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公開番号2025163290
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-10-28
出願番号2025136024,2021562711
出願日2025-08-18,2020-12-03
発明の名称脂肪組織由来細胞集団の調製
出願人天野エンザイム株式会社,学校法人自治医科大学
代理人個人,個人
主分類C12N 5/077 20100101AFI20251021BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】間質血管細胞群の効率的な調製に有効な手段を提供する。
【解決手段】コラゲナーゼと中性プロテアーゼを含有し、中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して1 U以上の酵素溶液、好ましくはクロストリパイン及びサーモリシンを含まない酵素溶液で、脂肪組織を処理した後、細胞を回収するステップを含む、脂肪組織から間質血管細胞群を調製する方法を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下のステップ(1)を含む、脂肪組織から間質血管細胞群を調製する方法:
(1)コラゲナーゼと中性プロテアーゼを含有し、中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して1 U以上の酵素溶液で脂肪組織を処理した後、細胞を回収するステップ。
続きを表示(約 660 文字)【請求項2】
酵素溶液の中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して2 U以上である、請求項1に記載の調製法。
【請求項3】
酵素溶液の中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して2.5 U以上である、請求項1に記載の調製法。
【請求項4】
酵素溶液のコラゲナーゼと中性プロテアーゼの活性比が34,000:9~34,000:45である、請求項1に記載の調製法。
【請求項5】
酵素溶液のコラゲナーゼ含有量が脂肪組織1gあたり500 U以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項6】
酵素溶液の中性プロテアーゼ含有量が脂肪組織1gあたり0.05 U以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項7】
コラゲナーゼがクロストロリジウム・ヒストリティカム由来である、請求項1~6のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項8】
中性プロテアーゼがクロストロリジウム・ヒストリティカム由来である、請求項1~7のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項9】
酵素溶液が、クロストリパイン及び/又はサーモリシンを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の調製法。
【請求項10】
酵素溶液が、クロストリパイン及びサーモリシンを含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の調製法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪組織由来の細胞集団を調製する方法、及び当該方法に使用される酵素剤等に関する。
続きを表示(約 4,100 文字)【背景技術】
【0002】
脂肪組織は間葉系幹細胞や各種間質細胞及びその前駆細胞等を含み、再生医療のソース(細胞源)として有望である。また、血液や骨髄等に比べ採取が容易であり、その利用価値は高い。実際、多くの研究グループや研究機関によって、脂肪組織由来の間葉系幹細胞や間質血管細胞群(Stromal Vascular Fraction: SVF)を再生医療に利用する試みが行われている。
【0003】
血管内皮細胞(endothelial cell: EC)/血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells: EPC)は、それ自体、再生医療における移植材料として有用であることに加え、それを併用すると移植治療等における治療効果の増進を期待できることから、再生医療における治療ツールとしても有用である。血管内皮細胞/血管内皮前駆細胞を含むSVFを脂肪組織から調製するためには通常、酵素が利用される。脂肪組織の分散、即ち、脂肪組織の酵素分解には例えば、コラゲナーゼにプロテアーゼが混在した酵素剤(粗コラゲナーゼ剤。例えば、コラゲナーゼにクロストリパイン(Clostripain)、中性プロテアーゼ(Neutral protease)等が夾雑するもの)が使用される。また、コラゲナーゼとサーモリシンを併用する場合もあり、このような酵素分解用の酵素剤(コラゲナーゼとサーモリシンを含有する)も市販されている(例えばRoche社製LiberaseやCytori therapeutics社のCelase)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2019-88279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SVFの調製に利用されるサーモリシンは細胞への障害(ダメージ)が大きいことが知られており、SVF中の細胞の活性に影響する。また、効率的な調製方法も提案されているが(例えば、特許文献1を参照)、脂肪組織から高純度の血管内皮細胞/血管内皮前駆細胞(説明の便宜上、以下では、血管内皮細胞と血管内皮前駆細胞を包括する用語として「血管内皮系細胞」を使用する)を簡便且つ効率的に調製することは困難である。今後の再生医療の発展に鑑みれば、脂肪組織由来の血管内皮系細胞を含むSVFを一層効率的に調製することが望まれる。そこで本発明は、SVFの効率的な調製(換言すれば収量の向上)に有効な手段を提供することを課題とする。また、SVF中の血管内皮系細胞数の増大を図り、高純度の血管内皮系細胞を簡便且つ効率的に調製することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み研究を進める中で本発明者らは、SVFを効率的に調製する上で脂肪組織の酵素分解の条件が最も重要であると考え、使用する酵素に焦点を絞り詳細な検討を行った。その結果、コラゲナーゼと中性プロテアーゼの併用が特に有効であること、及び両酵素の比率が重要であることが判明し、SVFの収量の向上、更にはSVF中の血管内皮系細胞数の増大に成功した。この成果に基づき、以下の発明が提供される。
[1]以下のステップ(1)を含む、脂肪組織から間質血管細胞群を調製する方法:
