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公開番号2024118969
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-02
出願番号2023025592
出願日2023-02-21
発明の名称白金族金属の固液抽出剤
出願人国立大学法人九州大学
代理人弁理士法人アルガ特許事務所
主分類C22B 11/00 20060101AFI20240826BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】高濃度の無機酸を使用せず、自動車触媒などのPGMs含有固体物品又は固体組成物から、直接PGMsを効率よく抽出できる固液抽出剤及び当該抽出剤を用いる抽出方法を提供すること。
【解決手段】(a)疎水性深共晶溶媒を含有する白金族金属の固液抽出剤、及び当該抽出剤を用いる白金族金属の固液抽出方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
(a)疎水性深共晶溶媒を含有する白金族金属の固液抽出剤。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
(a)疎水性深共晶溶媒が、疎水性基を有する水素結合アクセプター及び疎水性基を有する水素結合ドナーの混合物である請求項1記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項3】
前記疎水性基を有する水素結合アクセプターが、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するホスホニウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するアンモニウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するスルホニウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するイミダゾリウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するピラゾリウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するピリジニウム化合物及び炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するピロリジニウム化合物から選ばれる化合物である請求項2記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項4】
前記疎水性基を有する水素結合ドナーが、炭素数6~30の炭化水素基を有する有機酸及び炭素数6~30の炭化水素基を有するアルコールから選ばれる化合物である請求項2記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項5】
さらに、(b)炭素数1~4の有機酸及び(c)ハロゲン化剤から選ばれる1種以上を含有する請求項1記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項6】
(b)炭素数1~4の有機酸及び(c)ハロゲン化剤を含有する請求項5記載の白金族金属の固液抽出剤
【請求項7】
(b)炭素数1~4の有機酸が、ギ酸、炭素数2~4の脂肪酸及び炭素数1~4のアルカンスルホン酸から選ばれる1種以上である請求項5記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項8】
(c)ハロゲン化剤が、トリハロゲノシアヌル酸、N-ハロゲノジカルボン酸イミド化合物、N,N-ジハロゲノスルホンアミド化合物、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化スルフリル、ハロゲン化リン、酸ハロゲン化物、ジハロゲノシアヌル酸、モノハロゲノシアヌル酸、トリハロゲノイソシアヌル酸、ジハロゲノイソシアヌル酸、モノハロゲノイソシアヌル酸及びシリルハライド化合物から選ばれる1種以上である請求項5記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項9】
(b)炭素数1~4の有機酸の添加量が、白金族金属の固液抽出剤に対して5.0質量%以上である請求項5記載の白金族金属の固液抽出剤。
【請求項10】
(c)ハロゲン化剤の添加量が、白金族金属の固液抽出剤に対して1.0質量%以上である請求項5記載の白金族金属の固液抽出剤。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族金属の固液抽出剤及び白金族金属の固液抽出方法に関する。
続きを表示(約 5,300 文字)【背景技術】
【0002】
白金族金属(Platinum Group Metals=PGMs)は資源量が限られており、かつ産出地が偏在しているため、自動車触媒などの2次資源からPGMsをリサイクルすることが求められている。自動車触媒とは自動車の排気ガスを無害化する装置のことであり、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などのPGMsを含む(非特許文献1)。さらに、天然の鉱石には1kgあたりわずか0.005gのPGMsが含まれる一方で、自動車触媒には1kgあたり5gものPGMsが含まれているため、自動車触媒は鉱石と比べて1000倍の品位を有する極めて有用な資源とみなすことができる。
【0003】
