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公開番号2024044737
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-02
出願番号2022150461
出願日2022-09-21
発明の名称糸状菌変異株及びその利用
出願人花王株式会社,国立大学法人長岡技術科学大学
代理人弁理士法人アルガ特許事務所
主分類C12N 1/15 20060101AFI20240326BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】グルコースに起因する酵素生産阻害が抑制された糸状菌変異株の構築、及び当該糸状菌を用いた、多糖分解酵素の製造方法、バイオマスからの糖の製造方法及びバイオマスの糖化方法の提供。
【解決手段】以下の(a)~(c)より選ばれるタンパク質の発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌変異株:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の(a)~(c)より選ばれるタンパク質の発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌変異株:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記タンパク質の発現が喪失している、請求項1記載の糸状菌変異株。
【請求項3】
前記タンパク質がCel1bである、請求項1記載の糸状菌変異株。
【請求項4】
前記タンパク質をコードする遺伝子が欠失又は不活性化された請求項1~3のいずれか1項に記載の糸状菌変異株。
【請求項5】
前記タンパク質をコードする遺伝子が、以下の(d)~(i)のいずれかで示される請求項4記載の糸状菌変異株:
(d)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(e)配列番号1に示す塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(h)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(i)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つβ-グルコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
糸状菌がトリコデルマ属に属する、請求項1~5のいずれか1項に記載の糸状菌変異株。
【請求項7】
糸状菌がトリコデルマ・リーセイである、請求項1~5のいずれか1項に記載の糸状菌変異株。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させる工程、及び当該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取する工程を含むセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質及びグルコースの存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させる工程、及び当該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取する工程を含むセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
【請求項10】
培地中に、セルラーゼ誘導物質を総量で0.1~40質量%含有し、グルコースを0.5~15質量%含有する、請求項9記載のセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状菌変異株、及び当該糸状菌を用いた多糖分解酵素の製造に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
バイオマスは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源である。その中でもセルロース系バイオマスが注目を浴びている。セルロースを分解することで糖を製造し、得られた糖から化学変換や微生物を用いた発酵技術により石油資源の代替物やバイオ燃料などの有用資源を製造する技術の開発が、世界中で行われている。
【0003】
セルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分として構成される。このようなバイオマスは、セルロースを分解するセルラーゼ、ヘミセルロースを分解するヘミセルラーゼ、キシラナーゼなどが相乗的に作用することにより、複雑な形式で分解されることが知られている。セルロース系バイオマスの有効活用にあたっては、セルロースやヘミセルロースを高効率に分解可能な糖化酵素の開発が必要となる。
【0004】
セルロースをグルコースにまで効率的に分解するには、上記の各種セルラーゼが総合的に機能することが必要であり、またキシランはセルロースについで植物に多く含まれる多糖類であるため、多種のセルラーゼ及びキシラナーゼを生産するトリコデルマ(Trichoderma)等の糸状菌は植物性多糖の分解菌として注目されてきた(非特許文献1)。
【0005】
特に、トリコデルマは、セルラーゼ及びキシラナーゼを同時に生産することが可能であり、しかもその複合酵素を大量に生産することから、セルラーゼ生産の宿主として検討がされてきた(非特許文献2)。
しかしながら、これら糸状菌を用いて工業的にセルラーゼ及びキシラナーゼを生産するためには、安価大量生産のための技術開発、更なる高生産な菌株の作製が必要である。
【0006】
一般的に微結晶性セルロースであるアビセルなどがセルラーゼ生産に用いられるが、高価であり工業用途への使用はコスト的に困難である。また、セルロース基質は不溶性のものが多く、工業プロセス上の負荷からも安価・可溶性の炭素源であるグルコースなどを用いることが望ましい。しかしながら、グルコースを用いた糸状菌の培養においては、カタボライト抑制と呼ばれる制御機構により、生産性の低下、または飽和が起こることが知られている。カタボライト抑制には、アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌などにおいては、広域制御型転写因子CreAや、CreB、CreC、CreD等が関与していることが知られており(特許文献1、2)、これらの因子を制御することによりカタボライト抑制を調節できると考えられているが、いまだグルコース阻害の回避は不充分であると考えられている。また、トリコデルマ属糸状菌においても、カタボライト抑制に関して機構解析が進められている(特許文献3、非特許文献3)。特許文献4には、コレステロール合成酵素群遺伝子の転写遺伝子Sre1の発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌変異株を用いたグルコースに起因する酵素生産阻害が抑制されたセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法が開示されている。特許文献5及び非特許文献4には、チューブリンを機能低減又は機能喪失させた糸状菌変異株を用いたグルコースに起因する酵素生産阻害が抑制されたセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法が開示されている。
【0007】
一方、トリコデルマ・リーセイは、β-グルコシダーゼの1つであり、GH(Glycoside hydrolase family)1に属する酵素であるCel1bを有する(非特許文献5)。Cel1bは、同じくGH1に属するCel1aとともに、細胞内で、セルラーゼ誘導に必要な酵素として機能する。Cel1aとCel1bは、それぞれいずれかが欠損してもセルラーゼの誘導を遅延させるが、特にCel1aが欠損した場合に遅延がみられ、Cel1aとCel1bの同時欠損では、セルラーゼ誘導を大きく遅延させるもしくは誘導が行われないことが報告されている(非特許文献6、7)。しかし、グルコース高濃度存在下でのCel1bとセルラーゼ生産の関係について詳細は明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2014-168424号公報
特開2015-39349号公報
特表平11-512930号公報
国際公開公報第2017/018471号
国際公開公報第2018/025929号
【非特許文献】
【0009】
近藤昭彦、天野良彦、田丸浩、「バイオマス分解酵素研究の最前線-セルラーゼ・ヘミセルラーゼを中心として-」、シーエムシー出版、10頁~19頁
小笠原渉、志田洋介、「化学と生物」 vol.50、公益社団法人 日本農芸化学会,50巻,8号,592頁~599頁,2012年08月
Amore A1, Giacobbe S, Faraco V. Curr Genomics. 2013 Jun;14(4):230-49
Shibata N, Kakeshita H, Igarashi K, Takimura Y, Shida Y, Ogasawara W, Koda T, Hasunuma T, Kondo A. Biotechnol Biofuels. 2021 Feb;14(1):39
Guo B, Sato N, Biely P, Amano Y, Nozaki K. Appl Microbiol Biotechnol. 2016 Jun;100(11):4959-68
Zhou Q, Xu J, Kou Y, Lv X, Zhang X, Zhao G, Zhang W, Chen G, Liu W. Eukaryot Cell. 2012 Nov;11(11):1371-81
Xu J, Zhao G, Kou Y, Zhang W, Zhou Q, Chen G, Liu W. Eukaryot Cell. 2014 Aug;13(8):1001-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、グルコースに起因する酵素生産阻害が抑制された糸状菌変異株の構築、及び当該糸状菌を用いた、多糖分解酵素の製造方法、バイオマスからの糖の製造方法及びバイオマスの糖化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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