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公開番号
2025073408
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-05-13
出願番号
2023184169
出願日
2023-10-26
発明の名称
リピート伸長病の検出方法
出願人
公立大学法人横浜市立大学
代理人
弁理士法人谷川国際特許事務所
主分類
C12Q
1/6869 20180101AFI20250502BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】リピート伸長病に関する高度な専門知識なしでもリピート伸長病を網羅的に検査できる、実用的なリピート伸長病の検出方法を提供すること。
【解決手段】本発明によるリピート伸長病を検出するための方法は、ライブラリー調製工程、シーケンシング工程、コンセンサス配列構築工程、ランク付け工程、及び判定工程を含む。シーケンシング工程では、複数の疾患関連リピート領域及びその近傍ゲノム領域を標的領域として指定してナノポアシーケンシングを行い、被検者ゲノムの各標的領域のロングリードシーケンスデータを得る。ランク付け工程では、被検者と健常者群との間で各疾患関連リピート領域のリピート数データを比較し、被検者ゲノムの疾患関連リピート領域を病的リピート伸長の可能性が高い順にランク付けする。判定工程では、特定の手順S1~S7に従って1位の疾患関連リピート領域から評価を開始し、被検者が病的リピート伸長を有するか否かを判定する。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
下記工程を含む、リピート伸長病を検出するための方法であって、病的リピートを有すると判定された被検者においてリピート伸長病が検出される、方法。
被検者から分離したゲノムDNAよりシーケンスのためのライブラリーを調製する、ライブラリー調製工程。
複数の疾患関連リピート領域及びそれらの周辺ゲノム領域を標的領域として、前記ライブラリーのナノポアシーケンシングによるロングリードシーケンシングを行い、被検者ゲノムの各標的領域のシーケンスデータを得る、シーケンシング工程。
シーケンシング工程で得られたシーケンスデータよりコンセンサス配列を構築する、コンセンサス配列構築工程。
前記複数の疾患関連リピート領域におけるリピートモチーフ繰り返し数をリピート数として検出し、被検者ゲノムの各リピート数データと、健常者群の各疾患関連リピート領域におけるリピート数データとの比較により、被検者ゲノムの疾患関連リピート領域が病的リピート伸長である可能性が高い順番にランク付けする、ランク付け工程。
下記の手順S1~S7に従って1位にランクされた疾患関連リピート領域から評価を開始し、被検者が病的リピート伸長を有するか否かを判定する、判定工程。
S1: 当該リピート領域に発症閾値を超える異常なリピート伸長があるかどうかを確認する。ある場合はS2へ進み、ない場合はS7へ進む。
S2: 当該リピート伸長が関連するリピート伸長病の遺伝形式を確認する。常染色体顕性の場合、及びX連鎖性顕性で被検者が女性の場合はS3へ進み、常染色体潜性の場合、X連鎖性潜性の場合、及びX連鎖性顕性で被検者が男性の場合はS5へ進む。
S3: 当該リピート領域は良性のリピート伸長があることが知られている領域かどうかを確認する。Yesの場合はS4へ進み、Noの場合は判定1へ進む。
S4: 当該リピート領域で検出されたリピート伸長に病的なリピートモチーフが含まれているかどうかを確認する。含まれている場合は判定1へ進み、含まれていない場合はS7へ進む。
S5: 全てのアレルに当該リピート伸長があるかを確認する。Yesの場合はS6へ進み、Noの場合はS7へ進む。
S6: 当該リピート領域がRFC1遺伝子座のリピート領域であるかを確認する。RFC1遺伝子座である場合はS4へ進み、RFC1遺伝子座ではない場合は判定1へ進む。
S7: 2位にランクされた疾患関連リピート領域についての評価は完了しているかを確認する。完了していない場合はS1へ戻り、2位の疾患関連リピート領域について評価を開始する。完了している場合は判定2へ進む。
判定1: 被検者は病的リピート伸長を有すると判定する。
判定2: 被検者は既知の病的リピート伸長を有しないと判定する。
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【請求項2】
疾患関連リピート領域は、下記(1)~(46)のリピート領域(各染色体上の位置は、ヒト参照ゲノムGRCh38における位置で示す):
(1) NOTCH2NLC遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、神経核内封入体病に関連するリピート領域(1番染色体の149390802位~149390842位)
(2) STARD7遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん2型に関連するリピート領域(2番染色体の96197066位~96197124位)
(3) HOXD13遺伝子座のコード領域に存在する、合指症に関連するリピート領域(2番染色体の176093058位~176093103位)
(4) GLS遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、早期乳児てんかん性脳症71型に関連するリピート領域(2番染色体の190880872位~190880920位)