(1)コラゲナーゼと中性プロテアーゼを含有し、中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して1 U以上の酵素溶液で脂肪組織を処理した後、細胞を回収するステップ。
[2]酵素溶液の中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して2 U以上である、[1]に記載の調製法。
[3]酵素溶液の中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して2.5 U以上である、[1]に記載の調製法。
[4]酵素溶液のコラゲナーゼと中性プロテアーゼの活性比が34,000:9~34,000:45である、[1]に記載の調製法。
[5]酵素溶液のコラゲナーゼ含有量が脂肪組織1gあたり500 U以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の調製法。
[6]酵素溶液の中性プロテアーゼ含有量が脂肪組織1gあたり0.05 U以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の調製法。
[7]コラゲナーゼがクロストロリジウム・ヒストリティカム由来である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の調製法。
[8]中性プロテアーゼがクロストロリジウム・ヒストリティカム由来である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の調製法。
[9]酵素溶液が、クロストリパイン及び/又はサーモリシンを更に含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の調製法。
[10]酵素溶液が、クロストリパイン及びサーモリシンを含まない、[1]~[8]のいずれか一項に記載の調製法。
[11]脂肪組織がヒトの脂肪組織である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の調製法。
[12]以下のステップ(2)を含む、脂肪組織由来の血管内皮細胞及び血管内皮前駆細胞を含む細胞集団を調製する方法:
(2)[1]~[11]のいずれか一項に記載の調製法で得られた間質血管細胞群の中の血管内皮細胞及び血管内皮前駆細胞を濃縮及び/又は増殖させるステップ。
[13]コラゲナーゼと中性プロテアーゼを含有し、中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して1 U以上である、脂肪組織分散用の酵素剤。
[14]中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して2 U以上である、[13]に記載の酵素剤。
[15]中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して2.5 U以上である、[13]に記載の酵素剤。
[16]酵素溶液のコラゲナーゼと中性プロテアーゼの活性比が34,000:9~34,000:45である、[13]に記載の酵素剤。
[17]コラゲナーゼがクロストロリジウム・ヒストリティカム由来である、[13]~[16]のいずれか一項に記載の酵素剤。
[18]中性プロテアーゼがクロストロリジウム・ヒストリティカム由来である、[13]~[17]のいずれか一項に記載の酵素剤。
[19]クロストリパイン及び/又はサーモリシンを更に含む、[13]~[18]のいずれか一項に記載の酵素剤。
[20]クロストリパイン及びサーモリシンを含まない、[13]~[18]のいずれか一項に記載の酵素剤。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.間質血管細胞群(SVF)を調製する方法
本発明の第1の局面は脂肪組織から間質血管細胞群(SVF)を調製する方法(以下、「SVF調製法」と呼ぶ)に関する。本発明のSVF調製法では以下のステップ(1)が行われる。
(1)コラゲナーゼと中性プロテアーゼを含有し、中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して1 U以上の酵素溶液で脂肪組織を処理した後、細胞を回収するステップ。
【0008】
脂肪組織はヒト、ヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)、鳥類(ニワトリ、ウズラ等)等から切除、吸引などの手段で採取することができる。脂肪組織として皮下脂肪、内臓脂肪、筋肉内脂肪、筋肉間脂肪を例示できる。脂肪組織は、カニューレを腹部、大腿部、臀部、又は全身の皮下脂肪組織に挿管することによって、吸引により得ることもできる。得られる脂肪組織の量は、例えば1g~1000gであり、好ましくは1g~500g、より好ましくは1g~100g、さらに好ましくは2g~50g又は一層好ましくは2g~40gであるが、これらに限定されない。皮下脂肪は例えば局所麻酔下で非常に簡単に採取できるため、採取の際のドナーへの負担が少なく、特に好ましい。通常は一種類の脂肪組織を用いるが、二種類以上の脂肪組織を併用することも可能である。また、複数回に分けて採取した脂肪組織(同種の脂肪組織でなくてもよい)を混合し、以降の操作に使用してもよい。
【0009】
採取した脂肪組織は、必要に応じてそれに付着した血液成分の除去(例えば脂肪組織を適当な緩衝液や培養液中で洗浄することによって血液成分を除去する)や細片化を経た後、以下の酵素処理に供される。吸引脂肪組織を使用する場合には、吸引脂肪組織を静置しておき、脂肪層と水層を分離させることが好ましい。また、吸引脂肪組織を遠心分離器で処理することにより、脂肪層と水層を分離することもできる。脂肪層と水層が分離した後に水層を回収除去すれば脂肪層を単離することができる。得られた脂肪組織は、例えば生理食塩水等で洗浄してから酵素処理に供してもよい。尚、酵素処理に供する前の脂肪組織を室温又は37℃程度のウォーターバスで5分~15分程度、温めておくことが好ましい。
【0010】
脂肪組織は酵素処理(酵素反応)に供される。本発明では、当該酵素処理にコラゲナーゼと中性プロテアーゼ併用するとともに酵素溶液中の中性プロテーゼの含有率(コラゲナーゼとの活性比)を高めることにより、SVFの収量向上を図る。具体的には、コラゲナーゼと中性プロテアーゼを含有し、中性プロテアーゼ活性がコラゲナーゼ活性10,000 Uに対して1 U以上の酵素溶液を用意し、当該酵素溶液で脂肪組織を処理する。本発明に使用する酵素溶液は、例えば、コラゲナーゼと中性プロテアーゼが各々所望の活性になるように調製した酵素剤を溶解ないし希釈することによって用意すればよい。
(【0011】以降は省略されています)

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