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公開番号2025062803
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-15
出願番号2023172076
出願日2023-10-03
発明の名称分泌型タンパク質の合成方法
出願人個人
代理人弁理士法人みなとみらい特許事務所
主分類C12P 21/00 20060101AFI20250408BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明は、生体内で活性を示す分泌型タンパク質を安定的で効率的に生産することができる新規の技術を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決する本発明は、分泌型タンパク質をコードするアデノウイルスベクターを悪性腫瘍由来培養細胞株に導入することを含む、前記分泌型タンパク質を生産する方法である。
【選択図】図2


特許請求の範囲【請求項1】
分泌型タンパク質をコードするアデノウイルスベクターを悪性腫瘍由来培養細胞株に導入することを含む、前記分泌型タンパク質を生産する方法。
続きを表示(約 820 文字)【請求項2】
分泌型タンパク質の由来動物種と、前記悪性腫瘍由来培養細胞株の由来動物種が、同一動物種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分泌型タンパク質がヒト由来であり、かつ、前記悪性腫瘍由来培養細胞株が、ヒト由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アデノウイルスベクターが導入された前記悪性腫瘍由来培養細胞株を無血清培地で培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分泌型タンパク質が、特定組織から分泌されるものであり、
前記悪性腫瘍由来培養細胞株が、前記特定組織の悪性腫瘍に由来する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分泌型タンパク質がヘパリン結合活性及び/又はレクチン結合活性を有する成長因子であり、
ヘパリン及び/又はレクチンを担持した担体を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって、前記アデノウイルスベクターが導入された悪性腫瘍由来培養細胞株の培養上清から、前記分泌型タンパク質を精製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分泌型タンパク質がネトリンであり、前記悪性腫瘍由来培養細胞株がグリオーマ培養細胞株である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の方法によって生産された前記分泌型タンパク質を含む、組成物。
【請求項9】
前記組成物が、医薬組成物、食品組成物、化粧料組成物、養殖用飼料組成物、実験試薬用組成物の何れかである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記分泌型タンパク質を有効成分として含む、前記分泌型タンパク質の生体内における分泌量の低下が見られる疾患の治療用医薬組成物である、請求項8に記載の組成物。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、分泌型タンパク質の生合成方法に関する。
続きを表示(約 6,400 文字)【背景技術】
【0002】
生体内の神経成長因子や血管新生因子は機能活性分子としてそれ自身の体内における発現は時間的かつ空間的に厳密に制御されている。この制御が崩れ始めることによって様々な疾患が引き起こされる原因となっているが、これらの活性分子を補填することによってある程度の疾患の軽減が予測される。しかし、活性分子のタンパク構造はその翻訳後修飾も含めて種特異的であることから、他の種から抽出し、人体に供与することはエビデンスも乏しく、有益であると想像することは困難である。哺乳動物細胞によってヒト遺伝子組み換えタンパク質を発現させ、ヒト体内と同等の分子を得ることができるが、マイクログラムオーダーを取得するのも困難であることが多い。
【0003】
ヒト生体内の生体分子の不足を解消するために、体外で同等の分子を大量合成することは難しい。この問題は基礎研究や研究用抗体の作成、臨床研究に影響を与える。主な要因は、タンパク質の立体構造とフォールディング(非特許文献1)、細胞内補助タンパク質やフォールディング因子の欠如(非特許文献2)、翻訳後修飾の困難さ(非特許文献3)、そしてタンパク質の複雑さと多様性(非特許文献4)である。
【0004】
成功例としては、組換えタンパク質生産(非特許文献5)、細胞フリー翻訳系(非特許文献6)、合成生物学によるタンパク質生産(非特許文献7)がある。しかし、これらの技術は質と量の課題が存在する。たとえば、組換えタンパク質生産では翻訳後修飾やフォールディングが適切に行われない場合がある(非特許文献8)。細胞フリー翻訳系では翻訳後修飾や適切なフォールディングが保証されないことがあり、大量生産が困難になることがある(非特許文献9)。合成生物学では遺伝子回路や代謝経路の最適化がタンパク質の生産量に影響を与え、遺伝子回路や代謝経路が効率的でない場合、タンパク質の大量生産が困難になることがある(非特許文献10)。これらは質と量のバランスを考えた合成手段であるが、よりヒト生体内分子と同等のタンパク質分子を合成するにはやはり哺乳動物細胞を用いることが最も有効と考えられる。しかし、哺乳動物細胞を用いたヒト生理活性タンパク質の合成にも、いくつかの課題が存在する。まず、生産効率が低くコストが高い傾向にあり、これは哺乳動物細胞の増殖速度の遅さや維持管理の困難さが原因である(非特許文献11)。次に、適切な細胞株の選択と安定化が重要であるものの、これが困難な場合もある(非特許文献12)。また、翻訳後修飾の制御が難しい場合があり、異なる細胞株や培養条件によって糖鎖修飾のパターンが異なることがあるためである(非特許文献13)。タンパク質の分泌と回収にも課題があり、細胞内外でのタンパク質回収と精製が困難な場合があることが挙げられる(非特許文献14)。さらに、ウイルス汚染のリスクがあり、生産プロセスの安全性を確保するために厳格なウイルス検査と除去プロセスが必要である(非特許文献15)。
このようにヒト体内における生理活性タンパク質を体外で合成する技術は一つの発現系をとっても多くの課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Anfinsen, C. B. (1973). Principles that govern the folding of protein chains. Science, 181(4096), 223-230.
