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公開番号2024154026
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-30
出願番号2023067604
出願日2023-04-18
発明の名称加速器及び加速システム
出願人株式会社東芝,東芝エネルギーシステムズ株式会社
代理人弁理士法人東京国際特許事務所
主分類H05H 7/18 20060101AFI20241023BHJP(他に分類されない電気技術)
要約【課題】大電流ビームを加速するために必要な収束力を大電流ビームに十分に作用させることができ、且つ加速空胴の半径方向寸法を低減することができる。
【解決手段】荷電粒子ビームを通過させるビーム通路17、ビーム通路を望む位置に設けられた加速ギャップ18、加速ギャップに加速電場を形成するために高周波電力を共振させる共振領域19を備え、内部が真空状態に保持された加速空胴11と、共振領域に設置されて共振領域に高周波電力を投入するアンテナ12と、加速空胴の外部に配置されて収束用磁場を形成する収束磁石13と、を有し、ビーム通路を通過する荷電粒子ビームを、加速ギャップに形成された加速電場により加速させると共に、収束磁石による収束用磁場により収束させるよう構成された加速器10であって、収束磁石13が、ビーム通路17の軸心O方向において、共振領域19の少なくとも一部と重なる位置に配置されたものである。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
荷電粒子ビームを通過させるビーム通路、このビーム通路を臨む位置に設けられて前記ビーム通路に連通する加速ギャップ、及びこの加速ギャップに連通して設けられて前記加速ギャップに加速電場を形成するために高周波電力を共振させる共振領域を備え、内部が真空状態に保持された加速空胴と、
前記共振領域に設置されて前記共振領域に高周波電力を投入するアンテナと、
前記加速空胴の外部に配置されて収束用磁場を形成する収束磁石と、を有し、
前記ビーム通路を通過する荷電粒子ビームを、前記加速ギャップに形成された加速電場により加速させると共に、前記収束磁石による収束用磁場により収束させるよう構成された加速器であって、
前記収束磁石が、前記ビーム通路の軸心方向において、前記共振領域の少なくとも一部と重なる位置に配置されて構成されたことを特徴とする加速器。
続きを表示(約 700 文字)【請求項2】
前記加速空胴の共振領域では高周波電力を、前記加速空胴における最低次の固有周波数で共振させ、これにより、前記加速空胴のビーム通路に、ビーム通路の軸心に沿う電場と前記ビーム通路の軸心を中心とした周方向の磁場とが励起された運転モードで運転するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速器。
【請求項3】
前記ビーム通路を形成する壁面が平坦面に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速器。
【請求項4】
前記加速空胴には加速ギャップが1個設けられると共に、前記加速空胴の共振領域に高周波電力を投入するアンテナが、前記加速ギャップの個数以上前記共振領域に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の加速器。
【請求項5】
前記加速空胴では、ビーム通路を形成する開口端部を備えた板状電極を用いて加速ギャップが形成され、共振領域の少なくとも一部の内径が、前記板状電極の外径よりも小さく設定されたことを特徴とする請求項1に記載の加速器。
【請求項6】
前記収束磁石が超電導磁石により構成され、この超電導磁石が加速空胴に対し独立した真空容器内に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の加速器。
【請求項7】
前記収束磁石は、ビーム通路の軸心方向における加速ギャップを挟む両側にそれぞれ配置されたことを特徴とする請求項1に記載の加速器。
【請求項8】
請求項1に記載の加速器が、ビーム通路の軸心方向に沿って複数台、ビームダクトを介してまたは直接接続されて構成されたことを特徴とする加速器システム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、荷電粒子ビームを加速する加速器及び加速器システムに関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
初段加速器として広く用いられている高周波四重極線形加速器(RFQ)では、1A以上の大電流ビームの加速が困難である。これは、RFQでは電極ボア径がmmオーダーと小さいので、ビームの空間電荷効果による発散が強い大電流ビームを収束して輸送できないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開第2019/142389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、1A以上の大電流ビームを加速するために、大口径のビーム通路とビームの収束要素を有する単胞空胴(加速空胴)を複数台連結することで構成される加速器により、大電流ビームを加速できると見込まれている(特許文献1)。この特許文献1に記載の加速器においては、従来の線形加速器と異なり、大口径の単一の加速ギャップでビームを加速させ、更に、大電流ビームの発散力を抑制してビームを収束させるために、永久磁石や電磁石などの収束要素を加速空胴近傍もしくは加速空胴内部に配置している。
