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公開番号2024039190
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-03-22
出願番号2022143554
出願日2022-09-09
発明の名称ゲノム編集技術
出願人国立大学法人 東京大学
代理人個人
主分類C12N 15/09 20060101AFI20240314BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明は、同一または類似のタンパク質をコードするDNAが複数存在する場合に、TALEを用いて、当該複数のDNAを改変する方法の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、同一または類似のタンパク質をコードする複数のDNAを改変する方法であって、N、V、H、D、B、R、Y、M、W、SまたはKを認識または許容するアミノ酸で構成されているRVD(repeat variable di-residue)を含むリピート配列を少なくとも1つ含む1種類のTALE-改変因子複合体のTALE部分を、当該複数のDNAの結合領域に結合させることを含む方法である。
【選択図】なし



特許請求の範囲【請求項1】
同一または類似のタンパク質をコードする複数のDNAを改変する方法であって、
N、V、H、D、B、R、Y、M、W、SまたはKを認識または許容するアミノ酸で構成されているRVD(repeat variable di-residue)を含むリピート配列を少なくとも1つ含む1種類のTALE-改変因子複合体のTALE部分を、当該複数のDNAの結合領域に結合させることを含む、前記方法。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
細胞内における同一または類似のタンパク質をコードする複数の遺伝子を改変する方法であって、
N、V、H、D、B、R、Y、M、W、SまたはKを認識または許容するアミノ酸で構成されているRVDを含むリピート配列を少なくとも1つ含む1種類のTALE-改変因子複合体を、細胞内に導入することを含む、前記方法。
【請求項3】
細胞内における同一または類似のタンパク質をコードする複数の遺伝子が改変された細胞の作製方法であって、
N、V、H、D、B、R、Y、M、W、SまたはKを認識または許容するアミノ酸で構成されているRVDを含むリピート配列を少なくとも1つ含む1種類のTALE-改変因子複合体を、細胞内に導入することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記RVDが認識または許容する塩基が、前記複数のDNAまたは遺伝子の塩基配列をアライメントしたときに、同じ位置に存在する塩基の1または複数が他のDNAまたは遺伝子の塩基と異なる塩基である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記RVDのアミノ酸が、
Nを認識または許容するRV、CS、VR、NA、S*、RH、RLもしくはRTで構成されており、
Mを認識するHCもしくはKCで構成されており、
Vを認識するHS、HT、HV、KVもしくはRCで構成されており、または、
RもしくはVを認識するNTで構成されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。ただし、S*の「*」は、RVDの第2位値がギャップであることを示す。
【請求項6】
前記改変因子が、エンドヌクレアーゼの全部もしくは一部、デアミナーゼの全部もしくは一部である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子が、核遺伝子、ミトコンドリア遺伝子または色素体遺伝子である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が植物細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が植物細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法で作製された植物細胞。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、TALE(transcription activator-like effector)を用いたゲノム編集技術に関する。
続きを表示(約 4,200 文字)【背景技術】
【0002】
TALEは、植物病原細菌のキサントモナス(
Xanthomonas
)が宿主である植物に感染した際に、宿主細胞内に導入される転写因子として同定された。TALEが宿主細胞内に導入されると、当該細胞内における転写を制御し、免疫応答の抑制やキサントモナスの増殖に適した環境を誘導する機能を有している(非特許文献1、非特許文献2)。TALEのDNA結合ドメインは、約34アミノ酸残基からなるアミノ酸のリピート(繰り返し)配列がタンデムに10~30個配置された構造を有しており、ゲノム上の標的塩基配列に結合する。約34アミノ酸からなるリピート配列を構成するアミノ酸配列中には、Repeat Variable Diresidue(RVD)と称される2アミノ酸残基からなる可変領域がある。このRVDを構成する2アミノ酸残基が、標的DNA配列中のどの塩基を認識または許容するかを決定している(非特許文献3、非特許文献4)。RVDは、TALEタンパク質のリピート配列のN端側から、12番目と13番目、または13番目と14番目のアミノ酸がこれに相当する。
【0003】
TALEの特異的なDNA結合性を利用して、これまでにいくつかのゲノム編集ツールが開発されている。例えば、TALEのDNA結合ドメインにエンドヌクレアーゼを連結させた人工のエンドヌクレアーゼは、RVDを所望の塩基配列を認識または許容するようにデザインすることで、配列特異的なエンドヌクレアーゼ、TALEN(transcription activator-like effector nuclease)として使用することができる(例えば、非特許文献5)。また、二重鎖DNAの修飾が可能なシチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase:CD)もしくはアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)とTALEの融合体は、所望の塩基を特異的に改変[CDはC(シトシン)をU(ウリジン)、ADAはA(アデニン)をI(イノシン)に改変]するために使用することができる(非特許文献7、非特許文献12、特許文献1)。
【0004】
