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公開番号2025176117
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-12-03
出願番号2025145433,2022526622
出願日2025-09-02,2021-05-26
発明の名称低免疫原性細胞
出願人株式会社ヘリオス
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 5/10 20060101AFI20251126BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】高機能な低免疫原性ヒト細胞、および低免疫原性ヒト細胞を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、高機能な低免疫原性細胞、即ち、
(1)ヒト白血球型抗原(HLA)クラスIaのα鎖をコードする内在性遺伝子を欠損し、
(2)HLAクラスIIまたはその発現制御因子をコードする内在性遺伝子を欠損し、
(3)HLAクラスIbのα鎖をコードする外来性遺伝子を含み、
(4)ヒトPD-L1をコードする外来性遺伝子を含み、および
(5)ヒトPD-L2をコードする外来性遺伝子を含む
低免疫原性ヒト細胞を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
(1)HLA-Aのα鎖をコードする内在性遺伝子、HLA-Bのα鎖をコードする内在性遺伝子及びHLA-Cのα鎖をコードする内在性遺伝子を欠損し、
(2)HLAクラスIIの発現制御因子をコードする内在性遺伝子を欠損し、
(3)HLA-Gのα鎖をコードする外来性遺伝子を含み、
(4)ヒトPD-L1をコードする外来性遺伝子を含み、
(5)ヒトPD-L2をコードする外来性遺伝子を含み、および
(6)ヒトβ2ミクログロブリンをコードする外来性遺伝子を含む、低免疫原性ヒト細胞。
続きを表示(約 880 文字)【請求項2】
内在性HLAクラスIbを細胞表面に発現しない、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
(7)自殺遺伝子を含む、請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
外来性遺伝子または自殺遺伝子が含まれる部位が、ゲノムのセーフハーバー領域である、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項5】
セーフハーバー領域がAAVS1領域、CCR5領域またはROSA26領域である、請求項4に記載の細胞。
【請求項6】
低免疫原性ヒト細胞が多能性幹細胞またはその分化細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項7】
以下の工程を含む、低免疫原性ヒト細胞を製造する方法。
(i)ヒト親細胞のHLA-Aのα鎖をコードする内在性遺伝子、HLA-Bのα鎖をコードする内在性遺伝子及びHLA-Cのα鎖をコードする内在性遺伝子を欠損させる工程、
(ii)HLAクラスIIの発現制御因子をコードする内在性遺伝子を欠損させる工程、
(iii)ヒト親細胞にHLA-Gのα鎖をコードする外来性遺伝子を導入する工程、
(iv)ヒト親細胞にヒトPD-L1をコードする外来性遺伝子を導入する工程、
(v)ヒト親細胞にヒトPD-L2をコードする外来性遺伝子を導入する工程、および
(vi)ヒト親細胞にヒトβ2ミクログロブリンをコードする外来性遺伝子を導入する工程。
【請求項8】
低免疫原性ヒト細胞が内在性HLAクラスIbを細胞表面に発現しない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに以下の工程を含む、請求項7または8に記載の方法。
(vii)ヒト親細胞に自殺遺伝子を導入する工程。
【請求項10】
外来性遺伝子または自殺遺伝子が導入される部位が、ゲノムのセーフハーバー領域である、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫原性が極めて低い、遺伝子改変ヒト多能性幹細胞および当該細胞の製造方法に関する。
続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】
【0002】
主要組織適合抗原(MHC)はヒトではヒト白血球抗原(Human leukocyte antigen:HLA)として知られほとんどの細胞や組織に発現している。HLAは主にA、B、C、DR、DQ、DPの6座抗原があり、さらにそれぞれが数十種類の異なるタイプ(アレル)の複雑な組み合わせで構成されており、その組み合わせは数万通り存在する。HLAはヒトの体内で重要な免疫機構を担っており、その主な役割は自他認識をするための抗原提示である。もし他人に自己以外の細胞または組織を移植(他家移植)した場合、このHLAが最も重要な抗原(異物)として細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫担当細胞に認識され、拒絶が成立し移植片が生着しなくなる。
したがって、現在上市されている細胞医薬品の多くは自家細胞製品であるが、細胞医薬品の普及には他家細胞の使用が不可欠となると考えられており、そのために免疫拒絶の問題をクリアする必要がある。
【0003】
