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公開番号
2024160009
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-11-08
出願番号
2024151327,2023137269
出願日
2024-09-03,2019-04-19
発明の名称
凍結保存液
出願人
イビデン株式会社
代理人
弁理士法人朝日奈特許事務所
主分類
C12N
1/04 20060101AFI20241031BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】細胞生存率の高い生体試料用の凍結保存液、生体試料の凍結保存方法、および生体試料を長期間安定的に保存する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶媒中に、3000を超え、500000以下の粘度平均分子量を有し、主鎖に六員環構造を含む多糖類またはその塩を含む生体試料用の凍結保存液、多糖類またはその塩を含む凍結保存液中に生体試料を含ませる工程を含む凍結保存方法、生体試料を保存する方法、および、多糖類またはその塩からなる、生体試料の凍結保存剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
溶媒中に、3000を超え、500000以下の粘度平均分子量を有し、主鎖に六員環構造を含む多糖類またはその塩を含む生体試料用の凍結保存液。
続きを表示(約 590 文字)
【請求項2】
前記多糖類が、デキストランを除く多糖類である請求項1記載の凍結保存液。
【請求項3】
前記多糖類が、ペントース、ヘキソースもしくはウロン酸またはそれらの組合せを繰り返し単位として含む請求項1または2記載の凍結保存液。
【請求項4】
前記多糖類が、アミノ糖を繰り返し単位として含む請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結保存液。
【請求項5】
前記多糖類は、その官能基が修飾されていない請求項1~4のいずれか1項に記載の凍結保存液。
【請求項6】
前記多糖類が、10000以上の粘度平均分子量を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の凍結保存液。
【請求項7】
前記多糖類が、ヒアルロン酸またはプルランである請求項1記載の凍結保存液。
【請求項8】
凍結保存液中の前記多糖類の濃度が、5w/v%以上、20w/v%以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の凍結保存液。
【請求項9】
細胞内非浸透型の凍結保存液である請求項1~8のいずれか1項に記載の凍結保存液。
【請求項10】
前記生体試料が、細胞、組織、または、膜もしくは凝集体である組織様物である請求項1~9のいずれか1項に記載の凍結保存液。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存液に関する。また、本発明は、凍結保存液を用いた生体試料の凍結保存方法、生体試料を保存する方法および生体試料の凍結保存剤に関する。
続きを表示(約 2,100 文字)
【背景技術】
【0002】
近年の再生医療研究の飛躍的な発展に伴い、ヒトにのみならず獣医分野においても細胞治療などの再生医療が積極的に行われている。生体から採取した骨髄由来間葉系幹細胞や脂肪由来間葉系幹細胞は、採取の後に大量に増やし、上記のような再生医療や再生医療研究に用いられる。この際、余剰に増やした細胞を凍結保存し、適宜使用することが一般的である。また、このような細胞の安定供給に対する需要も高まっている。
【0003】
細胞の凍結保存メカニズムにおいて、凍結および/または解凍の過程で細胞内に氷結晶が成長すると、細胞膜や細胞内構造が損傷を受けたり、細胞のタンパク質が変性したりして細胞が致命的なダメージを受けてしまうことが知られている。したがって、細胞を凍結保存する際には、細胞内凍結を防ぐことが重要であり、通常、細胞の凍結保存には、メチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、プロピレングリコールなどの低分子化合物が細胞内浸透型の凍結保護試薬として、培養培地などの緩衝液に加えることにより用いられている(特許文献1)。このうち、DMSOが最もよく用いられており、細胞や細胞小器官を保護する効果は良好である。しかしながら、細胞内浸透型の凍結保存液では、細胞内に凍結保護試薬である低分子化合物が浸透するため、凍結保護試薬の細胞への影響が懸念されている(非特許文献1)。
【0004】
そこで、化学物質の代わりに、凍結保護試薬として天然の凍結保護剤を利用する試みも行われている。例えば、二糖、オリゴ糖、または高分子多糖が非浸透型の凍結保護試薬として、培養培地などの緩衝液に加えることが知られている。
【0005】
また、ハイドロゲルを形成する架橋体内に生体成分を保持させる方法も検討されている。特許文献2には、重量平均分子量が5000~400万である原料のヒアルロン酸に、水酸基と反応して架橋構造を形成する置換基を有する側鎖が導入された修飾ヒアルロン酸を原料とした生体成分用保存剤が記載されている。修飾ヒアルロン酸は、ポリビニルアルコールなどの複数の水酸基を有する化合物の水酸基と反応して修飾ヒアルロン酸を架橋した架橋物となり、この寒天状のハイドロゲル中に生体成分が包埋されることにより保存剤として使用されている。特許文献2に記載のハイドロゲルの実際の保存剤としての分子量は数百万以上であると推測される。特許文献2においては、生体成分の保存は約4℃の冷蔵で実施されており保存期間は数日程度である。また、特許文献3では、五員環構造であるフルクタンが細胞保存液の有効成分として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開昭63-216476号公報
国際公開第2016/076317号
特開2012-235728号公報
【非特許文献】
【0007】
REJUVENATION RESEARCH Volume 18 Number 5,2015 Mary Ann Liebert, Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
細胞内浸透型の凍結保護物質は、細胞の脱水を促進させることにより、細胞内に形成される氷晶の形成速度を遅らせ、氷晶形成を阻害する。特にDMSOは細胞内に浸透しやすく、したがって、哺乳動物細胞などの複雑な構造をもつ細胞の凍結保存に有効であるが、上述の非特許文献1にも記載されているように、DMSOのような化学物質は細胞毒性を有している。凍結保護物質の細胞内への浸透が進み細胞内濃度が上昇すると毒性の影響も高まると考えられる。
【0009】
さらに、DMSOは、HL-60細胞やP19CL6細胞(マウス胎生期癌(embryonal carcinoma)細胞由来)などの分化を誘導すること(PNAS March 27, 2001 98 (7) 3826-3831.およびBiochem Biophys Res Commun. 2004 Sep 24;322(3):759-65.)、また、ES細胞の分化に影響を及ぼすことが報告されている(Cryobiology. 2006 Oct;53(2):194-205.)。したがって、凍結保護試薬としてのDMSOの使用は、幹細胞における未分化性や機能性の維持が必要である場合の細胞保存には適さないことが考えられる。また、DMSOを用いて試料を長期保存する場合、取扱い管理が必要となる液体窒素中または雰囲気下での試料の保存が必要不可欠であり、再生医療や再生医療研究の普及への課題となると考えられる。
【0010】
一方、糖などの天然凍結保護物質は、細胞に親和的であるが、分子サイズが大きく、細胞内に取り込まれにくい。したがって、細胞外から添加するだけでは細胞内凍結を十分に抑制できないと考えられる。
(【0011】以降は省略されています)
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