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公開番号2025085413
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-05
出願番号2023199273
出願日2023-11-24
発明の名称カイコを用いた糖代謝異常処置剤の評価方法およびその応用
出願人国立大学法人 熊本大学,株式会社チャーリーラボ
代理人弁理士法人特許事務所サイクス
主分類G01N 33/48 20060101AFI20250529BHJP(測定;試験)
要約【課題】簡便かつ低コストの糖代謝評価系を提供する。
【解決手段】(i)カイコに、飼料全体に対してスクロースが11%(w/w)以上20%(w/w)以下の濃度で添加された飼料を摂取させることにより、カイコを糖代謝異常性成長不全の状態にすること;(ii)カイコに被験物質を投与すること;および(iii)被験物質を投与されたカイコの体重を測定することを含む、被験物質が糖代謝異常の処置のための候補物質であるかを評価する方法、ならびに(iv)カイコの体重に基づいて、被験物質から、糖代謝異常を処置し得る候補物質を選択することをさらに含む、糖代謝異常の処置のための候補物質をスクリーニングする方法が提供される。または、カイコに、飼料全体に対してスクロースが11%(w/w)以上20%(w/w)以下の濃度で添加された飼料を30時間以上摂取させることを含む、糖代謝異常の非ヒトモデル動物の作製方法が提供される。
特許請求の範囲【請求項1】
被験物質が糖代謝異常の処置のための候補物質であるかを評価する方法であって、
(i)カイコに、飼料全体に対してスクロースが11%(w/w)以上20%(w/w)以下の濃度で添加された飼料を摂取させることにより、カイコを糖代謝異常性成長不全の状態にすること;
(ii)カイコに被験物質を投与すること;および
(iii)被験物質を投与されたカイコの体重を測定すること
を含む、方法。
続きを表示(約 830 文字)【請求項2】
糖代謝異常の処置のための候補物質をスクリーニングする方法であって、
(i)カイコに、飼料全体に対してスクロースが11%(w/w)以上20%(w/w)以下の濃度で添加された飼料を摂取させることにより、カイコを糖代謝異常性成長不全の状態にすること;
(ii)カイコに被験物質を投与すること;
(iii)被験物質を投与されたカイコの体重を測定すること;および
(iv)カイコの体重に基づいて、被験物質から、糖代謝異常を処置し得る候補物質を選択すること
を含む、方法。
【請求項3】
(i)カイコに、飼料全体に対してスクロースが11%(w/w)以上20%(w/w)以下の濃度で添加された飼料を30時間以上摂取させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(ii)被験物質の投与が経口投与である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
(i)および(ii)が同時に行われることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
糖代謝異常性成長不全の状態が、スクロースが添加されていない飼料を摂取させた場合と比較して、カイコにおいて、以下から選択される1以上が表れることである、請求項1または2に記載の方法。
体重および体サイズから選択される1以上の減少、
血リンパにおけるグルコースおよびトレハロースから選択される1以上の濃度の増加、
血リンパにおけるボンビキシンの濃度の増加、
インスリン抵抗性、
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の発現または活性の低下。
【請求項7】
カイコに、飼料全体に対してスクロースが11%(w/w)以上20%(w/w)以下の濃度で添加された飼料を30時間以上摂取させることを含む、糖代謝異常の非ヒトモデル動物の作製方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、カイコを用いた糖代謝異常処置剤の評価方法およびその応用に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
世界の糖尿病患者数は、2021年で5億3660万人(成人の10.5%)に上り、2045年には7億8320万人(成人の12.2%)に達すると予想されている。また、糖尿病の高リスク状態である境界型糖尿病(糖尿病予備軍)も、5億4100万人(成人の10.6%)に上ると推定されており、糖代謝を改善する医薬、機能性食品等の需要は依然として高い。そうした中、哺乳動物を用いた動物実験の禁止や廃止の動きが広がっており、動物実験代替法の開発が急務となっている。
【0003】
動物倫理の問題がない昆虫(カイコ)を用いたin vivo評価系の開発が進められている。昆虫のなかでもカイコは、薬物の体内動態や糖代謝がヒトと類似していることに加えて、体サイズが大きく、経口投与や注射等の複数の投与経路の選択が可能であることから、代替動物としての優位性が高い。カイコに糖質高含有人工飼料(高糖食)を与えると、ヒトの糖代謝異常と類似の状態が発現することが報告されている。
【0004】
特許文献1には、(a)無脊椎動物に糖(A)を摂取させることによって、該無脊椎動物の脂肪体中または血液中の糖(B)濃度を上昇させる工程、(b)上記工程(a)で得られた、脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度が上昇した無脊椎動物に、上記被検物質を投与する工程、(c)上記被検物質が投与された無脊椎動物の脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を測定する工程、を有することを特徴とする、被検物質がヒトの血糖値を降下させる物質であるか否かを評価する方法、ならびに(d)上記被検物質の中から、該無脊椎動物の脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を低下させる物質を選択する工程をさらに有することを特徴とする、ヒトの血糖値を降下させる物質をスクリーニングする方法が記載されている。
