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公開番号2025076959
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-05-16
出願番号2023188947
出願日2023-11-02
発明の名称多孔質構造を有するハイドロゲルの製造方法
出願人国立大学法人 東京大学,ジェリクル株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C08J 9/00 20060101AFI20250509BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】細胞等の物質が透過可能なμmスケールの多孔質構造を有するハイドロゲル材料をより簡便な手法で作製可能な新規の製造方法を提供する。
【解決手段】溶液中の原料ポリマーの合計濃度を所定の範囲としつつ、いったん生成させた非多孔質構造の初期ハイドロゲルに対して、凍結融解プロセスを多孔質構造化のトリガーとして採用することで、μmスケールの多孔質構造を有する生体適合性ハイドロゲルを製造する方法である。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
多孔質構造を有するハイドロゲルの製造方法であって、
a)化合物Aを第1の溶媒に溶解した第1の溶液を調製する工程;
b)化合物Bを第2の溶媒に溶解した第2の溶液を調製する工程;
c)前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して、非多孔質構造の初期ハイドロゲルを得る工程であって、前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して得られる第3の溶液における総ポリマー濃度(C
total
)が、前記化合物A固有の粘度上昇特徴濃度(C

)又は前記化合物B固有の粘度上昇特徴濃度(C

)の2つの濃度のうち、いずれか高い方の値以下となるような比率で前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合することを含む工程;
d)前記初期ハイドロゲルを凍結処理し、凍結ハイドロゲルを得る工程;及び
e)前記凍結ハイドロゲルを、前記第1及び第2の溶媒の融点のうち、いずれか高い方の融点以上の温度で処理し、多孔質構造を有するハイドロゲルを得る工程
を含み、
前記初期ハイドロゲル及び前記多孔質構造を有するハイドロゲルは、いずれも、前記化合物Aと前記化合物Bが互いに架橋することでゲルを形成しており、
前記第1及び第2の溶媒は、いずれも水系溶媒であり;
前記化合物A及びBが、側鎖又は末端に合計1以上の求核性官能基又は求電子性官能基を有する、2分岐、3分岐、4分岐又は8分岐のポリエチレングリコール(PEG)である、
製造方法。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記化合物A及び/又は前記化合物Bが、4×10

以下の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記凍結処理が、-10℃以下の温度で、1時間以上行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記初期ハイドロゲルの透過率をX、前記凍結ハイドロゲルの透過率をY、前記多孔質構造を有するハイドロゲルの透過率をZとしたときに、
X>Z>Y
の関係式を満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】

total
が20g/Lとなるように調製された前記多孔質構造を有するハイドロゲルの平衡膨潤度をQ
low
とし、及び、任意のC
total
で調製された前記多孔質構造を有するハイドロゲルの平衡膨潤度をQとしたときに、
Q<1.2*Q
low
の関係式を満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記初期ハイドロゲルの伸長時破断応力(σ
max
)をS
initial
とし、前記多孔質構造を有するハイドロゲルの伸長時破断応力をSとしたときに、
S>S
initial
の関係式を満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記初期ハイドロゲルの破断時伸び率(λ
max
)をT
initial
とし、前記多孔質構造を有するハイドロゲルの破断時伸び率をTとしたときに、
T>T
initial
の関係式を満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記初期ハイドロゲルのヤング率(E
max
)をU
initial
とし、前記多孔質構造を有するハイドロゲルのヤング率をUとしたときに、
U>U
initial
の関係式を満たす、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質構造を有するハイドロゲルの破壊エネルギーが、初期ハイドロゲルの破壊エネルギーより高い値となる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記化合物Aが、側鎖又は末端に合計2以上の求核性官能基を有する、2分岐、3分岐、4分岐又は8分岐のPEGであり;
前記化合物Bが、側鎖又は末端に合計2以上の求電子性の官能基を有する、2分岐、3分岐、4分岐又は8分岐のPEGである、請求項1に記載の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元的に連通した多孔質構造を有する生体適合性ハイドロゲルの製造方法に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
近年、高分子の網目構造を有するハイドロゲルは、その優れた保水能力及び生体適合性等の特性を有することから、人工組織や再生医療用足場材、シーラント、癒着防止材、ドラッグデリバリー基材、コンタクトレンズなどの医療目的だけでなく、センサーや表面コーティング材などの多様な用途への応用が期待されている材料である(例えば、非特許文献1)。特に、3次元的に連通したμmスケールの大きさの多孔質構造を有するゲルを製造することは、組織工学の応用に向けた材料開発において有望である。
【0003】
しかしながら、従来、μmスケールの多孔質構造を得るためには、予め作製されたハイドロゲルや高分子構造体をリソグラフィー等により微細加工する等のトップダウン的な手法を用いるか、あるいは、溶媒に不溶な高分子原料を用いて高分子材料を作成する必要があった。一方、生体適合性を有するポリエチレングリコール(PEG)のような親水性の高分子原料を用いる場合には、2液混合系の簡便な作製技術が使用されているが、この方法ではnmスケールの小さな多孔質構造のハイドロゲルしか作成することができず、μmスケールの大きさを持つ細胞や物質の透過は困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Sakaiら、Macromolecules、41、5379-5384、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、細胞等の物質が透過可能なμmスケールの多孔質構造を有するハイドロゲル材料をより簡便な手法で作製可能な新規の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題に対して、本発明者らは、従来のハイドロゲルの作製手法を改良し、溶液中の原料ポリマーの合計濃度を所定の範囲としつつ、いったん生成させた非多孔質構造の初期ハイドロゲルに対して、凍結融解プロセスを多孔質構造化のトリガーとして採用することで、μmスケールの多孔質構造を有する生体適合性ハイドロゲルを製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。本発明の製造方法は、簡便な手法で、かつ特殊な機器等を要することなくμmスケールの多孔質構造のハイドロゲルを製造することができる。さらに、得られるハイドロゲルは、μmスケールのスポンジ様の3次元網目構造(多孔質構造)を有するだけでなく、同じポリマーユニットから形成された非多孔質のハイドロゲルと比べて、優れた物質透過性や、低膨潤化、強度の向上などの物性面でも特徴を有することを併せて見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、代表的な態様において、
<1>多孔質構造を有するハイドロゲルの製造方法であって、
a)化合物Aを第1の溶媒に溶解した第1の溶液を調製する工程;
b)化合物Bを第2の溶媒に溶解した第2の溶液を調製する工程;
c)前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して、非多孔質構造の初期ハイドロゲルを得る工程であって、前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して得られる第3の溶液における総ポリマー濃度(C
total
)が、前記化合物A固有の粘度上昇特徴濃度(C

