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公開番号2024165970
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-28
出願番号2023082603
出願日2023-05-18
発明の名称キチン・キトサンの新規な製造方法
出願人AGC株式会社,国立大学法人神戸大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 1/19 20060101AFI20241121BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】微生物からキチン・キトサンを効率的に回収する方法を提供すること。
【解決手段】キチンを生産する改変された微生物であって、該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
キチンを生産する改変された微生物であって、
該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物。
続きを表示(約 630 文字)【請求項2】
さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子の機能欠損を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する、請求項2に記載の微生物。
【請求項5】
前記改変が、該微生物におけるSmi1遺伝子の機能欠損である、請求項1に記載の微生物。
【請求項6】
前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、請求項2に記載の微生物。
【請求項7】
前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、請求項3に記載の微生物。
【請求項8】
前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、請求項4に記載の微生物。
【請求項9】
さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変されている、請求項1に記載の微生物。
【請求項10】
前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、請求項9に記載の微生物。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物、特に代謝を改変した微生物を用いた、キチン・キトサンの効率的な生産方法に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
キチンは、β-(l-4)結合したN-アセチルグルコサミンとグルコサミンとの線状共重合体からなる天然ポリマーである。キチンは、グルコサミンおよびキトサンを調製するための原料としても有用である。キチンとは異なり、キトサンは水溶性であり、多数の栄養、医療、医薬および工業用途を有する。現在、キチンは、主としてエビやカニ殻のような原料から抽出されている。キトサンは、長時間高温で強アルカリにより加水分解することによりキチンから商業的に製造される。商業的なプロセスは、原料供給によって限定される。また、貝類材料を出発する際に、均一で高品質な製品を提供することも困難である。
【0003】
キチンおよびキトサンは、天然成分であることから、生体に対する適合性に優れ、機能性食品として備えるべきすべての条件を完全に整えているだけでなく、人工皮膚、手術用縫合糸、人工透析膜、各種治療補助用品などの医薬分野、繊維、化粧品、生活用品、廃水処理、写真用フィルム、染料、製紙、生分解性プラスチックなどの工業分野、土壌改良剤、肥料、無公害農薬、飼料などの農業分野、放射能汚染除去、液晶、イオン交換膜などの多様な分野で利用価値の大きい多機能物質として評価されている。
【0004】
従来は、甲殻類やキノコ類等に含まれるキチン質を強アルカリや強酸で処理することでキトサンを製造していた。しかしながら、この方法では強アルカリや強酸を用いる為、環境負荷が大きかった。
甲殻類の供給源に代わるキチンおよびキトサンの代替供給源として、真菌等の微生物の細胞壁を利用する技術も考案されている(特許文献1)。しかしながら真菌の細部壁は層状の構造になっており、キチン・キトサンはその奥深くに存在している為、取り出す為には、細胞壁を破壊する必要があった。従って、代替供給源として微生物の細胞壁を利用する方法であっても、強アルカリや強酸、あるいは高温や長時間の処理時間といった厳しい条件を要するものであった。
【0005】
特許文献2および3には、酵母等の微生物を用い、キチン・キトサンの製造方法に関する技術が開示されている。しかしながら、キチン・キトサンを培地中に分泌させること、培地からキチン・キトサンを回収することは何ら記載されていない。特許文献4および5は出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いてタンパク質を製造する方法が開示されているが、キチンまたはキトサンを生産することについては何ら記載されていない。特に特許文献5では、キチン・キトサンは細胞外に分泌されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特表2005-529191号公報
特開平8-103271号公報
国際公開第2004/092391号
韓国特許出願公開第1996/0023035号公報
国際公開第2009/144358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微生物からキチン・キトサンを効率的に回収する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、微生物に対し、Cell-wall integrity経路(以下、CWI経路とも称する)が活性化され、且つカルシニューリン経路(以下、CN経路とも称する)が不活性化されるような改変を施すことで、好ましくはさらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変を施すことで、従来に比べ細胞外へのキチン・キトサンの分泌量(生産量)が向上する効果を発揮することを見出した。加えて、改変に供するのに適した遺伝子およびその組み合わせを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]キチンを生産する改変された微生物であって、
該改変により、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されていることを特徴とする、微生物。
[2]さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子の機能欠損を有する、[1]に記載の微生物。
[3]さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子の機能欠損を有する、[1]又は[2]に記載の微生物。
[4]前記改変が、該微生物におけるSmi1遺伝子の機能欠損である、[1]~[3]のいずれかに記載の微生物。
[5]前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、[2]~[4]のいずれかに記載の微生物。
[6]前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、[3]に記載の微生物。
[7]さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変されている、[1]~[6]のいずれかに記載の微生物。
[8]前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、[7]に記載の微生物。
[9]前記微生物が酵母である、[1]~[8]のいずれかに記載の微生物。
[10]前記酵母がサッカロミセス セレビシエである、[9]に記載の微生物。
[11]キチンを生産する能力を有する微生物を利用してキチン・キトサンを製造する方法であって、
該微生物を、非改変微生物に比べて、Cell-wall integrity経路(CWI経路)が活性化され、且つカルシニューリン経路(CN経路)が不活性化されるように改変することを含むキチン・キトサンの製造方法。
[12]さらに、少なくとも1種の細胞壁合成遺伝子を機能欠損させることを含む、[11]に記載の製造方法。
[13]さらに、少なくとも1種の細胞壁堅牢性維持遺伝子を機能欠損させることを含む、[11]又は[12]に記載の製造方法。
[14]前記改変が、前記微生物におけるSmi1遺伝子を機能欠損させることを含む、[11]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]前記細胞壁合成遺伝子が、キチントランスグリコシラーゼ遺伝子、β-グルカンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される、[12]に記載の製造方法。
[16]前記細胞壁堅牢性維持遺伝子が細胞壁タンパク質遺伝子、膜タンパク質遺伝子からなる群より選択される、[13]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]さらに、細胞内でキチンをキトサンに変換できるように改変することを含む、[11]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]前記細胞内でキチンをキトサンに変換できるような改変が、キチン脱アセチル化酵素遺伝子の導入によるものである、[17]に記載の製造方法。
[19]前記微生物が酵母である、[11]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]前記酵母がサッカロミセス セレビシエである、[19]に記載の製造方法。
[21]炭素源を含有する培地で微生物を培養し、キチン・キトサンを培地中に分泌させることを含む、[17]に記載の製造方法。
[22]前記炭素源がグルコースである、[21]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微生物を用いたキチン・キトサンの製造が可能であり、特に、グルコースを細胞内の酵素反応でキトサンに変換させ、分泌生産させることで、環境負荷の少ない安定的な製造が可能になる。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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