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公開番号2025131139
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-09-09
出願番号2024028683
出願日2024-02-28
発明の名称イオン伝送装置、及びイオン伝送方法
出願人NTT株式会社
代理人弁理士法人ITOH,個人,個人,個人
主分類G06N 10/40 20220101AFI20250902BHJP(計算;計数)
要約【課題】イオンを用いた量子計算を高速化する。
【解決手段】イオン伝送装置において、データイオン、伝送イオン、及び保持イオンが配置された移動元トラップにおける前記伝送イオンと前記保持イオンとをベル状態に初期化するシャトリング前処理部と、前記伝送イオンを前記移動元トラップから移動先トラップへ移動させるシャトリング部と、前記移動先トラップに配置されている検出イオンを用いて、前記伝送イオンがリークしたかどうかを判定し、判定結果を前記シャトリング前処理部に通知するシャトリング後処理部と、を備え、前記伝送イオンがリークしていない場合に、量子テレポーテーションにより、前記データイオンの情報を前記伝送イオンにテレポートする。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
データイオン、伝送イオン、及び保持イオンが配置された移動元トラップにおける前記伝送イオンと前記保持イオンとをベル状態に初期化するシャトリング前処理部と、
前記伝送イオンを前記移動元トラップから移動先トラップへ移動させるシャトリング部と、
前記移動先トラップに配置されている検出イオンを用いて、前記伝送イオンがリークしたかどうかを判定し、判定結果を前記シャトリング前処理部に通知するシャトリング後処理部と、を備え、
前記伝送イオンがリークしていない場合に、量子テレポーテーションにより、前記データイオンの情報を前記伝送イオンにテレポートする
イオン伝送装置。
続きを表示(約 570 文字)【請求項2】
前記伝送イオンがリークしていない場合に、前記シャトリング前処理部は、前記データイオンと前記保持イオンに対してベル測定を行い、測定結果を前記シャトリング後処理部に通知し、前記シャトリング後処理部は、前記測定結果に応じたパウリ操作を前記伝送イオンに対して行う
請求項1に記載のイオン伝送装置。
【請求項3】
前記伝送イオンがリークしている場合に、前記移動元トラップに、新規に伝送イオンをロードする
請求項1又は2に記載のイオン伝送装置。
【請求項4】
イオン伝送装置が実行するイオン伝送方法であって、
データイオン、伝送イオン、及び保持イオンが配置された移動元トラップにおける前記伝送イオンと前記保持イオンとをベル状態に初期化するステップと、
前記伝送イオンを前記移動元トラップから移動先トラップへ移動させるステップと、
前記移動先トラップに配置されている検出イオンを用いて、前記伝送イオンがリークしたかどうかを判定し、判定結果を前記移動元トラップの側へ通知するステップと、
前記伝送イオンがリークしていない場合に、量子テレポーテーションにより、前記データイオンの情報を前記伝送イオンにテレポートするステップと
を備えるイオン伝送方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを量子ビットとして用いる量子コンピュータに関連するものである。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせの原理を活用して計算を行う技術で、素因数分解や量子化学計算などの問題を高速に解けると期待されているため、その開発が世界で盛んに進められている。通常のコンピュータを構成する素子であるビットは0または1の値をとる。一方、量子コンピュータを構成する素子である量子ビットは0と1に加えて、0と1の連続的な重ね合わせ状態をとることができる。量子計算機はこの重ね合わせ状態を活用することで、高速な計算が可能と考えられている。
【0003】
量子ビットの情報を長時間保持できる媒体として真空中に鹵獲されたイオンが期待されている。イオンを用いた量子ビットは、典型的にはイオンの二つの電子状態を0,1に対応させ光によって制御する。イオンは電荷を帯びているため、周囲に適切な電位を設定した電極を配置し、目的の座標で極小点となるような電位ポテンシャルを構築できれば、極小点の座標にイオンを固定し、計算のために長時間用いることができる。
【0004】
このように、目的の座標に電気的にイオンを鹵獲する仕組みをトラップと呼ぶ。なお、定電場の組み合わせのみではこうしたポテンシャルは構成できないので、一部の電極の電位を周期的に変化させたパウルトラップなどの設計が一般的である(非特許文献1、2)。
【0005】
