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公開番号2024140151
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-10
出願番号2023051165
出願日2023-03-28
発明の名称配線材、及び配線材の製造方法
出願人古河電気工業株式会社
代理人弁理士法人クオリオ,個人,個人,個人
主分類H01B 13/14 20060101AFI20241003BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】生産性を高めても外観特性に優れた架橋被覆層を備えた配線材を、ボイドの発生を抑制しながら連続的に製造できる配線材の製造方法、及び配線材を提供する。
【解決手段】導体の外周面にシラン架橋性重合体混合物の架橋被覆層を備えた配線材の製造方法であって、ベース重合体100質量部と有機過酸化物0.01~0.6質量部とシランカップリング剤0.5~5質量部とシラノール縮合触媒とを用いて特定の方法で調製したシラン架橋性重合体混合物を調製し、このシラン架橋性重合体混合物を押出機に導入して導体の外周面に被覆し、次いで、得られた被覆導体を押出機から常圧より0.05~0.25MPa高圧の加圧環境下に直接導入して当該加圧環境下において前記被覆導体の表面温度が100℃以下となるまで液状媒体で冷却した後に常圧環境下に導出する、配線材の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
導体の外周面にシラン架橋性重合体混合物の架橋被覆層を備えた配線材の製造方法であって、
ベース重合体100質量部と有機過酸化物0.01~0.6質量部とシランカップリング剤0.5~5質量部とシラノール縮合触媒とを用いてシラン架橋性重合体混合物を調製するに際して、前記ベース重合体の一部と前記混合割合の前記有機過酸化物及び前記シランカップリング剤とを前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して調製したシランマスターバッチと、前記ベース重合体の残部及びシラノール縮合触媒を溶融混合して調製した触媒マスターバッチとを混合して、前記シラン架橋性重合体混合物を調製し、
前記シラン架橋性重合体混合物を押出機に導入して導体の外周面に被覆し、
得られた被覆導体を押出機から常圧より0.05~0.25MPa高圧の加圧環境下に直接導入して、当該加圧環境下において前記被覆導体の表面温度が100℃以下となるまで液状媒体で冷却した後に、常圧環境下に導出する、配線材の製造方法。
続きを表示(約 510 文字)【請求項2】
前記常圧環境下に導出された被覆導体を当該常圧環境下において水と接触させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ベース重合体が、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体樹脂、エチレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記液状媒体を前記被覆導体に噴射して冷却する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記加圧環境下の圧力が常圧より0.10~0.20MPa高圧である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ベース重合体100質量部に対する前記シランカップリング剤の混合量が2.0~4.0質量部である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記加圧環境下において前記被覆導体の表面温度を80℃以下となるまで冷却する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載された製造方法により製造された配線材。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、配線材、及び配線材の製造方法に関する。
続きを表示(約 4,100 文字)【背景技術】
【0002】
電気・電子機器分野や産業分野に使用される、絶縁電線、ケーブル、コード、光ファイバー心線又は光ファイバーコード(光ファイバーケーブル)等の配線材に設けられる被覆層(絶縁層、シース等)として種々の樹脂成形品又はゴム成形品が使用されている。このような成形品には、用途や使用形態に応じて種々の特性が求められており、例えば、安全性や信頼性の観点から耐熱性等が求められている。
配線材の耐熱性を向上させる技術として、被覆層を形成する樹脂若しくはゴムを架橋させる技術(架橋被覆層を形成する技術)が常用されている。樹脂若しくはゴムの架橋方法として、電子線架橋法、化学架橋法等が採用されている。そのなかでも、シランカップリング剤と有機過酸化物等から発生させたラジカルによって樹脂やゴムとをグラフト化結合させた後にシラノール縮合反応させて架橋させる技術(シラン架橋法)は、架橋工程にて特殊な設備を要せず、他の架橋方法に比べて製造上有利であるため、被覆層の架橋方式として一般に用いられている。その一方で、シラン架橋法においては、シランカップリング剤と樹脂やゴムとをグラフト化結合させる際に、樹脂同士若しくはゴム同士が過剰な架橋反応をして架橋ゲルが形成され、これによって架橋被覆層の表面に突起状の凝集塊(表面ブツ)が発生することがある。そのため、シラン架橋法において、外観に優れた架橋被覆層を形成するためには架橋ゲルの形成(表面ブツの発生)を抑制することも求められる。
【0003】
シラン架橋法により架橋被覆層を有する配線材を製造する場合、導体上に樹脂組成物やゴム組成物を押出被覆しながら常圧環境下に導出(押出)して、冷却し、水と接触させることで、樹脂やゴムを架橋させて、架橋被覆層を形成する。ところが、このような常圧環境下において、樹脂組成物等を冷却、水接触させると、種々の要因によって形成した被覆層中にボイド(気泡や層間剥離等による空隙)が発生することが知られている。ボイドの存在(発生)は被覆層(配線材)の電気特性や機械特性の低下といった様々な問題を引き起こす。そのため、シラン架橋法において、被覆層中でのボイドの発生を抑制する方法が検討されてきた。例えば、特許文献1は、有機過酸化物の分解時に生成するガスに起因するボイドの発生を抑制する方法として、導体上に、有機過酸化物架橋型ポリオレフィン及び有機シラン架橋型ポリオレフィンを順次押出被覆し、その際、導体を140℃以上に加熱しながら外層より3kg/cm

以上の飽和水蒸気加圧下で150℃に加熱する方法を提案している。また、特許文献2は、組成物の熱収縮(残存空気や剥離等)に起因するボイドの発生を抑制する方法として、シラン架橋性樹脂組成物を導体上に押出し被覆し、この後、加圧水中で冷却し反応させて架橋させる方法を提案している。この方法において、ボイドの発生を抑制するためには、圧力は3kg/cm

