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公開番号2024041956
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-03-27
出願番号2024005427,2020532521
出願日2024-01-17,2019-07-26
発明の名称動物細胞の浮遊培養用の添加物、浮遊培養用培地および浮遊培養方法
出願人味の素株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類C12N 5/02 20060101AFI20240319BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】動物細胞を研究、物質生産、医療などに応用するために、効率よく増殖させる培養方法を提供する。
【解決手段】インスリンを含有する幹細胞の浮遊培養用培地にて、攪拌、振とう、還流または気体通気を行って幹細胞を浮遊培養することを含む幹細胞の浮遊培養において、攪拌、振とう、還流または気体通気による培地中のインスリンの析出を抑制するために、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上を使用する方法を提供する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
インスリンを含有する幹細胞の浮遊培養用培地にて、攪拌、振とう、還流または気体通気を行って幹細胞を浮遊培養することを含む幹細胞の浮遊培養において、攪拌、振とう、還流または気体通気による培地中のインスリンの析出を抑制するために、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上を使用する方法。
続きを表示(約 620 文字)【請求項2】
幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
幹細胞の浮遊培養用培地が、幹細胞を未分化の状態で維持するための維持培地である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
幹細胞の浮遊培養用培地が、幹細胞の分化を誘導する分化誘導培地である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
幹細胞の浮遊培養用培地がフィーダーフリー培地である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
幹細胞の浮遊培養用培地が無血清培地または低アルブミン培地である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
幹細胞の浮遊培養用培地がゼノフリー培地である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上が、培養時における終濃度として0.1μg/mL~10mg/mLの濃度となるように添加される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
細胞塊を形成させて幹細胞を浮遊培養する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、動物細胞の浮遊培養用の添加物、浮遊培養用培地、および浮遊培養方法に関する。
続きを表示(約 4,300 文字)【背景技術】
【0002】
胚性幹細胞、人工多能性幹細胞等の幹細胞をはじめ、多くの動物細胞は、マトリジェルや、ビトロネクチン、ラミニン等のヒト型リコンビナントのマトリックス等を足場材料として使用した接着培養により、増殖維持されてきた。
しかし、動物細胞を研究、物質生産、医療などに応用するために、効率よく増殖させる培養方法が求められている。動物細胞を大量に培養する方法としては、撹拌羽根で撹拌して浮遊培養する手法、ペリスタルティックポンプを用いて培地を還流させて培養する手法、底面よりスパージャーを用いて気体通気を行いながら培養する手法などが広く用いられている。
また、多くの動物細胞の培養において、未知の因子やプリオン、ウイルス等が含まれる可能性のある血清を含有しない無血清培地や、アルブミン含有量の少ない低アルブミン培地が用いられるが、かかる培地を用いて、上記のような撹拌等を伴う浮遊培養を行うと、培地中に析出を生じることが報告されており、該析出物は、無血清培地や低アルブミン培地に、細胞の成長に必要な因子として添加されたインスリンが、撹拌、還流、気体通気などによる物理的な刺激により析出したのではないかと考察されている(非特許文献1)。
かかる培地成分の析出が生じると細胞の増殖率が低下するため、効率的な動物細胞の培養を行うためには、そのような析出を抑制することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
D. Massai et al., Sci. Rep. 7 3950 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記状況のもとになされた。本発明者らは、無血清培地や低アルブミン培地を用いた浮遊培養において、物理的刺激により生じる析出物がインスリンであることを、マトリックス支援レーザー-脱離イオン化法-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)により確認した。
従って、本発明の目的は、動物細胞の浮遊培養において、撹拌、振とう、還流、気体通気等の物理的刺激によるインスリン等の培地成分の析出を抑制し、動物細胞の培養効率および培養細胞の品質を向上させ得る動物細胞の浮遊培養用の添加物、浮遊培養用培地、および浮遊培養方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、インスリン等を含有する動物細胞の浮遊培養用培地に、水溶性ポリマーを添加することにより、物理的刺激により生じるインスリン等の培地成分の析出を良好に抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]水溶性ポリマーを含有する、動物細胞の浮遊培養用添加物。
[2]水溶性ポリマーが、界面活性を有する非イオン性の水溶性ポリマーである、[1]に記載の添加物。
[3]界面活性を有する非イオン性の水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上である、[2]に記載の添加物。
[4]動物細胞が幹細胞である、[1]~[3]のいずれかに記載の添加物。