TALEを用いたゲノム編集ツールは、その後も様々な改良が行われてきた。TALENが開発された当初は、TALENのヌクレアーゼドメインとして、二量体化することでヌクレアーゼ活性を示すFokIのDNA切断ドメインが用いられていたため、センス鎖およびアンチセンス鎖の各々に結合する1対のTALENを準備する必要があった。その後、FokIヌクレアーゼドメインに替えて、バクテリオファージ由来のI-TevIの触媒領域をTALEに連結させることで、単量体で標的配列を認識および切断できるコンパクトTALENが開発された(非特許文献8、特許文献2)。また、Sakumaらは、TALEのDNA結合モジュールのRVD以外のアミノ酸配列を改変して、従来のTALENよりも高い活性もったTALEN(Platinum TALEN)を開発した(非特許文献9)。その他、TALEのDNAとの結合安定性を向上させるためにRVD領域のアミノ酸の組み合わせに関する報告もいくつか行われている(非特許文献10、非特許文献11、特許文献2)。
【0005】
ゲノム編集技術としては、TALE以外に、CRISPR/Cas9を用いた技術もよく使用されている。CRISPR/Cas9は、20塩基の配列を認識して標的配列の編集を行うが、オフターゲットと呼ばれる標的配列に似た配列を誤って編集することがある。これに対し、TALEは約40塩基の配列を認識するため、オフターゲットの編集は少ない。しかしながら、その反面、TALEを用いた場合には、複数の類似配列を同時に編集することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
WO2022/158561
US20130117869A1
WO2011/072246
【非特許文献】
【0007】
VoytasおよびJoung, Science, 326: 1491-1492 2009
Bogdanoveら, Current Opinion in Plant Biology, 13: 394-401 2010
Bochら, Science, 326: 1509-1512 2009
MoscouおよびBogdanove, Science, 326: 1501 2009
Millerら, Nature Biotechnology, 29: 143-148 2011
Mokら, Nature, 583: 631-637 2020
Mokら, Nature Communications, 13: 4038 doi.org/10.1038/s41467-022-31745-y 2022
Beurdeleyら, Nature Communications, 4: 1762 DOI: 10.1038/ncomms2782 2013
Sakumaら, Scientific Reports, 3: 3379 DOI: 10.1038/strep03379 2013
Congら, Nature Communications, 3: 968 DOI: 10.1038/ncomms1962 2012
Christianら, PLoS One, 7: e45383 2012
Choら, Cell, 185: 1764-1776 2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多くの生物のゲノムには、あるタンパク質をコードする遺伝子は1つだけではなく、複数存在しており、かつ、その塩基配列も完全に同一ではない類似配列であることが多い。例えば、多重遺伝子やコピー遺伝子において、各遺伝子がコードするタンパク質中の同一のアミノ酸に対するコドンの3番目の塩基が、多重遺伝子毎またはコピー遺伝子毎に異なることがしばしば見出されている。また、植物ではゲノムは2 n だけでなく、3 nからそれ以上の多倍数体のものも多く、さらにそれぞれのゲノムに標的遺伝子が複数コードされていることも多い。この機能的冗長性が原因となり、これまでのゲノム編集技術で特定の一つの遺伝子配列をゲノム編集しても、その機能改変の表現型が明確に現れないことが多いという点が問題になっていた。
本発明は、上記事情に鑑み、同一遺伝子または類似遺伝子が複数存在する場合に、TALE(1種類のTALE)を用いて、当該複数の遺伝子を同時に改変するためのゲノム編集技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、Repeat Variable Di-residues(RVD)を特定のアミノ酸の組み合わせに改変したTALE(transcription activator-like effector)を用いて、上記課題の解決を試みた。
多倍数体ゲノムに存在する相同遺伝子(ホモログ)あるいは相似遺伝子(ホメオログ)、遺伝子ファミリーとして存在する遺伝子群は、同様の機能を持つタンパク質をコードする場合でも、同義置換および非同義置換のSNP(Single Nucleotide Polymorphism)により、互いの塩基配列は完全一致しないことがある。そのため、当該遺伝子群の複数の遺伝子の特定の共通領域を、TALEを用いて同時に編集する場合、TALEを結合させる塩基配列中に、当該遺伝子群の各遺伝子間で異なる塩基が存在することがある。このような場合に、当該塩基をA、T、GもしくはCの全ての塩基、または複数の塩基を認識または許容できるRVDを有するTALEを構築すれば、1つのゲノム編集酵素による1回の操作で、同様の機能をもつタンパク質、つまり相同もしくは類似するアミノ酸配列をもつタンパク質をコードする複数遺伝子であって、僅かに塩基配列が相違する複数の遺伝子を同時に改変するゲノム編集が可能となる。
【0010】
シロイヌナズナゲノムのβチューブリン遺伝子
TUB4
は、Ser351Pheを引き起こす塩基置換が生じると、表層細胞列および一次根のねじれの表現型が生じることが知られている(Ishidaら, Proceedings of the National Academy of Sciences, 104:8544-8549 2007)。シロイヌナズナには9つのβチューブリン遺伝子が存在しており、これら9遺伝子全てにおいて、Ser351が保存されている。本発明者らは、nuclear-targeted TALE cytidine deaminase(nTALECD)(WO2022/158561などを参照のこと)を用いて、9遺伝子のうち、
TUB1

TUB2

TUB3
および
TUB4
のSer351をコードするコドン配列に、シトシンからチミンへの塩基置換を導入することにより、351番目のSerをPhe、またはLeuへの変異を引き起こすことを試みた。
TUB1

TUB2

TUB3
および
TUB4
のTALE認識配列(TALE leftのリピート配列が結合する配列)のうち、3箇所の塩基の構成が遺伝子間で異なっていた。そこで、本発明者らは、これらの3箇所の塩基を認識または許容するRVDを、N認識、すなわち、A、T、GまたはCを認識または許容するアミノ酸の組み合わせになるように、TALEドメインを設計した。
(【0011】以降は省略されています)

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