以上とすることが記載されており、実施例では6kg/cm

もの高圧力環境に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開昭62-88213号公報
特開昭59-25110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シラン架橋法による架橋被覆層の形成(配線材の製造)について、本発明者らが検討を進めたところ、下記の問題を見出した。
すなわち、特許文献1に記載された方法は、押出成形後に140℃以上もの高温条件で架橋させる作業を行う(追加の加熱工程を行う)必要がある。そのため、他の架橋法よりも製造上有利なシラン架橋法の利点を損なうばかりか、かえって生産性を悪化させることになる。また、連続的に製造をする場合、追加の加熱工程で高温に加熱され、表面が軟化している被覆導体を生産ラインに流すため、設備の各所で、導体を被覆する有機シラン架橋型ポリオレフィンの管状成形体(被覆層)に傷や変形を発生させる虞があり、架橋被覆層の機械強さの低下を招くことになる。
一方、特許文献2に記載された方法は、押出被覆した後の加圧条件として必要な圧力が3kg/cm

以上と大きく、高い圧力を保ちながら冷却水を循環させる設備が大規模かつ複雑なものとなり、設備コストが高くなる。更に、加圧装置の高圧環境を維持するため導出部(シール部やパッキン部)と導出する被覆導体の外周面とのクリアランスを小さくする(気密性を保つ)必要があり、導出部との接触によって導体を被覆する樹脂組成物等の管状成形体(被覆層)に傷が付きやすい。しかも、高圧環境の加圧装置から導出される被覆導体は導出部等から漏洩する空気や水によって揺れ動いて搬送方向に対するブレが大きくなりやすく、また、配線材の生産性を高めるために搬送速度を高めてもブレが大きくなる。その結果、導出部に被覆導体が強く擦れて傷付き、架橋被覆層の外観を損なう。
【0006】
上述の検討において、被覆層中におけるボイドの発生要因について本発明者らが更に追及したところ、上記特許文献に記載されている有機過酸化物や熱収縮だけではなく、樹脂等にグラフト化反応せずに残存するシランカップリング剤が押出成形時の高温によって揮発して細かな発泡(気泡)を形成することが主な要因であることを新たに見出した。特に、配線材の生産性を高めるために例えば押出機の回転数を上昇させると、樹脂組成物等にせん断が強くかかって温度上昇をもたらし、シランカップリング剤の揮発を助長(促進)して、多数のボイドを発生させることになる。しかし、特許文献1及び2においては、残存するシランカップリング剤を要因とするボイドの発生を抑制する観点については、検討されていない。
【0007】
本発明は、外観特性に優れた架橋被覆層を備えた配線材を、生産性を高めてもボイドの発生を抑制しながら連続的に製造できる配線材の製造方法、及びこの製造方法によって製造された配線材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の割合で有機過酸化物及びシランカップリング剤を含有するシラン架橋性重合体混合物を用いた特定のシラン架橋法において、シラン架橋性重合体混合物を導体の外周面に被覆した被覆導体を押出機から所定圧力の加圧環境下に直接導入して表面温度を100℃以下まで液状媒体で加圧冷却した後に常圧環境下に導出することにより、未反応のシランカップリング剤が残存していても、また生産性を高めても、その発泡、更には膨張を防止してボイドの発生を抑制しながら傷付き及び表面ブツの発生を抑えて、外観特性に優れた架橋被覆層を、形成できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>導体の外周面にシラン架橋性重合体混合物の架橋被覆層を備えた配線材の製造方法であって、
ベース重合体100質量部と有機過酸化物0.01~0.6質量部とシランカップリング剤0.5~5質量部とシラノール縮合触媒とを用いてシラン架橋性重合体混合物を調製するに際して、前記ベース重合体の一部と前記混合割合の有機過酸化物及びシランカップリング剤とを前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合して調製したシランマスターバッチと、前記ベース重合体の残部及びシラノール縮合触媒を溶融混合して調製した触媒マスターバッチとを混合して、前記シラン架橋性重合体混合物を調製し、
前記シラン架橋性重合体混合物を押出機に導入して導体の外周面に被覆し、
得られた被覆導体を押出機から常圧より0.05~0.25MPa高圧の加圧環境下に直接導入して、当該加圧環境下において前記被覆導体の表面温度が100℃以下となるまで液状媒体で冷却した後に、常圧環境下に導出する、配線材の製造方法。
<2>前記常圧環境下に導出された被覆導体を当該常圧環境下において水と接触させる、<1>に記載の製造方法。
<3>前記ベース重合体が、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体樹脂、エチレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びスチレン系エラストマーの少なくとも1種を含む、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4>前記液状媒体を前記被覆導体に噴射して冷却する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の製造方法。
<5>前記加圧環境下の圧力が常圧より0.10~0.20MPa高圧である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の製造方法。
<6>前記ベース重合体100質量部に対する前記シランカップリング剤の混合量が2.0~4.0質量部である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の製造方法。
<7>前記加圧環境下において前記被覆導体の表面温度を80℃以下となるまで冷却する、<1>~<6>のいずれか1項に記載の製造方法。
<8>上記<1>~<7>のいずれか1項に記載された製造方法により製造された配線材。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、外観特性に優れた架橋被覆層を備えた配線材を、例えば押出機の回転数を上げて生産性を高めても、また、たとえ未反応のシランカップリング剤が残存していても、ボイドの発生を抑制しながら連続的に製造できる配線材の製造方法、及びこの製造方法によって製造された配線材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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