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公開番号2024039408
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-03-22
出願番号2022143939
出願日2022-09-09
発明の名称小腸上皮様細胞及びその作製方法
出願人国立大学法人大阪大学,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 5/071 20100101AFI20240314BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】多能性幹細胞から小腸上皮様細胞への選択的な分化誘導方法について研究が進められているが、多薬物代謝・透過性に関し、安定的に試験可能な優れた高機能な小腸上皮様細胞集団の提供や、高率の良い細胞の作製方法を提供する。
【解決手段】以下の工程1)及び2)を含む、多能性幹細胞から小腸上皮様細胞への分化誘導方法による。1)多能性幹細胞を内胚葉細胞に分化誘導する工程;2)前記内胚葉細胞を、CHIR99021を含む系で培養し、その後腸管前駆細胞に分化誘導する工程。前記分化誘導方法により作製された小腸上皮様細胞をオルガノイド作製用基材や、二次元培養用基材に播種して培養することで、より効果的に小腸上皮様細胞の細胞集団が得られる。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
以下の工程1)及び2)を含む、多能性幹細胞から小腸上皮様細胞への分化誘導方法:
1)多能性幹細胞を内胚葉細胞に分化誘導する工程;
2)前記内胚葉細胞を、CHIR99021を含む系で培養し、その後腸管前駆細胞に分化誘導する工程。
続きを表示(約 1,400 文字)【請求項2】
前記工程2)において、以下の工程2a)及び工程2b)を含む、請求項1に記載の分化誘導方法:
2a)CHIR99021を含み、さらにLY2090314及びレチノイン酸から選択される1種以上を含む系で培養する工程;
2b)CHIR99021、レチノイン酸及びLY2090314から選択される2種以上を含む系でさらに培養する工程。
【請求項3】
前記工程2a)が、CHIR99021及びレチノイン酸を含む系であり、前記工程2b)が、CHIR99021を含み、さらにレチノイン酸及び/又はLY2090314を含む系である、請求項2に記載の小腸上皮様細胞への分化誘導方法。
【請求項4】
前記工程2a)が、LY2090314及びCHIR99021を含む系であり、前記工程2b)が、CHIR99021及びレチノイン酸を含む系である、請求項2に記載の小腸上皮様細胞への分化誘導方法。
【請求項5】
前記工程2a)が、LY2090314、CHIR99021及びレチノイン酸を含む系であり、前記工程2b)が、CHIR99021及びレチノイン酸を含む系である、請求項2に記載の小腸上皮様細胞への分化誘導方法。
【請求項6】
以下の工程1)-3)を含む、多能性幹細胞から小腸上皮様細胞への分化誘導方法:
1)多能性幹細胞を内胚葉細胞に分化誘導する工程;
2’)前記内胚葉細胞を、LY2090314及び/又はCHIR99021を含む系で培養し、その後腸管前駆細胞に分化誘導する工程;
3)前記腸管前駆細胞を、LY2090314及び/又はMEK阻害剤を含む系で培養する工程。
【請求項7】
前記工程2’)において、以下の工程2’a)及び工程2’b)を含む、請求項6に記載の分化誘導方法:
2’a)LY2090314を含む系で2日間培養する工程;
2’b)LY2090314又はCHIR99021を含む系で2日間培養する工程。
【請求項8】
前記工程3)において、以下の工程3a)及び工程3b)を含む、請求項6に記載の分化誘導方法:
3a)LY2090314を含む系で10日間培養する工程;
3b)LY2090314及びMEK阻害剤を含む系で10日間培養する工程。
【請求項9】
MEK阻害剤がPD0325901である、請求項6又は8に記載の分化誘導方法。
【請求項10】
以下のI)-IV)の工程を含む、多能性幹細胞由来小腸上皮様細胞からなる細胞集団の作製方法:
I)多能性幹細胞を内胚葉細胞に分化誘導する工程;
II)前記分化誘導により得られた内胚葉細胞を、LY2090314及び/又はCHIR99021を含む系で培養し、その後腸管前駆細胞に分化誘導する工程;
