発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、生体(ヒトや動物)の心拍動や呼吸動等の周期的な体動に基づいた生体情報を検出する生体情報検出装置及び生体情報検出方法に関する。 続きを表示(約 4,900 文字)【背景技術】 【0002】 ヒトの健康状態を見守ることを目的として、ウェアラブルデバイスやカメラを用いたバイタルサイン検出方法が検討されている(非特許文献1、2参照)。これらの非特許文献記載の方法は、装着忘れや長時間の装着による身体的及び精神的負担が大きい。非特許文献2記載の方法は、プライバシーの問題や死角や暗所に弱いという問題がある。そこで、それらの問題を解決するために,電波を用いたバイタルサイン検出が検討されている(非特許文献3、4、5参照)。これは、生体に電波を照射し、その反射波に含まれるドップラシフトからバイタルサインを抽出する手法である。バイタルサイン由来の反射波の振幅と位相は、呼吸や心拍等の生体表面の揺らぎによって変化し、ドップラシフトにはその時変動と周波数変動が含まれている。しかし、屋内等の複雑な電波伝搬環境では、生体以外の反射波や雑音により、正確にバイタルサインを検出することが困難になる。そこで、バイタルサイン検出精度を向上させるために逆正接復調法が提案されている(非特許文献5、6参照)。この逆正接復調は,体表面変位に起因した円弧状の信号点の位相角を観測することでバイタルサインを検出する方法であり、高調波を低減できる利点がある。 【0003】 また、MIMO (Multiple-InputMultiple-Output) を用いて伝搬路自由度数を増加させ、バイタルサイン検出感度を飛躍的に向上させる研究がされている(非特許文献7、8、9参照)。アレーアンテナ放射指向性を制御するビームフォーミングにより、バイタルサインを強調しクラッタを低減することが可能である。しかし、安静呼吸時であっても無意識な体動により観測対象の方向や距離が変化するため、バイタルサインを継続的に強調するようなビーム追従は困難である。また、体表面変位に起因した円弧状の応答波形を観測できない場合、円弧の中心座標の推定が必要である逆正接復調が機能せず、DCオフセットの除去が困難となり、正確にバイタルサインを検出できなくなる。このような問題は、特許文献1に記載の生体信号処理装置においても生じ得る。そこで、この問題を解消するために,円弧の中心座標の推定が不要である疑似逆正接復調(非特許文献10参照)やCMA-like (Constant Modulus Algorithm) アダプティブアレーアルゴリズム(非特許文献11参照)が提案されている。CMA-like法はバイタルサイン軌跡が直線状になることに基づきクラッタを抑制するように逐次的にウェイトを決定する手法である。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 特許第7217011号 【非特許文献】 【0005】 Y.-L. Zheng, X.-R. Ding, C. C. Y. Poon, B. P. L. Lo, H. Zhang, X.-L. Zhou, G.-Z. Yang, N. Zhao, and Y.-T. Zhang, “Unobtrusive sensing and wearable devices for health informatics,” IEEE Transactions on Biomedical Engineering, vol. 61, no. 5, pp. 1538?1554, May 2014. N. Bernacchia, L. Scalise, L. Casacanditella, I. Ercoli, P. Marchionni, and E. P. Tomasini, “Non contact measurement of heart and respiration rates based on KINECT?,” IEEE International Symposium on Medical Measurements and Applications (MeMeA), pp. 1?5, Jun. 2014. A. Droitcour, V. Lubecke, J. Lin, and O. Boric-Lubecke, “A microwave radio for Doppler radar sensing of vital signs,” IEEE MTT-S International Microwave Sympsoium Digest,vol. 1, pp. 175?178, May 2001. B. Lohman, O. Boric-Lubecke, V. Lubecke, P. Ong, andM. Sondhi, “A digital signal processor for Doppler radar sensing of vital signs,” IEEE ngineering in Medicine and Biology Magazine, vol. 21, no. 5, pp. 161?164, Dec. 2002. B.