[5]幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群より選択される1種または2種以上である、[4]に記載の添加物。
[6]培地成分の析出を抑制するための添加物である、[1]~[5]のいずれかに記載の添加物。
[7]培地成分がインスリンである、[6]に記載の添加物。
[8]水溶性ポリマーを含有する、動物細胞の浮遊培養用培地。
[9]水溶性ポリマーが、界面活性を有する非イオン性の水溶性ポリマーである、[8]に記載の培地。
[10]界面活性を有する非イオン性の水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上である、[9]に記載の培地。
[11]幹細胞の浮遊培養用である、[8]~[10]のいずれかに記載の培地。
[12]幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群より選択される1種または2種以上である、[11]に記載の培地。
[13]培地成分の析出が抑制されている、[8]~[12]のいずれかに記載の培地。
[14]培地成分がインスリンである、[13]に記載の培地。
[15]水溶性ポリマーを含有する培地にて動物細胞を浮遊培養することを含む、動物細胞の浮遊培養方法。
[16]水溶性ポリマーが、界面活性を有する非イオン性の水溶性ポリマーである、[15]に記載の培養方法。
[17]界面活性を有する非イオン性の水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルからなる群より選択される1種または2種以上である、[16]に記載の培養方法。
[18]動物細胞が幹細胞である、[15]~[17]のいずれかに記載の培養方法。
[19]幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群より選択される1種または2種以上である、[18]に記載の培養方法。
[20]撹拌、振とう、還流または気体通気を行って浮遊培養する、[15]~[19]のいずれかに記載の培養方法。
[21]培地成分の析出が抑制された培地にて動物細胞を浮遊培養する、[15]~[20]のいずれかに記載の培養方法。
[22]培地成分がインスリンである、[21]に記載の培養方法。
[23]細胞塊を形成させて動物細胞を浮遊培養する、[15]~[22]のいずれかに記載の培養方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、インスリン等を含有する動物細胞の浮遊培養用培地に添加することにより、撹拌、振とう、還流、気体通気等の物理的刺激により生じるインスリン等の培地成分の析出を良好に抑制することのできる添加物を提供することができる。
また、本発明により、インスリン等を含有する動物細胞の浮遊培養用培地であって、撹拌、振とう、還流、気体通気等の物理的刺激が付加されても、インスリン等の培地成分の析出が良好に抑制された動物細胞の浮遊培養用培地を提供することができ、インスリン等を含有する動物細胞の浮遊培養用培地を用いて、撹拌、振とう、還流、気体通気等を行いながら、動物細胞の浮遊培養を行うことができる。
その結果、大きさの制御された細胞塊を効率よく形成させることができ、動物細胞の培養効率および培養細胞の品質を向上させることができる。
特に、幹細胞等の未分化細胞について、維持培地での維持培養時、および分化誘導培地での分化誘導時のいずれにおいても培地成分の析出が抑制され、維持培養時の未分化維持率、分化誘導時の分化率の双方を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は、実施例2において、ポリビニルアルコール(PVA)およびポロキサマー(Kolliphor P188 BIO)の各添加濃度が、インスリンの析出抑制効果に及ぼす影響を示す図である。図中のバーは、500μmを示す。
図2は、実施例3において、ポロキサマー(Kolliphor P188 BIO)の添加濃度が、ヒトiPS細胞の細胞増殖率、細胞生存率および未分化維持率に及ぼす影響を示す図である。
図3は、実施例4において、ポロキサマー(Kolliphor P407)の添加濃度が、ヒトiPS細胞の細胞増殖率に及ぼす影響を示す図である。
図4は、実施例5において、ポリビニルアルコール(PVA)の添加濃度が、ヒトiPS細胞の細胞増殖率に及ぼす影響を示す図である。
図5は、実施例6において、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Kolliphor PS20)の添加濃度が、ヒトiPS細胞の細胞増殖率に及ぼす影響を示す図である。
図6は、実施例7において、撹拌によるインスリンの析出に対するポロキサマー(Kolliphor P188 BIO)の効果を示す図である。図中のバーは、100μmを示す。
図7は、実施例8において、還流によるインスリンの析出に対するポロキサマー(Kolliphor P188 BIO)およびポリビニルアルコール(PVA)の効果を示す図である。上段の図中のバーは、500μmを示す。下段の図は上段の図を拡大した図であり、図中のバーは100μmを示す。
図8は、実施例9において、撹拌によるインスリンの析出に対するポロキサマー(Kolliphor P188 BIO)およびポリビニルアルコール(PVA)の効果を示す図である。図中のバーは500μmを示す。
図9は、実施例10において、ポロキサマー(Kolliphor P188 BIO)の添加が、ヒトiPS細胞の分化誘導に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、インスリン等を含有する動物細胞の浮遊培養用培地に添加される、動物細胞の浮遊培養用の添加物(以下、本明細書にて「本発明の添加物」とも称する)を提供する。
本発明の添加物は、水溶性ポリマーを含有する。
【0010】
本発明において、「水溶性ポリマー」とは、分子内に親水性基を有し、水に混和しまたは溶解するポリマーをいう。本発明においては、25℃における水に対する溶解度が5重量%以上であるものが好ましく用いられる。
また、水溶性ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、通常、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が1,000~100,000程度の水混和性または水溶性を示すポリマーが用いられる。
(【0011】以降は省略されています)

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