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公開番号2024135725
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-04
出願番号2023046557
出願日2023-03-23
発明の名称パイロクロア酸化物粉体
出願人学校法人同志社,DOWAホールディングス株式会社
代理人個人
主分類C01G 55/00 20060101AFI20240927BHJP(無機化学)
要約【課題】液状媒体中での分散性向上に有利な粒度分布にコントロールされており、かつ不純物相の混在が顕著に低減されているビスマス-ルテニウム-酸素型パイロクロア酸化物粉体を提供する。
【解決手段】ビスマス-ルテニウム-酸素型パイロクロア酸化物の結晶構造を有し、金属元素としてビスマスおよびルテニウム、またはビスマス、ルテニウムおよびマンガンを含む粒子で構成される粉体であって、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が3.0μm以下であり、X線回折パターンにおいて前記パイロクロア酸化物の結晶構造とは異なるビスマス含有相が検出されない、パイロクロア酸化物粉体。
【選択図】図9
特許請求の範囲【請求項1】
ビスマス-ルテニウム-酸素型パイロクロア酸化物の結晶構造を有し、金属元素としてビスマスおよびルテニウム、またはビスマス、ルテニウムおよびマンガンを含む粒子で構成される粉体であって、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒度分布における累積50%粒子径D50が3.0μm以下であり、X線回折パターンにおいて前記パイロクロア酸化物の結晶構造とは異なるビスマス含有相が検出されない、パイロクロア酸化物粉体。
続きを表示(約 94 文字)【請求項2】
ルテニウムとマンガンの合計量に対するマンガン量の原子割合を表すMn/(Ru+Mn)原子比が0以上0.35以下である、請求項1に記載のパイロクロア酸化物粉体。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス(Bi)-ルテニウム(Ru)-酸素(O)型パイロクロア酸化物の結晶構造を有し、その構成金属元素としてビスマスおよびルテニウム、またはビスマス、ルテニウムおよびマンガン(Mn)を含有するパイロクロア酸化物(以下、この種の複合酸化物を「BRO酸化物」と言うことがある。)の粉体に関するものである。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
BRO酸化物は、空気二次電池や水の電気分解による水素製造プロセスなどに用いる正極触媒としての応用が期待される物質である。
【0003】
特許文献1には、マンガンを含有するBRO酸化物触媒が記載されている(請求項1)。マンガンの含有により触媒活性向上などの効果が得られるという。その酸化物触媒の特性評価実験では、原料物質の金属塩を所定割合で含む水溶液にNaOH水溶液を添加し、75℃で酸素を通気しながら24時間撹拌する酸化反応により得られた生成物を乾燥させ、600℃で焼成し、蒸留水を用いて吸引濾過したのち乾燥させる手法により得られた物質が試料として使用されている(段落0027、0041)。段落0027および表2の記載によると、水溶液中への原料物質の配合割合におけるBi/(Ru+Mn)原子比は、0.82(実施例1)、0.93(実施例2、3)、1.00(実施例4~6)と算出される。
【0004】
特許文献2~5には、BRO酸化物触媒およびそれを用いた空気二次電池が記載されている。
特許文献2の開示によると、BRO酸化物の製造過程で形成された副生成物中の金属成分(主にビスマス)が上記電池の充放電サイクルで溶解析出反応を起こして極板上でデンドライト成長し、これが微小短絡を発生させて電池性能や電池寿命を低下させる問題があるという(段落0012)。この副生成物を除去するために(段落0030参照)、特許文献2に開示の製法では、BRO酸化物である焼成物の水洗・乾燥品に、硝酸水溶液に浸漬する酸処理を施している(段落0051~0053)。焼成前の反応に用いる初期の水溶液の調製において、ビスマス含有塩とルテニウム含有塩を同じ濃度となるように投入することが記載されている(段落0051、0077)。
【0005】
特許文献3では、空気二次電池の更なるエネルギー効率の向上や高出力化のために(段落0009参照)、二次熱処理を行って触媒の表面にルテニウム酸化物を形成させる手法を採用している(段落0053~0056)。二次熱処理に供するBRO酸化物の水洗・乾燥品を得る工程では、特許文献2と同様、副生成物を除去するために硝酸水溶液に浸漬する酸処理が施される(段落0052)。特許文献3でも、焼成前の反応に用いる初期の水溶液の調製において、ビスマス含有塩とルテニウム含有塩は同じ濃度となるように投入される(段落0045、0082)。
【0006】
特許文献4に開示のBRO酸化物触媒の製造プロセスにおいても、特許文献2と同様、副生成物を除去するために硝酸水溶液に浸漬する酸処理が施され(段落0041~0043)、焼成前の反応に用いる初期の水溶液の調製においてはビスマス含有塩とルテニウム含有塩は同じ濃度となるように投入される(段落0040、0065)。
【0007】
特許文献5では、空気二次電池の更なるエネルギー効率の向上や高出力化のために(段落0012参照)、粉末状の前駆体に水酸化ナトリウム水溶液を加えて乾燥させたのち、焼成を行う手法を採用している(段落0046~0047)。その製造プロセスにおいても、特許文献2と同様、副生成物を除去するために硝酸水溶液に浸漬する酸処理が施され(段落0041~0043)、焼成前の反応に用いる初期の水溶液の調製においてはビスマス含有塩とルテニウム含有塩は同じ濃度となるように投入される(段落0046、0074)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
国際公開第2020/153401号
特開2019-179592号公報
特開2020-80291号公報
特開2020-126754号公報
特開2021-99914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2~5に記載されるように、BRO酸化物の製造プロセスで生成する、原料金属(ビスマスなど)を含む副生成物は、そのBRO酸化物を触媒として使用した二次電池の性能や寿命を低下させる要因となる。上記のような副生成物が触媒物質中へ残留することを抑制するためには、合成されたBRO酸化物を硝酸水溶液に浸漬するといった酸洗処理に供する必要があった。酸洗処理工程の追加は、環境負荷やBRO酸化物触媒の製造コストを引き上げる要因となる。
【0010】
BRO酸化物を電気化学反応に係る触媒用途として利用するためには、多くの場合、BRO酸化物の粉体製品を所定の液状媒体中に分散させて懸濁液やペーストを作り、導電体上に担持する工程を経る。このときBRO酸化物は電気化学反応に係る物質(電解液や酸素ガスなど)と接触することで触媒活性を示しうる。そのため、それらの物質との接触面積が大きい程より高い触媒活性を示すことが期待されることから、BRO酸化物の比表面積は大きい方が好ましい。BRO酸化物の粉体粒子は通常、多くの一次粒子が凝集した二次粒子として存在する。一般的に、粉体粒子の比表面積を向上させる手法の一つとして、粉体粒子の粒子サイズ(二次粒子径)を低減することが有効である。また、二次粒子径を低減することは、液状媒体中でのBRO酸化物の分散安定性(液用媒体を静置したとき、粒子が小さいほど沈降せずに分散状態を維持する)につながることも期待されるため、製造上も有利となる。
(【0011】以降は省略されています)

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