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公開番号2025175539
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-12-03
出願番号2024081702
出願日2024-05-20
発明の名称イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法
出願人国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
代理人個人,個人,個人
主分類C12Q 1/6851 20180101AFI20251126BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法を提供すること。
【解決手段】イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法であって、以下の(A)~(C)からなる群から選択される少なくとも一つを評価することを含む、方法:
(A)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量;
(B)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量;
(C)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法であって、以下の(A)~(C)からなる群から選択される少なくとも一つを評価することを含む、方法:
(A)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量;
(B)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量;
(C)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基。
続きを表示(約 1,900 文字)【請求項2】
前記方法が、(A)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量及び/又は(B)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を評価することを含み、
評価された前記イネ属植物のコメにおける前記mRNA及び/又は前記タンパク質の発現量が、日本晴のコメにおける前記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNA及び/又は前記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の1.3倍以上6.0倍以下である場合に、前記イネ属植物が炊飯食味に優れると予測することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、(C)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を評価することを含み、
評価された前記1463番目のチミンに対応する塩基が、シトシンである場合に、前記イネ属植物が炊飯食味に優れると予測することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コメの炊飯食味に優れるイネ属植物の作出方法であって、以下の(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つを含む、方法:
(a)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列と配列同一性が90%以上の塩基配列を含むmRNAの発現量を、日本晴のコメにおける前記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(b)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を、日本晴のコメにおける前記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(c)イネ属植物のゲノムDNAにおいて、日本晴のゲノムDNAにおける塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を、シトシンに置換すること。
【請求項5】
イネ属植物におけるコメの炊飯食味を向上させる方法であって、以下の(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つを含む、方法:
(a)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列と配列同一性が90%以上の塩基配列を含むmRNAの発現量を、日本晴のコメにおける前記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(b)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を、日本晴のコメにおける前記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(c)イネ属植物のゲノムDNAにおいて、日本晴のゲノムDNAにおける塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を、シトシンに置換すること。
【請求項6】
前記イネ属植物が、コシヒカリに由来する交配後代イネ属植物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
イネ属植物のコメの炊飯食味を予測するためのプライマーセットであって、以下の(A’)及び/又は(C’)の領域を増幅するフォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、プライマーセット:
(A’)イネ属植物のmRNAにおける、塩基配列が配列番号1で示される領域の一部又は全体を含む領域;
(C’)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を含む領域。
【請求項8】
以下の(a’)及び/又は(b’)を満たす、イネ属植物:
(a’)コメにおける配列番号1に示される塩基配列と配列同一性が90%以上の塩基配列を含むmRNAの発現量が、日本晴のコメにおける前記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量の2.0倍超6.0倍以下であること;
(b’)コメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量が、日本晴のコメにおける前記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の2.0倍超6.0倍以下であること。
【請求項9】
コシヒカリに由来する交配後代イネ属植物である、請求項8に記載のイネ属植物。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法に関する。
続きを表示(約 4,000 文字)【背景技術】
【0002】
コメは、日本人の主食である。日本の水稲では多くの品種のイネが栽培されているが、その中でも作付面積が最も多いのはコシヒカリであり、日本の作付面積の約36%を占めている。また、コシヒカリ以外の作付け面積が多い品種としてひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、ななつぼし及びはえぬき等が知られているが、これらは全てコシヒカリの1代又は2代の交配後代植物である。コシヒカリが日本において最も多く栽培されている品種である理由は、炊いたコメが美味しい、すなわち炊飯食味に優れるためである。
【0003】
これまで、品種改良の指標とすること等を主な目的として、コシヒカリが優れた炊飯食味を与える要因であるQTL(Quantitative Trait Loci、量的形質遺伝子座)を探索する研究が数多く行われてきた。例えば、非特許文献1には、日本晴の第3染色体の短腕上の約11.28Mbpの領域をコシヒカリ型のアレルに置換した交配後代系統が、炊飯食味に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Yoshinobu Takeuchi et al.,"Major QTLs for eating quality of an elite Japanese rice cultivar,Koshihikari, on the short arm of chromosome 3", Breeding Science 58(4), 437-445(2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、非特許文献1に記載されたQTLの候補領域は約11.28Mbpの極めて広い範囲にわたっており、コシヒカリが炊飯食味に優れる直接的な原因遺伝子の特定には至っていなかった。