-K. Park, O. Boric-Lubecke, and V. M. Lubecke, “Arctangent demodulation with DC offset compensation in quadrature Doppler radar receiver systems,” IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 55, no. 5, pp. 1073?1079, May 2007. C. Li and J. Lin, “Random body movement cancellation in Doppler radar vital sign detection,” IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, vol. 56, no. 12, pp. 3143?3152, Dec. 2008. M. Nosrati, S. Shahsavari, S. Lee, H.Wang, and N. Tavassolian, “A concurrent dual-beam phased-array Doppler radar using MIMO beamforming techniques for short-range vitalsigns monitoring,” IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol. 67, no. 4, pp. 2390?2404, Apr. 2019. C. Feng, X. Jiang, M.-G. Jeong, H. Hong, C.-H. Fu, X. Yang, E. Wang, X. Zhu, and X. Liu, “Multitarget vital signs measurement with chest motion imaging based on MIMO radar,” IEEE Transactions on Microwave Theoryand Techniques, vol. 69, no. 11, pp. 4735?4747, Nov. 2021. 小川悠太, 佐々木滉太, 本間尚樹, 村田健太郎, 岩井守生, 小林宏一郎, 佐藤敦, “レイリー商規範ビームフォーミング法による心拍数推定評価,” 電子情報通信学会ソサイエティ大会, pp. B?1?104, Sep. 2021. 佐藤潤, 本間尚樹, 岩井守生, 小林宏一郎, 佐藤敦, “疑似逆正接復調の振幅相当成分を用いた複数人心拍の同時検出法の評価,” 信学技報, AP2019-135, pp. 157?162, Nov. 2019. 本間尚樹, 村田健太郎, 岩井守生, 小林宏一郎, 佐藤敦, “低マイクロ波帯に適したバイタルサイン検出用アダプティブアレーアルゴリズム,” 信学技報, SRW2021-11, pp. 43?48, Jun. 2021. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上述したCMA-like (Constant Modulus Algorithm) アダプティブアレーアルゴリズムはバイタルサイン軌跡が直線状になることに基づきクラッタを抑制するように逐次的にウェイトを決定する手法である。しかし、バイタルサインの特徴を考慮していないため、必ずしも所望の応答が得られないという問題があった。 【0007】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、電波を用いてより精度良くヒトまたは動物の生体情報(バイタルサイン)を検出することのできる生体情報検出装置を提供するものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明に係る生体情報検出装置は、生体の周期的な体動に基づいた生体情報を検出する生体情報検出装置であって、送信アンテナ素子及び複数の受信アンテナのセット、複数の送信アンテナ素子及び受信アンテナ素子のセット、及び複数の送信アンテナ素子及び複数の受信アンテナ素子のセットのいずれかのセットを備えたアレーアンテナと、前記アレーアンテナにおける各送信アンテナ素子から生体情報の検出対象となる生体に向けて所定周波数の電波信号を送信している状況のもと当該アレーアンテナにおける各受信アンテナ素子からの受信電波信号に応じた受信複素信号に基づいて、複素信号形式で表されるアレー合成出力を取得する、合成出力取得部と、前記合成出力取得部にて取得される前記アレー合成出力の複素平面上での信号点が表す位相と振幅とが、当該複素平面上において所定振幅値及び所定位相変動幅に基づいた所定状態に収まるように、当該アレー合成出力を調整する出力調整部と、前記出力調整部により得られる調整済みのアレー合成出力から目的の生体情報を抽出する生体情報抽出部と、を有する構成となる。 【0009】 このような構成により、アレーアンテナにおける各送信アンテナ素子から生体情報の検出対象となる生体に向けて所定周波数の電波信号を送信している状況のもと当該アレーアンテナにおける各受信アンテナ素子からの受信信号に基づいて複素信号形式(搬送波と同相成分(I)のデータと、直交成分(Q)のデータ)で表されるアレー合成出力が取得される。そして、そのアレー合成出力(IQデータ)の複素平面上での信号点が表す位相と振幅とが、当該複素平面上において所定振幅値及び所定位相変動幅に基づいた所定状態に収まるように、当該アレー合成出力が調整される。その調整により得られる所定状態に収まった前記アレー合成出力から目的の生体情報(例えば、心拍動や呼吸動に係る情報)が抽出される。 【0010】 本発明に係る生体情報検出装置において、前記合成出力取得部は、前記アレーアンテナにおける各送信アンテナ素子と各受信アンテナ素子との複数の組み合わせのそれぞれに対してそれら送信アンテナ素子と受信アンテナ素子との間の複素伝達関数を推定する伝達関数推定部と、前記伝達関数推定部により得られる複数の複素伝達関数のそれぞれを複素信号として扱い、複数の前記複素信号からアレー合成出力を生成する合成出力生成部と、を含む構成とすることができる。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する