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公開番号2025034818
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-03-13
出願番号2023141457
出願日2023-08-31
発明の名称無鉛圧電組成物、圧電素子、および装置
出願人日本特殊陶業株式会社
代理人個人,個人
主分類C04B 35/495 20060101AFI20250306BHJP(セメント;コンクリート;人造石;セラミックス;耐火物)
要約【課題】無鉛圧電組成物の機械的品質係数Qmを向上させると共に誘電損失tanδを低減する。
【解決手段】
無鉛圧電組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物からなる主相と、Nbと、Ba、Ca、Sr、Na、Kから選択される少なくとも1種と、を含むタングステンブロンズ型構造を有する化合物を含む副相と、を備え、副相は、体積基準の粒度分布におけるD80、D50、およびD20に関する以下の(1)-(3)式に示す3条件のうちの少なくとも1つを満たす。
1.3μm≦D80≦218.6μm … (1)
0.4μm≦D50≦68.7μm … (2)
0.1μm≦D20≦22.2μm … (3)
【選択図】図12
特許請求の範囲【請求項1】
無鉛圧電組成物であって、
ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物からなる主相と、
ニオブ(Nb)と、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)から選択される少なくとも1種と、を含むタングステンブロンズ型構造を有する化合物を含む副相と、
を備え、
前記副相は、体積基準の粒度分布における累積頻度80%粒子径(D80)、累積頻度50%粒子径(D50)、および累積頻度20%粒子径(D20)に関する以下の(1)-(3)式に示す3条件のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする無鉛圧電組成物。
1.3μm≦D80≦218.6μm … (1)
0.4μm≦D50≦68.7μm … (2)
0.1μm≦D20≦22.2μm … (3)
続きを表示(約 1,300 文字)【請求項2】
請求項1に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記副相において、体積基準の粒度分布における累積頻度80%粒子径(D80)は、前記(1)式を満たし、さらに、以下の(4)式を満たすことを特徴とする
無鉛圧電組成物。
1.3μm≦D80≦155.2μm … (4)
【請求項3】
請求項1に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記副相において、体積基準の粒度分布における累積頻度50%粒子径(D50)は、前記(2)式を満たし、さらに、以下の(5)式を満たすことを特徴とする
無鉛圧電組成物。
0.4μm≦D50≦60.7μm … (5)
【請求項4】
請求項1に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記副相において、体積基準の粒度分布における累積頻度20%粒子径(D20)は、前記(3)式を満たし、さらに、以下の(6)式を満たすことを特徴とする
無鉛圧電組成物。
0.1μm≦D20≦6.7μm … (6)
【請求項5】
請求項1に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、マンガン(Mn)を含むことを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、
組成式(A1

M1



(Nb
d1
,Mn
d2
,M2
d3
)O
3+e
(ただし、元素A1はアルカリ金属のうちの少なくとも1種であり、元素M1はBa、Ca、Srのうち少なくとも1種であり、元素M2はTi、Zrのうち少なくとも1種であり、0<a<1、0<b<1、a+b=1であり、cは0.80<c<1.10を満たし、0<d1<1、0<d2<1、0<d3<1、d1+d2+d3=1であり、eは酸素の欠損あるいは過剰を示す値)で表されるニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相を含み、
b/(d2+d3)>1.0
を満たすことを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の無鉛圧電組成物によって形成された圧電体と、
前記圧電体に取り付けられた電極と、
を備えることを特徴とする圧電素子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電素子を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、
前記装置は、超音波メスと、超音波スケーラと、超音波洗浄機と、超音波加工機と、圧電トランスデューサーと、超音波モータと、圧電ジャイロセンサと、圧電フィルタと、ノックセンサと、のうちのいずれかであることを特徴とする装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、無鉛圧電組成物、圧電素子、および装置に関する。
続きを表示(約 4,600 文字)【背景技術】
【0002】
従来、圧電性を示す組成物として、PZT系(チタン酸ジルコン酸鉛系)の組成物が広く用いられてきたが、環境負荷低減などのために鉛を使用しない無鉛圧電組成物の開発が望まれている。このような無鉛圧組成物の候補として、例えば、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物が提案されている。しかしながら、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物には、焼結性が不十分になり得るという問題があった。
【0003】
ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物の焼結性を高めるための構成として、無鉛圧電組成物において、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物によって構成される主相に加えて、他種の酸化物によって構成される副相を設ける構成が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。具体的には、特許文献1では、M-Ti-O系スピネル化合物(元素Mは1~4価の元素)を含む副相を設ける構成が開示されている。また、特許文献2では、(M4,Ti)O

