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公開番号
2024147704
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-16
出願番号
2024113975,2022114547
出願日
2024-07-17,2016-05-13
発明の名称
中枢神経系への治療的送達のためのアデノ随伴
出願人
リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
,
リジェネクスバイオ インコーポレイテッド
代理人
個人
,
個人
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個人
,
個人
,
個人
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個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
A61K
48/00 20060101AFI20241008BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約
【課題】リソソーム蓄積症を有する哺乳動物の中枢神経系において、神経認知を強化するまたは神経病態を減少させるための方法を提供する。
【解決手段】中枢神経系の疾患に関連する遺伝子産物をコードするrAAVを、例えば該遺伝子産物が存在しないか、または該疾患を有さない哺乳動物と比較して低減したレベルで存在する哺乳動物に、例えばクロスコレクション(cross-correction)をもたらすのに有効な量で、鼻腔内、髄腔内、脳血管内、または静脈内投与する方法である。
【選択図】図34
特許請求の範囲
【請求項1】
リソソーム蓄積症を有する哺乳動物の中枢神経系において神経認知を強化するまたは神経病態を減少させるための方法であって、リソソーム蓄積酵素をコードするオープンリーディングフレームを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを、該rAAVを投与されていないムコ多糖症を有する哺乳動物と比較して脳全体にわたって神経認知を強化するまたは神経病態を減少させるのに有効な量で含む組成物を、該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
続きを表示(約 1,000 文字)
【請求項2】
リソソーム蓄積症を有する哺乳動物において神経認知機能障害または神経病態を防止または阻害するための方法であって、リソソーム蓄積酵素をコードするオープンリーディングフレームを含む有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む組成物を、該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項3】
中枢神経系におけるリソソーム蓄積酵素欠損のクロスコレクション(cross-correction)を、それを必要とする哺乳動物においてもたらすための方法であって、該哺乳動物における発現がクロスコレクションをもたらすリソソーム蓄積酵素をコードするオープンリーディングフレームを含む有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む有効量の組成物を、該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項4】
哺乳動物が免疫抑制薬で処置されない、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物が免疫抑制薬で処置される、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
免疫抑制薬がシクロホスファミドを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
免疫抑制薬が、グルココルチコイド、アルキル化剤を含む細胞分裂阻害剤、代謝拮抗物質、細胞傷害性抗生物質、抗体、またはイムノフィリンに対して活性な作用物質を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
免疫抑制薬が、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、IL-2受容体(CD25)またはCD3に対する抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、またはTNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)結合剤を含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
rAAVと免疫抑制薬とが同時投与されるか、または免疫抑制薬がrAAVの後に投与される、請求項6~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
rAAVの投与前に哺乳動物が免疫寛容化されない、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年5月15日に出願された米国特許出願第62/162,174号、2015年11月6日に出願された同第62/252,055号、2016年3月1日に出願された同第62/301,980号および2016年5月3日に出願された同第62/331,156号の出願日の恩典を主張し、各々の開示は参照により本明細書に組み入れられる。
続きを表示(約 5,000 文字)
【0002】
政府の権利に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所によって交付されたHD032652およびDK094538の下に、政府の支援を受けて為された。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