(5) ATXN7遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症7型に関連するリピート領域(3番染色体の63912685位~63912715位)
(6) CNBP遺伝子座のイントロンに存在する、筋強直性ジストロフィー2型に関連するリピート領域(3番染色体の129172576位~129172656位)
(7) FOXL2遺伝子座のコード領域に存在する、眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群に関連するリピート領域(3番染色体の138946020位~138946062位)
(8) YEATS2遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん4型に関連するリピート領域(3番染色体の183712187位~183712226位)
(9) HTT遺伝子座のコード領域に存在する、ハンチントン病に関連するリピート領域(4番染色体の3074876位~3074939位)
(10) RFC1遺伝子座のイントロンに存在する、小脳性運動失調・ニューロパチー・前庭反射消失症候群に関連するリピート領域(4番染色体の39348424位~39348483位)
(11) PHOX2B遺伝子座のコード領域に存在する、先天性中枢性低換気症候群に関連するリピート領域(4番染色体の41745971位~41746031位)
(12) RAPGEF2遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん7型に関連するリピート領域(4番染色体の159342526位~159342618位)
(13) MARCHF6遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん3型に関連するリピート領域(5番染色体の10356339位~10356411位)
(14) PPP2R2B遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症12型に関連するリピート領域(5番染色体の146878728位~146878758位)
(15) ATXN1遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症1型に関連するリピート領域(6番染色体の16327635位~16327722位)
(16) RUNX2遺伝子座のコード領域に存在する、鎖骨頭蓋骨異形成症に関連するリピート領域(6番染色体の45422750位~45422801位)
(17) TBP遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症17型に関連するリピート領域(6番染色体の170561907位~170562021位)
(18) HOXA13遺伝子座のコード領域に存在する、手足性器症候群に関連するリピート領域(7番染色体の27199924位~27199966位)
(19) LRP12遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、眼咽頭遠位型ミオパチーに関連するリピート領域(8番染色体の104588970位~104588999位)
(20) SAMD12遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん1型に関連するリピート領域(8番染色体の118366815位~118366918位)
(21) C9orf72遺伝子座のイントロンに存在する、前頭側頭型認知症/筋萎縮性側索硬化症に関連するリピート領域(9番染色体の27573528位~27573546位)
(22) FXN遺伝子座のイントロンに存在する、フリードライヒ失調症に関連するリピート領域(9番染色体の69037286位~69037304位)
(23) LOC642361遺伝子座及びNUTM2B-AS1遺伝子座のエクソンに存在する、眼咽頭遠位型ミオパチーに関連するリピート領域(10番染色体の79826383位~79826404位)
(24) ATN1遺伝子座のコード領域に存在する、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症に関連するリピート領域(12番染色体の6936716位~6936773位)
(25) ATXN2遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症2型に関連するリピート領域(12番染色体の111598950位~111599019位)
(26) ATXN8OS遺伝子座のエクソンに存在する、脊髄小脳失調症8型に関連するリピート領域(13番染色体の70139383位~70139428位)
(27) ZIC2遺伝子座のコード領域に存在する、全前脳胞症5型に関連するリピート領域(13番染色体の99985448位~99985493位)
(28) PABPN1遺伝子座のコード領域に存在する、眼咽頭型筋ジストロフィーに関連するリピート領域(14番染色体の23321472位~23321502位)
(29) ATXN3遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症3型に関連するリピート領域(14番染色体の92071010位~92071040位)
(30) TNRC6A遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん6型に関連するリピート領域(16番染色体の24613438位~24613532位
