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公開番号2024125075
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-13
出願番号2023033165
出願日2023-03-03
発明の名称鋼材
出願人日本製鉄株式会社
代理人アセンド弁理士法人
主分類C22C 38/28 20060101AFI20240906BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】高強度と、優れた破壊靭性とを両立する鋼材を提供する。
【解決手段】本開示による鋼材は、明細書に記載の化学組成を有し、式(1)を満たし、降伏強度が862MPa以上である。本開示による鋼材中において、円相当径が50nm以下のTi含有粒子の個数密度をNDT個/μm2と定義し、円相当径が100nm以下のMo含有粒子の個数密度をNDM個/100μm2と定義したとき、NDTが50個/μm2以上であり、NDTと、NDMとが、式(2)を満たす。
Mn×Sp≦27.0 (1)
NDM/NDT≧0.30 (2)
ここで、式(1)中の「Mn」には、Mn含有量が質量%で代入され、「Sp」には、S含有量がppmで代入される。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
鋼材であって、
質量%で、
C:0.20~0.45%、
Si:1.00%以下、
Mn:0.01~1.00%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.001~0.100%、
Cr:0.1~2.0%、
Mo:0.20~1.00%、
Ti:0.001~0.300%、
N:0.001~0.200%、
Nb:0~0.300%、
V:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Co:0~0.50%、
Ni:0~0.50%、
希土類元素:0~0.020%、
Cu:0~0.50%、及び、
B:0~0.0100%を含有し、
Ca:0.0005~0.0200%、及び、
Mg:0.0005~0.0200%からなる群から選択される1元素以上を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
式(1)を満たし、
降伏強度が862MPa以上であり、
前記鋼材中において、
円相当径が50nm以下のTi含有粒子の個数密度をNDT個/μm
2
と定義し、
円相当径が100nm以下のMo含有粒子の個数密度をNDM個/100μm
2
と定義したとき、
前記NDTが50個/μm
2
以上であり、
前記NDTと、前記NDMとが、式(2)を満たす、
鋼材。
Mn×Sp≦27.0 (1)
NDM/NDT≧0.30 (2)
ここで、式(1)中の「Mn」には、Mn含有量が質量%で代入され、「Sp」には、S含有量がppmで代入される。
続きを表示(約 280 文字)【請求項2】
請求項1に記載の鋼材であって、
Nb:0.001~0.300%、
V:0.01~0.50%、
W:0.01~0.50%、
Co:0.01~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
希土類元素:0.001~0.020%、
Cu:0.01~0.50%、及び、
B:0.0001~0.0100%からなる群から選択される1元素以上を含有する、
鋼材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鋼材であって、
前記鋼材は継目無鋼管である、
鋼材。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は鋼材に関し、さらに詳しくは、油井での使用に適した鋼材に関する。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
油井及びガス井(以下、油井及びガス井を総称して、単に「油井」という)の深井戸化により、油井用鋼管に代表される油井用鋼材の高強度化が要求されている。具体的には、80ksi級(降伏強度が80~95ksi未満、つまり、552~655MPa未満)や、95ksi級(降伏強度が95~110ksi未満、つまり、655~758MPa未満)の油井用鋼材が広く利用されており、最近ではさらに、110ksi級(降伏強度が758~862MPa未満)の油井用鋼材が求められ始めている。
【0003】
油井ではさらに、腐食性を有する硫化水素ガス(H
2
S)や炭酸ガス(CO
2
)等を含有する場合がある。そのため、油井用鋼材としての使用が想定される鋼材には、高強度だけでなく、優れた耐食性も求められる。また、油井用鋼材では、使用中の鋼材には応力が負荷される。そのため、油井用鋼材の優れた耐食性の指標として耐硫化物応力割れ性(耐Sulfide Stress Cracking性:以下、耐SSC性という)が用いられてきた。
【0004】
鋼材の強度と耐SSC性とを高める技術が、特開2006-28612号公報(特許文献1)、国際公開第2008/123422号(特許文献2)、及び、特開2017-166060号公報(特許文献3)に提案されている。
【0005】
特許文献1に開示される鋼材は、鋼管用鋼であって、質量%で、C:0.2~0.7%、Si:0.01~0.8%、Mn:0.1~1.5%、S:0.005%以下、P:0.03%以下、Al:0.0005~0.1%、Ti:0.005~0.05%、Ca:0.0004~0.005%、N:0.007%以下、Cr:0.1~1.5%、Mo:0.2~1.0%、残部がFe及び不純物からなる。この鋼材はさらに、Ca、Al、Ti、N、O及びSを含む非金属介在物の介在物中の(Ca%)/(Al%)が0.55~1.72、かつ、(Ca%)/(Ti%)が0.7~19である。この鋼材は、758MPaを超える高い降伏強度と、優れた耐SSC性とを有する、と特許文献1には記載されている。
【0006】
特許文献2に開示される鋼材は、低合金鋼であって、質量%で、C:0.10~0.20%、Si:0.05~1.0%、Mn:0.05~1.5%、Cr:1.0~2.0%、Mo:0.05~2.0%、Al:0.10%以下、及び、Ti:0.002~0.05%を含有し、かつ、Ceq(=C+(Mn/6)+(Cr+Mo+V)/5)が0.65以上であり、残部がFe及び不純物からなり、不純物中において、P:0.025%以下、S:0.010%以下、N:0.007%以下、B:0.0003%未満である。この鋼材はさらに、粒径が1μm以上のM
23

6
型析出物が0.1個/mm
2
以下である。この鋼材は、654~793MPaの降伏強度を有し、高圧の硫化水素環境でも優れた耐SSC性を有する、と特許文献2には記載されている。
【0007】
特許文献3に開示される鋼材は、高強度油井用鋼管用素材であって、質量%で、C:0.20~0.45%、Si:0.05~0.40%、Mn:0.3~0.9%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Al:0.005~0.10%、N:0.001~0.006%、Cr:0.1~0.8%、Mo:0.1~1.6%、V:0.02~0.2%、Nb:0.001~0.04%、B:0.0003~0.0030%、O(酸素):0.0030%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる。この鋼材はさらに、ロックウェル硬さHRCが式(15.6×[%C]+29.2≦HRC<60.5×[%C]+31.1)を満たす。この鋼材によれば、758~862MPa未満の降伏強度と、優れた耐SSC性とを有する鋼管が得られる、と特許文献3には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2006-28612号公報
国際公開第2008/123422号
特開2017-166060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、油井用鋼材では、輸送中や掘削中において、鋼材の表面に微小な疵が形成される場合がある。油井用鋼材ではさらに、上述のとおり、使用中の鋼材に応力が負荷される。そのため、表面に微小な疵が形成された鋼材に応力が負荷されると、微小な疵がき裂の起点となり、き裂が伝播する可能性がある。したがって、油井用鋼材には、微小な疵が形成されていても、破壊に対する抵抗力を有していることが求められる。
【0010】
本明細書において、鋼材に微小な疵が形成され、応力が負荷された場合において、破壊に対する抵抗力が高いことを、優れた破壊靭性を有するという。すなわち、破壊靭性が優れるほど、微小な疵が形成された鋼材に応力が負荷されても、破壊が生じにくい。一方、一般に、鋼材の降伏強度が高いほど、破壊靭性が低下しやすい傾向がある。そのため、油井用鋼材には、高い降伏強度と、優れた破壊靭性との両立が求められる。しかしながら、上記特許文献1~3では、鋼材の破壊靭性について、検討されていない。
(【0011】以降は省略されています)

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