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公開番号2024160413
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-13
出願番号2024147493,2020559324
出願日2024-08-29,2019-12-12
発明の名称ゲノム編集された細胞の製造方法
出願人国立大学法人九州大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 15/09 20060101AFI20241106BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】ゲノム編集された細胞の製造方法等の提供。
【解決手段】(A)(a1)スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加されたガイドRNA、(a2)標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有するスペーサー配列を含むガイドRNA、及び(a3)前記(a1)若しくは前記(a2)のガイドRNAを発現し得る発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種と、(B)Casタンパク質及び前記Casタンパク質を発現し得る発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種と、を細胞に導入する工程を含む、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
(A)(a1)スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加されたガイドRNA、(a2)標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有するスペーサー配列を含むガイドRNA、及び(a3)前記(a1)若しくは前記(a2)のガイドRNAの発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種と、
(B)Casタンパク質及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種と、
を細胞に導入する工程を含む、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
続きを表示(約 760 文字)【請求項2】
前記(A)が、スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加され、且つ前記スペーサー配列が、標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有するスペーサー配列である、ガイドRNA又はそれをコードする発現ベクターである、請求項1に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
【請求項3】
前記スペーサー配列の5’末端に付加されたヌクレオチド残基が、全て同一のヌクレオチド残基である、請求項1又は2に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
【請求項4】
前記スペーサー配列の5’末端に付加されたヌクレオチド残基が、シトシン残基又はグアニン残基である、請求項3に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
【請求項5】
さらに、(C)ドナーベクターを細胞に導入する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
【請求項6】
前記Casタンパク質がCas9タンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
【請求項7】
スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加されたガイドRNA。
【請求項8】
前記スペーサー配列が、標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有する、請求項7に記載のガイドRNA。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のガイドRNAの発現ベクター。
【請求項10】
さらに、Casタンパク質を発現可能な、請求項9に記載の発現ベクター。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム編集の分野に関する。本発明は、特に、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法、当該製造方法に使用可能なガイドRNA、発現ベクター、及びキット、並びにゲノム編集パターンの予測方法、に関する。さらに、本発明は、ゲノム編集パターンの解析方法、及び当該解析方法に使用可能な細胞に関する。
本願は、2018年12月12日に、日本に出願された特願2018-232946号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
続きを表示(約 4,900 文字)【背景技術】
【0002】
クラスター化した規則的な配置の短い回文反復配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats:CRISPR)は、Cas(CRISPR-associated)遺伝子と共に、細菌及び古細菌において侵入外来核酸に対する獲得耐性を提供する適応免疫系を構成することが知られている。CRISPRは、ファージ又はプラスミドDNAに起因することが多く、大きさの類似するスペーサーと呼ばれる独特の可変DNA配列が間に入った、24~48bpの短い保存された反復配列からなる。また、リピート及びスペーサー配列の近傍には、Casタンパク質ファミリーをコードする遺伝子群が存在する。
【0003】
CRISPR/Casシステムにおいて、外来性のDNAは、Casタンパク質ファミリーによって30bp程度の断片に切断され、CRISPRに挿入される。Casタンパク質ファミリーの一つであるCas1及びCas2タンパク質は、外来性DNAのproto-spacer adjacent motif(PAM)と呼ばれる塩基配列を認識して、その上流を切り取って、宿主のCRISPR配列に挿入し、これが細菌の免疫記憶となる。免疫記憶を含むCRISPR配列が転写されて生成したRNA(pre-crRNAと呼ぶ。)は、一部相補的なRNA(trans-activating crRNA:tracrRNA)と対合し、Casタンパク質ファミリーの一つであるCas9タンパク質に取り込まれる。Cas9に取り込まれたpre-crRNA及びtracrRNAはRNAaseIIIにより切断され、外来配列(ガイド配列)を含む小さなRNA断片(CRISPR-RNAs:crRNAs)となり、Cas9-crRNA-tracrRNA複合体が形成される。Cas9-crRNA-tracrRNA複合体はcrRNAと相補的な外来侵入性DNAに結合し、DNAを切断する酵素(nuclease)であるCas9タンパク質が、外来侵入性DNAを切断することよって、外から侵入したDNAの機能を抑制及び排除する。
【0004】
Cas9タンパク質は外来侵入性DNA中のPAM配列を認識して、その上流で二本鎖DNAを平滑末端になるように切断する。PAM配列の長さや塩基配列は細菌種によってさまざまであり、Streptococcus pyogenes(S.pyogenes)では「NGG」の3塩基を認識する。Streptococcus thermophilus(S.thermophilus)は2つのCas9を持っており、それぞれ「NGGNG」又は「NNAGAA」の5~6塩基をPAM配列として認識する。(Nは任意の塩基を表す)。PAM配列の上流の何bpのところを切断するかも細菌種によって異なるが、S.pyogenesを含め大部分のCas9オルソログはPAM配列の3塩基上流を切断する。
【0005】
近年、細菌でのCRISPR/Casシステムを、ゲノム編集に応用する技術が盛んに開発されている。crRNAとtracrRNAを融合させて、tracrRNA-crRNAキメラ(sgRNA)として発現させ、活用している。これによりRNA誘導型ヌクレアーゼ(RNA-guided nuclease:RGN)を呼び込み、目的の部位でゲノムDNAを切断する。
CRISPR/Casシステムには、I型、II型、III型があるが、ゲノム編集で用いるのはもっぱらII型のCRISPR/Casシステムであり、II型ではRGNとしてCas9タンパク質が用いられている。S.pyogenes由来のCas9タンパク質はNGGという3つの塩基をPAM配列として認識するため、グアニンが2つ並んだ配列がありさえすればその上流を切断できる。
CRISPR/Casシステムを用いた方法は、標的DNA配列と相同な配列を有する短いsgRNAを合成するだけでよく、単一のタンパク質であるCas9タンパク質を用いてゲノム編集ができる。そのため、従来用いられていたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)やトランス活性化因子様作動体(TALEN)のようにDNA配列ごとに異なる大きなタンパク質を合成する必要がなく、簡便かつ迅速にゲノム編集を行うことができる。
例えば、特許文献1には、S.pyogenes由来のCRISPR/Casシステムを活用したゲノム編集技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
国際公開第2014/093661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲノム編集により二本鎖切断されたDNAは、相同組み換え修復(Homologous Directed Repair:HDR)又は非相同末端再結合(Non-Homologous End-Joining Repair:NHEJ)により修復されることが知られている。NHEJの際には、修復の際に挿入及び/又は欠失(insertion/deletion:indel)が高頻度で誘導されるため、予期せぬ遺伝子変異が生じるおそれがある。
例えば、疾患遺伝子と正常遺伝子とをヘテロに有する場合、ゲノム編集により疾患遺伝子をノックアウトしようとすると、正常遺伝子にも高頻度で変異が誘導されるおそれがある。また、HDRにより正常遺伝子をノックインしようとしても、両アレルでノックインが生じる確率は極めて低い。そのため、ノックインが誘導されなかったアレルでは、NHEJによりindelが導入されるおそれがある。
そのため、ゲノム編集により両方のアレルで二本鎖切断が生じた場合、片方のアレルに予期せぬ変異が誘導されるリスクがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法、並びに前記方法に使用可能なガイドRNA、発現ベクター、キットを提供することを目的とする。さらに、ゲノム編集パターンの予測方法、並びにゲノム編集パターンの解析方法、及び前記解析方法に使用可能な細胞を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
[1](A)(a1)スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加されたガイドRNA、(a2)標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有するスペーサー配列を含むガイドRNA、及び(a3)前記(a1)若しくは前記(a2)のガイドRNAの発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種と、(B)Casタンパク質及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種と、を細胞に導入する工程を含む、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
[2]前記(A)が、スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加され、且つ前記スペーサー配列が、標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有するスペーサー配列である、ガイドRNA又はそれをコードする発現ベクターである、[1]に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
[3]前記スペーサー配列の5’末端に付加されたヌクレオチド残基が、全て同一のヌクレオチド残基である、[1]又は[2]に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
[4]前記スペーサー配列の5’末端に付加されたヌクレオチド残基が、シトシン残基又はグアニン残基である、[3]に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
[5]さらに、(C)ドナーベクターを細胞に導入する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
[6]前記Casタンパク質がCas9タンパク質である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法。
[7]スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加されたガイドRNA。
[8]前記スペーサー配列が、標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有する、[7]に記載のガイドRNA。
[9][7]又は[8]に記載のガイドRNAの発現ベクター。
[10]さらに、Casタンパク質を発現可能な、[9]に記載の発現ベクター。
[11]前記Casタンパク質がCas9タンパク質である、[10]に記載の発現ベクター。
[12](A)(a1)スペーサー配列の5’末端に1個以上のヌクレオチド残基が付加されたガイドRNA、(a2)標的配列に対して1塩基又は複数塩基のミスマッチを有するスペーサー配列を含むガイドRNA、及び(a3)前記(a1)若しくは前記(a2)のガイドRNAの発現ベクター、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造キット。
[13](B)Casタンパク質及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、[12]に記載の製造キット。
[14](i)ガイドRNA若しくはその発現ベクター、及びCasタンパク質若しくはその発現ベクターを細胞に導入してゲノム編集を行う工程、(ii)前記ゲノム編集を行った細胞からDNAを抽出する工程、(iii)前記DNAから標的領域を含むDNA断片を増幅する工程、(iv)前記増幅したDNA断片の配列解析を行い、前記標的領域へのindel誘導率(P)を求める工程、及び(v)下記式(m)若しくは(m1)及び(b)若しくは(b1)により、片側アレルのみへのindel誘導率(mono)及び両側アレルへのindel誘導率(bi)を求める工程、を含む、ゲノム編集パターンの予測方法。
mono=2×P×(1-P) ・・・(m)
bi=P

