)前記CH1置換が、133V、150A、150D、152D、173Dおよび/もしくは188Wからなる場合、対応するLC置換は存在しない;
(i)前記CH1置換が、133S/W/A、139W/V/G/I、143K/E/A、145E/T/L/Y、146G、147T/E、174V、175D/R/S、179K/D/R、181R、186R、188F/Lおよび/もしくは190S/A/G/Yからなる場合、対応するLC置換は存在しない;
(j)前記CH1置換が、143A/E/R/K/Dおよび145T/Lからなる場合、対応するLC置換は存在しない;
(k)前記CH1置換が、124A/R/E/W、145M/T、143E/R/D/F、172R/Tおよび139W/G/C、179Eおよび/もしくは186Rからなる場合、対応するLC置換は存在しない;
(l)前記CH1置換が、126位、127位、128位、134位、141位、171位、もしくは173位でシステインで置換することからなる場合、対応するLC位置は、ジスルフィド結合を形成するように改変されていない;
(m)前記CH1置換が、L145Q、H168A、F170G、S183Vおよび/もしくはT187Eからなる場合、対応するカッパLC置換もしくはラムダLC置換は存在しない;
(n)前記CH1置換が143D/E、145T、190E/Dおよび/もしくは124Rからなる場合、対応するCL置換は存在しない;または
(o)CH1置換がA140C、K147Cおよび/もしくはS183Cからなり、対応するCL置換が存在する。
続きを表示(約 2,800 文字)【請求項2】
当該CH1ドメインバリアントポリペプチドが、EU番号付けに従って、118、124、126~129、131、132、134、136、139、143、145、147~151、153、154、170、172、175、176、181、183、185、190、191、197、201、203~206、210、212~214、および218位のうちの一つまたは複数の位置にアミノ酸置換を含み、
任意でそれによって前記CH1ドメインバリアントポリペプチドが、
(i)ラムダCLドメインと比較して、カッパCLドメインと、および/または
(ii)ラムダ軽鎖ポリペプチドと比較して、カッパ軽鎖ポリペプチドと、優先的に対合する、請求項1に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項3】
147位、183位または147位および183位においてアミノ酸置換を含む、請求項2に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項4】
以下のアミノ酸置換のうちの一つまたは複数を含む、請求項2または3に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド:
a.118位は、Gで置換される;
b.124位は、H、R、E、L、またはVで置換される、
c.126位は、A、T、またはLで置換される、
d.127位は、V、またはLで置換される、
e.128位は、Hで置換される、
f.129位は、Pで置換される、
g.131位は、Aで置換される、
h.132位は、Pで置換される、
i.134位は、Gで置換される、
j.136位は、Eで置換される、
k.139位は、Iで置換される、
l.143位は、V、またはSで置換される、
m.145位は、F、I、N、またはTで置換される、
n.147位は、F、I、L、R、T、S、M、V、N、E、H、Y、Q、A、またはGで置換される、
o.148位は、I、Q、Y、またはGで置換される、
p.149位は、C、S、またはHで置換される、
q.150位は、L、またはSで置換される、
r.151位は、A、またはLで置換される、
s.153位は、Sで置換される、
t.154位は、M、またはGで置換される、
u.170位は、G、またはLで置換される、
v.172位は、Vで置換される、
w.175位は、G、L、E、Aで置換される、
x.176位は、Pで置換される、
y.181位は、Y、Q、またはGで置換される、
z.183位は、I、W、F、E、Y、L、K、Q、N、R、またはHで置換される、
aa.185位は、Wで置換される、
bb.190位は、Pで置換される、
cc.191位は、Iで置換される、
dd.197位は、Aで置換される、
ee.201位は、Sで置換される、
ff.203位は、Sで置換される、
gg.204位は、Yで置換される、
hh.205位は、Qで置換される、
ii.206位は、Sで置換される、
jj.210位は、Rで置換される、
kk.212位は、Gで置換される、
ll.213位は、E、またはRで置換される、
mm.214位は、Rで置換される、および
nn.218位は、Qで置換される。
【請求項5】
(i)147位においてアミノ酸残基F、I、L、R、T、S、M、V、N、E、H、Y、もしくはQを、および/または
(ii)183位においてアミノ酸残基I、W、F、E、Y、L、K、Q、N、もしくはRを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項6】
(i)183位においてアミノ酸残基R、K、もしくはYを、および/または
(ii)147位においてアミノ酸残基Fを含む、請求項2~5のいずれか一項に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項7】
(i)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基R、
(ii)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基K、
