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公開番号2024087966
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-02
出願番号2022202890
出願日2022-12-20
発明の名称物性評価装置および方法
出願人日本電信電話株式会社,国立大学法人東海国立大学機構
代理人個人,個人,個人,個人
主分類G01N 21/00 20060101AFI20240625BHJP(測定;試験)
要約【課題】試料の電子状態を非接触、非破壊で容易に同定する。
【解決手段】物性評価装置は、パルスレーザ光を放射するパルスレーザ光源1と、パルスレーザ光をプローブ光とポンプ光とに分けるビームスプリッタ3と、プローブ光に対するポンプ光の遅延時間を変化させる遅延回路5と、ポンプ光を強度変調するチョッパー9と、プローブ光と強度変調されたポンプ光とを試料30に導く凹面ミラー15と、試料30によって反射されたプローブ光を検出する光検出器16と、光検出器16の出力信号のうち、チョッパー9の変調周波数の信号を、試料30の反射率の変化として検出するロックイン検出器18と、反射率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出する初期位相算出部20と、フォノンの初期位相に基づいて試料30の電子状態を同定する電子状態同定部21とを備える。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
パルスレーザ光を放射するように構成されたパルスレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を第1の光と第2の光とに分けるように構成されたビームスプリッタと、
前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変化させるように構成された遅延回路と、
前記第2の光を強度変調するように構成されたチョッパーと、
前記第1の光と強度変調された前記第2の光とを試料に導くように構成された光学系と、
前記試料によって反射された第1の光または前記試料を透過した第1の光を検出するように構成された第1の光検出器と、
前記第1の光検出器の出力信号のうちの、前記チョッパーの変調周波数の信号を、前記試料の反射率の変化または透過率の変化として検出するように構成されたロックイン検出器と、
前記反射率の変化または前記透過率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出するように構成された初期位相算出部と、
前記フォノンの初期位相に基づいて前記試料の電子状態を同定するように構成された電子状態同定部とを備えることを特徴とする物性評価装置。
続きを表示(約 2,700 文字)【請求項2】
請求項1記載の物性評価装置において、
前記試料に入射する前の前記第1の光を検出するように構成された第2の光検出器と、
前記第2の光検出器の出力信号と前記第1の光検出器の出力信号との差分信号を出力するように構成された差分検出器と、
前記ロックイン検出器の出力が示す差分信号の強度を前記第2の光検出器の出力が示す第1の光の強度で割ることにより、前記反射率の変化または前記透過率の変化を算出するように構成された特性算出部とをさらに備え、
前記ロックイン検出器は、前記第1の光検出器の出力信号の代わりに、前記差分検出器によって得られた差分信号のうちの、前記チョッパーの変調周波数の信号を検出し、
前記初期位相算出部は、前記特性算出部によって算出された前記反射率の変化または前記透過率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出することを特徴とする物性評価装置。
【請求項3】
請求項1記載の物性評価装置において、
前記試料に入射する前の前記第1の光が、前記試料の面に垂直な水平面に対して45度傾いた直線偏光になるように構成された波長板および偏光子と、
前記試料によって反射された第1の光または前記試料を透過した第1の光を偏光状態が異なる2つの光に分離するように構成された偏光ビームスプリッタとをさらに備え、
前記第1の光検出器は、前記偏光ビームスプリッタによって分離された一方の光を検出するように構成された光検出器と、前記偏光ビームスプリッタによって分離された他方の光を検出するように構成された光検出器の2つから構成され、
前記2つの光検出器の出力の差分信号を出力するように構成された差分検出器と、
前記ロックイン検出器の出力が示す差分信号の強度を前記2つの光検出器のうちいずれか一方の出力が示す光の強度で割ることにより、前記反射率の変化または前記透過率の変化を算出するように構成された特性算出部とをさらに備え、
前記ロックイン検出器は、前記第1の光検出器の出力信号の代わりに、前記差分検出器によって得られた差分信号のうちの、前記チョッパーの変調周波数の信号を検出し、
前記初期位相算出部は、前記特性算出部によって算出された前記反射率の変化または前記透過率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出することを特徴とする物性評価装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物性評価装置において、
前記電子状態同定部は、前記初期位相算出部が算出したフォノンの初期位相と、フォノンの初期位相と前記試料を構成する材料の電子状態との既知の関係に基づいて、前記試料の電子状態を同定することを特徴とする物性評価装置。
【請求項5】
パルスレーザ光を第1の光と第2の光とに分けて、前記第1の光に対する前記第2の光の遅延時間を変化させ、前記第1の光と強度変調した前記第2の光とを試料に照射する第1のステップと、
前記試料によって反射された第1の光または前記試料を透過した第1の光を第1の光検出器によって検出する第2のステップと、
前記第1の光検出器の出力信号のうちの、前記強度変調の周波数の信号を、前記試料の反射率の変化または透過率の変化として検出する第3のステップと、
前記反射率の変化または前記透過率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出する第4のステップと、
前記フォノンの初期位相に基づいて前記試料の電子状態を同定する第5のステップとを含むことを特徴とする物性評価方法。
【請求項6】
請求項5記載の物性評価方法において、
前記第2のステップと前記第3のステップとの間に、前記試料に入射する前の前記第1の光を第2の光検出器によって検出する第6のステップと、
前記第1の光検出器の出力信号と前記第2の光検出器の出力信号との差分信号を出力する第7のステップとをさらに含み、
