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公開番号2025010995
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-23
出願番号2023113354
出願日2023-07-10
発明の名称電動車の駆動モータ制御装置
出願人トヨタ自動車株式会社
代理人個人,個人
主分類H02P 29/66 20160101AFI20250116BHJP(電力の発電,変換,配電)
要約【課題】電動車の駆動用のPMモータ1のステータ巻線電流の大きさの制御に於いて、ロータ磁石5に於いて不可逆的な減磁が発生しない範囲で、ステータ巻線電流の大きさを最大にし、出力トルクをより大きく発揮できるようにする。
【解決手段】 電動車の駆動用PMモータの制御装置は、モータのロータ磁石の温度を推定する手段と、モータのロータ磁石の種々の温度でのロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値を決定できる情報を記憶した記憶手段と、記憶手段に記憶された情報から推定されたロータ磁石の温度に於けるステータ巻線電流の上限値を決定する手段と、ステータの巻線電流がステータの巻線電流の上限値までに制限されるよう巻線電流を制御する電流制御手段とを含む。

【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
電動車の駆動用PMモータの制御装置であって、
前記モータのロータ磁石の温度を推定するロータ磁石温度推定手段と、
前記モータのロータ磁石の種々の温度での前記ロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値を決定できる情報を記憶したロータ磁石特性記憶手段と、
前記ロータ磁石特性記憶手段に記憶された情報から前記推定されたロータ磁石の温度に於ける前記ステータ巻線電流の上限値を決定するステータ巻線電流上限値決定手段と
前記ステータの巻線電流が前記ステータ巻線電流の上限値までに制限されるよう前記巻線電流を制御する電流制御手段と
を含む装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車の駆動モータ制御装置に係り、より詳細には、駆動モータのロータ磁石の減磁をできるだけ抑制しつつトルクを増大できるよう駆動電流を制御する装置に係る。
続きを表示(約 4,700 文字)【背景技術】
【0002】
電動車の駆動用モータとして用いられる永久磁石(PM)モータに於いては、ロータの永久磁石(ロータ磁石)に減磁が生じ、これにより、モータの発生トルクの低下が発生するところ、かかるロータ磁石の減磁に関連して種々の構成が提案されている。例えば、特許文献1では、突極型永久磁石モータの励磁束を発生させる永久磁石の減磁を検出し、その減磁に応じて最大のトルクを得られるように、トルク電流と励磁電流の位相を変化させることが提案されている。特許文献2では、磁石埋め込み型モータに於いて、磁石温度が上昇するとマグネットトルクが低減することから、磁石温度の上昇と共に電流の位相を進角し、磁石温度が閾値を超えると、不可逆な減磁を防ぐべく、電流の位相を0度に設定することが提案されている。特許文献3では、回転電機の無負荷誘起電圧波形から、減磁した磁石の起磁力を推定し、推定された起磁力に応じてトルク指令に対する電流値と電流位相を設定してトルク制御の精度を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開平08-103093
特開2013-5503
特開2020-10501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PMモータのロータ磁石の磁束密度は、図1(A)の磁化曲線Cに示されている如く、磁場Hに対してヒステリシスを持って変化し、ステータからの磁場が作用していない場合、即ち、ステータの巻線電流が流れていないときには、ロータ磁石の空隙に於ける磁極により生ずる反磁場(H1)のために、ロータ磁石の磁束密度Bは、磁化曲線Cとパーミアンス直線Lpとの交点(動作点P

)に於ける値となる。そして、ステータの巻線電流が流れ、ステータからの逆磁場(ロータ磁石の磁化と逆方向の磁場)の大きさが増大すると、ロータ磁石の磁束密度は、動作点P

