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公開番号
2025006335
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-01-17
出願番号
2023107061
出願日
2023-06-29
発明の名称
アミノ酸及び/又はアシルカルニチンの分析方法
出願人
株式会社島津製作所
,
国立大学法人島根大学
代理人
弁理士法人京都国際特許事務所
主分類
G01N
27/62 20210101AFI20250109BHJP(測定;試験)
要約
【課題】分析対象試料にアミノ酸やアシルカルニチンが含まれるかを高精度で判別する。
【解決手段】目的物質の第1及び第2MRMトランジションと、第1MRMトランジションの測定強度の第1基準値と、第1MRMトランジションの測定強度と第2MRMトランジションの測定強度比の第2基準値を設定し、第1及び第2MRMトランジションで分析対象試料をMRM測定して第1MRMトランジションの第1強度と第2MRMトランジションの第2強度を測定し(ステップ11、12)、第1強度の値を第1基準値と比較して目的物質が含まれるかを第1判定し(ステップ14)、第1判定において分析対象試料に含まれると判定した目的物質について第1強度の値と第2強度の値の比を第2基準値と比較して目的物質が含まれているかを第2判定する(ステップ18)、アミノ酸及びアシルカルニチンの分析方法。
【選択図】図10
特許請求の範囲
【請求項1】
アミノ酸又はアシルカルニチンである1乃至複数の目的物質のそれぞれについて、それぞれプリカーサイオンの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比の組である第1MRMトランジション及び第2MRMトランジションと、該第1MRMトランジションの測定強度に関する第1基準値と、該第1MRMトランジションの測定強度と該第2MRMトランジションの測定強度の比に関する第2基準値とを設定し、
前記目的物質ごとに設定された前記第1MRMトランジション及び前記第2MRMトランジションを用いて分析対象試料をMRM測定することにより、前記目的物質のそれぞれについて、該第1MRMトランジションの測定強度である第1強度と該第2MRMトランジションの測定強度である第2強度を測定し、
前記目的物質のそれぞれについて、前記第1強度の値を前記第1基準値と比較することにより、前記分析対象試料に当該目的物質が含まれる可能性があるか否かを判定する第1判定を行い、
前記第1判定において前記分析対象試料に含まれる可能性があると判定された目的物質について、前記第1強度の値と前記第2強度の値の比を前記第2基準値と比較することにより、該分析対象試料に当該目的物質が含まれているか否かを判定する第2判定を行う
ものである、アミノ酸及びアシルカルニチンの分析方法。
続きを表示(約 1,400 文字)
【請求項2】
前記第2判定において、以下の式を用いて前記目的物質のそれぞれのスコアを算出し、
スコア=100-(|(実際の試料の測定強度の比の値)-(測定強度の比の基準値)|/(測定強度の比の基準値)X100) …(1)
算出されたスコアの値を前記第2基準値と比較することにより、前記分析対象試料に当該目的物質が含まれているか否かを判定する、請求項1に記載のアミノ酸及びアシルカルニチンの分析方法。
【請求項3】
アミノ酸又はアシルカルニチンである1乃至複数の目的物質のそれぞれについて、プリカーサイオンの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比の組である第1MRMトランジションと、該第1MRMトランジションの測定強度に関する基準値と、該第1MRMトランジションを用いたMRM測定において当該目的物質とともに検出されうる夾雑物質が検出されない第2MRMトランジションとを設定し、
前記目的物質ごとに設定された前記第1MRMトランジション及び前記第2MRMトランジションを用いて分析対象試料をMRM測定することにより、前記目的物質のそれぞれについて、該第1MRMトランジションの測定強度である第1強度と該第2MRMトランジションの測定強度である第2強度を測定し、
前記目的物質のそれぞれについて、前記第1強度の値を前記基準値と比較することにより、前記分析対象試料に当該目的物質が含まれる可能性があるか否かを判定する第1判定を行い、
前記第1判定において前記分析対象試料に含まれる可能性があると判定された目的物質について、前記第2強度の値に基づいて該分析対象試料に該目的物質が含まれているか否かを判定する第2判定を行う
ものである、アミノ酸及びアシルカルニチンの分析方法。
【請求項4】
クロマトグラフのカラムを用いて前記分析対象試料に含まれる物質を相互に分離した後に、前記MRM測定を行う、請求項1又は3に記載のアミノ酸及びアシルカルニチンの分析方法。
【請求項5】
前記目的物質が、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、シトルリン、及びチロシンから選択されるアミノ酸、又は、遊離カルニチン(C0)、アセチルカルニチン(C2)、プロピオニルカルニチン(C3)、ブチリルカルニチン~パルミトイルカルニチン(C4~C18)、イソバレリルカルニチン、2-メチルブチリルカルニチン、ピバロイルカルニチン(C5)、チグリルカルニチン(C5:1)、グルタリルカルニチン(C5-DC)、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシ-2-メチルブチリル-カルニチン(C5-OH)、オクタノイルカルニチン(C8)、デカノイルカルニチン(C10)、ドデカノイルカルニチン(C12)、テトラデセノイルカルニチン(C14:1)、テトラデカノイルカルニチン(C14)、パルミトイルカルニチン(C16)、ステアリルカルニチン(C18)、オクタデセノイルカルニチン(C18:1)、ヒドロキシヘキサデカノイルカルニチン(C16-OH)、及びヒドロキシオクタデセノイルカルニチン(C18:1-OH)から選択されるアシルカルニチンである、請求項1又は3に記載のアミノ酸及びアシルカルニチンの分析方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象試料に含まれるアミノ酸及び/又はアシルカルニチンを分析する方法に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)
