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公開番号2024157695
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-08
出願番号2023072201
出願日2023-04-26
発明の名称下水道の硫化水素抑制方法及びその用途
出願人エンザイム株式会社
代理人個人
主分類E03F 3/04 20060101AFI20241031BHJP(上水;下水)
要約【課題】好気条件及び嫌気条件下の下水道管路内の硫化水素の発生を阻止し得る簡易かつ安価な方法と、その結果、道路陥没事故の可能性を減らす方法を提供する。
【解決手段】本発明の下水道の硫化水素抑制方法及び道路陥没事故の防止方法は、下水道管渠又はその付随施設の硫化水素発生域又はその上流に腐植ペレットを設置することを含む。
【選択図】図4
特許請求の範囲【請求項1】
下水道の硫化水素抑制方法であって、上記下水道の管渠又は付随施設の硫化水素発生域又はその上流に腐植ペレットを設置することを含む、前記下水道の硫化水素抑制方法。
続きを表示(約 680 文字)【請求項2】
前記腐植ペレットを設置することによって、前記下水道管渠を流れる下水の善玉菌占有率を50%以上にすることを特徴とする、請求項1に記載の下水道の硫化水素抑制方法。
【請求項3】
下水の日流量に対する前記腐植ペレットの設置量は、0.1kg/日流量m
3
以上である、請求項1に記載の下水道の硫化水素抑制方法
【請求項4】
前記付随施設がポンプ処理場である、請求項1に記載の下水道の硫化水素抑制方法。
【請求項5】
上記下水道の管渠又は付随施設が嫌気状態にある、請求項1に記載の下水道の硫化水素抑制方法。
【請求項6】
道路陥没事故の防止方法であって、道路下の下水道の管渠又は付随施設の硫化水素発生域又はその上流に腐植ペレットを設置することを含む、前記道路陥没事故の防止方法。
【請求項7】
前記腐植ペレットを設置することによって、前記下水道管渠を流れる下水の善玉菌占有率を50%以上にすることを特徴とする、請求項6に記載の道路陥没事故の防止方法。
【請求項8】
下水の日流量に対する前記腐植ペレットの設置量は、0.1kg/日流量m
3
以上である、請求項6に記載の道路陥没事故の防止方法。
【請求項9】
前記付随施設がポンプ処理場である、請求項6に記載の道路陥没事故の防止方法。
【請求項10】
上記下水道の管渠又は付随施設が嫌気状態にある、請求項6に記載の道路陥没事故の防止方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道の硫化水素抑制方法及びその用途に関し、より詳細には下水道管渠内の硫化水素発生を抑制する方法及びそれを用いて道路陥没事故を防止する方法に関する。
続きを表示(約 1,900 文字)【背景技術】
【0002】
下水道は、管渠、マンホール、ポンプ場等で構成され、住宅地、店舗、工場、橋上等から集めた汚水や雨水を終末処理場まで流下させる役割を担う。下水道管渠は、外圧、衝撃や腐食に充分耐えるように、陶器、無筋・鉄筋コンクリート、鋳鉄のような金属、塩化ビニル等が採用される。管渠は、下水道施設設計指針に従って計画下水量に対して0.6m~3.0m/秒となるように設計されている。下水の流速が小さいと管渠底部に汚物が沈殿し易く、逆に流速が大きいと管渠を損傷して管渠の耐用年数を短くする。
【0003】
道路の陥没事故が、2017年(平成29年)度に9526件発生し、最近は年間1万件を超え、毎年増加傾向を示している。道路陥没事故の原因は、道路下の地盤の空洞化であるが、その70%以上が道路排水施設、道路側溝、下水道管渠や雨水管渠に関係する。
【0004】
道路陥没事故の原因の一つに下水道管渠内で発生する硫化水素及び硫酸による管渠の損傷がある。そのメカニズムを、図1を用いて説明すると、コンクリート構造物からなる下水道管渠の底部に下水汚泥や汚物が沈殿又は滞留すると、その一帯は嫌気性状態になり易い。嫌気性状態で活動する硫酸塩還元菌は、下水や汚泥内の硫酸塩(SO
4
2-
)を硫化水素ガス(H
2
S)に変える。硫化水素ガスは、汚水や汚泥から水面上に放散する。硫化水素ガスは、空気より重いので拡散せず、結露と硫黄酸化細菌とによって硫酸(H
2
SO
4
)に変化する。生成した硫酸はコンクリート表面から内部に浸入してコンクリート中のアルカリ成分(CaO)と化学反応して、二水石膏(CaSO
4
・2H
2
O)やエトリンガイド(3CaO・Al
2
O
3
・3CaSO
4
・32H
2
O)を生成する。これらの化合物が、コンクリートを膨潤させ、粉状に崩壊させる。崩壊したコンクリート部分からは、汚水が漏れ出て、道路下の地盤を構成する土砂を下流に押し流す。土砂が流れ出た所に空洞部が生じる。空洞が拡がると、最悪の場合、道路陥没事故を引き起こす。下水道管渠が鋳鉄管のような金属でも、管渠腐食のメカニズムと道路陥没事故の危険性は上記と同様である。
【0005】
道路陥没事故対策への管理目標として、日本では主に表1に示すような空気注入法、酸素注入法及び硝酸塩注入法が採用される。これらの方法では、管渠内を嫌気性(還元)状態から好気性(酸化)状態にして、硫酸塩還元菌の活動を抑制することを目指す。
【0006】
JPEG
2024157695000002.jpg
102
169
【0007】
米国の管理目標は、より具体的に、
(イ)下水中の溶存酸素濃度を0.5ppm以下、あるいはORP(酸化還元電位)を+100mV以上とする、
(ロ)下水中の溶存硫化物濃度を0.1~0.3mg/l以下とする、
(ハ)気相中の硫化水素濃度を3~5ppm以下とする、
(ニ)管路又は槽の表面のpHを4以上にする、
である。
【0008】
日本及び米国の管理目標はともに、管渠内の汚水を還元状態から酸化状態にするものであるが、しかし、下水管路は市街地に網目のように敷設されており、その全部に空気や酸素を充分に蔓延させて、管渠内全体を酸化状態にすることは到底困難といえる。
【0009】
管渠内の汚水を酸化状態に維持することは容易でない中で、現状の下水道技術は、下水管渠内の硫化水素の発生を自然現象として容認し、発生してしまう硫化水素を表1に示すポリ鉄でFeSとして固定化することで硫化水素の発生を阻止する。しかし、ポリ鉄注入法は、後述の比較例1に示すように、硫化水素の抑止策として十分とはいえず、根本的なコンクリートの損傷防止策となっていない。表1のポリ鉄を構成する硫黄原子が終末処理場で硫化水素発生源になるとの報告もある。さらに、ポリ鉄注入法は、安価な方法といえない。
【0010】
非特許文献1は、硝酸イオンによる硫酸塩還元細菌の働きの抑制と、鉄イオンによる硫化物の固定化の両方を企図する鉄含有硝酸塩注入法を提案する。この方法でも、硝酸塩注入法とポリ鉄注入法の欠点は解消されない。
(【0011】以降は省略されています)

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