・・・(b)
mono=-1.303P

+1.2761P+0.0274 ・・・(m1)
bi=0.6515P

+0.3619P-0.0137 ・・・(b1)
[15]一方のアレルに、局在化タンパク質コード配列と、切断部位と、第1の蛍光タンパク質コード配列と、がこの順にインフレームで連結されたキメラ遺伝子を含み、他方のアレルに、前記局在化タンパク質コード配列と、前記切断部位と、第2の蛍光タンパク質コード配列と、がこの順にインフレームで連結されたキメラ遺伝子を含む、細胞。
[16](I)[15]に記載の細胞に、前記切断部位を標的とするガイドRNA若しくはその発現ベクター、及びCasタンパク質若しくはその発現ベクターを導入してゲノム編集を行う工程、(II)前記工程(I)の後、前記細胞の蛍光パターンを解析する工程、並びに(III)前記工程(II)で解析した蛍光パターンに基づいて、ゲノム編集パターンを判定する工程、を含む、ゲノム編集パターンの解析方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、片側アレルのみがゲノム編集された細胞の製造方法、並びに前記方法に使用可能なガイドRNA、発現ベクター、キットが提供される。さらに、ゲノム編集パターンの予測方法、並びにゲノム編集パターンの解析方法、及び前記解析方法に使用可能な細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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