前記第3のステップは、前記第1の光検出器の出力信号の代わりに、前記差分信号のうちの、前記強度変調の周波数の信号を検出するステップを含み、
前記第3のステップと前記第4のステップとの間に、前記第3のステップによって得られた差分信号の強度を前記第2の光検出器の出力が示す第1の光の強度で割ることにより、前記反射率の変化または前記透過率の変化を算出する第8のステップをさらに含み、
前記第4のステップは、前記第8のステップによって算出された前記反射率の変化または前記透過率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出するステップを含むことを特徴とする物性評価方法。
【請求項7】
請求項5記載の物性評価方法において、
前記第1のステップは、前記試料に入射する前の前記第1の光が、前記試料の面に垂直な水平面に対して45度傾いた直線偏光になるように調整するステップを含み、
前記第2のステップは、前記試料によって反射された第1の光または前記試料を透過した第1の光を偏光状態が異なる2つの光に分離して、前記分離された一方の光を2つの前記第1の光検出器のうちの一方によって検出すると共に、前記分離された他方の光を2つの前記第1の光検出器のうちの他方によって検出するステップを含み、
前記第2のステップと前記第3のステップとの間に、前記2つの第1の光検出器の出力の差分信号を出力する第6のステップをさらに含み、
前記第3のステップは、前記第1の光検出器の出力信号の代わりに、前記差分信号のうちの、前記強度変調の周波数の信号を検出するステップを含み、
前記第3のステップと前記第4のステップとの間に、前記第3のステップによって得られた差分信号の強度を前記2つの第1の光検出器のうちいずれか一方の出力が示す光の強度で割ることにより、前記反射率の変化または前記透過率の変化を算出する第8のステップをさらに含み、
前記第4のステップは、前記第8のステップによって算出された前記反射率の変化または前記透過率の変化に基づいてフォノンの初期位相を算出するステップを含むことを特徴とする物性評価方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の物性評価方法において、
前記第5のステップは、前記第4のステップで算出したフォノンの初期位相と、フォノンの初期位相と前記試料を構成する材料の電子状態との既知の関係に基づいて、前記試料の電子状態を同定するステップを含むことを特徴とする物性評価方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の物性を非接触、非破壊で評価する物性評価装置および方法に関するものである。
続きを表示(約 1,800 文字)【背景技術】
【0002】
高速に動作する電子デバイスの作製には、用いる物質中の電子の速度が速い(移動度が大きい)ことが必要である。最近、通常の電子と異なったエネルギーと運動量の分散関係を持つディラック電子が大きな移動度を持つ電子として注目され、研究が活発に行われている。例えば、半金属であるビスマスは、固体においてディラック電子が最初に発見された系である(非特許文献1)。
【0003】
一方、電子デバイスの動作のための重要な条件の一つは、電気的性質がバンドギャップを有する半導体であることである。ビスマスは、膜厚が30nm程度になると、量子サイズ効果によって半金属から半導体へ転移することが1967年に理論研究により指摘されていた(非特許文献2)。
【0004】
近年の薄膜技術の発展により、高品質なビスマス薄膜の製作が可能となった。その結果、光電子分光計測(非特許文献3)や電気伝導度の計測(非特許文献4、5)により、半金属から半導体へのビスマスの相転移が確認された。
【0005】
非特許文献3~5に開示された方法は、計測にあたって試料への前処理を要する。光電子分光計測には、試料表面の清浄化が必要である。電気伝導度の計測には、試料上に金属電極の作成が必要となる。また、光電子分光計測は真空下での計測を要する。しかしながら、ビスマスを電子デバイスの材料として用いるには、動作環境下のデバイス上での物性評価が必要であり、非破壊、非接触かつ大気下で物性を評価することが求められている。
【0006】
非接触、非破壊かつ大気下での計測が可能な物性評価方法としては、下記の(I)~(III)のような光学的な手法が挙げられる(非特許文献6)。
(I)反射率測定。
(II)透過率測定。
(III)エリプソメトリー(偏光解析法)。
【0007】
図11に反射率や透過率が測定できる顕微分光測光装置の構成を示す(非特許文献6)。反射率や透過率は、図11に示した落射型顕微鏡に分光器を載せた装置によって計測できる。反射率を計測する場合、ハロゲンランプなどの白色光源100を用いる光源100からの白色光は、ハーフミラー101と対物レンズ102とを通して試料110に入射する。試料110で反射した光は、再び対物レンズ102を通り、その一部は観察光学系103へ入射し、肉眼で測定位置が確認できるようになっている。また、試料110で反射した光は回折格子104に入射する。回折格子104で分光した光は、ミラー105で反射され、マルチチャンネルのラインセンサー106によって各波長同時に検出される。試料110の反射光量から反射率を算出することができる。一方、透過率を計測する場合には、白色光源107を用いる。光源107からの白色光は、対物レンズ108を通して試料110に入射する。
【0008】
ビスマス薄膜の吸収率を計測すると、図12に示すように12nm、20nm、50nmの膜厚に応じた吸収係数を得ることができる(非特許文献7)。
しかしながら、吸収率の計測は、透明基板上での計測に限定されてしまい、不透明基板上の電子デバイスなどの試料に対して適用できないという課題があった。また、反射率の測定は、膜界面での多重反射によってスペクトル上に干渉の効果が表れてしまい、光学特性の評価が困難になるという課題があった。
【0009】
図13にエリプソメトリーの原理を示す(非特許文献8)。白色光200を図13の201の状態が示すように直線偏光にして斜めから試料210に照射すると、試料210からの反射光は、図13の202の状態が示すように楕円偏光に変わる。このように、エリプソメトリーは、既知の偏光状態の光を試料表面に照射して、反射の際の偏光状態の変化を光の波長ごとに測定して試料210の光学定数を求める。しかしながら、解析にあたっては各層の膜厚と光学定数と被測定対象とを正しく記述できるモデルが必要であり、複雑な解析を要するという課題があった。
【0010】
以上のように、非接触、非破壊かつ大気圧下で、基板の種類を問わずに簡便にビスマス薄膜の電子状態を同定できる方法は従来知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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