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公開番号2024176500
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-19
出願番号2023095063
出願日2023-06-08
発明の名称金属亜鉛回収方法
出願人日本製鉄株式会社
代理人弁理士法人太陽国際特許事務所
主分類C22B 19/20 20060101AFI20241212BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】鉄、亜鉛及び銅を少なくとも含有する浸出処理対象物から、高純度の金属亜鉛を回収するこができる金属亜鉛回収方法の提供。
【解決手段】鉄成分を含有し、かつ、少なくとも亜鉛及び銅を金属及び酸化物のいずれか1種以上の形態で含有する固体の浸出処理対象物から金属亜鉛を回収する、金属亜鉛回収方法であって、浸出処理対象物と、アンモニウムイオンを含むpH7.5~pH14.0のアルカリ浸出液とを接触させて、亜鉛及び銅を亜鉛イオン及び銅イオンとしてアルカリ浸出液に浸出させた浸出後液を得る浸出工程と、浸出後液に対し、銅イオンを分離する銅分離操作を施し、亜鉛イオンを含有する亜鉛イオン含有液を得る不純物分離工程と、亜鉛イオン含有液から、亜鉛イオンを還元し電解析出させて純度90.00質量%以上の金属亜鉛として回収する亜鉛電解析出工程と、を有する金属亜鉛回収方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
鉄成分を含有し、かつ、少なくとも亜鉛及び銅を金属及び酸化物のいずれか1種以上の形態で含有する固体の浸出処理対象物から金属亜鉛を回収する、金属亜鉛回収方法であって、
前記浸出処理対象物と、アンモニウムイオンを含むpH7.5~pH14.0のアルカリ浸出液とを接触させて、前記亜鉛及び銅を亜鉛イオン及び銅イオンとして前記アルカリ浸出液に浸出させた浸出後液を得る浸出工程と、
前記浸出後液に対し、前記銅イオンを分離する銅分離操作を施し、前記亜鉛イオンを含有する亜鉛イオン含有液を得る不純物分離工程と、
前記亜鉛イオン含有液から、前記亜鉛イオンを還元し電解析出させて純度90.00質量%以上の金属亜鉛として回収する亜鉛電解析出工程と、
を有する金属亜鉛回収方法。
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記浸出処理対象物が、更に錫を金属の形態で含有する、請求項1に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項3】
前記浸出工程は、前記アルカリ浸出液がpH12.5~pH14.0であり、前記亜鉛、銅及び錫を亜鉛イオン、銅イオン及び錫イオンとして前記アルカリ浸出液に浸出させた浸出後液を得る工程であり、
前記不純物分離工程は、前記銅分離操作の前に、前記浸出後液に対し、カルシウム又はマグネシウムの炭酸化物、水酸化物、酸化物、塩化物、ギ酸化物、及び酢酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を投入して、前記錫イオンを錫酸カルシウム、及び錫酸マグネシウムの少なくとも一方として分離する錫分離操作を施し、前記錫分離操作を経た前記浸出後液に対し前記銅分離操作を施す工程である、
請求項2に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項4】
前記不純物分離工程における前記銅分離操作は、前記浸出後液を、銅イオンを抽出する抽出剤を含んだ有機溶媒と混合し、前記銅イオンを前記抽出剤に抽出させて比重差により分離することで、前記銅イオンを分離する操作である、請求項1に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項5】
前記不純物分離工程における前記銅分離操作は、前記浸出後液から電解析出により前記銅イオンを析出させることで、前記銅イオンを分離する操作である、請求項1に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項6】
前記不純物分離工程における前記銅分離操作は、前記浸出後液に硫化水素及び硫化物イオンの一方又は両方を投入して酸化還元電位を調整し、前記銅イオンを硫化銅として析出させることで、前記銅イオンを分離する操作である、請求項1に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項7】
