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公開番号
2025175883
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-12-03
出願番号
2024082212
出願日
2024-05-20
発明の名称
有機酸合成阻害による二次代謝物の高生産化方法
出願人
株式会社エス・ディー・エス バイオテック
,
学校法人北里研究所
,
学校法人東京理科大学
代理人
弁理士法人秀和特許事務所
主分類
C12N
1/15 20060101AFI20251126BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】キサントキノジンの生産能が向上した形質転換糸状菌、および該形質転換糸状菌を用いたキサントキノジンの製造方法を提供すること。
【解決手段】糸状菌であって、エタノール合成に関与する酵素、酢酸合成に関与する酵素、および乳酸合成に関与する酵素からなる群から選択される1以上の酵素の活性が非改変株と比較して低下するように改変されていることにより、キサントキノジンの生産が増強された、糸状菌。
【選択図】図3
特許請求の範囲
【請求項1】
糸状菌であって、
エタノール合成に関与する酵素、酢酸合成に関与する酵素、および乳酸合成に関与する酵素からなる群から選択される1以上の酵素の活性が非改変株と比較して低下するように改変されていることにより、キサントキノジンの生産が増強された、糸状菌。
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【請求項2】
エタノール合成に関与する酵素をコードする遺伝子、酢酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子、および乳酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子を破壊することにより、または該遺伝子の発現を抑制させることにより、前記酵素の活性が低下した、請求項1に記載の糸状菌。
【請求項3】
前記エタノール合成に関与する酵素が、ピルビン酸デカルボキシラーゼである、請求項1または2に記載の糸状菌。
【請求項4】
前記酢酸合成に関与する酵素が、酢酸キナーゼおよびアセチルCoAヒドロラーゼからな
る群から選択される1以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項5】
前記乳酸合成に関与する酵素が、乳酸デヒドロゲナーゼである、請求項1~4のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項6】
前記エタノール合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、下記のいずれかのポリヌクレオチドである、請求項2~5のいずれか一項に記載の糸状菌。
a-1) 配列番号1に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド
a-2) 配列番号1に示す塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ
するポリヌクレオチドであって、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項7】
前記酢酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、下記のいずれかのポリヌクレオチドである、請求項2~6のいずれか一項に記載の糸状菌。
b-1) 配列番号2に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド
b-2) 配列番号2に示す塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ
するポリヌクレオチドであって、酢酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
C-1) 配列番号3に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド
C-2) 配列番号3に示す塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ
するポリヌクレオチドであって、アセチルCoAヒドロラーゼ活性を有するタンパク質をコ
ードするポリヌクレオチド
【請求項8】
前記乳酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、下記のいずれかのポリヌクレオチドである、請求項2~7のいずれか一項に記載の糸状菌。
d-1) 配列番号4および5から選択される塩基配列を有するポリヌクレオチド
d-2) 配列番号4および5から選択される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件
でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項9】
フミコーラ(
Humicola
)属に属する糸状菌である、請求項1~8のいずれか一項に記載の糸状菌。
【請求項10】
キサントキノジンの製造方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の糸状菌を培養培地で培養して培養培地および/または菌体中にキサントキノジンを生産および蓄積させ、培養培地および/または菌体中からキサントキノジンを回収することを含む、製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは微生物工業に関し、特に、特定の有機酸の合成に関与する酵素の活性が低下するように改変されていることにより、糸状菌の二次代謝物であるキサントキノジンの生産が増強された糸状菌、およびキサントキノジンの製造方法に関する。
続きを表示(約 2,900 文字)
【背景技術】
【0002】
コクシジウム症は、鶏等の家禽および牛や豚等の家畜等において発症する感染症である。コクシジウムは、種虫綱のコクシジウム亜綱のコクシジウム目に属する原虫類寄生虫で、狭義にはアイメリア属やイソスボラ属に属するものを指し、主として鶏や豚等の消化器に寄生する。この原虫の消化器等への寄生によって発症する病状は、一般に、コクシジウム症と呼ばれ、下痢、血便等が見られ、発育が阻害され、重い場合は死に到る場合もあり、養鶏業者等にとって大きな問題となっている。
【0003】