【0005】
加速空胴内部に収束要素を配置する線形加速器としては、例えばドリフトチューブ線形加速器(DTL)等の高周波線形加速器がある。DTLの代表例としてのIH-DTLは、TE110モードの高周波を励起し、ビームラインに配置されたドリフトチューブと呼ばれる円筒形状の電極間に加速電場を発生させてビームを加速する。ビームに対して加速の電場が生じているとき、横方向には高周波により発散方向の電場が生ずる。このため、横方向にビームを収束させる目的で空胴外部に配置された電磁石によりビームを収束させたり、高周波の位相を調整して収束方向の電場を発生させたり、ドリフトチューブ内に永久磁石を内蔵してビームを収束させたりする等の方法が用いられることがある。
【0006】
これらの従来の高周波線形加速器の特徴は、単一の高周波空胴の内部に配置された1個乃至少数のRFアンテナにより高周波を投入し、空胴内部の多数の加速ギャップに加速電場を生じさせてビームを加速させることである。加速電極のボア径を広げると、より大電流のビームを空胴内壁に衝突させることなく加速させることができる。ところが、このボア径を広げると消費電力が増大してしまい、RFアンテナ経由で放電を抑制しつつも、投入可能な電力量もしくは高周波源の容量の限界により、実現可能な消費電力には限界がある。そこで、電極ボア径は消費電力を低減するために、比較的小径にせざるを得ない。電極ボア径の典型的な値としては10mm程度である。また、多数の加速ギャップ間に加速電場を発生させるために、加速空胴の製造後に全体の加速位相を調整することは可能であるが、個別の加速ギャップに対して加速位相を調整することは困難である。
【0007】
一方、単胞空胴では、単一の加速空胴内に単一の加速ギャップを設け、この加速ギャップにTM010モード由来の加速電場を発生させている。必要なエネルギーに到達させるためには複数の加速ギャップが必要になるが、これらの加速ギャップをそれぞれ独立の加速空胴に分散配置することで、従来のドリフトチューブで課題であった投入可能な電力量の上限を実効的に向上させることができる。そのため、加速ギャップの開口径を拡大し、ビーム半径を広げることで空間電荷効果を抑制し、より大きなビーム電流値に対しても発散力を抑制してビームの加速が可能になる。加速ギャップの開口径の具体的な値としては例えば100mm程度まで大口径化が可能である。また、個別の加速ギャップを独立した加速空胴に配置するため、それぞれ独立の高周波電源から高周波を投入することで、各加速ギャップの加速位相を独立して調整することが可能になる。
【0008】
単胞空胴は、特に大電流ビームの加速に対して、従来型の線形加速器と比較して上述の優位性を持つ。しかしながら、加速空胴内には収束力が働かないため、別途収束要素を設ける必要がある。従来手法としては、永久磁石や電磁石などの収束要素を空胴内外に配置する方法がある。収束要素を単純に空胴外に配置する方法では、空胴内の収束力が不足してビームの収束を十分に行えない。また、加速空胴の高周波投入領域にこれら収束要素を配置すると、放電の原因や高周波に由来した加速以外の余分なモードが発生し、このモードによって、発散力やビーム軌道を曲げる横方向の力を生み出すなど、正常なビーム加速が阻害されることになる。
【0009】
また、大電流ビームの強い発散力を抑制するために、強磁場を印加可能な超電導磁石を高周波投入領域に配置する場合には、超電導磁石を冷却する必要があり、高周波投入領域では発熱のため超電導状態の維持が困難になる。これらのビーム加速への悪影響をさけるために、収束要素を加速ギャップが配置された高周波空胴とは独立した真空容器内に配置する方法が考えられる。
【0010】
収束要素に起因の収束力をもたらす電磁場をビーム軸の方向に可能な限り作用させる必要があるため、加速空胴は、例えば単純な円筒形状などの所謂ピルボックス空胴等と呼ばれる形状になる。ピルボックス空胴を採用することで収束用の電磁場を十分に適用することが可能になる。ところが、ピルボックス空胴は空胴の半径が大きく、大電流ビームの加速に適する例えば20MHz程度の周波数領域に対しては、空胴半径が数mを超える場合がある。このため、ピルボックス空胴では加速空胴の製造や組み立て、調整、設置、運転が現実的に困難になり、高コスト化を招く。この空胴サイズの肥大化を防ぐために、加速ギャップに所謂ショート板を設置する構成がある。ところが、この場合には半径方向の空胴サイズを低減できても、ビーム軸方向のサイズが増大して収束用磁場が作用しない領域が増大してしまい、十分なビームの収束が困難になる。
(【0011】以降は省略されています)

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