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公開番号2024179837
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-26
出願番号2023099051
出願日2023-06-16
発明の名称酵素の検出方法及び酵素の検出キット
出願人国立大学法人 東京大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12Q 1/48 20060101AFI20241219BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】ATP又はADPを合成する酵素が検出可能であり、これらの酵素のうち蛍光基質をもたない酵素について1分子レベルの高感度検出が可能になり、疾患バイオマーカー等の高感度計測が可能な酵素の検出方法及びそれに用いる酵素の検出キットを提供する。
【解決手段】酵素試料から、ADP又はATPを合成する標的酵素を検出するための酵素の検出方法であって、検出液を充填可能な複数の収容部が配列されたマイクロチャンバーアレイ部材を備えた検出装置を用意し、前記検出装置の前記収容部に、前記酵素試料とヘキソキナーゼ酵素とを含む検出液を充填する試料添加工程と、前記検出液からADP又はATPの合成によるシグナルを検出する検出工程と、を備えた、酵素の検出方法及びそれに用いる酵素の検出キットである。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
酵素試料から、ADP又はATPを合成する標的酵素を検出するための酵素の検出方法であって、
検出液を充填可能な複数の収容部が配列されたマイクロチャンバーアレイ部材を備えた検出装置を用意し、
前記検出装置の前記収容部に、前記酵素試料と、ヘキソキナーゼ酵素を含む検出試薬とを充填し、前記検出液とする試料添加工程と、
前記検出液からADP又はATPの合成によるシグナルを検出する検出工程と、
を備えた、酵素の検出方法。
続きを表示(約 740 文字)【請求項2】
前記標的酵素が、キナーゼである、請求項1に記載の酵素の検出方法。
【請求項3】
前記標的酵素がADPを合成する酵素である場合は、前記ヘキソキナーゼ酵素はADP依存性ヘキソキナーゼであり、前記標的酵素がATPを合成する酵素である場合は、前記ヘキソキナーゼ酵素はATP依存性ヘキソキナーゼである、請求項1又は2に記載の酵素の検出方法。
【請求項4】
前記検出試薬が、レサズリン及びジアフォラーゼを含む、請求項1又は2に記載の酵素の検出方法。
【請求項5】
前記検出工程は、蛍光シグナルを検出する、請求項1又は2に記載の酵素の検出方法。
【請求項6】
前記検出試薬が、アミン化合物又はHEPESを含まず、リン酸塩を含む、請求項1又は2に記載の酵素の検出方法。
【請求項7】
前記検出試薬がジアフォラーゼを含み、前記ジアフォラーゼ及び前記ヘキソキナーゼ酵素が好熱菌由来のリコンビナント酵素である、請求項1又は2に記載の酵素の検出方法。
【請求項8】
前記試料添加工程の前に、前記酵素試料にクレアチンキナーゼ及びホスホクレアチンを含む前処理溶液を添加して反応させるADP除去処理工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の酵素の検出方法。
【請求項9】
酵素試料から、ADP又はATPを合成する標的酵素を検出するための酵素の検出キットであって、
酵素試料および検出試薬を混合した検出液を充填可能な複数の収容部が配列されたマイクロチャンバーアレイ部材を備えた検出装置と、
ヘキソキナーゼ酵素を含む前記検出試薬と、
を備えた、酵素の検出キット。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患のマーカーとなるキナーゼ等を含む酵素を検出するための酵素の検出方法及びそれに用いる酵素の検出キットに関する。
続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】
【0002】
従来、様々な生体試料から特定の活性を有する酵素を検出することで、生体試料および酵素の情報を得る技術が用いられている。例えば、特定臓器由来の試料から酵素を検出することで、疾病や感染との関連を検出することができる(疾病・感染バイオマーカー)。疾病バイオマーカーとしては、キナーゼなどが考えられる。
【0003】
免疫化学的手法、特にELISA法を用いて少量、多数の試料の酵素を検出することができ、疾病・感染バイオマーカーの検出に応用することができる。
また、酵素のisozymeを調べるMultiplxed single enzyme assayの技術が開発されている。isozymeとは、同じ反応を触媒する酵素だが、少し異なる構造を持つもので、異なる基質特異性を持つ。このアッセイはその基質特異的な活性を1分子レベルで計測することで、isozymeを特定する手法である。血中には臓器特異的なisozymeが様々存在するため、どの臓器由来の疾患の可能性があるのか高感度に調べることができる。他にも、多量体を形成するisozymeは、1分子の活性分布が一様ではなくなることがあり、この分布の形を調べることで、どの疾病の影響があるのか調べることができる。また、ELISA法などの少量、多数の試料の分析では、検出および解析までを自動で行う方法も開発されており、これらのデジタルバイオ分析(デジタルELISA)も高感度にバイオマーカーを検出する手法として注目されている。
【0004】
多数の微量試料の酵素活性を検出するための検出装置および検出方法として、例えば、特許文献1では、生体試料を含む親水性溶媒を充填する複数の収容部を有するマイクロチャンバーアレイと、前記収容部に対応して画素が設けられているイメージセンサと、を備える検出装置において、前記マイクロチャンバーアレイは、前記収容部の開口部に連通している流通路と、前記流通路に連設されている疎水性溶媒供給部と、前記流通路に対し前記親水性溶媒が出入り可能な貫通穴とを有し、前記疎水性溶媒供給部は外部から加えられた力によって疎水性溶媒を前記流通路に流入させることを特徴とする検出装置、及びそれを用いた検出方法を開示している。この技術は、収容部の開口部を疎水性溶媒で封止し収容部に生体試料を含む親水性溶媒を閉じ込めるので、収容部内に収容される生体試料や試薬の濃度の低下を防いで測定感度を向上することができる検出装置、及びそれを用いた検出方法を得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