Hartl, F. U., Bracher, A., & Hayer-Hartl, M. (2011). Molecular chaperones in protein folding and proteostasis. Nature, 475(7356), 324-332.
Walsh, C. T., Garneau-Tsodikova, S., & Gatto, G. J. Jr. (2005). Protein posttranslational modifications: the chemistry of proteome diversifications. Angewandte Chemie International Edition, 44(45), 7342-7372.
Dill, K. A., & MacCallum, J. L. (2012). The protein-folding problem, 50 years on. Science, 338(6110), 1042-1046.
Goeddel, D. V., Kleid, D. G., Bolivar, F., Heyneker, H. L., Yansura, D. G., Crea, R., ... & Riggs, A. D. (1979). Expression in Escherichia coli of chemically synthesized genes for human insulin. Proceedings of the National Academy of Sciences, 76(1), 106-110.
Shimizu, Y., Inoue, A., Tomari, Y., Suzuki, T., Yokogawa, T., Nishikawa, K., & Ueda, T. (2001). Cell-free translation reconstituted with purified components. Nature Biotechnology, 19(8), 751-755.
Cameron, D. E., Bashor, C. J., & Collins, J. J. (2014). A brief history of synthetic biology. Nature Reviews Microbiology, 12(5), 381-390.
Gupta, S. K., & Shukla, P. (2018). Microbial platform technology for recombinant antibody fragment production: A review. Critical Reviews in Microbiology, 44(1), 1-13.
Zemella, A., Thoring, L., Hoffmeister, C., & Kubick, S. (2015). Cell-free protein synthesis: pros and cons of prokaryotic and eukaryotic systems. Chembiochem, 16(17), 2420-2431.
Nielsen, J., & Keasling, J. D. (2016). Engineering cellular metabolism. Cell, 164(6), 1185-1197.
Wurm, F. M. (2004). Production of recombinant protein therapeutics in cultivated mammalian cells. Nature biotechnology, 22(11), 1393-1398.
Birch, J. R., & Racher, A. J. (2006). Antibody production. Advanced drug delivery reviews, 58(5-6), 671-685.
Stanley, P., & Schachter, H. (2010). Mammalian N-glycan branching and disease. In Essentials of Glycobiology (pp. 215-224). Cold Spring Harbor Laboratory Press.
Shukla, A. A., & Thommes, J. (2010). Recent advances in large-scale production of monoclonal antibodies and related proteins. Trends in biotechnology, 28(5), 253-261.