【0006】
本開示は、イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法を提供することを目的とする。また、本開示は、コメの炊飯食味に優れるイネ属植物及びその作出方法、並びにイネ属植物におけるコメの炊飯食味を向上させる方法を提供することを目的とする。さらに、本開示は、イネ属植物のコメの炊飯食味を予測するためのプライマーセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、コシヒカリと日本晴の第3染色体の短腕上において、プロモーター領域にシスエレメントの挿入を引き起こす一塩基多型が存在することを見出した。さらに、本発明者らは、そのシスエレメントの挿入が引き起こされたプロモーター領域の下流の遺伝子が、コシヒカリが炊飯食味に優れる要因のQTLであり、その遺伝子の発現量がイネ属植物の炊飯食味に大きな影響を及ぼすことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本開示は、例えば、以下に関する。
[1]イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法であって、以下の(A)~(C)からなる群から選択される少なくとも一つを評価することを含む、方法:
(A)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量;
(B)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量;
(C)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基。
[2]上記方法が、(A)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量及び/又は(B)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を評価することを含み、
評価された上記イネ属植物のコメにおける上記mRNA及び/又は上記タンパク質の発現量が、日本晴のコメにおける上記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNA及び/又は上記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の1.3倍以上6.0倍以下である場合に、上記イネ属植物が炊飯食味に優れると予測することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]上記方法が、(C)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を評価することを含み、
評価された上記1463番目のチミンに対応する塩基が、シトシンである場合に、上記イネ属植物が炊飯食味に優れると予測することをさらに含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]コメの炊飯食味に優れるイネ属植物の作出方法であって、以下の(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つを含む、方法:
(a)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列と配列同一性が90%以上の塩基配列を含むmRNAの発現量を、日本晴のコメにおける上記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(b)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を、日本晴のコメにおける上記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(c)イネ属植物のゲノムDNAにおいて、日本晴のゲノムDNAにおける塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を、シトシンに置換すること。
[5]イネ属植物におけるコメの炊飯食味を向上させる方法であって、以下の(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも一つを含む、方法:
(a)イネ属植物のコメにおける配列番号1に示される塩基配列と配列同一性が90%以上の塩基配列を含むmRNAの発現量を、日本晴のコメにおける上記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(b)イネ属植物のコメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量を、日本晴のコメにおける上記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の1.3倍以上6.0倍以下にすること;
(c)イネ属植物のゲノムDNAにおいて、日本晴のゲノムDNAにおける塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を、シトシンに置換すること。
[6]上記イネ属植物が、コシヒカリに由来する交配後代イネ属植物である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7]イネ属植物のコメの炊飯食味を予測するためのプライマーセットであって、以下の(A’)及び/又は(C’)の領域を増幅するフォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、プライマーセット:
(A’)イネ属植物のmRNAにおける、塩基配列が配列番号1で示される領域の一部又は全体を含む領域;
(C’)イネ属植物のゲノムDNAにおける、日本晴のゲノムDNAにおいて塩基配列が配列番号3で示される領域の1463番目のチミンに対応する塩基を含む領域。
[8]以下の(a’)及び/又は(b’)を満たす、イネ属植物:
(a’)コメにおける配列番号1に示される塩基配列と配列同一性が90%以上の塩基配列を含むmRNAの発現量が、日本晴のコメにおける上記配列番号1に示される塩基配列を含むmRNAの発現量の2.0倍超6.0倍以下であること;
(b’)コメにおける配列番号2に示されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量が、日本晴のコメにおける上記配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質の発現量の2.0倍超6.0倍以下であること。
[9]コシヒカリに由来する交配後代イネ属植物である、[8]に記載のイネ属植物。
[10][4]に記載の方法で作出された、イネ属植物。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、イネ属植物のコメの炊飯食味を予測する方法及びイネ属植物のコメの炊飯食味を予測するためのプライマーセットが提供される。本発明に係るイネ属植物のコメの炊飯食味の予測方法及びイネ属植物のコメの炊飯食味を予測するためのプライマーセットによれば、遺伝子発現量、タンパク質発現量又は遺伝子配列からコメの炊飯食味を予測することができる。そうすると、品種改良による炊飯食味に優れるイネ属植物の作出において、半年程度かかる栽培期間を待って炊飯食味を評価可能な量のコメを得なくても、その種子又は苗から調製したコメにおける遺伝子発現量、タンパク質発現量又は遺伝子配列から交配後代植物の炊飯食味を予測し、炊飯食味に優れる系統を選抜することができる。
【0010】
本開示によれば、コメの炊飯食味に優れるイネ属植物の作出方法、及びイネ属植物におけるコメの炊飯食味を向上させる方法が提供される。本発明に係る方法によると、コメの炊飯食味に優れるイネ属植物を作出できる。そうすると、例えば品種改良において、炊飯食味に優れるイネ属植物を狙って作出できる。また、本発明に係る方法によると、海外原産のインディカ稲品種に由来する品種のコメのような炊飯食味に劣る例が見られるイネ属植物を交配の親とした場合であっても、コメの炊飯食味に優れるイネ属植物の作出及びコメの炊飯食味の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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