国際公開第2014/034781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のバイオマーカーの検出技術では多数の試料を高感度に検出することができるが、様々な酵素タイプのバイオマーカーを検出することができない。
すなわち、従来のバイオマーカーの検出技術では、目的の酵素に反応する基質を準備し、酵素が基質に反応することで(例えば、酵素の反応により基質が一部切断されることで)検出することができる。この目的のため、例えば基質の一部を修飾するなどを行い、反応により検出することができるようにする。
しかしながら、こうした特定の基質(蛍光検出に使用できる基質として、以下蛍光基質と呼ぶことがある)が見つかっていない酵素の場合、例えば、ADP、ATPのような生物内で一般的な分子の反応を触媒する酵素の場合、検出することができない。また、基質が見つかっていても、反応を検出できるような修飾が困難な場合は、検出することができない。
【0007】
例えば、キナーゼはがん細胞の増殖、浸潤に関与し、キナーゼ変異からがん化が生ずると考えられている。がんの分子標的薬として多くのキナーゼ阻害剤が開発されている。例えば、Rafキナーゼの変異、血中のチミジンキナーゼの活性は細胞増殖に密接に関連するバイオマーカーで、がん治療の予後モニターのツールとして期待されている。例えば、チミジンキナーゼに関しては、血清中のチミジンキナーゼ活性上昇が,腫瘍性疾患,悪性疾患,ビタミンB12欠乏症,ウイルス感染症に関連することが報告されている。チミジンキナーゼの活性は細胞増殖に密接に関連するバイオマーカーで、がん治療の予後モニターのツールとして期待されている。血中のクレアチンキナーゼ(CK)は、心筋梗塞発症後、血中濃度が上昇する。そのため心筋梗塞診断に広く用いられている。CKには脳・平滑筋、心臓、骨格筋由来のisozymeが存在し、タイプを特定することで、どの臓器にダメージが生じているかを推測することができる。
このようにキナーゼは臨床診断のターゲット分子として非常に重要だが、しかし、その酵素活性は、ATPとADPの変換(合成)を触媒するものである。例えばチミジンキナーゼはチミジン+ATPから、チミジンにリン酸を付与し、チミジル酸(TMP)+ADPとする反応を触媒する。
そのため、チミジンキナーゼを含むキナーゼは蛍光基質が見つかっていないため、デジタルバイオ分析による、1分子レベルの高感度検出はいまだ成功していない。
【0008】
本発明は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ATP又はADPを合成する酵素が検出可能であり、これらの酵素のうち蛍光基質をもたない酵素について1分子レベルの高感度検出が可能になり、疾患バイオマーカー等の高感度計測が可能な酵素の検出方法及びそれに用いる酵素の検出キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様は、以下の側面を有する。
[1] 酵素試料から、ADP又はATPを合成する標的酵素を検出するための酵素の検出方法であって、
検出液を充填可能な複数の収容部が配列されたマイクロチャンバーアレイ部材を備えた検出装置を用意し、
前記検出装置の前記収容部に、前記酵素試料と、ヘキソキナーゼ酵素を含む検出試薬を充填し、前記検出液とする試料添加工程と、
前記検出液からADP又はATPの合成によるシグナルを検出する検出工程と、
を備えた、酵素の検出方法。
[2] 前記標的酵素が、キナーゼである、[1]に記載の酵素の検出方法。
[3] 前記標的酵素がADPを合成する酵素である場合は、前記ヘキソキナーゼ酵素はADP依存性ヘキソキナーゼであり、前記標的酵素がATPを合成する酵素である場合は、前記ヘキソキナーゼ酵素はATP依存性ヘキソキナーゼである、[1]又は[2]に記載の酵素の検出方法。
[4] 前記検出試薬が、レサズリン及びジアフォラーゼを含む、[1]から[3]のいずれかに記載の酵素の検出方法。
[5] 前記検出工程は、蛍光シグナルを検出する、[1]から[4]のいずれかに記載の酵素の検出方法。
[6] 前記検出試薬が、アミン化合物又はHEPESを含まず、リン酸塩を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の酵素の検出方法。
[7] 前記検出試薬がジアフォラーゼを含み、前記ジアフォラーゼ及び前記ヘキソキナーゼ酵素が好熱菌由来のリコンビナント酵素である、[1]から[6]のいずれかに記載の酵素の検出方法。
[8] 前記試料添加工程の前に、前記酵素試料にクレアチンキナーゼ及びホスホクレアチンを含む前処理溶液を添加して反応させるADP除去処理工程をさらに含む、[1]から[7]のいずれかに記載の酵素の検出方法。
[9] 酵素試料から、ADP又はATPを合成する標的酵素を検出するための酵素の検出キットであって、
酵素試料および検出試薬を混合した検出液を充填可能な複数の収容部が配列されたマイクロチャンバーアレイ部材を備えた検出装置と、
ヘキソキナーゼ酵素を含む前記検出試薬と、
を備えた、酵素の検出キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ATP又はADPを合成する酵素が検出可能であり、これらの酵素のうち蛍光基質をもたない酵素について1分子レベルの高感度検出が可能になり、疾患バイオマーカー等の高感度計測が可能な酵素の検出方法及びそれに用いる酵素の検出キットが得られる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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