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公開番号2025160339
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-10-22
出願番号2025125091,2023546925
出願日2025-07-25,2022-09-02
発明の名称多能性幹細胞の製造方法
出願人公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団
代理人弁理士法人京都七条特許事務所
主分類C12N 5/10 20060101AFI20251015BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】幹細胞の樹立および増殖において、浮遊状態での培養を可能とする新規な方法を提供する。
【解決手段】多能性幹細胞を、フィーダーフリーかつ浮遊培養条件下で、アテロコラーゲンを含有し、培養容器から遊離した足場材料を含む培地中で培養する工程を含む、多能性幹細胞の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
多能性幹細胞を、フィーダーフリーかつ浮遊培養条件下で、
アテロコラーゲンを含有し、培養容器から遊離した足場材料を含む培地中
で培
養する工程を含む、多能性幹細胞の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞などの幹細胞の製造方法等に関する。より詳しくは、アテロコラーゲンを含有する足場材料を含む培地中で細胞を浮遊培養する工程を含む、幹細胞の製造方法等に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多分化能幹細胞を、細胞培養ディッシュ等の底面へ細胞を接着させ培養する技術(平面培養)がこれまでに開発されてきた(非特許文献1、2参照)。一方、多分化能幹細胞であるES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来しており、本来の生育様態に近い培養方法とするためには、細胞の浮遊培養および半浮遊培養など、3次元(3D)的につくられた臓器(オルガノイド)形成の製造過程における培養と同様の培養を行う必要がある。
【0003】
ES細胞およびiPS細胞の浮遊培養方法として、胚様体(embryoid body; EB)(多能性幹細胞を浮遊培養することによって形成される三次元の細胞凝集塊)を形成する浮遊培養方法が知られている。胚様体を形成する培養において、胚様体のサイズを均一に保つ操作が必要であり、具体的には、攪拌培養におけるプロペラの剪断応力によって細胞塊を砕く等の物理的な力学による操作が必要となる。そのため、ES細胞やiPS細胞などの物理的ストレスによって容易に細胞死を誘発しやすい特徴を持つタイプの細胞(非特許文献3参照)においては、胚様体のサイズの制御が難しいとの欠点があった。
【0004】
ところで、細胞培養においては、マイクロキャリアを細胞の足場材料として用いることがある。マイクロキャリアは微小粒子であり、接着性動物細胞をマイクロキャリアに接着させ、この状態で培養を行うことで、接着性動物細胞の性質を大きく変えることなく、浮遊条件で大量培養することができる(非特許文献4参照)。しかし、多能性幹細胞を表面に接着させるのに適するマイクロキャリアなどの足場材料はこれまでに見つかっていなかった。
【0005】
細胞培養に用いるマイクロキャリアの表面は、マトリゲル(Corning)(マウス肉腫から抽出した、可溶化基底膜調製品)などの生体由来成分による接着基質で被覆する必要があることが報告されている。また、細胞培養において、直径100 μm以下の小さなマイクロキャリアは細胞の増殖に向かず、また、カルボキシメチル基などの負電荷を持つ残基がマイクロキャリアの表面において支配的であると、細胞が接着しないことも知られている(非特許文献5参照)。例えば、タイプIコラーゲンは、その加水分解成分であるゼラチンとして、多能性幹細胞の細胞培養ディッシュの足場材料として主にフィーダー培養法と呼ばれる平面培養に用いられてきた歴史がある(非特許文献1、2参照)。コラーゲン線維は、RGD配列と呼ばれる細胞接着配列を有しており、かかる配列により細胞親和性に優れていることが報告されている(非特許文献6参照)。コラーゲン分子およびその断片で3本鎖らせん構造を失ったものがゼラチンであり、ゼラチンナノファイバーを用いた多能性幹細胞の培養実績が報告されている(特許文献1参照)。しかし、タイプI コラーゲンは、マウス胎児線維芽細胞(MEF)を用いたフィーダー培養法においては、ヒトiPS細胞の足場材料としての機能を発揮するが、フィーダーレス培養法においては、ヒトiPS細胞の接着機能および増殖を維持する機能が弱いことが以前から知られている。そのため、タイプIコラーゲンを用いた市販のCytodex-3(GE Healthcare)(表面に変性したブタ皮膚由来コラーゲンを結合・被覆したデキストランビーズ)を用いた場合、臨床用iPS細胞の製造に必要となるフィーダーレス培養法では、細胞の接着機能および増殖を維持する機能が弱く、実用に足るとはいえない。また、特許文献1では、0.1%ゼラチン上ではヒトiPS細胞は培養できないことが記載されており、ゼラチンをナノファイバーに加工することでヒトiPS細胞の増殖に成功している。