【背景技術】
【0002】
新生児の先天性代謝異常症等を発見して治療を行うために、新生児スクリーニング検査が広く実施されている。最近では、質量分析技術の急速な進展に伴い、タンデム型の質量分析装置を利用した新生児マススクリーニング検査が普及してきており、新生児の先天性代謝異常症の早期発見に貢献している(例えば非特許文献1)。
【0003】
こうした新生児マススクリーニング検査では、複数の特定の種類のアミノ酸やアシルカルニチンがそれぞれ異なる疾患と対応づけられており、疾患毎にカットオフ値が設定される。新生児から採取した血液由来の試料に含まれる、これらの特定の種類のアミノ酸やアシルカルニチンの量や濃度を、それぞれの物質に対応するカットオフ値と照合することにより各疾患のスクリーニングを行う。
【0004】
非特許文献1に開示されているように、タンデム型の質量分析装置を利用したスクリーニング(タンデムマス・スクリーニング)では、上記複数の特定の種類のアミノ酸やアシルカルニチンのそれぞれに予め設定されたMRMトランジションを用いた多重反応モニタリング(Multiple Reaction Monitoring: MRM)測定を行って各物質を定量し、それぞれの定量値を上記カットオフ値と照合する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
重松陽介、「質量分析法による新生児マススクリーニングの実相」、日本質量分析学会、Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan、Vol.64、No.4、2016年、pp.127-131
石川貴雄、手塚美智子、吉永美和、野町祥介、細海伸仁、矢野公一、「ワックス掛けによるタンデムマス検査におけるロイシン及びイソロイシン定量への影響について」、日本マススクリーニング学会誌、第30巻(3号)、2020年、pp.31(257)-43(269)
齋藤寧子、和田陽一、前川正充、呉繁夫、「エッセンシャルオイルにより新生児マススクリーニングで中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症が偽陽性となった3例」、Japanese Journal of Neonatal Screening、Vol.30(2)、2020年、pp.102(196)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、新生児マススクリーニング検査では、大量の検体(分析対象試料)を迅速に分析する必要があることから、オートサンプラにセットされた各試料を順次、移動相とともに、液体クロマトグラフ(LC)のカラムを通すことなく質量分析装置に導入する、フローインジェクション分析(Flow Injection Analysis: FIA)法による測定が行われている。フローインジェクション分析法では、カラムによる成分分離を行うことなく各試料を質量分析装置に導入するため、試料に含まれる様々な物質が同時にMRM測定に供される。
【0007】
例えば非特許文献1に記載されているように、C5アシルカルニチン(炭素数が5であるアシル基を有するアシルカルニチン)には、イソバレリルカルニチン(isovalerylcarnitine)以外に、ピバロイルカルニチン(pivaloylcarnitine)、2-メチルブチリルカルニチン(2-methylbutyrylcarnitine)、n-バレリルカルニチン(n-valerylcarnitine)という4つの異性体が含まれる。これらのうち、イソバレリルカルニチンと2-メチルブチリルカルニチンは疾患に関連する代謝物である一方、ピバロイルカルニチンは新生児に投与される薬剤(抗菌剤)に由来する代謝物である。そのため、C5アシルカルニチンのMRM測定における定量値がカットオフ値を超えており、スクリーニングで陽性と判定された場合でも、それが薬剤に由来するピバロイルカルニチンによる偽陽性である可能性がある。
【0008】
上記は分析対象試料そのものに含まれる物質(内因性物質)に由来する偽陽性の例であるが、試料の採取時や調製時に混入した物質(外因性物質)が偽陽性を生じさせる場合もある。例えば、非特許文献2には、メープルシロップ尿症のスクリーニング検査において、ワックスがけに用いられる薬剤に含まれるジエチレングリコールモノエチルエーテルが試料の調製時に混入し、ロイシン及びイソロイシンとともに検出されることにより偽陽性が生じることが記載されている。また、非特許文献3には、中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠乏症のスクリーニング検査において、産後の母親のアロマセラピーで使用されるエッセンシャルオイルに含まれる成分が試料の採取時に混入し、オクタノイルカルニチン(C8)やデカノイルカルニチン(C10)とともに測定されることにより偽陽性が生じることが記載されている。これらの外因性物質は、分析対象のアミノ酸やアシルカルニチンの異性体ではないが、新生児マススクリーニング検査の多くで用いられるタンデム四重極型の質量分析装置では、整数質量(質量電荷比)が同じイオンを識別することが困難であるため、分析対象のアミノ酸やアシルカルニチンと同じ整数質量を持つ物質によっても偽陽性が生じうる。
【0009】
そのため、従来、スクリーニング検査で陽性である場合には、カラムを用いたクロマトグラフ質量分析などの他の分析法による追加検査を実施し、詳細な解析を行って疾病の有無を確定している。一般的に、新生児スクリーニング検査では新生児から採血して試料を調製するため、上記のような追加検査の実施は新生児にとって身体的に大きな負担となる。また、スクリーニング検査で陽性になると、新生児の親にとって心理的に大きな負担となる。さらに、偽陽性が多く生じるほど追加検査を要する試料の数が増えるため、分析者の作業量も増大し、負担が大きくなる。そのため、スクリーニング検査における偽陽性を従来よりも低減する技術が求められている。
【0010】
ここでは具体的なアミノ酸やアシルカルニチンを挙げて従来技術における課題を説明したが、他の種類のアミノ酸やアシルカルニチンを測定するスクリーニング検査を行う場合にも上記同様の問題があった。
(【0011】以降は省略されています)
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