従来、抗コクシジウム剤としては、サルファ剤、キノリン剤、抗チアミン剤、抗生物質等が実用化されており、ポリエーテル系抗生物質、例えば、モネンシン、サリノマイシン、ラサロシド等が広く使用されている。
【0004】
しかしながら、近年、環境負荷の観点から、生分解性に優れる微生物代謝産物由来の抗コクシジウム剤の需要が高まっている。かかる抗コクシジウム剤として、例えば、糸状菌の一種であるフミコーラ・エスピー.(
Humicola
sp.)FO-888株により生産される、キサントキノジンA等が知られている(特許文献1および非特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開平06-116281号公報
【非特許文献】
【0006】
Tabata N et al., 1993, the Journal of Antibiotics, Vol.46, No.5, p.749-755
Tabata N et al., 1993, Journal of the American Chemical Society, Vol.115, No.19, p.8558-8564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、キサントキノジンの生合成経路についてはほとんど解明されておらず、遺伝子組み換えによってキサントキノジンの生産性が向上した形質転換糸状菌、および該形質転換糸状菌を用いたキサントキノジンの製造方法は、これまで知られていない。
そこで本発明は、キサントキノジンの生産性が向上した形質転換糸状菌、および該形質転換糸状菌を用いたキサントキノジンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。フミコーラ属に属する糸状菌の全ゲノム解析を行うとともに有機酸合成経路に着目して解析を行った結果、糸状菌に対して、エタノール合成に関与する酵素、酢酸合成に関与する酵素、および乳酸合成に関与する酵素からなる群から選択される1以上の酵素の活性が低下するように改変することにより、キサントキノジンの生産性が向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を提供する。
[1] 糸状菌であって、
エタノール合成に関与する酵素、酢酸合成に関与する酵素、および乳酸合成に関与する酵素からなる群から選択される1以上の酵素の活性が非改変株と比較して低下するように改変されていることにより、キサントキノジンの生産が増強された、糸状菌。
[2] エタノール合成に関与する酵素をコードする遺伝子、酢酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子、および乳酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子を破壊することにより、または該遺伝子の発現を抑制させることにより、前記酵素の活性が低下した、[1]に記載の糸状菌。
[3] 前記エタノール合成に関与する酵素が、ピルビン酸デカルボキシラーゼである、[1]または[2]に記載の糸状菌。
[4] 前記酢酸合成に関与する酵素が、酢酸キナーゼおよびアセチルCoAヒドロラーゼ
からなる群から選択される1以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の糸状菌。
[5] 前記乳酸合成に関与する酵素が、乳酸デヒドロゲナーゼである、[1]~[4]のいずれかに記載の糸状菌。
[6] 前記エタノール合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、下記のいずれかのポリヌクレオチドである、[2]~[5]のいずれかに記載の糸状菌。
a-1) 配列番号1に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド
a-2) 配列番号1に示す塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ
するポリヌクレオチドであって、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[7] 前記酢酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、下記のいずれかのポリヌクレオチドである、[2]~[6]のいずれかに記載の糸状菌。
b-1) 配列番号2に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド
b-2) 配列番号2に示す塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ
するポリヌクレオチドであって、酢酸キナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
C-1) 配列番号3に示す塩基配列を有するポリヌクレオチド
C-2) 配列番号3に示す塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ
するポリヌクレオチドであって、アセチルCoAヒドロラーゼ活性を有するタンパク質をコ
ードするポリヌクレオチド
[8] 前記乳酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子が、下記のいずれかのポリヌクレオチドである、[2]~[7]のいずれかに記載の糸状菌。
d-1) 配列番号4および5から選択される塩基配列を有するポリヌクレオチド
d-2) 配列番号4および5から選択される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件
でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
[9] フミコーラ(
Humicola
)属に属する糸状菌である、[1]~[8]のいずれかに記載の糸状菌。
[10] キサントキノジンの製造方法であって、
[1]~[9]のいずれかに記載の糸状菌を培養培地で培養して培養培地および/または菌体中にキサントキノジンを生産および蓄積させ、培養培地および/または菌体中からキサントキノジンを回収することを含む、製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キサントキノジンの生産性が向上した形質転換糸状菌、および該形質転換糸状菌を用いたキサントキノジンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する
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