【0006】
また、特許文献2では、細胞外マトリックス(ラミニン、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、およびエンタクチン1の混合物等)で被覆したマイクロキャリア上に多能性幹細胞を付着させて、多能性幹細胞を3継代以上懸濁培養する方法が開示されている。特許文献3では、細胞または組織の浮遊培養用培地組成物として高分子化合物(ヒアルロン酸、脱アシル化ジェランガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン等の多糖類)を用いる方法が開示されている。特許文献4では、bFGF、アスコルビン酸、TGFβ-3等を含むゼノフリーかつ無血清の培地、および該培地中で多能性幹細胞を浮遊培養する方法が開示されている。特許文献5では、特定組成の合成樹脂を含有する幹細胞用の足場材料と、それを用いた培養方法が開示されている。さらに、特許文献6では、細胞培養槽と成分調整液貯留槽との間で溶液を還流させて、多能性幹細胞や胚様体等を培養する装置が開示されている。しかし、いずれの特許文献においても、マイクロキャリアの被覆材料としてのアテロコラーゲンの具体的な利用方法は示されておらず、またアテロコラーゲンを用いた多能性幹細胞の培養に関する具体的な事例は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2013-247943
特表2011-514169
WO2014/017513
特表2013-510567
WO2019/131981
WO2013/161885
【非特許文献】
【0008】
Nature, 1981. 292. 154-156
Science, 1998. 282. 1145-1147
Nature Biotechnology, 2007. 25. 681-686
Nature, 1967. 216. 64-65
Stem Cell RES, 2011. 7. 97-111
Biomaterials, 2003, 24. 4385-4415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、幹細胞の樹立および増殖において、浮遊状態での培養を可能とする新規な方法を提供することを課題とする。また、かかる方法により、細胞の均質化や培養の自動化を可能とし、多能性幹細胞などの幹細胞の産業利用を加速することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
コラーゲンはゼラチンとして多能性幹細胞培養の足場材料として以前より使われてきた歴史があった。しかし、その目的はマウス胎児線維芽細胞(MEF)を用いたフィーダー培養法の足場材料としての用途であった。近年においてはMEFを使う培養方法は古典的な手法との位置づけとなり、代わりにフィーダーレス培養法が主流となっている。フィーダーレス培養法ではMEFもゼラチンも不要である。そのため、ゼラチンを構成するタイプIコラーゲンを多能性幹細胞の培養に用いてきた歴史はあるが、フィーダーレス培養法が確立した近年においては、時系列において、多能性幹細胞の培養にコラーゲンを用いることはおろか、コラーゲンに代えてアテロコラーゲンを用いようとする動機付けは存在しなかった。このような状況下であったが、本発明者らは、あえてコラーゲンを用いた多能性幹細胞の培養に着目し、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、コラーゲンではなくアテロコラーゲンで被覆したマイクロキャリアを細胞培養に用いることで、効率よく多能性幹細胞を樹立でき、また多能性幹細胞を増殖できるのではないかとの着想を得た。かかる着想に基づき研究を進めた結果、タイプIコラーゲンで被覆したマイクロキャリアを用いた場合には、体細胞から多能性幹細胞が樹立できなかった一方で、アテロコラーゲンで被覆したマイクロキャリアを用いた場合には、体細胞から多能性幹細胞を樹立できることを見出した。タイプIコラーゲンとアテロコラーゲンでは、構造の大部分が共通するため、上記樹立効率の違いは驚くべきものであった。さらに、アテロコラーゲンで被覆したマイクロキャリアを用いて多能性幹細胞を培養することで、効率よく多能性幹細胞を増殖できることも見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
(【0011】以降は省略されています)

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