)又は前記化合物B固有の粘度上昇特徴濃度(C

)の2つの濃度のうち、いずれか高い方の値以下となるような比率で前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合することを含む、工程;
d)前記初期ハイドロゲルを凍結処理し、凍結ハイドロゲルを得る工程;及び
e)前記凍結ハイドロゲルを、前記第1及び第2の溶媒の融点のうち、いずれか高い方の融点以上の温度で処理し、多孔質構造を有するハイドロゲルを得る工程
を含み、
前記初期ハイドロゲル及び前記多孔質構造を有するハイドロゲルは、いずれも、前記化合物Aと前記化合物Bが互いに架橋することでゲルを形成しており、
記第1及び第2の溶媒は、いずれも水系溶媒であり;
前記化合物A及びBが、側鎖又は末端に合計1以上の求核性官能基又は求電子性官能基を有する、2分岐、3分岐、4分岐又は8分岐のポリエチレングリコール(PEG)である、製造方法
を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、好ましい態様において、
<2>前記化合物A及び/又は前記化合物Bが、4×10

以下の重量平均分子量を有する、上記<1>に記載の製造方法;
<3>前記凍結処理が、-10℃以下の温度で、1時間以上行われる、上記<1>に記載の製造方法;
<4>前記初期ハイドロゲルの透過率をX、前記凍結ハイドロゲルの透過率をY、前記多孔質構造を有するハイドロゲルの透過率をZとしたときに、
X>Z>Y
の関係式を満たす、上記<1>に記載の製造方法;
<5>C
total
が20g/Lとなるように調製された前記多孔質構造を有するハイドロゲルの平衡膨潤度をQ
low
とし、及び、任意のC
total
で調製された前記多孔質構造を有するハイドロゲルの平衡膨潤度をQとしたときに、
Q<1.2*Q
low
の関係式を満たす、上記<1>に記載の製造方法;
<6>前記初期ハイドロゲルの伸長時破断応力(σ
max
)をS
initial
とし、前記多孔質構造を有するハイドロゲルの伸長時破断応力をSとしたときに、
S>S
initial
の関係式を満たす、上記<1>に記載の製造方法;
<7>前記初期ハイドロゲルの破断時伸び率(λ
max
)をT
initial
とし、前記多孔質構造を有するハイドロゲルの破断時伸び率をTとしたときに、
T>T
initial
の関係式を満たす、上記<1>に記載の製造方法;
<8>前記初期ハイドロゲルのヤング率(E
max
)をU
initial
とし、前記多孔質構造を有するハイドロゲルのヤング率をUとしたときに、
U>U
initial
の関係式を満たす、上記<1>に記載の製造方法;
<9>前記多孔質構造を有するハイドロゲルの破壊エネルギーが、初期ハイドロゲルの破壊エネルギーより高い値となる、上記<1>に記載の製造方法;
<10>前記化合物Aが、側鎖又は末端に合計2以上の求核性官能基を有する、2分岐、3分岐、4分岐又は8分岐のPEGであり;
前記化合物Bが、側鎖又は末端に合計2以上の求電子性の官能基を有する、2分岐、3分岐、4分岐又は8分岐のPEGである、上記<1>に記載の製造方法;
<11>前記求核性官能基が、チオール基及びアミノ基よりなる群から選択され、前記求電子性官能基が、マレイミジル基、N-ヒドロキシ-スクシンイミジル(NHS)基、スルホスクシンイミジル基よりなる群から選択される、上記<1>に記載の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、原料ポリマーの合計濃度を所定の範囲としつつ、凍結融解プロセスを多孔質構造化のトリガーとして採用することで、μmスケールの多孔質構造の生体適合性ハイドロゲルを簡便かつ効率的に得ることができる。特に、本発明の製造方法は、特殊な機器等を用いる必要なく、従来のゲル化手法と異なり有機溶媒やポロゲンの除去も必要としない点で有益である。
【0010】
また、本発明の製造方法により得られるハイドロゲルは、スポンジ様のμmスケールの3次元網目構造(多孔質構造)を形成するため、細胞の浸潤や接着に好適な材料となり得る。加えて、本発明の製造方法によれば、ゲルに生体吸収性を付与することも可能であり、その場合、組織の再生や修復後にゲルが体内に残ることはなく、この特性が医師と患者双方の安心感を高めることができる。このような特性は、再生医療の分野での非常に価値ある利点として評価されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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