特許文献2には、(a)無脊椎動物に糖(A)を摂取させることによって、該無脊椎動物の脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を上昇させる工程、(b)上記工程(a)で得られた、脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度が上昇した無脊椎動物に、被検物質を投与する工程、(c)上記被検物質が投与された無脊椎動物の脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を測定する工程、(d)上記被検物質の中から、該無脊椎動物の脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を低下させる物質を選択する工程を少なくとも含む、被検物質がガラクトース誘導体であることを特徴とする糖尿病の治療薬のスクリーニング方法が記載されている。
特許文献1および2ならびに非特許文献1には、グルコースを添加した人工飼料をカイコに与えると、血リンパ中の糖濃度が上昇し、成長が抑制されるが、ヒトインスリン投与により成長抑制が解除されることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、(a)カイコに、糖(A)を摂取させることにより、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、および、脂質異常からなる群より選択される少なくとも1つ以上の状態にする工程、(b)上記工程(a)で得られた、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性、および、脂質異常からなる群より選択される少なくとも1つ以上の状態にされたカイコに、上記被験物質を投与する工程、(c)上記被験物質を投与したカイコを絶食させる工程、(d)上記絶食させたカイコの脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を測定する工程、を有することを特徴とする、被験物質がヒトのII型糖尿病の予防または治療する候補物質であるか否かを評価する方法、ならびに(e)上記被験物質の中から、該カイコの脂肪体中または血液中の糖(B)の濃度を低下させる物質を選択する工程をさらに有することを特徴とする、ヒトのII型糖尿病の予防または治療する物質をスクリーニングする方法が記載されている。
特許文献3および非特許文献2には、グルコースを添加した人工飼料を与えて作製したカイコ高血糖モデルに対して、糖尿病治療薬(メトホルミン、ピオグリタゾン)が血糖降下作用を示すことが記載されている。
【0006】
特許文献4には、(a)被験動物にスクロースを摂取させる工程、(b)上記工程(a)と同時または上記工程(a)前後に、上記被験物質を投与する工程、(c)上記被験物質を投与した被験動物の体液中の糖の濃度を測定する工程を少なくとも有することを特徴とする、被験物質が、α-グリコシダーゼ阻害活性を発揮することでスクロース摂取によるヒトの血糖値上昇を抑制する物質であるか否かを評価する方法、ならびに(d)上記被験物質の中から、被験動物の体液中の糖の濃度を低下させる物質を選択する工程をさらに有することを特徴とする、被験物質の中から、α-グリコシダーゼ阻害活性を発揮することでスクロース摂取によるヒトの血糖値上昇を抑制する物質をスクリーニングする方法が記載されている。
特許文献5には、カイコ評価系を利用して納豆の種類をスクリーニングする工程を有することを特徴とする、糖尿病予防治療剤、血糖値上昇抑制剤、グルコース取り込み阻害剤、または、血糖値スパイク抑制剤の製造方法若しくはスクリーニング方法が記載されている。
非特許文献3には、カイコを用いて、乳酸菌YM0831の経口投与が、スクロースを添加した人工飼料摂食後の血糖上昇を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2009-58500号
国際公開WO2010/004916号
特開2015-210100号
国際公開WO2017/061353号
特開2020-180075号
【非特許文献】
【0008】
Yasuhiko Matsumoto, Eriko Sumiya, Takuya Sugita & Kazuhisa Sekimizu. An invertebrate hyperglycemic model for the identification of anti-diabetic drugs. PLoS One. 2011 Mar 30;6(3):e18292. doi: 10.1371/journal.pone.0018292.
Yasuhiko Matsumoto, Masaki Ishii, Yohei Hayashi, Shinya Miyazaki, Takuya Sugita, Eriko Sumiya & Kazuhisa Sekimizu. Diabetic silkworms for evaluation of therapeutically effective drugs against type II diabetes. Sci Rep. 2015 May 29:5:10722. doi: 10.1038/srep10722.
Yasuhiko Matsumoto, Masaki Ishii, Setsuo Hasegawa & Kazuhisa Sekimizu. Enterococcus faecalis YM0831 suppresses sucrose-induced hyperglycemia in a silkworm model and in humans. Commun Biol. 2019 May 2:2:157. doi: 10.1038/s42003-019-0407-5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記で挙げた評価系は、カイコへの注射、採血、血糖値測定等の技術、ならびに試薬、機器等を要するものであり、煩雑な操作を要するものである。そのため、簡便かつ低コストの糖代謝評価系が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、カイコを所定の方法で飼育すること等により、カイコの体重を測定することで糖代謝を評価できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(【0011】以降は省略されています)

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