III)前記腸管前駆細胞を、LY2090314及び/又はMEK阻害剤を含む系で培養し、前記小腸上皮様細胞に分化誘導する工程;
IV)前記分化した小腸上皮様細胞を単一細胞に分離し、オルガノイド作製用基材に播種して培養し、小腸上皮様細胞の細胞集団を作製する工程。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞から小腸上皮様細胞(enterocyte-like cells: ELC)への分化誘導方法に関し、及び前記分化誘導方法により得られた小腸上皮様細胞に関する。
続きを表示(約 3,700 文字)【背景技術】
【0002】
経口投与された薬物は最初に小腸において吸収・代謝・排泄を受ける。この吸収・代謝・排泄等の薬物動態には、SLC15A1(solute carrier family 15 member 1)/PEPT1(Peptide transporter 1)などの吸収型トランスポーター、CYP3A4(Cytochrome P450 family 3 subfamily A member 4)などの薬物代謝酵素、P-gp(P糖タンパク質、P-glycoprotein)/ABCB1(ATP binding cassette subfamily B member 1)/MDR1(Multiple drug resistance 1)、ABCG2(ATP binding cassette subfamily G member 2)/BCRP(Breast cancer resistance protein)などの排出型トランスポーターが大きな役割を担っている。薬物動態をin vitroで評価することは、安全な医薬品を効果的に開発するために重要である。
【0003】
初代培養のヒト小腸上皮細胞は入手することが困難であり、個体差による性状の違いも問題である。さらに得られた細胞は長期に渡って機能を維持しつつ培養することも困難である。現在、in vitro腸管薬物動態試験には、ラット等の小動物由来腸管組織を用いた腸管反転法や、人工脂質膜を用いた試験、Caco-2細胞(ヒト結腸癌由来の細胞株)をはじめとする細胞株を用いた評価系などが汎用されている。しかしながら、これらの評価系にはヒトとの種差があること、薬物トランスポーターや薬物代謝酵素の発現量が低いこと、癌細胞株特有の遺伝的変異が蓄積していることなどの問題がある。これらの理由により小腸における薬物代謝・透過性に関し、安定的に試験可能な優れた細胞の入手が困難であった。
【0004】
多能性幹細胞由来の小腸上皮様細胞について報告がある。非特許文献1には世界で初めてヒト多能性幹細胞から小腸様組織を作製したことが報告されている。非特許文献2にはヒト多能性幹細胞から長期間自己複製可能な小腸幹細胞を作製できたことが報告されている。非特許文献3にはGSK-3β(Glycogen synthase kinase 3β)阻害剤であるBIO(6-Bromoindirubin-3'-oxime )、γ-セクレターゼ阻害剤であるDAPT(N-[(3,5-Difluorophenyl)acetyl]-L-alanyl-2-phenyl]glycine-1,1-dimethylethyl ester)等を用いることで、マウス・ヒト多能性幹細胞から小腸系列の細胞への分化誘導を促進できたことが報告されている。BIO及びDAPTを併用することで効率良くCDX2(caudal type homeobox 2)陽性細胞を分化誘導できる。なお、CDX2は後腸(hindgut)、小腸幹細胞、腸管前駆細胞(intestinal progenitor cells)、小腸上皮細胞のいずれにおいても発現している腸管分化を制御するマスター転写因子である。非特許文献4にはヒト多能性幹細胞を分化誘導し、SI(Sucrase Isomaltase)、SLC15A1/PEPT1、LGR5(leucine-rich repeat containing G protein-coupled receptor 5)などの小腸マーカーを発現した小腸上皮様細胞を作製したことが報告されている。前記小腸上皮様細胞はジペプチドであるβ-Ala-Lys-AMCA(β-Ala-Lys-N-7-amino-4-methylcoumarin-3-acetic acid)を取り込むことができる。しかしながら、薬物代謝酵素CYP3A4の発現は、ヒト小腸と比較して極めて低い(約1/500)。非特許文献5にはヒト多能性幹細胞を分化誘導し、SI、VIL1(villin 1)、SLC15A1/PEPT1、ABCG2/BCRPなどの小腸マーカーを発現した小腸上皮様細胞を作製したことが報告されている。さらに、この小腸上皮様細胞がSLC15A1/PEPT1活性及びABCG2/BCRP活性を有することが非特許文献6に報告されている。しかしながら、薬物トランスポーターであるP-gp/ABCB1/MDR1の発現は、ヒト小腸と比較して極めて低い(約1/100)。
