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公開番号2024151536
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-25
出願番号2023064962
出願日2023-04-12
発明の名称樹脂組成物及びその製造方法
出願人住友林業株式会社
代理人弁理士法人翔和国際特許事務所
主分類C08L 23/02 20060101AFI20241018BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】機械的物性に優れ、且つ耐低温脆化性を有する樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
下記成分(A)ないし(C)を含み、下記成分(A)に含まれるエラストマー成分と、下記成分(C)との合計の質量割合が0.1%以上30%以下であり、下記成分(B)の質量割合が1%以上80%以下であり、下記成分(A)に含まれる熱可塑性樹脂の質量割合が10%以上95%以下である、繊維強化樹脂用の樹脂組成物。
(A)エラストマーを含む熱可塑性樹脂
(B)リグノセルロース繊維
(C)酸変性エラストマー
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
下記成分(A)ないし(C)を含み、
下記成分(A)に含まれるエラストマー成分と下記成分(C)との合計の質量割合が0.1%以上30%以下であり、
下記成分(B)の質量割合が1%以上80%以下であり、
下記成分(A)に含まれる熱可塑性樹脂の質量割合が10%以上95%以下である、繊維強化樹脂用の樹脂組成物。
(A)エラストマーを含む熱可塑性樹脂
(B)リグノセルロース繊維
(C)酸変性エラストマー
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記成分(A)における前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、その変性樹脂及びその共重合樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(A)における前記エラストマーが、エチレンプロピレン共重合エラストマー、エチレンブテン共重合エラストマー、エチレンオクテン共重合エラストマー、エチレンプロピレンジエン共重合エラストマー及びスチレンブタジエンスチレンブロックエラストマーの水素添加物からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が、エチレンプロピレン共重合エラストマー、エチレンブテン共重合エラストマー、エチレンオクテン共重合エラストマー、エチレンプロピレンジエン共重合エラストマー、スチレンブタジエンスチレンブロックエラストマーの水素添加物からなる群から選択される1種又は2種以上の酸変性化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
更に下記成分(D)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
(D)酸変性ポリオレフィン樹脂
【請求項6】
脆化温度が-15℃以下であり、引張弾性率が1.5GPa以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
2本以上のスクリューを備えた多軸スクリュー押出機を用いて、請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂組成物を製造する、樹脂組成物の製造方法であって、
前記多軸スクリュー押出機は、前記スクリューが配された混錬空間を内部に有するシリンダと、該シリンダの外周部に、該シリンダの軸方向に沿って複数配された加温部を含む加熱装置とを備えており、
前記成分(A)を、該成分(A)に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度で溶融する工程と、前記加温部の設定温度を該熱可塑性樹脂の融点未満に維持しつつ、該熱可塑性樹脂が溶融した該成分(A)、前記成分(B)及び前記成分(C)を混錬する工程とを有するか、又は
熱可塑性樹脂を、該熱可塑性樹脂の融点以上の温度で溶融する工程と、前記加温部の設定温度を該熱可塑性樹脂の融点未満に維持しつつ、溶融した該熱可塑性樹脂、エラストマー、前記成分(B)及び前記成分(C)を混錬する工程とを有する、繊維強化樹脂用の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂組成物からなるペレット。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂組成物からなる繊維強化樹脂材料。
【請求項10】
請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂組成物からなる成形品。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】
【0002】
木材や非木材の植物に由来するリグノセルロース資源は、植物の生長過程において二酸化炭素を蓄積しており、その使用や廃棄に際しては余剰の二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルな材料として認識されている。