(但し、金属元素M4は、Fe,Co,Znの一種以上)で示されるスピネル化合物を含む副相を設ける構成が開示されている。また、特許文献3では、Tiを含むスピネル化合物を含む副相を設ける構成が開示されている。また、特許文献4では、組成式A2
1-x
Ti
1-x
Nb
1+x


(但し、元素A2はアルカリ金属のうちの少なくとも1種であり、0≦x≦0.15を満たす)で表される酸化物、および組成式A3Ti

NbO

(但し、元素A3はアルカリ金属のうちの少なくとも1種である)で表される酸化物のうち一方の酸化物からなる副相を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第5715309号公報
特許第6895845号公報
国際公開第2022/215666号
国際公開第2023/026614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような圧電組成物においては、機械的品質係数Qmを高めると共に、機械的品質係数Qmの逆数である誘電損失(誘電正接)tanδを低減することが求められる。機械的品質係数Qmは、圧電素子の共振スペクトルの鋭さを表すパラメータであり、機械的品質係数Qmを大きくすることによって、効果的に圧電素子を振動させることが可能になる。しかしながら、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmおよび誘電損失tanδについては十分な検討がなされておらず、機械的品質係数Qmのさらなる向上および誘電損失tanδのさらなる低減が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
[1]本開示の一形態によれば、無鉛圧電組成物が提供される。この無鉛圧電組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物からなる主相と、ニオブ(Nb)と、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)から選択される少なくとも1種と、を含むタングステンブロンズ型構造を有する化合物を含む副相と、を備え、前記副相は、体積基準の粒度分布における累積頻度80%粒子径(D80)、累積頻度50%粒子径(D50)、および累積頻度20%粒子径(D20)に関する以下の(1)-(3)式に示す3条件のうちの少なくとも1つを満たす。
1.3μm≦D80≦218.6μm … (1)
0.4μm≦D50≦68.7μm … (2)
0.1μm≦D20≦22.2μm … (3)
この形態の無鉛圧電組成物によれば、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物からなる主相を備える無鉛圧電組成物において、上記したタングステンブロンズ型構造を有する化合物を含む副相の粒子径に関して、上記した(1)-(3)式に示す3条件のうちの少なくとも1つを満たすことにより、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmを高め、誘電損失tanδを低減することができる。
[2]上記形態の無鉛圧電組成物の前記副相において、体積基準の粒度分布における累積頻度80%粒子径(D80)は、前記(1)式を満たし、さらに、以下の(4)式を満たすこととしてもよい。
1.3μm≦D80≦155.2μm … (4)
このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmを高め、誘電損失tanδを低減する効果をさらに高めることができる。
[3]上記形態の無鉛圧電組成物の前記副相において、体積基準の粒度分布における累積頻度50%粒子径(D50)は、前記(2)式を満たし、さらに、以下の(5)式を満たすこととしてもよい。
0.4μm≦D50≦60.7μm … (5)
このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmを高め、誘電損失tanδを低減する効果をさらに高めることができる。
[4]上記形態の無鉛圧電組成物の前記副相において、体積基準の粒度分布における累積頻度20%粒子径(D20)は、前記(3)式を満たし、さらに、以下の(6)式を満たすこととしてもよい。
0.1μm≦D20≦6.7μm … (6)
このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmを高め、誘電損失tanδを低減する効果をさらに高めることができる。
[5]上記形態の無鉛圧電組成物において、前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、マンガン(Mn)を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmを高め、誘電損失tanδを低減する効果をさらに高めることができる。
[6]上記形態の無鉛圧電組成物において、前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、組成式(A1