前記亜鉛電解析出工程は、前記亜鉛イオン含有液がpH7.5~pH14.0である、請求項1に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項8】
前記不純物分離工程後かつ前記亜鉛電解析出工程前に、
前記不純物分離工程で得た前記亜鉛イオン含有液を、亜鉛イオンを抽出する抽出剤を含んだ有機溶媒と混合し静置することで、前記亜鉛イオンを前記有機溶媒に抽出して亜鉛イオン含有有機溶媒を得る抽出工程と、
前記亜鉛イオン含有有機溶媒を酸性水溶液と混合し静置することで、前記亜鉛イオンを前記酸性水溶液に逆抽出して亜鉛イオン含有酸性水溶液を得る逆抽出工程と、を有し、
前記亜鉛電解析出工程は、前記亜鉛イオン含有液として前記亜鉛イオン含有酸性水溶液を用いる、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項9】
前記不純物分離工程における前記銅分離操作は、
前記浸出後液を、亜鉛イオン及び銅イオンを抽出する抽出剤を含んだ有機溶媒と混合し静置することで、前記亜鉛イオン及び前記銅イオンを前記有機溶媒に抽出して亜鉛イオン銅イオン含有有機溶媒を得る抽出操作と、
前記亜鉛イオン銅イオン含有有機溶媒を酸性水溶液と混合し静置することで、前記亜鉛イオン及び前記銅イオンを前記酸性水溶液に逆抽出して亜鉛イオン銅イオン含有酸性水溶液を得る逆抽出操作と、を経た後に、
前記亜鉛イオン銅イオン含有酸性水溶液から電解析出により前記銅イオンを析出させることで、前記銅イオンを分離して、前記亜鉛イオンを含有する亜鉛イオン含有酸性水溶液を得る操作であり、
前記亜鉛電解析出工程は、前記亜鉛イオン含有液として前記亜鉛イオン含有酸性水溶液を用いる、請求項1に記載の金属亜鉛回収方法。
【請求項10】
前記亜鉛イオン銅イオン含有酸性水溶液はpH-1.0~pH4.0である、請求項9に記載の金属亜鉛回収方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄成分を含有し、かつ、少なくとも亜鉛及び銅を金属及び酸化物のいずれか1種以上の形態で含有する固体の浸出処理対象物から金属亜鉛を回収する、金属亜鉛回収方法に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造の原料となるスクラップは、電線や導線として使用される銅線や、他の銅又は銅合金製部品の混入が主な原因で、銅含有量が高くなっていることが多い。また、スクラップは、亜鉛めっき鋼板等の表面処理鋼板を含み、スクラップ中には、鋼板の表面処理成分である亜鉛を少量ながら含んでいる。フェロスクラップとしては、例えば、廃自動車、廃電気製品、機械屑等や、加工時に発生する切断屑等がある。
【0003】
鉄鋼製造プロセスの副生成物であるダストは、一貫製鉄所における焼結、高炉、転炉等や、電炉で発生し、主成分は鉄であるが、鉄成分以外に、亜鉛を含んでいる。スケールは、連鋳や熱延で、鋼材表面が熱間で酸化した際に発生する酸化鉄で、主成分は酸化鉄であるが、少量ながら、銅を含んでいる場合がある。
【0004】
鉄鋼製造プロセスの副生成物であるスラッジは、めっき鋼板製造時に発生する酸性廃液やめっき廃液を中和処理する際に発生するスラッジで、母材中の鉄以外に、めっき成分である、亜鉛やニッケルを含んでおり、これらの金属は、水酸化物として存在している。
【0005】
銅は、鉄鋼製品の機械的性質、加工性等の性能に悪影響を及ぼす元素であり、銅が混入したスクラップを鋼溶製の原料として用いると、低級な品質の鋼しか製造できない。そのため、銅をスクラップから除去することが好ましく、従来から様々な脱銅方法について研究されている。
【0006】