PGMsのリサイクル手段としては、従来、湿式製錬法が採用されている。湿式製錬法では、高濃度の無機酸によって自動車触媒に含まれる金属を固相から水相中に溶かし出し、その後、有機溶媒を使った溶媒抽出などにより目的金属をそれぞれ個別に回収する。この方法では高純度のPGMsが得られるが、重金属を含む大量の酸廃水や、溶媒抽出の際に使用される揮発性の高い有機溶媒の環境負荷が大きい(非特許文献2)。また、抽出剤の再利用は困難である。このような背景から、大量の酸廃液を排出せず、揮発性有機溶媒を使わない、新たなPGMsのリサイクル方法が求められている。
【0004】
高濃度の無機酸を使用しないPGMsの浸出手段として、イオン液体を採用することが報告されている(非特許文献3、4)。また、最近、塩化コリンを含む深共晶溶媒と硝酸、過酸化水素など無機酸化剤とを用いて使用済み自動車触媒からPGMsを回収する技術(非特許文献5)、PGMsを含有する塩酸溶液から、第4級アンモニウム塩とカルボン酸からなる深共晶溶媒を用いてPGMsを抽出する技術(非特許文献6)が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Sun S,et al.,Journal of Environmental Management(2022),305
Karim S,et al.,Resources,Conservation and Recycling,(2021),170
Binnemans et al.,Green Chem.,2018,20,3327-3338
Binnemans et al.,RSC Adv.,2021,11,10110-10120
Bica-Schroder.,Green Chemistry Letters and Reviews,Vol.15,2022(2),405-415
O.Mokhodoeva et al,Separation and Purification Technology 305(2023)122427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記イオン液体によるPGMsの浸出手段では、種々のイオン液体に気体の塩素、ヨウ素、臭素等を吹き込んで溶解させた浸出溶媒を使用しており、Pdは溶解できたがPtなどが溶解できないなどPGMsの浸出は十分にできていない。また、非特許文献5の塩化コリンを含む深共晶溶媒と無機酸化剤を使用する手段では、PGMsの抽出効率はそれほど高くなく、特にRhの抽出効率は低いものであり、さらにPGMs以外の金属も抽出されてしまうという欠点がある。また、非特許文献6の技術は、予め塩酸水溶液に溶解されたPGMsを深共晶溶媒で抽出しており、PGMsを含む固体から直接抽出している技術ではない。
従って、本発明の課題は、高濃度の無機酸を使用せず、自動車触媒などのPGMs含有固体物品又は固体組成物から、直接PGMsを効率よく抽出できる固液抽出剤及び当該抽出剤を用いる抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、種々の深共晶溶媒を用いてPGMsの選択的抽出効果を検討してきたところ、全く以外にも、塩化コリンのような親水性水素結合アクセプターでなく、長鎖アルキル基に代表される疎水性基を有する水素結合アクセプターと疎水性水素結合ドナーとを組み合わせた疎水性深部共晶溶媒を用いれば、自動車触媒などのPGMs含有固体物品又は固体組成物から、直接PGMsを効率よくかつ選択的に抽出できること、さらには当該疎水性深部共晶溶媒に炭素数1~4の有機酸及び/又はハロゲン化剤を組み合わせれば、さらにPGMsの抽出効率及び選択性が顕著に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[13]を提供するものである。
[1](a)疎水性深共晶溶媒を含有する白金族金属の固液抽出剤。
[2](a)疎水性深共晶溶媒が、疎水性基を有する水素結合アクセプター及び疎水性基を有する水素結合ドナーの混合物である[1]記載の白金族金属の固液抽出剤。
[3]前記疎水性基を有する水素結合アクセプターが、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するホスホニウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するアンモニウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するスルホニウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するイミダゾリウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するピラゾリウム化合物、炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するピリジニウム化合物及び炭素数6~30の炭化水素基を少なくとも1個有するピロリジニウム化合物から選ばれる化合物である[1]又は[2]記載の白金族金属の固液抽出剤。
[4]前記疎水性基を有する水素結合ドナーが、炭素数6~30の炭化水素基を有する有機酸及び炭素数6~30の炭化水素基を有するアルコールから選ばれる化合物である[3]記載の白金族金属の固液抽出剤。
[5]さらに、(b)炭素数1~4の有機酸及び(c)ハロゲン化剤から選ばれる1種以上を含有する[1]~[4]のいずれかに記載の白金族金属の固液抽出剤。
[6](b)炭素数1~4の有機酸及び(c)ハロゲン化剤を含有する[5]記載の白金族金属の固液抽出剤
[7](b)炭素数1~4の有機酸が、ギ酸、炭素数2~4の脂肪酸及び炭素数1~4のアルカンスルホン酸から選ばれる1種以上である[5]又は[6]記載の白金族金属の固液抽出剤。