M1



(Nb
d1
,Mn
d2
,M2
d3
)O
3+e
(ただし、元素A1はアルカリ金属のうちの少なくとも1種であり、元素M1はBa、Ca、Srのうち少なくとも1種であり、元素M2はTi、Zrのうち少なくとも1種であり、0<a<1、0<b<1、a+b=1であり、cは0.80<c<1.10を満たし、0<d1<1、0<d2<1、0<d3<1、d1+d2+d3=1であり、eは酸素の欠損あるいは過剰を示す値)で表されるニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相を含み、b/(d2+d3)>1.0を満たすこととしてもよい。このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Qmを高め、誘電損失tanδを低減する効果をさらに高めることができる。
[7]本開示の他の一形態によれば、[1]から[6]までのいずれか一項に記載の無鉛圧電組成物によって形成された圧電体と、前記圧電体に取り付けられた電極と、を備える圧電素子が提供される。
この形態の圧電素子によれば、機械的品質係数Qmが高められると共に誘電損失tanδが低減された無鉛圧電組成物によって形成される圧電体を備えるため、圧電性能を高めることができる。
[8]本開示のさらに他の一形態によれば、[7]に記載の圧電素子を備える装置が提供される。
この形態の装置によれば、機械的品質係数Qmが高められると共に誘電損失tanδが低減された無鉛圧電組成物を備える圧電素子を備えるため、装置全体の性能を高めることができる。
本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、無鉛圧電組成物、それを用いた圧電素子、圧電素子を備える各種の装置(ノックセンサ、超音波振動子、切削工具、超音波センサ、アクチュエータ等) 、および、無鉛圧電組成物の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
圧電素子の外観を示す斜視図。
圧電素子の製造方法の一例を示すフローチャート。
装置の一例としての超音波メスを示す模式図。
装置の一例としての超音波スケーラを示す模式図。
装置の一例としての超音波洗浄機を示す模式図。
装置の一例としての超音波加工機を示す模式図。
装置の一例としての圧電トランスデューサーを示す模式図。
装置の一例としての超音波モータを示す模式図。
装置の一例としての圧電ジャイロセンサを示す模式図。
装置の一例としての積層型の圧電フィルタを表す模式図。
装置の一例としてのノックセンサの模式図。
各サンプルの構成と評価結果とをまとめて示す説明図。
各サンプルの構成と評価結果とをまとめて示す説明図。
各サンプルの構成と評価結果とをまとめて示す説明図。
各サンプルの主相の構成を示す説明図。
各サンプルの副相を形成するための副相仮焼粉に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.無鉛圧電組成物:
本実施形態の無鉛圧電組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物からなる主相と、ニオブ(Nb)と、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)から選択される少なくとも1種と、を含むタングステンブロンズ型構造を有する化合物を含む副相と、を備える。そして、上記副相は、体積基準の粒度分布における累積頻度80%粒子径(D80)、累積頻度50%粒子径(D50)、および累積頻度20%粒子径(D20)に関する以下の(1)-(3)式に示す3条件のうちの少なくとも1つを満たす。
【0009】
1.3μm≦D80≦218.6μm … (1)
0.4μm≦D50≦68.7μm … (2)
0.1μm≦D20≦22.2μm … (3)
【0010】
(A-1)主相について:
主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物は、アルカリ系成分として、アルカリ金属(カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)等)のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、特に、カリウム(K)およびナトリウム(Na)のうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。また、主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物は、アルカリ系成分として、アルカリ土類金属(カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等の少なくとも1種)を含み得る。
(【0011】以降は省略されています)

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