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公開番号2024118117
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-30
出願番号2023024366
出願日2023-02-20
発明の名称蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置
出願人国立大学法人 大分大学,日本分光株式会社
代理人個人,個人
主分類G01N 21/64 20060101AFI20240823BHJP(測定;試験)
要約【課題】蛍光異方性のある試料に適した蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置の提供。
【解決手段】FDCD測定装置は、単一波長光の光照射部と、照射側の偏光変調部14と、偏光変調部14からの垂直に進行する変調偏光の光路上に試料24を設置する回転試料台18と、試料24からの蛍光を水平方向から検出する光検出器40とを備える。この検出方向は、水平で、直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向である。また、CPL測定装置は、単一波長光の光照射部と、無偏光子と、無偏光子からの垂直に進行する単一波長光の光路上に試料を設置する回転試料台と、試料からの蛍光を水平方向から捉える検出側の偏光変調部と、分光器と、光検出器とを備える。検出側の偏光変調部が蛍光を捉える方向は、水平で、試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最小になる方向である。
【選択図】 図2
特許請求の範囲【請求項1】
試料の蛍光検出円二色性(FDCD)を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を変調する照射側の偏光変調部と、
前記偏光変調部からの変調偏光の進行方向は垂直であり、該変調偏光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記変調偏光の照射によって前記試料から生じる蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光変調部は、前記単一波長光に含まれる所定の直線偏光を選択し、該直線偏光を変調することで、該直線偏光を中心に左右の円偏光が交互に生じるように構成され、
前記光検出器の検出方向は、水平、かつ、前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向に設定されている、ことを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
続きを表示(約 1,300 文字)【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、前記光検出器の検出方向は、前記水平かつ前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度を基準に、前記試料を通る垂直軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定され、
前記45°を成す角度を中心とする前記±45°の範囲内で前記検出方向を調整する角度調整部を備えることを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
【請求項3】
試料の円偏光蛍光(CPL)を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を無偏光にする無偏光部と、
前記無偏光部からの無偏光の単一波長光の進行方向は垂直であり、該単一波長光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記単一波長光の照射によって前記試料から生じる蛍光の偏光状態を変調する検出側の偏光変調部と、
前記検出側の偏光変調部からの前記蛍光を分光する検出側の分光器と、
分光された蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、水平、かつ、前記試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定されている、ことを特徴とする円偏光蛍光測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の測定装置において、水平かつ前記試料を通る垂直軸周りに少なくとも90°の範囲内で、前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向を調整する角度調整部を備えることを特徴とする円偏光蛍光測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置は、さらに前記試料の円偏光蛍光(CPL)を測定するための構成として、
前記光照射部からの前記単一波長光の偏光状態を無偏光にする無偏光部と、
前記無偏光の単一波長光の照射によって前記試料から生じる蛍光の偏光状態を変調する検出側の偏光変調部と、
前記検出側の偏光変調部からの前記蛍光を分光する検出側の分光器と、
分光された蛍光を検出するCPL測定用の光検出器と、を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、前記FDCD測定用の光検出器の前記検出方向とは異なる方向であり、水平、かつ、前記試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定されている、ことを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の測定装置において、
前記FDCD測定用の光検出器の検出方向は、前記水平かつ前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度を基準に、前記試料を通る垂直軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定され、
前記45°を成す角度を中心とする前記±45°の範囲内で前記検出方向を調整する角度調整部を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、前記角度調整部によって、前記FDCD測定用の光検出器の前記検出方向と一体で調整されることを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置、および、円偏光蛍光(CPL)測定装置に関する。
続きを表示(約 2,100 文字)【背景技術】
【0002】
物質の円二色性スペクトルを測定することは、その物質の光学的特性及びその他の情報を調べる上で重要である。特に、蛋白質などの生体高分子に代表される自己組織化する試料において、分子レベルでの配列、配向を調べる上で重要な測定である。自己組織化する試料の一部はゲル状であり、例えば特許文献1には、ゲル状の試料を対象とする円二色性(CD)測定装置が開示されている。ゲル状の試料を「垂直」に設置し、光を「水平」に透過させると、重力の影響で試料に鉛直方向の密度勾配や厚さ勾配が生じてしまい、これらの勾配によって直線二色性や直線複屈折等の信号が生じ、測定誤差を招いていた。そこで、特許文献1では、ゲル状の試料を「水平」な試料台に設置し、光を「鉛直」に透過させる光学配置を採用することで、重力場の影響を大きく受ける試料に対しても、正確な測定を行うことを可能にしている。
【0003】
円二色性の物質が蛍光を発する場合、その発光過程での円二色性を解析する手法の1つに「蛍光検出円二色性(FDCD)測定法」がある。
【0004】
FDCD測定法は、CD測定法と同様に、光弾性変調器(PEM)による左右の円偏光を交互に試料に照射して、試料に左右の円偏光に対する不等吸収を生じさせる。CD測定法では、試料からの透過光の光路上に検出器を設置するのに対し、FDCD測定法では、透過光に直交する方向に検出器を設置する場合が多い(例えば特許文献2)。左右の円偏光に対する不等吸収に伴って発生する蛍光には強弱の波が生じるので、この蛍光を検出することで円二色性の励起スペクトルを得る。FDCD測定法は、CD測定法に比べて、好適な試料では数十倍の高感度測定が可能であるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2004-347412号公報
特開平11-23466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2のFDCD測定では、対象が試料溶液、つまり、試料を溶媒に溶解させて作成する溶液であり、蛍光異方性を示さない試料が前提になっている。蛍光異方性は、円二色性等のキラリティとは別の光学特性であり、蛍光異方性のある試料をFDCD測定する際は、検出する蛍光強度が蛍光異方性(光選択性とも呼ぶ。)の影響を受けないようにする必要がある。一般的に、蛍光検出における試料の蛍光異方性に起因するアーティファクトを除去するために、試料と検出器の間に偏光板やマスクを設置することがあるが、偏光板やマスクの使用は、検出器に到達できる蛍光の強度が減衰して検出感度の低下を伴うため、FDCD測定ではこれらを使用しない方が好ましい。
【0007】
蛍光試料は、遷移双極子モーメントに沿った方向の偏光をよく吸収し、遷移双極子モーメントの方向の偏光を放出することから、遷移双極子モーメントの向きが偏っていると、蛍光異方性が大きくなる。このため、FDCD測定法と同様に、蛍光試料の発光過程での円二色性を解析する手法である「円偏光蛍光(CPL)測定法」においても、蛍光異方性のある試料を測定する際に、検出する蛍光強度が蛍光異方性の影響を受けないようにする必要がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、蛍光異方性のある試料の測定に適した蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、発明者らは、FDCD測定およびCPL測定の際、試料に対して照射光を鉛直方向から当てるとともに、試料からの蛍光の検出方向を水平方向にとって、その検出方向を水平方向のまま、試料に対して様々な角度方向に調整できるようにしたところ、試料の蛍光異方性の影響を最も受けずにFDCDおよびCPLを測定することが可能な光検出器の検出方向(マジック角とも呼ぶ)を見つけることができ、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明の蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置は、
試料の蛍光検出円二色性を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を変調する照射側の偏光変調部と、
前記偏光変調部からの変調偏光の進行方向は垂直であり、該変調偏光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記変調偏光の照射によって前記試料から生じる蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光変調部は、前記単一波長光に含まれる所定の直線偏光を選択し、該直線偏光を変調することで、該直線偏光を中心に左右の円偏光が交互に生じるように構成され、
前記光検出器の検出方向は、水平、かつ、前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向に設定されている、ことを特徴とする。
(【0011】以降は省略されています)

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