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公開番号2025090560
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-17
出願番号2024212520
出願日2024-12-05
発明の名称固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法
出願人浙江工業大学
代理人弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
主分類H01M 10/058 20100101AFI20250610BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法を提供する。
【解決手段】硫化物系固体電池を低電流密度かつ特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電することによって、電池に対するその場電気化学的不動態化及び/又は修復を実現する。この電気化学的還元方法により、硫化物系固体電池の界面を不動態化して安定化し、充放電プロセス中に硫化物電解質が分解し続けるのを回避し、硫化物固体電解質が動作電圧の比較的高い酸化物正極材料に適合できるようにすることができ、また、サイクルプロセス中の分解によって生成された酸化生成物を、イオン伝導性を有するリチウムリッチ還元生成物に再変換し、活性化及び修復の役割を果たし、それにより、より優れたサイクル安定性を電池に持たせる。
【選択図】図13
特許請求の範囲【請求項1】
固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法であって、
硫化物系固体電池を低電流密度かつ特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電することによって、電池に対するその場電気化学的不動態化及び/又は修復を実現し、
前記放電モードで特定のリチウム化度まで放電することは、
定電流放電モードで特定の電位に放電すること、定電流-定電圧放電モードで特定の電流に放電すること、及び定電流放電モードで特定の比容量に放電することのうちの少なくとも1つを含み、前記低電流密度は、0.1~50mA g
-1
であり、電池正極中のイオン導電剤の質量で換算され、前記放電する特定の電位は、0.5~2.2V(vs.Li

/Li)であり、前記特定の電流は、0.1~20mA g
-1
であり、電流は、電池正極中のイオン導電剤の質量で換算され、前記特定の比容量は、15~500mAh g
-1
であり、比容量は、電池正極中のイオン導電剤の質量で換算され、
前記硫化物系固体電池は、硫化物固体電解質を電解質及び正極中のイオン導電剤、層状酸化物又はポリアニオン酸化物を正極活物質として組み立てた硫化物系固体電池であることを特徴とする、固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記硫化物固体電解質は、アルギロダイト型電解質、リチウム高速イオン伝導体、ガラス-セラミック相固体電解質、及び上記の電解質をベースとしてアニオンとカチオンのドーピングを行うか、又はポリマーと複合化することにより製造されるほかの電解質のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。
【請求項3】
前記層状酸化物又はポリアニオン酸化物正極は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リチウムリッチマンガン系固溶体、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、及び上記の材料に表面被覆修飾及び/又はドーピング変性を施して得られる正極材料のうちの1つ又は複数の正極材料の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。
【請求項4】
固体リチウム電池を不動態化する充放電手順は、
(1.1)硫化物系固体電池の正極界面を不動態化し、すなわち、低電流密度かつ特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電するステップと、
(1.2)硫化物系固体電池に対して通常の充放電サイクルを行うステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。
【請求項5】
ステップ(1.1)では、前記不動態化は、1~10回行われることを特徴とする、請求項4に記載の固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。
【請求項6】
固体リチウム電池を修復する充放電手順は、
(2.1)硫化物系固体電池を修復し、すなわち、低電流密度かつ特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電し、電池の通常の充放電サイクルを改めて行うステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。
【請求項7】
前記硫化物系固体電池は、容量が大幅に減衰するまで電池サイクルした電池であることを特徴とする、請求項6に記載の固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、固体リチウム電池の分野に属し、具体的には、硫化物系固体電池の正極界面を不動態化及び修復するためのその場電気化学的還元方法に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
3C電子製品、新エネルギー自動車や大規模エネルギー貯蔵システムの急速な発展に伴い、リチウムイオン電池には、より高いエネルギー密度と安全性が求められている。硫化物固体電解質は、イオン伝導率が高く、熱安定性が優れ、加工性があり、延性が良好であるという利点を有し、従来の可燃性有機液体電解質の代わりに用いて製造される硫化物系固体リチウム電池は、エネルギー密度や安全性の面で大幅な向上が期待される。
【0003】
しかしながら、理論計算と実験結果から、硫化物固体電解質の電気化学的安定化ウィンドウはわずか約1.7~2.1V(vs.Li