(31) BEAN1遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症31型に関連するリピート領域(16番染色体の66490396位~66490466位)
(32) JPH3遺伝子座のイントロンに存在する、ハンチントン病類縁疾患2型に関連するリピート領域(16番染色体の87604287位~87604329位)
(33) TCF4遺伝子座のイントロンに存在する、フックス角膜内皮ジストロフィー3型に関連するリピート領域(18番染色体の55586153位~55586229位)
(34) CACNA1A遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症6型に関連するリピート領域(19番染色体の13207858位~13207897位)
(35) GIPC1遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、眼咽頭遠位型ミオパチーに関連するリピート領域(19番染色体の14496041位~14496075位)
(36) DMPK遺伝子座の3'非翻訳領域に存在する、筋強直性ジストロフィー1型に関連するリピート領域(19番染色体の45770204位~45770264位)
(37) NOP56遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症36型に関連するリピート領域(20番染色体の2652733位~2652757位)
(38) CSTB遺伝子座のプロモーター領域に存在する、ウンフェルリヒト・ルンドボルグ病/進行性ミオクローヌスてんかん1型に関連するリピート領域(21番染色体の43776443位~43776479位)
(39) ATXN10遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症10型に関連するリピート領域(22番染色体の45795354位~45795424位)
(40) AR遺伝子座のコード領域に存在する、球脊髄性筋萎縮症に関連するリピート領域(X染色体の67545317位~67545386位)
(41) ARX遺伝子座のコード領域に存在する、早期乳児てんかん性脳症1型に関連するリピート領域(X染色体の25013649位~25013697位)
(42) SOX3遺伝子座のコード領域に存在する、成長ホルモン単独欠損症を伴う精神遅滞に関連するリピート領域(X染色体の140504316位~140504361位)
(43) FMR1遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、脆弱X関連振戦/失調症候群に関連するリピート領域(X染色体の147912050位~147912110位)
(44) AFF2遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、脆弱X-E症候群に関連するリピート領域(X染色体の148500637位~148500682位)
(45) DAB1遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症37型に関連するリピート領域(1番染色体の57367043位~57367125位)
(46) XYLT1遺伝子座のプロモーター領域に存在する、Baratela-Scott症候群に関連するリピート領域(16番染色体の17470907位~17470930位)
を含み、良性のリピート伸長があることが知られている領域が(2)、(8)、(12)、(13)、(20)、(30)、(31)及び(45)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ライブラリー調製工程において、ゲノムDNAを35~45 kbに剪断してライブラリーを調製する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
シーケンシング工程が、
標的領域を指定して、ライブラリーの各DNA単分子のシーケンシングを開始する工程1、
DNA単分子の5'側300~700塩基の配列をリアルタイムで参照ヒトゲノムにマッピングする工程2、及び
指定した標的領域にマッピングされた場合は当該DNA単分子のシーケンスを続行し、指定した標的領域外にマッピングされた場合は当該DNA単分子のシーケンスを中止し、ポアから当該DNA単分子を排出して別のDNA単分子のシーケンスを開始し、工程2に戻る、工程3
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
標的領域が、各疾患関連リピート領域及びその上下流30kb~70kbずつのゲノム領域からなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
シーケンシング工程において、標的領域の平均リード深度が10x以上のシーケンスデータを得る、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ライブラリー調製工程において、複数の被検者に由来する複数のライブラリーをそれぞれ調製し、シーケンシング工程において、1つのライブラリーのシーケンスが終了した後、フローセルをヌクレアーゼで洗浄し、次のライブラリーをロードしてシーケンスを行うことにより、1つのフローセルで複数のライブラリーのシーケンシングを順次実施し、被検者ごとにランク付け工程及び判定工程を実施することを含む、請求項1記載の方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、リピート伸長病を検出するための方法に関する。