トラップのポテンシャルは有限の高さを持つため、外部からのノイズで過熱されポテンシャルの高さ以上のエネルギーを持ってしまったイオンはこの縁を越えてトラップの外に出てしまう。これをイオンのリークと呼ぶ。計算中の情報を持ったイオンがリークしてしまうと再び同じイオンを鹵獲することは困難であるため、計算は失敗してしまう。このため、イオンを別の冷却されたイオンと結合させエネルギーを奪う共同冷却といった仕組みを用いて、計算中はイオンがポテンシャルの高さより十分小さなエネルギーを持つよう繰り返し冷却を行う。
【0006】
イオンを用いた量子計算機の弱点として規模の拡大が難しい点が挙げられる。イオン同士はクーロン相互作用で反発してしまうため、現在の技術で単一のトラップに集められるイオンの数は数十個程度が限界である。一方で有用な計算に必要な量子ビットの数は約10万個以上とも見積もられており、大きなギャップがある。規模の拡大が難しいというイオンの弱点を解決する手法の一つとして、Quantum Charge-coupled device (QCCD)を用いたシステムの拡張が提案されている(非特許文献1)。
【0007】
この方法ではまず、電極を用いてイオンのトラップを構築し、次に、電極に印加する電圧値を時間とともに徐々に変化させることで、トラップの座標を時間的にゆっくりと動かす。すると、イオンの座標をトラップ点の座標に追従させて動かすことができ、目的の位置まで動かすことができる。このように、トラップの位置を制御しイオンをある地点から目的の位置まで移動させる操作をシャトリングという。シャトリングを用いると、あるトラップから別のトラップへとイオンを移動させる操作が可能となるため、単一のトラップで鹵獲可能なイオンの数を超えて量子コンピュータを拡大することができる。このようなシャトリングの仕組みは小規模な系で実際に実現され、量子コンピュータを実現する有用な手法として期待されている。
【0008】
シャトリングは高速に行ってしまうと、トラップされたイオンはシャトリングの過程でエネルギーを得てしまう。得たエネルギーがトラップのポテンシャルの高さに近くなると外部からの擾乱と合わせてイオンは高い確率でリークしてしまう。こうしたリークを抑える最も素朴な方法はシャトリングの速度を落とすことだが、そうするとイオンのトラップ間の移動は遅くなり、結果として量子計算自体が低速となって有用性を損なう。
【0009】
従って、シャトリングの速度とリーク率はトレードオフの関係にある。イオンは一度リークしてしまうとそのイオンが持っていた情報は恒久的に失われてしまうので、一般的な量子計算ではイオンがリークする確率が計算中無視できる程度に小さくなるようシャトリングの速度を遅くする。二つのシャトリングの経路が交差するジャンクションと呼ばれるような箇所ではシャトリングの移動方法に制約があり意図しないポテンシャルの変形が生じるため、この問題は特に深刻となる(非特許文献3,4)。結果として現在のイオンを用いた計算では、シャトリングの時間が計算時間の主要な割合を占めており、超伝導量子ビットなど他の量子ビットのデバイスに比べ演算が遅いという弱点を抱えることになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
Moses, S. A., et al. "A race track trapped-ion quantum processor." arXiv preprint arXiv:2305.03828 (2023).
Monroe, Christopher, et al. "Large-scale modular quantum-computer architecture with atomic memory and photonic interconnects." Physical Review A 89.2 (2014): 022317.
Hucul, David, et al. "On the transport of atomic ions in linear and multidimensional ion trap arrays." arXiv preprint quant-ph/0702175 (2007).
Burton, William Cody, et al. "Transport of multispecies ion crystals through a junction in a radio-frequency paul trap." Physical Review Letters 130.17 (2023): 173202.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
(【0011】以降は省略されています)

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