(iii)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基Y、
(iv)183位においてアミノ酸残基R、
(v)183位においてアミノ酸残基K、または
(vi)183位においてアミノ酸残基Yを含み、
任意で、
(i)配列番号137、
(ii)配列番号138、
(iii)配列番号139、
(iv)配列番号60、
(v)配列番号41、または
(vi)配列番号136のアミノ酸配列を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項8】
CH1とVHとの間の界面内のCH1アミノ酸位置においてアミノ酸置換を含むものであって、任意で、前記CH1アミノ酸位置が151位であり、さらに任意で、151位にアミノ酸残基AまたはLを含む、請求項2~7のいずれか一項に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項9】
(i)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基R、
(ii)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基K、
(iii)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基Y、
(iv)183位においてアミノ酸残基R、
(v)183位においてアミノ酸残基K、または
(vi)183位においてアミノ酸残基Yを含む、CH1ドメインバリアントポリペプチド。
【請求項10】
(i)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基R、
(ii)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基K、
(iii)147位においてアミノ酸残基Fおよび183位においてアミノ酸残基Y、
(iv)183位においてアミノ酸残基R、
(v)183位においてアミノ酸残基K、または
(vi)183位においてアミノ酸残基Y、からなるアミノ酸置換を含む、請求項9に記載のCH1ドメインバリアントポリペプチド。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年9月30日に出願された、発明の名称を「優先的な軽鎖の対合のために操作されたCH1ドメインバリアント、およびそれを含む多重特異性抗体(CH1 DOMAIN VARIANTS ENGINEERED FOR PREFERENTIAL LIGHT CHAIN PAIRING AND MULTISPECIFIC ANTIBODIES COMPRISING THE SAME)」とする米国仮特許出願第62/908,367号に対する優先権を主張するものであり、当該内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
続きを表示(約 6,200 文字)【0002】
本発明は、適切な重鎖-軽鎖対合を促進する少なくとも一つのアミノ酸置換を含有するCH1ドメインバリアント、およびそれを含む抗体重鎖および抗体、特に多重特異性抗体、に関する。本発明はさらに、かかる抗体を含む組成物およびその使用、例えば、治療薬または診断法に関する。本発明はさらに、CH1ドメインバリアントライブラリーを作製する方法、および一つ以上のCH1ドメインバリアントを特定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
複数の抗原結合特異性、例えば二重特異性の抗体を有する抗体治療薬を開発するための継続的な努力がある。二重特異性抗体は、がん、炎症過程、または他の疾患状態に関連する複数の表面受容体に干渉するために使用することができる。二重特異性抗体を使用して、標的を近接に配置し、タンパク質複合体形成を調節するか、または細胞間の接触を駆動することもできる。二重特異性抗体の産生は、1960年代初頭に初めて報告され(Nisonoff et al.,Arch Biochem Biophys 1961 93(2):460-462)、最初のモノクローナル二重特異性抗体は、1980年代にハイブリドーマ技術を使用して生成された(Milstein et al.,Nature 1983 305(5934):537-540)。二重特異性抗体に対する関心は、その治療能力のために過去十年間で著しく増大し、現在臨床で二重特異性抗体が使用されている。例えば、ブリナツモマブおよびエミシズマブは、特定のがんの治療のために承認されている(二重特異性抗体産生方法および医薬用途で承認された二重特性抗体の特徴の近年のレビューに関して、Sedykh et al.,Drug Des Devel Ther 12:195-208(2018)およびLabrijn et al.Nature Reviews Drug Discovery 18:585-608(2019)を参照されたい)。
【0004】
