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公開番号2024092269
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-08
出願番号2022208077
出願日2022-12-26
発明の名称紙塗工用ワックス分散液
出願人花王株式会社
代理人弁理士法人大谷特許事務所
主分類D21H 19/18 20060101AFI20240701BHJP(製紙;セルロースの製造)
要約【課題】耐水性及び耐油性に優れる塗工紙を得ることができる紙塗工用ワックス分散液、該紙塗工用ワックス分散液を含有する紙用塗工液及び該紙用塗工液を用いた塗工紙に関する。
【解決手段】〔1〕非晶性ポリエステル系樹脂を含む樹脂粒子及びワックスを含有する紙塗工用ワックス分散液であって、該ワックスは該樹脂粒子によって分散されており、該非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、40℃以上100℃以下であり、実質的に界面活性剤を含有しない、紙塗工用ワックス分散液、〔2〕前記〔1〕に記載の紙塗工用ワックス分散液を含有する、紙用塗工液、及び〔3〕前記〔2〕に記載の紙用塗工液を紙基材の少なくとも片面に塗工してなる塗工層を有する、塗工紙。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
非晶性ポリエステル系樹脂を含む樹脂粒子及びワックスを含有する紙塗工用ワックス分散液であって、
該ワックスは該樹脂粒子によって分散されており、
該非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、40℃以上100℃以下であり、
実質的に界面活性剤を含有しない、紙塗工用ワックス分散液。
続きを表示(約 500 文字)【請求項2】
前記ワックスの融点が、50℃以上110℃以下である、請求項1に記載の紙塗工用ワックス分散液。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステル系樹脂が、非水溶性である、請求項1又は2に記載の紙塗工用ワックス分散液。
【請求項4】
非晶性ポリエステル系樹脂を構成するアルコール成分100モル%中のジオールの含有量が、60モル%以上100モル%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の紙塗工用ワックス分散液。
【請求項5】
前記ワックスと前記樹脂粒子との質量比〔ワックス/樹脂粒子〕が、0.2以上10以下である、請求項1~4のいずれかに記載の紙塗工用ワックス分散液。
【請求項6】
20℃における表面張力が、45mN/m以上70mN/m以下である、請求項1~5のいずれかに記載の紙塗工用ワックス分散液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の紙塗工用ワックス分散液を含有する、紙用塗工液。
【請求項8】
請求項7に記載の紙用塗工液を紙基材の少なくとも片面に塗工してなる塗工層を有する、塗工紙。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用ワックス分散液、該紙塗工用ワックス分散液を含有する紙用塗工液及び該紙用塗工液を用いた塗工紙に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
従来、耐水性及び耐油性が要求される部位に用いられる紙製ラベル、包装紙、紙容器等に用いることができる紙材料としては、耐水性及び耐油性を付与するためにポリエチレンフィルムやポリプロピレンといったプラスチックフィルムをラミネート処理した紙が利用されてきた。しかしながら、プラスチックフィルムをラミネート処理した紙はリサイクルが困難である。そのため、近年の環境意識の高まりとともにラミネート処理に代わる、耐水性や耐油性を付与する技術が求められ、検討されてきた。
【0003】
特許文献1では、耐すべり性が改善された、故紙の回収容易な防湿、防水性シートを目的として、融点が55℃以上のパラフィンワックス、軟化点が90~110℃、かつ酸価が15以下であるマレイン化もしくはフマール化ロジンと多価アルコールとのエステ化物、38℃における動粘度が5~1000cstでかつ流動点が-70~-15℃である液状ポリブテン、ロジン、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、及びエチレングリコールモノアルキルエーテルを主成分として含有するワックスエマルジョンを常法によりセルロースを主体とする繊維質基材表面上に塗布し、加湿下で乾燥することを特徴とする防湿、防水性シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特公平3-10759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で用いられている水性エマルジョンは、固形成分を分散させるために界面活性剤を含むため、界面活性剤が塗膜表面に存在することで耐水性が低下する場合があった。また、耐油性について、検討が不十分であった。