例えば特許文献1には、第1の密閉容器内で、鉄成分を含有し、かつ、銅および亜鉛の一方又は両方を、金属、酸化物、水酸化物、および塩化物のうちのいずれか1種以上の形態で含有する固体の浸出処理対象物を、pH7.5~11.5の範囲のイオン化したアンモニウム塩を含有する浸出液に接触させて、前記固体の浸出処理対象物中の前記銅および亜鉛の一方又は両方を、アンミン錯体イオンとして前記浸出液に溶出させて、前記アンミン錯体イオンと前記固体の浸出処理対象物の残部とを含む浸出後液を生成する浸出工程と、前記浸出後液を固液分離して、前記アンミン錯体イオンを含む液相である固液分離後の浸出後液と、前記固体の浸出処理対象物の残部とに分ける第1の固液分離工程と、第2の密閉容器内で、前記固液分離後の浸出後液に、硫化水素を含有するガス、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、硫化マグネシウム、および硫化カルシウムのうちから選ばれる少なくとも1種の硫化剤を添加して、前記固液分離後の浸出後液中のアンミン錯体イオンを分解し、銅および亜鉛の一方又は両方を固体硫化物として析出させると共に、イオン化したアンモニウム塩を再生させて、前記固体硫化物と前記アンモニウム塩とを含有する再生後液とする浸出液再生工程と、前記再生後液を固液分離して、前記銅および亜鉛の一方又は両方を含む固体硫化物と、前記イオン化したアンモニウム塩を含む液相である固液分離後の再生後液とに分離する第2の固液分離工程と、を有し、前記第2の固液分離工程で分離した液相の再生後液を、前記浸出工程で使用する浸出液として使用する、浸出処理対象物からの銅又は亜鉛の分離方法、が開示されている。
【0007】
また特許文献2には、製鋼用電気炉からの煙塵から亜鉛や鉛、銅、カドミウムのような金属を抽出するための方法であって、(a)塩化アンモニウムおよび塩化ナトリウムの水溶液を使用して前記煙塵を処理し、前記亜鉛、前記カドミウムおよび前記銅をアンミン錯塩として溶解すると共に前記鉛をクロロ錯塩として溶解するステップと;(b)生成された溶液と固体残渣とを分離するステップと;(c)亜鉛粉末を使用して(b)で得られた溶液を処理し、電気化学列において前記亜鉛より貴な金属を置換によって沈降させるステップと;(d)該溶液と(c)において得られた沈降物とを分離するステップと;(e)電解セル中で、前記亜鉛をカソードに付着させると共にアノードでは酸素を発生させ、(d)において得られた溶液から前記亜鉛を電解採集するステップと;(f)前記電気炉からの煙塵を(e)によって得られた亜鉛減損溶液でさらに処理するステップと;(g)前記電気炉に(b)からの前記残渣を再循環させ、酸化鉄を減少させると共に該残渣に含まれる前記亜鉛をフェライト亜鉛としてくん蒸するステップと;を含む金属回収方法、が開示されている。
【0008】
また特許文献3には、亜鉛メッキ鋼材を含むフェロスクラップを、酸素の存在下でアンモニアとアンモニウム塩を含有する水溶液で処理して、スクラップ中の亜鉛をアンミン亜鉛錯体として溶解した後、スクラップを水溶液から分離する工程1、および工程1で得られた水溶液を加熱してアンモニア分を蒸発させた後、沈殿した亜鉛塩を回収する工程2、からなることを特徴とする、フェロスクラップから亜鉛を分離・回収する方法、が開示されている。
【0009】
また特許文献4には、小型モーター屑または銅あるいは銅合金を含む鉄クラッド材を加熱またはショットブラスト処理することによって銅線上のエナメル被覆を破壊して銅線に浸出容易性を与えた後、浸出槽に投入し、2価の銅アンミンを浸出剤とする浸出液によって銅のみを選択的に溶出させ、銅の溶出した浸出液から、銅を回収することを特徴とするモーター屑などから銅・鉄等を分離回収する方法、が開示されている。
【0010】
また特許文献5には、銅(I)イオン及び貴金属イオン及び銅(I)イオン以外の金属イオンを含む水溶液を処理して銅(I)イオンを含有する水溶液を取り出す方法において、(a)銅(I)イオン及び貴金属イオン及び銅(I)イオン以外の金属イオンを含む水溶液を金属銅と接触させて、貴金属を析出させて分離除去した後、(b)有機相と接触させて銅(I)イオン以外の金属イオンを選択的に有機相に移動させ、銅(I)イオンを含有する水溶液を水相の状態として、(c)水相を有機相から分離した後、銅(I)イオンを含有する水溶液として取り出し、(d)銅(I)イオン以外の金属イオンを含有する有機相を水により洗浄し、(e)銅(I)イオン以外の金属イオンを含有する有機相について、銅(I)イオン以外の金属イオンを逆抽出するとともに有機相を再生し、(f)再生された有機相を前記(b)工程に循環使用することを特徴する銅(I)イオン及び貴金属イオン及び銅(I)イオン以外の金属イオンを含む水溶液を処理して銅(I)イオンを含有する水溶液を取り出す方法、が開示されている。
(【0011】以降は省略されています)

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