二重特異性抗体は、単一特異性抗体を大幅に超える利益を示している一方で、二重特異性抗体の広範な商業的応用は、効率的/低コストである産生方法がないこと、二重特異性抗体の安定性の欠落、およびヒトにおいて半減期が短いことにより阻害されている。二重特異性抗体の産生を改善するための多岐にわたる方法が、過去数十年にわたり開発されている。これらには、異なる特異性を有する二つの免疫グロブリンの重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、国際公開第93/08829号、およびTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照)、「knob-in-hole」エンジニアリング(例えば、米国特許第5,731,168号)、免疫グロブリンクロスオーバー技術(Fabドメイン交換またはCrossMab形式としても知られている)(例えば、国際公開第2009/080253号;Schaefer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:11187-11192(2011)を参照)、抗体Fcヘテロ二量体分子の作製に関する静電ステアリング効果のエンジニアリング(国際公開第2009/089004A1号)、二つ以上の抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照)、ロイシンジッパー(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol,148(5):1547-1553(1992)を参照)、「ダイアボディ」技術(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照)、一本鎖Fv(scFv)二量体(例えば、Gruber et al.,J.Immunol,152:5368(1994)を参照)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol 147:60(1991)に記載される三重特異性抗体、が含まれる。
【0005】
これらの改善にもかかわらず、正確な重鎖-軽鎖対合である二重特異性抗体の生成は依然として課題である。二重特異性抗体は、二つの異なる重鎖および二つの異なる軽鎖の共発現によって形成され得る。重鎖は、比較的無差別な様式で軽鎖に結合するように進化してきたため、所望の形式の二重特異性抗体を適切に形成することは依然として課題である。結果として、二つの重鎖と二つの軽鎖の共発現は、重鎖-軽鎖対合のスクランブル- 十六種の可能な組み合わせの複雑な混合物、をもたらし得、それは十種の異なる抗体を表し、そのうち一種のみが所望の二重特異性抗体に相当する(完全な乱雑性がある場合、混合物中の最大収率12.5%)。均質な対合は、製造可能性および有効性に不可欠であるため、この誤対合(鎖対合問題とも呼ぶ)は、二重特異性抗体の生成に関する主要な課題のままである。
【0006】
誤対合を軽減するために使用される一つの戦略は、共通の軽鎖を有する二重特異性抗体を生成することである(例えば、Merchant et al.,Nat.Biotech.16:677-681(1998)を参照)。あるいは、単一の共通の重鎖と二つの異なる軽鎖(一つのカッパおよび一つのラムダ)とを使用してもよい(例えば、Fischer et al.,Nature Commun.6:6113(2015)を参照)。しかしながら、この戦略は、共通鎖を有する抗体を特定することを必要とし、これは困難であり、また各結合アームの特異性を損なう傾向があり、実質的に多様性が低減する(例えば、Wang et al.,MABS 10(8):1226-1235(2018)を参照)。
【0007】
正確な重鎖-軽鎖の対合を改善するための他のアプローチとしては、一つの抗原結合断片(Fab)アームの軽鎖またはその中のサブドメインの一つが、重鎖Fd領域の対応する領域と交換されるCrossMab技術(Roche社)、および一つのFabアームの本来のジスルフィド結合が、操作されたジスルフィド結合で置換されるDuetMab技術(MedImmune社)が挙げられる。しかしながら、これらのアプローチは、天然の抗体に適切に類似しない化合物をもたらし得る、本来のIgG形式への大幅な変更を必要とする。
【0008】
別の戦略は、重鎖および軽鎖の誤対合を低減または除去するために、IgG形式の重鎖および軽鎖の定常領域および/または可変領域内のアミノ酸置換を利用することである。発明者らの知る限り、CH1ドメインのみを改変することは、多重特異性抗体の発現中にしばしば観察される鎖対合または誤対合の問題を解決することがこれまでに実証されていない。むしろ、CH1ドメインバリアントを含むように操作された多重特異性抗体は、CLドメインならびに特定の例ではVH、CH2、CH3、および/またはVLドメインなどの鎖対合問題に対処するために、CH1ドメインの外側での改変もさらに必要とされた。その例としては、Lewis et al.,Nature Biotech.32(2):191-198(2014)が挙げられ、Lewisらは、改変された重鎖および軽鎖の優先的な対合を駆動し、そして野生型定常ドメインを有する重鎖および軽鎖ドメインの対合を妨げる試みにおいて、変異CH1およびCLドメイン、CRD1(D148K、F170T、V185Fでの重鎖置換、および軽鎖置換K129D、L135Fによる;EU番号付け)およびCRD2(重鎖置換H168AおよびF170T、ならびに軽鎖置換L135Y、S176Wによる)を生成した。しかしながら、Lewisらは、可変ドメインの不存下での変異CH1およびCLドメインにより得られたあらゆる対合特異性を、VH-VL界面内のさらなる操作なしには全長IgG形式に翻訳しなかった、すなわち優先的な重鎖-軽鎖対合を達成するために、VH-VL界面内の置換が、CLドメインおよびCH1ドメイン置換と共に必要であったことを報告した。電荷をもつアミノ酸残基を含有するようにCH1ドメインおよびCLドメインを操作することも、優先的な重鎖-軽鎖対合を促進するとされている(例えば、米国特許第10,047,163号を参照)。