[8](c)ハロゲン化剤が、トリハロゲノシアヌル酸、N-ハロゲノジカルボン酸イミド化合物、N,N-ジハロゲノスルホンアミド化合物、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化スルフリル、ハロゲン化リン、酸ハロゲン化物、ジハロゲノシアヌル酸、モノハロゲノシアヌル酸、トリハロゲノイソシアヌル酸、ジハロゲノイソシアヌル酸、モノハロゲノイソシアヌル酸及びシリルハライド化合物から選ばれる1種以上である[5]~[7]のいずれかに記載の白金族金属の固液抽出剤。
[9](b)炭素数1~4の有機酸の添加量が、白金族金属の固液抽出剤に対して5.0質量%以上である[5]~[8]のいずれかに記載の白金族金属の固液抽出剤。
[10](c)ハロゲン化剤の添加量が、白金族金属の固液抽出剤に対して1.0質量%以上である[5]~[9]記載の白金族金属の固液抽出剤。
[11]さらに、(d)無極性有機溶媒を含有する[1]記載の白金族金属の固液抽出剤。
[12]白金族金属化合物及び他の金属化合物を含有する固体物品又は固体組成物の粉砕物に[1]~[11]のいずれかに記載の白金族金属の固液抽出剤を添加して白金族金属を当該抽出剤中に浸出させることを特徴とする白金族金属の固液抽出方法。
[13]白金族金属化合物及び他の金属化合物を含有する固体物品又は固体組成物の粉砕物に[1]~[11]のいずれかに記載の白金族金属の固液抽出剤を添加して白金族金属を当該抽出剤中に浸出させる工程、及び得られた浸出液から各白金族金属をそれぞれ抽出する工程、を有する白金族金属の回収方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPGMsの固液抽出剤を用いれば、高濃度の無機酸を使用せず、自動車触媒などのPGMs含有固体物品又は固体組成物から、直接PGMsを効率よく抽出できる。特に、(a)疎水性深共晶溶媒、(b)炭素数1~4の有機酸及び(c)ハロゲン化剤を含有するPGMsの固液抽出剤を用いれば、直接PGMsを選択的かつ効率よく抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
自動車触媒を粉砕した状態を示す図である。
Pt粉末から、疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)にTCCA(5.3質量%)及び/又はMSA(13.8質量%)を添加した固液抽出剤(0.5g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)にTCCA(5.3質量%又は0質量%)及び/又はMSA(13.8質量%又は0質量%)を添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
従来法[5M HCl+5%H
2

2
]と本発明方法[疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)にTCCA(5.3質量%)及び/又はMSA(13.8質量%)を添加した固液抽出剤(50g/L)]による、自動車触媒からPGMsの抽出結果の比較を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)にTCCA(0質量%~10.1質量%)及びMSA(2.9質量%~26.7質量%)を添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)に種々の塩素化剤(TCCA、N-クロロフタルイミド(NCl)又はジクロラミンB(GB)1.4質量%)及びMSA(7.1質量%)を添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)にTCCA(1.4質量%)及び種々の脂肪酸(MSA又はギ酸)7.1質量%を添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、P6Cl/decAの比を変化させた疎水性DESにTCCA(1.4質量%)及びMSA(7.1質量%)を添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、疎水性DESの水素結合ドナーを変化させたDES(オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ドデカノール(C10(OH))にTCCA(1.4質量%)及びMSA(7.1質量%)を添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
自動車触媒粉砕物から、疎水性DES(P6Cl/decA=1/2)にTCCA(1.4質量%)及びMSA(7.1質量%)に加えて、有機溶媒(トルエン又はドデカン)をDES1質量部に対して2質量部添加した固液抽出剤(50g/L)を用いて抽出した(80℃、400rpm、24h)結果を示す図である。
本発明方法により得られた自動車触媒浸出液から、各PGMsを回収する手順を示す図である。
自動車触媒浸出液からAl及びLaの水相への回収率を示す図である。
自動車触媒浸出液からAl及びLaを除去した後の浸出液から、5M NH
4
Cl水溶液相へのRhの回収率を示す図である。
自動車触媒浸出液からAl、La及びRhを除去した後の浸出液から、0.005M チオ尿素水溶液相へのPdの回収率を示す図である。
自動車触媒浸出液からAl、La、Rh及びPdを除去した後の浸出液から、10M NH
4
NO
3
水溶液相へのPdの回収率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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