から磁化曲線Cに沿って低減する、即ち、減磁することなる。かかる減磁に於いて、磁場Hに対する磁束密度Bは、動作点P

から線形に変化する範囲(R)では可逆的に変化し、ステータの逆磁場の大きさが低減すれば、ロータ磁石の磁束密度Bは、動作点P

へ復帰するところ、逆磁場の大きさが磁化曲線Cの屈曲点Xを越えて大きくなると(▲)、減磁が不可逆となり、逆磁場の大きさが低減しても、磁束密度Bは、動作点P

の大きさまで復帰しないこととなる(P

:磁束密度の到達点から磁化曲線Cの線形変化範囲Rと略平行に増大する。)。従って、ステータの巻線電流の制御に於いては、前記の如きステータからの逆磁場による不可逆的なロータ磁石の減磁を防止するべく、ステータの巻線電流には、ステータからの逆磁場の大きさが過大とならないように、制限がかけられる。この点に関し、ロータ磁石の磁化曲線Cは、図1(B)の如く、ロータ磁石の温度に依存して変化し、特に、ロータ磁石の温度が高いほど、屈曲点Xが生ずる磁場の大きさが小さくなる。そこで、従前は、温度が変化してもステータからの逆磁場の大きさがその屈曲点Xの大きさを超えることがないように、安全を見越して余裕代を大きくとって、即ち、磁化曲線が屈曲点Xに達する逆磁場よりも十分に小さい逆磁場までしかかからないように、ステータの巻線電流が制限されていた。或いは、モータの温度は、それを監視する構成に於いても、一般に、ロータ磁石の温度を直接的に検出する手段が設けられることは少なく(特に、量産されるモータでは、コストの観点から、温度検出手段は殆ど設けられない。)、ステータのサーミスタやオートマチック・トランスミッション・フルード(ATF)の値が参照され、ロータ磁石が監視されているわけではないので、モータ温度が高くなったときには、より早めにステータの巻線電流が制限されていた。このため、ロータ磁石内の逆磁場が屈曲点Xとなる大きさまで達していなくても出力されるトルクに制限がかかることがあり、特に、比較的高温で上り坂の多い地域に於いては、早めにトルク制限がかかることで、車両が坂を登らなくなりやすいなどの苦情が散見される状況であった。
【0005】
ところで、図1(B)を再度参照して、ロータ磁石の磁束密度が動作点にあるときの磁場H1と屈曲点Xに達する磁場H2とは、ロータ磁石の温度を特定することで決定可能である。かかる磁場H2の大きさは、ロータ磁石自身の磁極による逆磁場H1(動作点Poのときの磁場の大きさH1)とステータからロータ磁石へ与えられる逆磁場の和であるので、動作点Poと屈曲点Xに於ける磁場の大きさH1、H2が決定されれば、不可逆的な減磁を起こさずに、ステータからロータ磁石へ印加できる逆磁場の大きさの上限は、|H2-H1|であると決定される。そして、ステータの磁場は、ステータの巻線電流に対応し、モータの出力トルクに対応する。従って、ロータ磁石の温度と、ロータ磁石の磁化曲線Cの動作点Poに於ける磁場H1と屈曲点Xに於ける磁場H2との差分の大きさ、即ち、ステータからロータ磁石へ印加できる逆磁場の大きさの上限、との対応、或いは、それに対応する巻線電流の上限との対応を実験的に調べておき、ステータの巻線電流の大きさの制御に於いて、ロータ磁石の温度を任意の手法で特定できれば、そのロータ磁石温度に対応する不可逆的な減磁を起こさない範囲でステータの巻線電流の発生可能な最大値が決定でき、その最大値を超えない範囲でステータの巻線電流の増大を許すことで、ロータ磁石に不可逆的な減磁を起こさない範囲でモータの出力トルクを最大化できることとなる。本発明に於いては、この知見が利用される。
【0006】
かくして、本発明の主な課題は、電動車の駆動用のPMモータのステータ巻線電流の大きさの制御に於いて、ロータ磁石に於いて不可逆的な減磁が発生しない範囲で、ステータ巻線電流の大きさを最大にし、これにより出力トルクをより大きく発揮できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題は、電動車の駆動用PMモータの制御装置であって、
前記モータのロータ磁石の温度を推定するロータ磁石温度推定手段と、
前記モータのロータ磁石の種々の温度での前記ロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値を決定できる情報を記憶したロータ磁石特性記憶手段と、
前記ロータ磁石特性記憶手段に記憶された情報から前記推定されたロータ磁石の温度に於ける前記ステータ巻線電流の上限値を決定するステータ巻線電流上限値決定手段と
前記ステータの巻線電流が前記ステータの許容可能な巻線電流の上限値までに制限されるよう前記巻線電流を制御する電流制御手段と