木材や非木材の植物から得られるリグノセルロース資源は、リグノセルロース繊維で構成されている。リグノセルロース繊維は、リグノセルロース資源を機械的、熱機械的、化学的、化学機械的、又は化学熱機械的に処理することで、繊維を接着剤的に束ねている中間層を軟化、或いは、破壊させ、解きほぐしたり、微細化することで得られる。このようにして得られたリグノセルロース繊維は、主に紙原料としてのパルプやファイバーボード原料としての繊維として使用されている。これは、リグノセルロース繊維が、軽量で高強度、且つ、高弾性、再生可能で低コストであるためである。
【0003】
近年の地球温暖化に代表されるような環境問題を解決するために、樹脂の補強材として従来用いられてきたような、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、合成樹脂繊維、鉱物繊維、金属繊維の代替として、リグノセルロース繊維の使用が期待されている。従来の非再生可能な材料をリグノセルロース繊維で代替することによって、材料の軽量化、LCA(Life Cycle Assessment)の改善やコストダウンといった利点が得られ、そのため輸送機器製造産業、特に自動車製造産業において、リグノセルロース繊維の利用は注目を集めている。
【0004】
樹脂材料の中でも、屋外で使用される樹脂材料は、寒冷期には0℃以下の環境に曝されるため、例えば、結晶性のポリプロピレンは低温で脆化してしまい、実用に適さない。これを改良するために、エラストマーを添加したり、樹脂の重合時に他の成分を共重合させたブロック共重合体構造(コポリマー構造)としたりしている。しかし、このようなエラストマー配合樹脂や共重合樹脂にすると、脆性は改良されるが、相反する性質である剛性が低下し、十分な機械的物性が得られなくなる。
【0005】
そのため、従来、エラストマーを含む樹脂やブロック共重合樹脂にタルクを添加し、剛性の補填を図ることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開平2-124956号公報
特開平7-18151号公報
特開平11-60828号公報
特開2001-172466号公報
特開2002―97337号公報
特開2020-158606号公報
特開2016-166365号公報
特開2022-156073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、樹脂の補強材として、従来用いられてきたタルク等に代えてリグノセルロース繊維を使用することが期待されているところ、本発明者らは、リグノセルロース繊維で樹脂を補強すると、タルクのような充填材で樹脂を補強したときに比べて、剛性を付与する効果には優れているものの、脆性、特に低温での脆性が発現してしまうことを知見した。つまり、本発明者らの研究により、樹脂の補強材としてリグノセルロース繊維を用いる場合、所望の脆化温度と剛性のバランスを満たすのが困難であるという問題が存在することが明らかとなった。
【0008】
上記の問題を解決しながら、リグノセルロース繊維を原料として使用し、且つ、汎用的に使用されている樹脂の加工装置を使うことを前提とした場合、リグノセルロース繊維を含みながらも、耐低温脆化性に優れ、同時に、一定以上の機械的物性も得られる樹脂組成物を開発するのが望ましい。樹脂材料の機械的物性を向上させる技術として、特許文献1~8の技術が知られている。
特許文献1には、ポリプロピレン樹脂とポリエステル長繊維からなる低温耐衝撃性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、同文献の低温耐衝撃性樹脂組成物はリグノセルロース繊維を含む樹脂組成物ではなく、また脆化温度についても触れられていない。
特許文献2には、ポリプロピレンブロック共重合樹脂、EBR(エチレンブテン共重合エラストマー)、タルクからなる低温耐衝撃性樹脂組成物が開示されているが、これはリグノセルロース繊維を含む樹脂組成物ではなく、脆化温度についても触れられていない。
特許文献3には、ポリプロピレン樹脂、ガラス長繊維、タルクからなる低温耐衝撃性樹脂組成物が開示されているが、これはリグノセルロース繊維を含む樹脂組成物ではなく、脆化温度についても触れられていない。
【0009】
特許文献4には、ポリプロピレンブロック共重合樹脂、EPR(エチレンプロピレン共重合エラストマー)、タルクからなる低温耐衝撃性樹脂組成物が開示されているが、これはリグノセルロース繊維を含む樹脂組成物ではなく、脆化温度についても触れられていない。
特許文献5には、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレンブロック共重合樹脂、タルクからなる、成型加工性に優れた低温耐衝撃性樹脂組成物が開示されているが、これはリグノセルロース繊維を含む樹脂組成物ではなく、脆化温度についても触れられていない。
特許文献6には、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、木粉、酸変性ポリエチレン樹脂の相溶化材からなる、機械的強度に優れた耐衝撃性樹脂組成物が開示されているが、これは低温衝撃性や脆化温度への影響については触れられておらず、変性エラストマーの使用に関する示唆もない。
【0010】
特許文献7には、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、EPR(エチレンプロピレン共重合エラストマー)変性相溶化材、からなる、機械的強度に優れた耐衝撃性樹脂組成物が開示されているが、これはポリアミドの、相対的にポリプロピレンより優れた機械的物性を活かしたポリマーアロイであり、解決手段も課題も異なる。また、低温での衝撃性や脆化温度への影響については触れられておらず、更には、リグノセルロース繊維を含む樹脂組成物でもなく、酸変性樹脂相溶化材の使用についても否定的である。
(【0011】以降は省略されています)

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