ムコ多糖症(MPS)は、グリコサミノグリカン(GAG)異化の乱れが引き起こす11の蓄積症の一群であり、リソソームにおけるGAGの蓄積をまねく(Muenzer, 2004、Munoz-Rojas et al., 2008)。さまざまな重症度の所見には、臓器肥大、骨格異形成、心閉塞および肺閉塞、ならびに神経機能低下が含まれる。イズロニダーゼ(IDUA)欠損症であるMPS Iの場合、重症度は、軽度(シェイエ症候群)から中等度(ハーラー・シェイエ)、さらには重度(ハーラー症候群)に及び、後者は神経学的不全と15歳までの死亡をもたらす(Muenzer, 2004、Munoz-Rojas et al., 2008)。MPSの治療法は大部分が対症療法であった。しかし、MPS疾患のなかには、ハーラー症候群を含めて、同種異系造血幹細胞移植(HSCT)が効力を呈したものもある(Krivit, 2004、Orchard et al., 2007、Peters et al., 2003)。加えて、酵素補充療法(ERT)が利用可能になりつつあるMPS疾患も、次第に増えている(Brady, 2006)。一般に、HSCTとERTは蓄積物質の除去と末梢状態の改善をもたらすが、いくつかの問題は処置後も残存する(骨格、心臓、角膜混濁)。これらの細胞療法および酵素療法における最も大きな問題は、神経所見の対処における有効性である。というのも、末梢に投与された酵素は血液脳関門を透過せず、HSCTは一部のMPSに有益であることは見いだされているが、全てのMPSに有益なわけではないからである。
【0004】
MPS Iは、細胞療法および分子療法の開発に関して最も大規模に研究されたMPS疾患の1つである。同種異系HSCTの有効性は、おそらく、欠けている酵素がドナー由来細胞から放出され、次に宿主細胞によって取り込まれ、リソソームに輸送されて、リソソーム代謝に寄与するという、代謝的クロスコレクション(metabolic cross-correction)の結果であるだろう(Fratantoni et al., 1968)。続いて、肝臓や脾臓などの末梢臓器において、GAG蓄積物質の除去が観察され、心肺閉塞の緩和および角膜混濁の改善が起こる(Orchard et al., 2007)。とりわけ重要なのは、MPS疾患における神経学的所見の出現に対する同種異系幹細胞移植の効果である。これに関連して、同種異系幹細胞を生着させた個体が移植を受けていない患者と比較して改善された転帰を迎えることは、いくつかのMPS疾患について証拠がある(Bjoraker et al., 2006、Krivit, 2004、Orchard et al., 2007、Peters et al., 2003)。同種異系造血幹細胞移植の神経学的利益を説明する中心的仮説は、中枢神経系へのドナー由来造血細胞(おそらくミクログリア)の透過(Hess et al., 2004、Unger et al., 1993)であり、生着した細胞はそこで欠けている酵素を発現し、酵素はその地点からCNS組織中に拡散して、蓄積物質の除去に関与する。したがってCNS組織に提供される酵素のレベルは、脳内に生着するドナー由来細胞から発現され放出される量に限定される。そのような生着はMPS Iにとって大変有益であるものの、それでもなおレシピエントは、標準を下回るIQと神経認知能力障害を呈し続ける(Ziegler and Shapiro, 2007)。
【0005】
代謝的クロスコレクションという現象は、いくつかのリソソーム蓄積症、特にMPS Iに対する、ERTの有効性の説明にもなる(Brady, 2006)。しかし、CNSに効果的に到達するには、その特定のリソソーム蓄積症(LSD)において欠けている酵素が血液脳関門(BBB)を透過する必要があることから、リソソーム蓄積症(LSD)の神経学的所見に対する酵素療法の有効性は観察されていない(Brady, 2006)。酵素は、ほとんどの場合、大きすぎ、また一般に荷電しすぎているので、BBBを効果的に横切ることができない。このことが、侵襲的髄腔内酵素投与の研究を喚起し(Dickson et al., 2007)、侵襲的髄腔内酵素投与については、MPS Iのイヌモデルにおいて有効性が実証され(Kakkis et al., 2004)、MPS Iに関するヒト臨床治験が始まっている(Pastores, 2008、Munoz-Rojas et al., 2008)。酵素療法の主な欠点として、その費用が多大であること(年間200,000ドル超)と、組換えタンパク質の反復注入が必要であることが挙げられる。髄腔内IDUA投与の現在の臨床治験は、3ヶ月に1回しか酵素を注射しない計画になっているので、この投与レジメンの有効性は不確かなままである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の方法において使用されるAAVベクターはCNSに遺伝子を送達するのに役立つ。一態様において、本発明は、例えば神経認知機能障害または神経学的疾患を防止、阻害または処置するための、AAVによる治療用タンパク質のCNSへの鼻腔内送達を提供する。本明細書に記載するとおり、ベクターの鼻腔内送達は、前脳(嗅球)の形質導入と治療用タンパク質の発現につながった。タンパク質は脳のすべての領域に拡散した。このように、分泌タンパク質などを発現させるために鼻腔内送達AAVベクターを使用すれば、多くの異なる神経障害、例えばMPS I、MPS II、MP SIII、ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病を含む他の代謝性疾患の処置が可能になる。例えば、顕微解剖された脳のすべての部分からの抽出物をアッセイすると、rAAVによって送達されたアルファ-L-イズロニダーゼの脳全体にわたる広範な分布が示される。
【0007】