を含む装置によって達成される。
【0008】
上記の構成に於いて、「電動車」は、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などの、駆動用にPMモータを用いた任意の形式の車両であってよい。「ロータ磁石温度推定手段」は、任意の手法にてロータ磁石の温度を推定する手段であってよく、後述の如く、例えば、ステータのコイルの抵抗値に基づいてリアルタイムのロータ磁石の温度が推定されてもよいが、任意の形式の機械学習のアルゴリズムを用いて車両の走行状況からモータへの要求トルクを予測し、その予測された要求トルクに基づいてロータ磁石の将来の温度が推定(予測)されてもよい。また、上記までの説明から理解される如く、ロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値は、結局、ロータ磁石温度の関数であるので、「ロータ磁石特性記憶手段」に記憶される「前記モータのロータ磁石の種々の温度での前記ロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値を決定できる情報」とは、要すれば、かかるステータ巻線電流の上限値をロータ磁石温度から決定するために利用できる情報であり、予め実験的に収集されていてよい。具体的には、ロータ磁石特性記憶手段に記憶される情報としては、例えば、各ロータ磁石温度に於けるロータ磁石の磁化曲線に於ける動作点(磁化曲線(B-H)とパーミアンス直線との交点)と屈曲点(ロータ磁石内の磁場の大きさが減磁の方向に変化したときに磁束密度が急激に低下し始める点)とに於ける磁場であってよく、この場合、「ステータ巻線電流上限値決定手段」に於いて、ロータ磁石特性記憶手段から抽出されたロータ磁石温度推定値における動作点に於ける磁場と屈曲点に於ける磁場との差分の大きさが、ロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータの逆磁場の大きさ上限値(逆磁場上限値)として算出され、逆磁場上限値に対応するステータ巻線電流が、ステータ巻線電流の上限値として算出されてよい。なお、ステータの逆磁場上限値とこれに対応する許容可能な巻線電流の上限値との対応は、予め、実験的に又は理論的に決定されてよい。或いは、ロータ磁石特性記憶手段に記憶される情報としては、各ロータ磁石温度に於けるステータの逆磁場上限値であってよく、この場合、「ステータ巻線電流上限値決定手段」に於いて、ロータ磁石温度推定値におけるステータの逆磁場上限値に対応するステータ巻線電流が、ステータ巻線電流の上限値として算出されてよい。更に、ロータ磁石特性記憶手段に記憶される情報としては、各ロータ磁石温度に於けるロータ磁石に於いて不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値であってもよい。
【0009】
上記の本発明に於いては、端的に述べれば、ロータ磁石の温度に依存してロータ磁石の動作点と屈曲点とに於けるそれぞれの磁場の大きさの差分が変化するという知見に基づき、ロータ磁石に於ける不可逆的な減磁を起こさずにステータからロータ磁石へ印加できる逆磁場の上限値(ステータ逆磁場上限値)を与える巻線電流の上限値を決定し、ステータ巻線電流は、かかるステータ逆磁場上限値に対応する電流の上限値を超えないように制御される。かかる構成によれば、ステータ巻線電流は、ロータ磁石温度に応じて、ロータ磁石に於ける不可逆的な減磁を起こさない限界まで増大できることとなり、モータのトルクが、ロータ磁石に於ける不可逆的な減磁が発生しない範囲で最大に発揮できることとなる。
【0010】
上記の構成に於いて、ロータ磁石温度は、ステータのコイル巻線の温度に依存し、コイル巻線の温度によって、コイルの抵抗値が変化するので、ロータ磁石温度の推定は、予め、コイルの抵抗値とロータ磁石温度との対応関係を実験的に調べ、コイルの抵抗値に対してロータ磁石温度を与えるマップを準備しておき、モータの使用時に於いては、コイルの抵抗値が検出され、マップに於いて、検出されたコイル抵抗値に対応するロータ磁石温度が選択され、ロータ磁石温度の推定値とされてよい。かかる構成によれば、ロータ磁石に温度センサを設けることなく、ロータ磁石温度の値(推定値)が得られ、ロータ磁石に於ける不可逆的な減磁を起こさないステータ巻線電流の上限値が決定できることとなる。
(【0011】以降は省略されています)

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