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【背景技術】
【0002】
タンデムリピートはヒトゲノムによくみられる配列変化の1つである(非特許文献1)。タンデムリピート伸長は疾患を引き起こすことがあり、通常は神経系の症状を呈する。これまでに、およそ60か所のタンデムリピートの伸長が69種以上の疾患と関連することが報告されている(非特許文献2)。リピート伸長は遺伝性神経筋疾患の原因として最も一般的であり(非特許文献3)、その臨床経過は進行性の神経筋の機能障害を呈し患者のADLを著しく障害するものであるため、効果的な神経治療の開発提供が早急に求められている。ごく近年、様々な神経変性疾患に対して、アンチセンスオリゴヌクレオチド(非特許文献4、5)、低分子化合物(非特許文献6)及び抗体(非特許文献7)などの有望な神経治療アプローチが報告されている。これらのアプローチのいずれにとっても、正確な分子診断が必要である。
【0003】
リピート伸長病の分子診断は医師や研究者にとって難しい課題である。第一に、座位異質性に富み、可能性のある遺伝子座を調べるために繰り返し実験を行う必要がある。第二に、タンデムリピートはしばしばGCリッチで長いため、PCRが困難である。従来の診断法は主として、伸長領域のフランキングPCR及びフラグメント解析、repeat-primed PCR(RP-PCR)のようなPCRベース、ないしはサザンブロッティングに依存しており、PCR条件/プライマー又はプローブを各遺伝子座に特異的にセットアップしなければならない。しかしながら、これには時間がかかり、技術的にも難しく、幅広い最適化が必要であり、実現できないこともある。現実には、全てではなく数か所の遺伝子座を選択して診断を行なっており、不完全なスクリーニングとなってしまうことがある。
【0004】
いわゆる第二世代のシーケンス技術であるショートリードシーケンス技術は、疾患を引き起こす新たなリピート伸長の発見にある程度貢献してきたが、100~300塩基程度のリード長ではリピート伸長全体をカバーすることができないことが多く、その貢献は限られていた。これに対し、Oxfordナノポア社又はPacific Biosciences社のプラットフォームに代表される第三、第四世代のシーケンス技術であるロングリードシーケンシングによれば数千塩基ないし10 kb以上のロングリードシーケンスが可能となり、リピート伸長全体をカバーしたり低複雑性のGCリッチなゲノム領域を克服することができる。近年ではこれらの技術により、GCリッチなリピートモチーフ(非特許文献8、9)や参照ゲノムとは相違するリピートモチーフ(非特許文献1、10~13)等の難易度の高い配列が関与するリピート伸長病の発見が相次いでいる。またPCRベースのエンリッチメント、Cas9による非PCRエンリッチメント(非特許文献14、15)、又はRead Until(非特許文献16~18)などの、事前にサンプルを調製する必要がないソフトウェアベースのターゲットエンリッチメント法などの関心領域を捕捉する方法が近年利用可能になったことにより、ターゲット領域のロングリードシーケンスが可能となり、ヒトの遺伝子研究に適用され始めている(非特許文献19、20)。
【0005】
上記した2社のプラットフォームは、現在実用化されているロングリードシーケンシングのプラットフォームの代表例である。第三世代であるPacific Biosciencesの技術は、一分子のDNAポリメラーゼを使用し、DNA合成中に取り込まれた蛍光標識ヌクレオチドをリアルタイムで検出する技術である。第四世代の技術は、蛍光標識も使用せず、物理的ないし化学的な手法でDNA分子を直接読み取る単分子DNAシーケンシング技術であり、この代表例がナノポアシーケンシングである。ナノポアシーケンシングは、ゲノムDNA分子がナノサイズの細孔(ナノポア)を通過する際の電流変化によって配列を決定する技術である。タンパク質で構成された細孔を利用したOxford Nanopore Technologies社のプラットフォームのように生体分子のナノポアを用いる手法の他、無機材料で構成された細孔(固体ナノポア)を利用する手法も開発が進められている(非特許文献21、22)。
【0006】
ヒトで既知のリピート伸長病の原因となる病的リピート伸長配列を対象とした、ロングリードシーケンシングによる網羅的な検出法については、手法の異なる2本の論文が発表されている(非特許文献20、23)。非特許文献20が開示する検出法は、本発明と同様にライブラリーを濃縮せずに標的領域をナノポアシーケンシングにより配列決定する検出法であるが、シーケンス後の診断にいたるフローは示されておらず、どちらかというと研究用技術である。また、非特許文献20の方法では、ヒト神経疾患を引き起こすいくつかの検索すべき原因遺伝子が解析対象遺伝子から外れている。非特許文献23が開示する検出法は、ターゲット領域の濃縮にCRISPR/Cas9を利用する手法であり、ライブラリー調製の際にCRISPR/Cas9システムによるサンプル処理が必須である。この手法の場合、標的領域に応じてガイドRNAを設計する必要があり、全ゲノムを網羅的に解析するには煩雑である。実際、非特許文献23においても、10箇所に限定した解析となっている。