/Li)であり、現在主流の商用層状酸化物正極(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム正極など)、ポリアニオン酸化物正極(リン酸鉄リチウム正極など)、次世代高電圧リチウムリッチ正極(リチウムリッチマンガン系固溶体など)の動作電圧の範囲(通常2.0~5.0V)及びプラットフォーム電圧(3.3~3.8V)よりもはるかに低いことが分かる(図14参照)。これにより、硫化物固体電解質と酸化物正極を組み合わせて動作させると、硫化物が酸化してと分解し、多硫化リン、元素硫黄などの電子-イオン絶縁性生成物が生成されて界面を覆い、キャリアの効率的な輸送が妨げられ、その結果、界面インピーダンスが急に増加し、正極材料の容量が十分に発揮されにくくなり、急速に減衰する。さらに、多くの酸化物正極材料そのものは、電子伝導性が低く、表面に導電性炭素で被覆する必要があるため、正極界面での硫化物電解質の酸化分解がより深刻になる。現在、産業における正極材料の表面被覆や硫化物電解質のドーピング変性などの手段は、上記の問題を根本的に解決することが難しいだけでなく、大規模な工業生産においては、高コストや複雑な工程などの問題も伴う。したがって、動作電圧の高い酸化物正極システムにおける硫化物固体電解質の安定した動作を達成するために、簡単で効果的な硫化物系固体電池の正極界面を不動態化し、ひいては修復するための方法を開発することが緊急に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、充放電手順を制御することによって、硫化物電解質及び酸化物正極界面の不動態化、ひいては失効後の界面の修復を実現し、正極活性材料の容量の十分な発揮及び安定したサイクルを確保する、硫化物系固体電池の正極界面を不動態化及び修復するためのその場電気化学的還元方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成させるために、本発明が採用する技術的解決手段は以下の通りである。
【0006】
固体リチウム電池のその場電気化学的不動態化及び修復方法であって、硫化物系固体電池を低電流密度かつ特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電することによって、電池に対するその場電気化学的不動態化及び/又は修復を実現する。充放電手順を制御することにより、硫化物固体電解質と正極材料との間に不動態化界面を形成したり、活性を失った界面を修復して活性化したりする。
【0007】
好ましくは、前記硫化物系固体電池は、硫化物固体電解質を電解質及び正極中のイオン導電剤、層状酸化物又はポリアニオン酸化物を正極活物質として組み立てた硫化物系固体電池であり、同一の電池中の電解質及びイオン導電剤は必ず同じではない。
【0008】
より好ましくは、前記硫化物固体電解質は、Li

PS

Cl、Li

PS

Br、Li

PS

Cl
0.5
Br
0.5
、Li
5.5
PS
4.5
Cl
1.5
、Li
5.4
PS
4.4
Cl
1.6
などのアルギロダイト型電解質、Li
10
GeP


12
、Li
10
SnP


12
、Li
6.75
Si
0.75
As
0.25


Iなどのリチウム高速イオン伝導体、Li

PS

、Li




11
、xLi

S-(100-x)P



などのガラス-セラミック相固体電解質、及び上記の電解質をベースとしてアニオンとカチオンのドーピングを行うか、又はポリマーと複合化することにより製造されるほかの電解質のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されるものではない。
より好ましくは、前記層状酸化物又はポリアニオン酸化物正極は、コバルト酸リチウム(LiCoO

)、ニッケルマンガン酸リチウム(LiNi
0.5
Mn
1.5


)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi

Co

Mn
1-x-y


)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNi

Co

Al
1-x-y


)、リチウムリッチマンガン系固溶体(xLi

MnO

・(1-x)LiMO

、Mは、Ni、Co、Mnのうちの1つ又は複数)、リン酸鉄リチウム(LiFePO

)、リン酸マンガン鉄リチウム(LiMn

【0009】
好ましくは、前記特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電することは、定電流放電モードで特定の電位に放電すること、定電流-定電圧放電モードで特定の電流に放電すること、及び定電流放電モードで特定の比容量に放電することのうちの少なくとも1つを含み、より好ましくは、前記低電流密度は、0.1~50mA g
-1
(電池の複合正極のイオン導電剤の質量で換算)であり、前記放電する特定の電位は、0.5~2.2V(vs.Li

/Li)であり、前記定電流-定電圧放電モードとは、定電流で特定の電位までに放電してから、定電圧で特定の電流に放電することであり、カットオフ条件は、定電圧放電電流が0.1~20mA g
-1
(複合正極のイオン導電剤の質量で換算)であることであり、前記特定の比容量は、15~500mAh g
-1
(複合正極のイオン伝導性電極剤の質量で換算)である。
【0010】
好ましくは、固体リチウム電池を不動態化する充放電手順は、
(1.1)硫化物系固体電池の正極界面を不動態化し、すなわち、低電流密度かつ特定の放電モードで特定のリチウム化度まで放電し、それにより、界面で硫化物電解質が適切に還元分解を起こし、リチウムリッチ分解生成物を生成して界面の反応活性が高い箇所を覆い、界面を不動態化しながらリチウムイオン輸送経路を保持するという目的を達成させるステップと、
(1.2)硫化物系固体電池に対して通常の充放電サイクルを行うステップと、を含む。
より好ましくは、ステップ(1.1)では、前記正極界面の不動態化対策は、初回の直接放電不動態化に限定されず、不動態化を1~10回行うこともでき、すなわち、界面の十分な不動態化をさらに確保するために、電池の1~10サイクル内に、前記放電不動態化プロセスを選択的に含むことができる。
より好ましくは、前記通常の充放電のサイクル電流は、0.05~20C(正極活性材料の質量で換算)であり、充放電の電圧区間は、この正極材料の通常の充放電の電圧区間である。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する

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