【0005】
特許文献1には、腸管前駆細胞から小腸上皮様細胞への分化誘導の工程において、BIO及びDAPTの代わりにLY2090314及びビタミンD3を含む培地を用いることで、より効果的に小腸上皮様細胞へ分化誘導することが示されている(特許文献1)。
【0006】
腸管オルガノイドを分散させて単一細胞を調製し、当該単一細胞を細胞外マトリクス上で単層培養する方法について報告がある(特許文献2、非特許文献7)。しかしながら、特許文献1に示す細胞はヒト下痢症ウイルスの感染・増殖用の細胞であり、非特許文献7に示す細胞は腸内細菌(Klebsiella pneumoniae)の大腸のバリア機能に及ぼす影響を確認するための細胞であり、いずれも薬物動態評価のために使用する細胞ではなく、薬物代謝酵素や薬物トランスポーターの発現については一切言及されていない。特許文献3にはオルガノイド由来細胞を単層培養し、小腸上皮細胞が有する薬物代謝酵素(各Cytochrome P450 family)や薬物トランスポーター(SLC15A1/PEPT1、P-gp/ABCB1/MDR1)等が発現し、タイトジャンクション(tight junction)機能も有する優れた腸上皮様細胞を得たことが開示されている。
薬剤の安全性評価に適用可能なさらに高機能な小腸上皮様細胞及びその作製方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
Nature, 2011 Feb 3;470(7332):105-9
Stem Cell Reports, 2014 Jun 3;2(6):838-52
Stem Cells, 2013 Jun;31(6):1086-96
Drug Metab Pharmacokinet, 2014;29(1):44-51
Drug Metab Dispo, 2015;43(4):603-610
Drug Metab Dispo, 2016 Oct;44(10):0. doi: 10.1124/dmd.116.069336. Epub 2016 Jul 14.
Nature Microbiology, 2019 March; Vol.4: 492-503
【特許文献】
【0008】
国際公開WO2020/262492号
国際公開WO2018/038042号
特開2021-122208号公報
国際公開WO2018/20714号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
初代培養のヒト小腸上皮細胞は入手が困難であり、得られた細胞も個体差による性状の違いが問題であった。小腸のin vitro吸収評価系モデル細胞として、強固なタイトジャンクションを形成でき、小腸の薬物透過を予測しうるCaco-2細胞が実用化されている。しかしながら、Caco-2細胞は癌細胞由来であること、ヒト小腸上皮細胞と異なり、薬物代謝酵素CYP3A4をほとんど発現しないことなどが問題になっている。薬物代謝・透過性に関し、安定的に試験可能な優れた評価系モデル細胞が切望されている。多能性幹細胞から小腸上皮様細胞への選択的な分化誘導方法について研究が進められているが、より高機能な小腸上皮様細胞集団の提供や、効率の良い細胞の作製方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を達成するために、従来法の小腸上皮様細胞作製方法を基に培養液及び培養時間についてさらに検討を重ねた結果、多能性幹細胞を内胚葉細胞(definitive endoderm cells)に分化誘導した後、培地成分を工夫して腸管前駆細胞を作製することで、多能性幹細胞からより効果的に高機能の小腸上皮様細胞を分化誘導しうることを見出した。さらに、前記分化誘導により作製された小腸上皮様細胞の培養方法についても検討を重ねた結果、細胞をオルガノイド作製用基材や、二次元培養用基材に播種して培養することで、より効果的に小腸上皮様細胞の細胞集団が得られ、本発明を完成した。
(【0011】以降は省略されています)

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