さらに、非特許文献20、23の手法はどちらも、リピート伸長病に関する高度な専門知識がなければ疾患か否かを判断することが困難であり、診断のための検査として実臨床に応用可能なレベルのものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リピート伸長病に関する高度な専門知識なしでもリピート伸長病を網羅的に検査できる、実用的なリピート伸長病の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、目的領域を濃縮するためのサンプル前処理を必要としない、ソフトウェアによるターゲットシーケンシングであるAdaptive Samplingを用いたOxford Nanopore Technologies社のナノポアシーケンシングによるロングリードシーケンス法に着目し、リピート伸長病と遺伝子診断済みの患者12名をポジティブコントロールとしたディスカバリー研究、及びSCA又はCANVASと臨床診断されたが遺伝子診断はされていない患者10名におけるバリデーション研究を行い鋭意検討した結果、リピート伸長病に関する高度な専門知識なしでも診断に至ることが可能な解析・診断フローの開発に成功し、以下の態様を包含する本願発明を完成した。
【0010】
[1] 下記工程を含む、リピート伸長病を検出するための方法であって、病的リピートを有すると判定された被検者においてリピート伸長病が検出される、方法。
被検者から分離したゲノムDNAよりシーケンスのためのライブラリーを調製する、ライブラリー調製工程。
複数の疾患関連リピート領域及びそれらの周辺ゲノム領域を標的領域として、前記ライブラリーのナノポアシーケンシングによるロングリードシーケンシングを行い、被検者ゲノムの各標的領域のシーケンスデータを得る、シーケンシング工程。
シーケンシング工程で得られたシーケンスデータよりコンセンサス配列を構築する、コンセンサス配列構築工程。
前記複数の疾患関連リピート領域におけるリピートモチーフ繰り返し数をリピート数として検出し、被検者ゲノムの各リピート数データと、健常者群の各疾患関連リピート領域におけるリピート数データとの比較により、被検者ゲノムの疾患関連リピート領域が病的リピート伸長である可能性が高い順番にランク付けする、ランク付け工程。
下記の手順S1~S7に従って1位にランクされた疾患関連リピート領域から評価を開始し、被検者が病的リピート伸長を有するか否かを判定する、判定工程。
S1: 当該リピート領域に発症閾値を超える異常なリピート伸長があるかどうかを確認する。ある場合はS2へ進み、ない場合はS7へ進む。
S2: 当該リピート伸長が関連するリピート伸長病の遺伝形式を確認する。常染色体顕性の場合、及びX連鎖性顕性で被検者が女性の場合はS3へ進み、常染色体潜性の場合、X連鎖性潜性の場合、及びX連鎖性顕性で被検者が男性の場合はS5へ進む。
S3: 当該リピート領域は良性のリピート伸長があることが知られている領域かどうかを確認する。Yesの場合はS4へ進み、Noの場合は判定1へ進む。
S4: 当該リピート領域で検出されたリピート伸長に病的なリピートモチーフが含まれているかどうかを確認する。含まれている場合は判定1へ進み、含まれていない場合はS7へ進む。
S5: 全てのアレルに当該リピート伸長があるかを確認する。Yesの場合はS6へ進み、Noの場合はS7へ進む。
S6: 当該リピート領域がRFC1遺伝子座のリピート領域であるかを確認する。RFC1遺伝子座である場合はS4へ進み、RFC1遺伝子座ではない場合は判定1へ進む。
S7: 2位にランクされた疾患関連リピート領域についての評価は完了しているかを確認する。完了していない場合はS1へ戻り、2位の疾患関連リピート領域について評価を開始する。完了している場合は判定2へ進む。
判定1: 被検者は病的リピート伸長を有すると判定する。
判定2: 被検者は既知の病的リピート伸長を有しないと判定する。
[2] 疾患関連リピート領域は、下記(1)~(46)のリピート領域(各染色体上の位置は、ヒト参照ゲノムGRCh38における位置で示す):
(1) NOTCH2NLC遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、神経核内封入体病に関連するリピート領域(1番染色体の149390802位~149390842位)
(2) STARD7遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん2型に関連するリピート領域(2番染色体の96197066位~96197124位)
(3) HOXD13遺伝子座のコード領域に存在する、合指症に関連するリピート領域(2番染色体の176093058位~176093103位)
(4) GLS遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、早期乳児てんかん性脳症71型に関連するリピート領域(2番染色体の190880872位~190880920位)
(5) ATXN7遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症7型に関連するリピート領域(3番染色体の63912685位~63912715位)
(6) CNBP遺伝子座のイントロンに存在する、筋強直性ジストロフィー2型に関連するリピート領域(3番染色体の129172576位~129172656位)
(7) FOXL2遺伝子座のコード領域に存在する、眼瞼裂狭小・眼瞼下垂・逆内眼角贅皮症候群に関連するリピート領域(3番染色体の138946020位~138946062位)
(8) YEATS2遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん4型に関連するリピート領域(3番染色体の183712187位~183712226位)