一態様において、rAAVは、神経認知機能障害または神経学的疾患を防止、阻害または処置するために、哺乳動物に、髄腔内(IT)送達、血管内(IV)送達、脳室内(ICV)送達、または鼻腔内(IN)送達される。一態様において、鼻腔内投与は、代謝的クロスコレクションによるCNSへの非侵襲的直接投与をもたらす。一態様において、哺乳動物は免疫抑制を受ける。一態様において、哺乳動物は寛容化を受ける。
【0008】
一態様において、特定の遺伝子で防止、阻害または処置されるべき疾患には、MPS I(IDUA)、MPS II(IDS)、MPS IIIA(ヘパラン-N-スルファターゼ;スルファミニダーゼ)、MPS IIIB(アルファ-N-アセチル-グルコサミニダーゼ)、MPS IIIC(アセチル-CoA:アルファ-N-アセチル-グルコサミニドアセチルトランスフェラーゼ)、MPS IIID(N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ)、MPS VII(ベータ-グルクロニダーゼ)、ゴーシェ病(酸性ベータ-グルコシダーゼ)、アルファ-マンノシドーシス(アルファ-マンノシダーゼ)、ベータ-マンノシドーシス(ベータ-マンノシダーゼ)、アルファ-フコシドーシス(アルファ-フコシダーゼ)、シアリドーシス(アルファ-シアリダーゼ)、ガラクトシアリドーシス(カテプシンA)、アスパルチルグルコサミン尿症(アスパルチルグルコサミニダーゼ)、GM1-ガングリオシドーシス(ベータ-ガラクトシダーゼ)、テイ・サックス病(ベータ-ヘキソサミニダーゼサブユニットアルファ)、サンドホフ病(ベータ-ヘキソサミニダーゼサブユニットベータ)、GM2-ガングリオシドーシス/AB異型(GM2活性化タンパク質)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、異染性白質ジストロフィー(アリールスルファターゼA)、ならびに限定するわけではないがアルツハイマー病(ベータ-アミロイドに対する抗体などの抗体の発現、またはアルツハイマー病に関連するプラークおよびフィブリルを攻撃する酵素)、またはアルツハイマー病およびパーキンソン病(限定するわけではないがGDNFまたはニュールツリンを含む神経保護タンパク質の発現)を含む他の神経障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0009】
したがって、中枢神経系(CNS)の疾患、例えばそれに関連する1つまたは複数の症状の、防止、阻害、および/または処置を、それを必要とする哺乳動物において行うための方法を記載する。本方法では、処置を必要とする哺乳動物のCNSに、遺伝子産物、例えば治療用遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレームを含む有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む組成物を送達する。rAAVベクターがコードしうるターゲット遺伝子産物としては、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、ヘパラン硫酸スルファターゼ、N-アセチル-アルファ-D-グルコサミニダーゼ、ベータ-ヘキソサミニダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、またはグルコセレブロシダーゼ、ならびに本明細書において上記に開示されるものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。本明細書に開示する方法で防止、阻害または処置することができる疾患としては、ムコ多糖症I型障害、ムコ多糖症II型障害、またはムコ多糖症VII型障害、ならびに上記に列挙される障害が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。AAVベクターは、それがCNS/脳に送達されること、および導入遺伝子が対象のCNS/脳にうまく形質導入されることを保証するために、さまざまな方法で投与することができる。CNS/脳への送達経路としては、髄腔内投与、頭蓋内投与、例えば脳室内投与または側脳室投与、鼻腔内投与、血管内投与、および実質内投与が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0010】
一態様において、本方法では、遺伝子をコードするオープンリーディングフレームを含む有効量のrAAV血清型9(rAAV9)ベクターを含む組成物を、処置を必要とする成体哺乳動物のCNSに送達する。一態様において、本方法では、IDUAをコードするオープンリーディングフレームを含む有効量のrAAV9ベクターを含む組成物を、処置を必要とする成体哺乳動物のCNSに送達する。これらの方法は、AAV9ベクターが成体対象の脳/CNSに治療用導入遺伝子を効率よく形質導入して、酵素レベルを野生型のレベルまで回復させることができるという発見に一部基づいている(図15、下記参照)。成体マウスにおけるAAV9の脈管内(intravascular)送達では広範な直接的神経ターゲティングが達成されないことを実証した以前の研究(Foust et al., 2009参照)や、成体IDUA欠損マウスのCNSへのAAV8-IDUAの直接注射では十分な導入遺伝子発現が得られなかったことを示す追加データ(図18)を考慮すると、AAV9を使って達成された結果は意外である。本明細書に記載する実施例では、リソソーム酵素であるアルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)の欠損が引き起こす遺伝性代謝障害であるMPS1の処置に関する前臨床モデルを使用する。これらの実施例は、免疫適格性の成体IDUA欠損マウスのCNSへのAAV9-IDUAの直接適用が、野生型成体マウスにおけるIDUA酵素の発現および活性と同じかそれを上回るIDUA酵素の発現および活性をもたらしたことを実証している(図15、下記参照)。
(【0011】以降は省略されています)
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