Merten, O. W. (2002). Virus contaminations of cell cultures-A biotechnological view. Cytotechnology, 39(2), 91-116.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体内において活性な分泌型タンパク質を生産するために正常細胞を使用する場合、増殖能の低さから長期間、高価な培養栄養を与え続けて維持しなければならないことからコストも高く、生産効率も非常に低い。
また、生体分子をコードするプラスミドを培養細胞に導入する方法では、安定的、かつ、効率的に生体分子を生産することが困難である。
以上のことから、本発明は、生体内で活性を示す分泌型タンパク質を安定的で効率的に生産することができる新規の技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は以下のとおりである。
[1] 分泌型タンパク質をコードするアデノウイルスベクターを悪性腫瘍由来培養細胞株に導入することを含む、前記分泌型タンパク質を生産する方法。
[2] 分泌型タンパク質の由来動物種と、前記悪性腫瘍由来培養細胞株の由来動物種が、同一動物種である、[1]に記載の方法。
[3] 前記分泌型タンパク質がヒト由来であり、かつ、前記悪性腫瘍由来培養細胞株が、ヒト由来である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記アデノウイルスベクターが導入された前記悪性腫瘍由来培養細胞株を無血清培地で培養することを含む、[1]~[3]の何れか一項に記載の方法。
[5] 前記分泌型タンパク質が、特定組織から分泌されるものであり、
前記悪性腫瘍由来培養細胞株が、前記特定組織の悪性腫瘍に由来する、
[1]~[4]の何れか一項に記載の方法。
[6] 前記分泌型タンパク質がヘパリン結合活性及び/又はレクチン結合活性を有する成長因子であり、
ヘパリン及び/又はレクチンを担持した担体を使用したアフィニティークロマトグラフィーによって、前記アデノウイルスベクターが導入された悪性腫瘍由来培養細胞株の培養上清から、前記分泌型タンパク質を精製することを含む、[1]~[5]の何れか一項に記載の方法。
[7] 前記分泌型タンパク質がネトリンであり、前記悪性腫瘍由来培養細胞株がグリオーマ培養細胞株である、[1]~[6]の何れか一項に記載の方法。
[8] [1]~[7]の何れか一項に記載の方法によって生産された前記分泌型タンパク質を含む、組成物。
[9] 前記組成物が、医薬組成物、食品組成物、化粧料組成物、養殖用飼料組成物の何れかである、[8]に記載の組成物。
[10] 前記分泌型タンパク質を有効成分として含む、前記分泌型タンパク質の生体内における分泌量の低下が見られる疾患の治療用医薬組成物である、[8]に記載の組成物。
[11] 前記分泌型タンパク質がネトリンであり、前記疾患が虚血性脳梗塞、アルツハイマー型認知症又はパーキンソン病である、請求項10に記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分泌型タンパク質を大量に安定的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ヒトグリオーマ(アストロサイトーマ)U-373MGのコンフルエントの状態を示す顕微鏡写真(×100)。
(左)ヘパリンカラムクロマトグラフィーによって生成されたヒトネトリン-1の溶出分画を6分割し、一部をSDS-PAGE(CBB染色)およびウエスタンブロッティング(抗ヒト ネトリン-1抗体)により目的糖タンパク質であるヒト ネトリン-1精製を確認した図である。(右)スケールアップし、発明のプロトコル通りに精製したネトリン-1 1マイクログラムをSDS-PAGE(CBB染色)で確認した図である。再現よく培養上清への分泌発現と精製が可能であることが確認できた。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対するヒト ネトリン-1の血管新生活性をMigration Assayによって確認した図である。
ヒト非小細胞肺がん細胞株H1299にpCDNA-3.1(+)-ヒト ネトリン-1プラスミド発現ベクターを導入して作製した安定発現株の無血清培養による培養上清を精製し、図2と同様にSDS-PAGE(CBB染色)およびウエスタンブロッティング(抗ヒト ネトリン-1抗体)で確認した図である。U373-MG細胞を用いたアデノウイルス発現系よりも、精製されたタンパク質(CBB染色)に不純物が確認できる。
pcDNA3.1(+)プラスミドによるヒト ネトリン-1発現ベクターを様々な悪性腫瘍細胞にトランスフェクションし、図4の試験と同様に発現を確認した図である。実際のヒトの組織において、脳以外にもネトリン-1が大腸でよく発現しているが、大腸癌細胞株HCT116やLS174T等ではほとんど発現が見られない。細胞株によってはトランスフェクションによる遺伝子導入率がアデノウイスルと比較して圧倒的に低い。
生成したヒト ネトリン-1が生存シグナル活性を持つことを示す、Src、AktおよびMAPKのキナーゼ活性の確認試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は分泌型タンパク質を生産する方法である。具体的には、分泌型タンパク質をコードするアデノウイルスベクターを悪性腫瘍由来培養細胞株に導入し、当該細胞株において前記分泌型タンパク質を生産させる。前記分泌型タンパク質は当該細胞株の培養上清に分泌されることから、培養上清を精製することによって、前記分泌型タンパク質を得ることができる。
(【0011】以降は省略されています)

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