本発明は、耐水性及び耐油性に優れる塗工紙を得ることができる紙塗工用ワックス分散液、該紙塗工用ワックス分散液を含有する紙用塗工液及び該紙用塗工液を用いた塗工紙に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、プラスチックフィルムをラミネート処理した紙と同様に、紙と水及び油との接触を抑制する塗工層を設けることに着目し、塗工層を形成するため、ワックスがポリエステル系樹脂を含有する粒子によって分散されている紙塗工用ワックス分散液を用いることによって、前記課題を解決しうることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕非晶性ポリエステル系樹脂を含む樹脂粒子及びワックスを含有する紙塗工用ワックス分散液であって、該ワックスは該樹脂粒子によって分散されており、該非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、40℃以上100℃以下であり、実質的に界面活性剤を含有しない、紙塗工用ワックス分散液。
〔2〕〔1〕に記載の紙塗工用ワックス分散液を含有する、紙用塗工液。
〔3〕〔2〕に記載の紙用塗工液を紙基材の少なくとも片面に塗工してなる塗工層を有する、塗工紙。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐水性及び耐油性に優れる塗工紙を得ることができる紙塗工用ワックス分散液、該紙塗工用ワックス分散液を含有する紙用塗工液及び該紙用塗工液を用いた塗工紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[紙塗工用ワックス分散液]
本発明の紙塗工用ワックス分散液(以下、単に「ワックス分散液」ともいう)は、非晶性ポリエステル系樹脂を含む樹脂粒子(以下、単に「樹脂粒子」ともいう)及びワックスを含有する紙塗工用ワックス分散液であって、該ワックスは該樹脂粒子によって分散されており、該非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が、40℃以上100℃以下であり、実質的に界面活性剤を含有しない。
【0009】
本発明のワックス分散液は、ワックス及び樹脂粒子が水系媒体に分散させてなるものが好ましい。
本発明において、「水系」とは、媒体中で水が最大割合を占めていることを意味する。
水系媒体の水としては、イオン交換水又は蒸留水が好ましく用いられる。
水系媒体は、更に有機溶媒を含有してもよい。該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上8以下のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の水に溶解する水溶性有機溶媒が挙げられる。
水系媒体中の水の含有量は、環境性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、より更に好ましくは100質量%である。
【0010】
本発明によれば、耐水性及び耐油性に優れる塗工紙を得ることができる紙塗工用ワックス分散液を得ることができる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
ワックスは長鎖脂肪族や長鎖オレフィン等の長鎖炭化水素鎖を主成分とする化合物であり、耐水性及び耐油性を有することで知られているが、従来のワックスを界面活性剤等により分散させた分散液を用いた紙塗工用液では、得られる塗工紙の塗工表面に界面活性剤が存在するため、塗工表面が親水化してしまい、十分な耐水性を発現させることは出来なかった。
一方、アルコール成分と酸成分を重縮合して得られる非晶性ポリエステル系樹脂は主鎖骨格に極性の高いエステル結合を有し、またOH基やCOOH基といった末端基を有することで紙への親和性が高い材料であるが、樹脂自体は非水溶性である。この非晶性ポリエステル系樹脂を含む樹脂粒子用いることで、ワックスの周囲に該樹脂粒子を吸着させて、所謂、ピッカリングエマルションの如き作用により、ワックスを水中に分散させることができ、実質的に界面活性剤が存在しない状態のワックス分散液を作製できる。
このワックス水分散液を紙塗工用液として紙表面に塗工することで、非水溶性でありながら紙への親和性が高い非晶性ポリエステル系樹脂が、適度なガラス転移温度を有するため、バインダーとなって紙表面にワックスを固定化し、高い疎水性及び耐油性を発現できる塗工表面を紙に作製し維持することができると考えられる。これにより、本発明のワックス分散液を用いることで、紙に高い耐水性及び耐油性を付与することが可能となったと考えられる。
(【0011】以降は省略されています)

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