(9) HTT遺伝子座のコード領域に存在する、ハンチントン病に関連するリピート領域(4番染色体の3074876位~3074939位)
(10) RFC1遺伝子座のイントロンに存在する、小脳性運動失調・ニューロパチー・前庭反射消失症候群に関連するリピート領域(4番染色体の39348424位~39348483位)
(11) PHOX2B遺伝子座のコード領域に存在する、先天性中枢性低換気症候群に関連するリピート領域(4番染色体の41745971位~41746031位)
(12) RAPGEF2遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん7型に関連するリピート領域(4番染色体の159342526位~159342618位)
(13) MARCHF6遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん3型に関連するリピート領域(5番染色体の10356339位~10356411位)
(14) PPP2R2B遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症12型に関連するリピート領域(5番染色体の146878728位~146878758位)
(15) ATXN1遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症1型に関連するリピート領域(6番染色体の16327635位~16327722位)
(16) RUNX2遺伝子座のコード領域に存在する、鎖骨頭蓋骨異形成症に関連するリピート領域(6番染色体の45422750位~45422801位)
(17) TBP遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症17型に関連するリピート領域(6番染色体の170561907位~170562021位)
(18) HOXA13遺伝子座のコード領域に存在する、手足性器症候群に関連するリピート領域(7番染色体の27199924位~27199966位)
(19) LRP12遺伝子座の5'非翻訳領域に存在する、眼咽頭遠位型ミオパチーに関連するリピート領域(8番染色体の104588970位~104588999位)
(20) SAMD12遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん1型に関連するリピート領域(8番染色体の118366815位~118366918位)
(21) C9orf72遺伝子座のイントロンに存在する、前頭側頭型認知症/筋萎縮性側索硬化症に関連するリピート領域(9番染色体の27573528位~27573546位)
(22) FXN遺伝子座のイントロンに存在する、フリードライヒ失調症に関連するリピート領域(9番染色体の69037286位~69037304位)
(23) LOC642361遺伝子座及びNUTM2B-AS1遺伝子座のエクソンに存在する、眼咽頭遠位型ミオパチーに関連するリピート領域(10番染色体の79826383位~79826404位)
(24) ATN1遺伝子座のコード領域に存在する、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症に関連するリピート領域(12番染色体の6936716位~6936773位)
(25) ATXN2遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症2型に関連するリピート領域(12番染色体の111598950位~111599019位)
(26) ATXN8OS遺伝子座のエクソンに存在する、脊髄小脳失調症8型に関連するリピート領域(13番染色体の70139383位~70139428位)
(27) ZIC2遺伝子座のコード領域に存在する、全前脳胞症5型に関連するリピート領域(13番染色体の99985448位~99985493位)
(28) PABPN1遺伝子座のコード領域に存在する、眼咽頭型筋ジストロフィーに関連するリピート領域(14番染色体の23321472位~23321502位)
(29) ATXN3遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症3型に関連するリピート領域(14番染色体の92071010位~92071040位)
(30) TNRC6A遺伝子座のイントロンに存在する、家族性成人型ミオクローヌスてんかん6型に関連するリピート領域(16番染色体の24613438位~24613532位
(31) BEAN1遺伝子座のイントロンに存在する、脊髄小脳失調症31型に関連するリピート領域(16番染色体の66490396位~66490466位)
(32) JPH3遺伝子座のイントロンに存在する、ハンチントン病類縁疾患2型に関連するリピート領域(16番染色体の87604287位~87604329位)
(33) TCF4遺伝子座のイントロンに存在する、フックス角膜内皮ジストロフィー3型に関連するリピート領域(18番染色体の55586153位~55586229位)
(34) CACNA1A遺伝子座のコード領域に存在する、脊髄小脳失調症6型に関連するリピート領域(19番染色体の13207858位~13207897位)
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)
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