発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本開示は、レーザ光の周波数を安定化させる周波数安定化装置、および周波数安定化装置から照射されるレーザ光を用いた原子時計装置に関する。 続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】 【0002】 レーザ光の周波数を安定化させる手法の一つとして、PDH(Pound-Drever-Hall)法がある。PDH法は、光共振器を用いてレーザ光の周波数を安定化させる手法である。PDH法では、電気光学変調器(EOM: Electro-Optic Modulator)によって周波数f m の位相変調をかけられたレーザ光が光共振器に入射する。光共振器から反射した光を偏光ビームスプリッタ(PBS: Polarizing Beam Splitter)で取り出し、光検出器(フォトダイオード)で受光するとキャリアとサイドバンドとの間のビート信号が得られる。PDH法では、得られたビート信号をフィードバック制御のエラー信号として用いることで、キャリアが光共振器の共鳴となる周波数でレーザ光の周波数を安定化させることができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 R. W. P. Drever, J. L. Hall, F. V. Kowalski, J. Hough, G. M. Ford, A. J. Munley and H. Ward, “Laser Phase and Frequency Stabilization Using an Optical Resonator” Appl. Phys. B: Photophys. Laser Chem. 31, 97-105 (1983). 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 PDH法による周波数の安定度は、光共振器における共振器長の安定度に左右される。共振器長は、極力変化しないことが望ましい。共振器長を変化させる要因の一つは、光共振器に入射する光量の変化である。光共振器に入射し一対のミラー間を往復する光は、共振器内部を加熱し、輻射圧によって光共振器のミラーに力を与える。光共振器に入射する光は、光共振器の熱雑音を生じさせ、この熱雑音によっても周波数の安定度が変化する。したがって、光共振器に入射する光の信号強度は、小さい方が望ましい。 【0005】 一方、光共振器に入射する光の信号強度が小さくなると、光検出器でレーザ光を受光する際、キャリアとサイドバンドとの干渉光の強度が小さくなり、光検出器で検出された光の信号のS/N比が低下する。その結果、レーザ光の周波数の安定度が悪化する。すなわち、光共振器に入射する光量は、小さければ小さいほど、光共振器における共振器長が安定する一方で、光検出器で検出される光の信号のS/N比が低下するという、トレードオフの関係がある。 【0006】 本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、レーザ光の周波数を好適に安定化させることである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本開示は、原子時計装置に関する。原子時計装置は、真空容器と、真空容器に対して原子ビームを放射する原子発生装置と、原子発生装置により原子ビームが放射された状態で真空容器に対してレーザ光を照射することによって、原子のエネルギー準位間遷移を励起するレーザ装置と、真空容器において発生した原子のエネルギー遷移確率に比例して生じる光強度を検出する検出装置と、検出装置によって検出された光強度に基づきレーザ装置によって照射されるレーザ光の周波数を特定する制御装置と、レーザ装置によって照射されるレーザ光の周波数を安定化させる周波数安定化装置とを備える。周波数安定化装置は、変調信号を用いてレーザ光の位相を変調する位相変調部と、位相変調部によって変調されたレーザ光を共振させる光共振部と、光共振部と変調信号とに基づき、レーザ装置によって照射されるレーザ光の周波数を調整するレーザ調整部とを備える。光共振部は、位相変調部によって変調されたレーザ光の周波数帯のうち、サイドバンドに対応する周波数のレーザ光を光共振部において共振させる。 【0008】 本開示は、少なくとも1つのレーザ装置によって照射されるレーザ光の周波数を安定化させる周波数安定化装置に関する。周波数安定化装置は、変調信号を用いてレーザ光の位相を変調する位相変調部と、位相変調部によって変調されたレーザ光を共振させる光共振部と、光共振部と変調信号とに基づき、レーザ装置によって照射されるレーザ光の周波数を調整するレーザ調整部とを備える。光共振部は、位相変調部によって変調されたレーザ光の周波数帯のうち、サイドバンドに対応する周波数のレーザ光を光共振部において共振させる。 【発明の効果】 【0009】 本開示の周波数安定化装置、および原子時計装置によれば、サイドバンドに対応する周波数のレーザ光を共振させることによってレーザ光の周波数を好適に安定化させることができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 実施の形態1に係る光格子型原子時計の機能ブロック図である。 光格子の概念図である。 実施の形態1に係る周波数安定化装置の機能ブロック図である。 レーザ光の周波数成分について説明するための図である。 エラー信号のシミュレーションを示すグラフである。 周波数安定化装置の周波数安定化処理を示すフローチャートである。 実施の形態2に係る周波数安定化装置の機能ブロック図である。 【発明を実施するための形態】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する