京都大学iPS細胞研究所はHLAホモドナーから樹立したiPS細胞を数種類ストックすることでこの問題の解決を試みている。2019年の段階で既に日本人に多いタイプのHLA型4種類のiPS細胞を作成済みで、このストックiPS細胞により日本人の約40%をカバーできるとしている。しかしながらこの方法では万人をカバーする細胞を揃えることは極めて困難であるし、莫大な費用も要する。さらに免疫拒絶の可能性を完全に排除できるわけではない。
【0004】
一方、HLA遺伝子を欠損させることで低免疫原性の細胞を製造する試みは古くから行われている。たとえばセルジェネシス社は、少なくとも一つのMHC抗原を欠失した遺伝子改変細胞を開示している(特許文献1)。またMorphogenesis社は、HLA-B遺伝子およびHLA-C遺伝子を欠損させたヒト幹細胞の製造方法を開示している(特許文献2)。
そして近年のゲノム編集技術などの急速な普及発展により、細胞の遺伝子改変が容易かつ正確に行えるようになったこと、あるいは再生医療・細胞医薬品に参入する企業が増加していること等から、低免疫原性の多能性幹細胞を製造する試みが急速に進行している。
【0005】
ユニバーサルセル社(アステラス製薬が買収)およびワシントン大学は、多能性幹細胞におけるB2M遺伝子とRFXANK遺伝子を欠損させることで得られるユニバーサルドナー細胞を開発している(特許文献3および4)。またカリフォルニア大学は、B2M遺伝子とCIITA遺伝子を欠損させると共にCD47を過剰発現させた低免疫原性iPS細胞を開発している(非特許文献1)。
一方、ハーバード大学はB2M遺伝子またはCIITA遺伝子の欠失、あるいはPD-L1遺伝子やHLA-G遺伝子のノックインにより得られた治療用細胞を開示している(特許文献5)。また京都大学はHLA-AおよびHLA-B各遺伝子のみを個別に欠損させると共に、CIITA遺伝子を欠損させたヒトiPS細胞を製造している(非特許文献2)。
【0006】
このようにHLA遺伝子をはじめとした様々な遺伝子を欠失させ、また導入することで様々な低免疫原性細胞が製造されている。しかしながらどのHLA遺伝子を欠失させると免疫拒絶に関与する他の遺伝子の発現にどのような影響があるかを詳細に解析した例はほとんどない。また、どの遺伝子をノックインするとより高機能な低免疫原性細胞が得られるかを解析した例もほとんどない。このような現状のもと、依然として、高機能な低免疫原性細胞が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
国際公開第1995/017911号公報
国際公開第98/42838号公報
国際公開第2016/183041号公報
国際公開第2012/145384号公報
国際公開第2013/158292号公報
【非特許文献】
【0008】
Tobias Deuse et al., Nature Biotechnology, volume 37, pages 252-258, 2019
Huaigeng Xu et al., Cell Stem Cell, 24, 1-13, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高機能な低免疫原性細胞が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、ストックiPS細胞に代わる低免疫原性細胞を製造することで、他家細胞医薬品の開発に貢献できると考え、ゲノム編集ツールを用いて様々な免疫拒絶反応に関与するタンパク質の組合せを検討した。
まず、発明者らはCTLによる免疫応答の回避を目的として、CTLのT細胞受容体(TCR)と結合するHLAクラスIa(HLA-A、HLA-BおよびHLA-C)の各α鎖をコードする内在性遺伝子を欠損させた。また、ヘルパーT細胞のTCRと結合するHLAクラスIIを欠失させるために、HLAクラスII遺伝子の転写制御因子の1つであるRFXANKをコードする内在性遺伝子を欠損させた。これらの各遺伝子を欠損した細胞は、通常、免疫によって拒絶されないと考えられた。ところが予想外にも上記細胞において、インタクトなHLAクラスIb(HLA-E)の発現まで失われていることが明らかとなった。HLAクラスIbを発現しない細胞はNK細胞による攻撃を受けるため移植用の細胞ソースとしての利用には不都合である。従って、HLAクラスIbをコードする遺伝子を導入する必要性が生じた。
発明者らは、上記必要性からHLAクラスIbをコードする遺伝子を導入するとともに、CTL上のPD-1およびPD-2に結合し、CTLに対して抑制的に働くPD-L1およびPD-L2をコードする各遺伝子を導入した。最終的には、さらにHLAクラスIaおよびHLAクラスIbの共通軽鎖β2ミクログロブリン(B2M)をコードする遺伝子も導入することで、HLAクラスIの発現量を向上できることを明らかにした。
これらの結果として、ヒト多能性幹細胞においてHLAクラスIa分子であるHLA-A、HLA-BおよびHLA-Cの各α鎖をコードする内在性遺伝子を欠損させ、RFXANKをコードする内在性遺伝子を欠損させ、PD-L1およびPD-L2をコードする各外来性遺伝子、HLAクラスIb分子であるHLA-Eおよび/またはHLA-Gの各α鎖をコードする各外来性遺伝子、β2ミクログロブリンをコードする外来性遺伝子をゲノムに導入することで、高い安全性を有すると共に、分化誘導能を保持したヒト多能性幹細胞を製造できることを見出した。発明者らはこれらの発見に基づき、さらに鋭意研究を進めることで本発明を完成させた。
(【0011】以降は省略されています)

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