一つのFab断片が、優先的な対合を駆動するようにCH1ドメインおよびCκドメイン内の置換を有しているものである、異なるCH1ドメインおよびCLドメインをもつ少なくとも二つのFab断片を有する二重特異性抗体も知られている(CH1:T187EおよびCκ:N137K+S114A、CH1:L145Q+S183VおよびCκ:V133T+S176V、CH1:L128A+L145EおよびCκ:V133W、CH1:V185AおよびCκ:L135W+N137Aを開示する、米国特許出願公開第20180022829号および米国特許第9,631,031号を参照)。軽鎖、または場合によってはCH2、CH3、および/もしくはVHが優先的な重鎖-軽鎖対合を促進するように適切に置換される場合、優先的な重鎖-軽鎖対合を促進すると主張される特定のCH1ドメイン置換のさらなる例としては、以下が挙げられる:A141C/L、K147D、G166D、G166K、または128、129、162、もしくは171位におけるシステインでの置換(国際公開第2019183406号(Invenra Inc.社));126位もしくは220位におけるシステインの置換はバリンもしくはアラニンで置換され、または128位、141位、もしくは168位における非システインの置換はシステインで、L145F、K147A、F170V、S183F、もしくはV185W/Fで置換されている(米国特許第9,527,927号(MedImmune社));172Aおよび174G(国際公開第2020060924号(Dualogics社));A172Rおよび174G、または残基190のMまたはIへの置換(米国特許第10,047,167号(ノースカロライナ大学Chapel HillおよびEli Lilly));L128F、A141I/M/T/L、F170S/A/Y/M、S181M/I/T、S183A/E/K/VおよびV185A/L(米国特許出願公開第20180177873号(Genentech社));131C/S、133R/K、137E/G、138S/G 178S/Y、192N/S、および/または193F/L(米国特許第10,487,156号(Argenx BVBA社));145D/E/R/H/K(IMGT位置26)(国際公開第2018141894号(Merck社));124K/E/R/D(米国特許第10,392,438号(Pfizer社));133V、150A、150D、152D、173D、または188W(米国特許出願公開第20190023810号(MIT));133S/W/A、139W/V/G/I、143K/E/A、145E/T/L/Y、146G、147T/E、174V、175D/R/S、179K/D/R、181R、186R、188F/L、および/または190S/A/G/Y(米国特許出願公開第20180179296号および米国特許第9,914,785(Zymeworks社));143A/E/R/K/Dおよび145T/L(米国特許第10,077,298号(Zymeworks社));124A/R/E/W、145M/T、143E/R/D/F、172R/T、139W/G/C、179E、または186R(米国特許出願公開第20170204199号(Zymeworks社));126、127、128、134、141、171、または173位におけるシステインでの置換(全薬工業社);L145Q、H168A、F170G、S183V、およびT187E(国際公開第2020127354号(Alligator Bioscience社));143D/E、145T、190E/Dおよび124R(国際公開第2017/059551号(Zymeworks社))が挙げられる。また、米国特許第9,150,639号、協和発酵キリン社は、化学調節を可能にするシステインを導入する目的で、A140C、K147C、またはS183Cを含む重鎖を生成したと報告している。協和発酵キリン社は、これらの重鎖変異を含有する抗体バリアントは、野生型軽鎖を含む可能性があることを示唆しているが、このことが優先的な重鎖-軽鎖対合を促進するだろうという指摘はない。
【0009】
重鎖-軽鎖の誤対合を最小化するために使用されるさらに別の戦略は、異なる軽鎖、例えば異なる定常ドメインを有する軽鎖、を利用することである。例えば、Loewらは、カッパ軽鎖とラムダ軽鎖とを有する多重特異性抗体を生成して、最小限の誤対合が観察されたが、これはある一定の天然由来のカッパ軽鎖が高い正確性(fidelity)を有し、またラムダ抗体由来の重鎖と対合せず、そしてその逆も同じであるためである(国際公開第2018057955号)。残念ながら、この方法論の適用可能性は、高い正確性を有する当該軽鎖に限定される。他の者は、重鎖および軽鎖の両方でアミノ酸置換を利用して優先的な対合を静電気的または立体構造的に駆動するものであるカッパおよびラムダ軽鎖を使用して、多重特異性抗体を生成してきた(例えば、国際公開第2017059551号(Zymeworks社)、米国特許出願公開第20140154254号(Amgen社)および米国特許第10,047,163号(AbbVie Stemcentrx社)を参照)。しかしながら、重鎖および軽鎖の両方に多数のアミノ酸置換を導入することは、さらなる技術的ハードルとなり、さらに、抗体の機能および/または免疫原性に有害な影響を有し得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、適切な重鎖-軽鎖対合を有する操作された二重特異性抗体を提供することである。一態様では、重鎖と、特定の軽鎖との優先的な対合を促進するCH1ドメインバリアントポリペプチド(本明細書ではCH1ドメインバリアントとも呼ぶ)、およびそれを含む、抗体などのポリペプチドが本明細書において提供される。当該CH1ドメインバリアントは、少なくとも一つのアミノ酸置換(例えば、野生型などの親の配列に対して)を含有する。
(【0011】以降は省略されています)

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