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公開番号2024175964
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-19
出願番号2023094112
出願日2023-06-07
発明の名称走光性測定システムおよび推定方法
出願人日本電信電話株式会社,国立大学法人東京科学大学
代理人個人,個人
主分類C12M 1/34 20060101AFI20241212BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】藻類の挙動データを測定するための走光性測定システム、および測定された藻類の挙動データに基づいて藻類の表現型、遺伝子型、または遺伝子発現を推定する方法を提供する。
【解決手段】藻類を収容するための培養チェンバーと、複数の光照射装置とを備え、藻類の挙動データ測定を可能にする走光性測定システムであって、複数の光照射装置は互いに独立に照射光の波長、または波長と強度を変更可能であり、培養チェンバーの周囲の互いに異なる位置に設置されて培養チェンバーに光照射するように構成される。藻類の挙動データと表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を関係付けるモデルを提供することと、対象の藻類の挙動データを測定することと、挙動データとモデルに基づいて対象の藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を推定することを含む推定方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
藻類を収容するための培養チェンバーと、複数の光照射装置とを備え、前記藻類の挙動データ測定を可能にする走光性測定システムであって、
前記複数の光照射装置は、互いに独立に照射光の波長、または波長と強度を変更可能であり、前記培養チェンバーの周囲の互いに異なる位置に設置されて前記培養チェンバーに光照射するように構成される、
走光性測定システム。
続きを表示(約 970 文字)【請求項2】
さらに測定装置を備え、前記測定装置は、前記培養チェンバー内に収容された藻類を撮影して前記藻類の挙動データを測定するように構成される、請求項1に記載の走光性測定システム。
【請求項3】
前記測定装置は、タイムラプス画像取得装置である、請求項2に記載の走光性測定システム。
【請求項4】
(i)前記複数の光照射装置は少なくとも4個の光照射装置を備え、前記4個の光照射装置は前記培養チェンバーの四方に設置されるか、または
(ii)前記(i)の前記少なくとも4個の光照射装置に加え、さらに前記培養チェンバーの上下にも光照射装置を備える、
請求項1または2に記載の走光性測定システム。
【請求項5】
藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上の推定方法であって、
藻類の挙動データと表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を関係付けるモデルを提供することと、
対象の藻類の挙動データを測定することと、
前記対象の藻類の挙動データと前記モデルに基づいて、前記対象の藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を推定することを含む、推定方法。
【請求項6】
前記挙動データが、それぞれ異なる方向から照射される複数の波長、または複数の波長と複数の強度の組合せの光を受けた藻類の挙動データである請求項5に記載の推定方法。
【請求項7】
前記対象の藻類の挙動データは、請求項1~3のいずれか一項に記載の走光性測定システムを用いて測定される、請求項5に記載の推定方法。
【請求項8】
前記提供されるモデルが、
請求項1~3のいずれか一項に記載の走光性測定システムを用いて、モデル構築用藻類の挙動データを測定することと、
前記モデル構築用藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を解析することと、
前記モデル構築用藻類の挙動データと、前記モデル構築用藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上にもとづいてモデルを構築することと、を含む方法によって構築されたモデルである、
請求項5に記載の推定方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、走光性測定システムおよび推定方法に関する。
続きを表示(約 2,400 文字)【背景技術】
【0002】
走光性は、生物が光刺激に反応して移動することであり、光のある方向に近づくような行動を「正の走光性」、光から離れるような行動を「負の走光性」と呼ぶ。
【0003】
非固着性の藻類は走光性を示し得る生物の一例である。藻類はさまざまな波長の光を吸収する光受容体をもつ。光合成に使われるクロロフィルは赤と青を、走光性に使われるチャネルロドプシンは緑を、光合成装置を強い光から守るスイッチとして働くクリプトクロムは青を、それぞれよく吸収する。走光性の正と負は、細胞内の光合成活性を含むさまざまな代謝状態に応じて切り替わる。その切り替え機構の全容はまだ明らかになっていないが、細胞内の活性酸素種の量がシグナルになり、多いと正、少ないと負に走光性を示すことがわかっている(非特許文献1)。正の走光性を示しやすい藻類株の中には、増殖速度が高いもの、あるいは強光耐性の高いものが含まれる(非特許文献2)。負の走光性を示しやすい藻類株の中には、光合成活性が高いものが含まれる(非特許文献3)。
【0004】
従来、例えば走光性を利用して特定の藻類を分離しようとする場合、一方向から一種類の波長(その藻類の光受容体の吸収ピークの波長)の光源装置を用いて藻類に対する走光性誘導が行われていた(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Wakabayashi, K., Misawa, Y., Mochiji, S., Kamiya, R. (2011). Reduction-oxidation poise regulates the sign of phototaxis in Chlamydomonas reinhardtii. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 108:11280-4
Morishita, J., Tokutsu, R., Minagawa, J., Hisabori, T., Wakabayashi, K. (2021)Characterization of Chlamydomonas reinhardtii mutants that exhibit strong positive phototaxisPlants 10: 1483
Kim, J.Y.H., Kwak, H.S., Sung, Y.J., Choi, H.I., Hong, M.E., Lim, H.S., Lee, J.H., Lee S.Y., Sim, S.J. Microfluidic high-throughput selection of microalgal strains with superior photosynthetic productivity using competitive phototaxis. Scientific Reports 6: 21155
Ueki, N. and Wakabayashi, K. (2017). Phototaxis Assay for Chlamydomonas reinhardtii. Bio-protocol 7(12): e2356. DOI: 10.21769/BioProtoc.2356.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来の走光性測定では、例えば光合成活性を任意の状態に調節した条件で走光性誘導を行うことができないという問題があるということを本発明者らは認識した。また、そのような従来技術は、光受容体の吸収ピークが判明している既知の藻類を想定していたところ、光受容体が不明の新規藻類に対する走光性アッセイができないという問題があるということも本発明者らは認識した。
【0007】
本開示は、上記のような問題を少なくとも部分的に解決するためになされたものであり、藻類の挙動データを測定するための走光性測定システム、および測定された藻類の挙動データに基づいて藻類の表現型、遺伝子型、または遺伝子発現を推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の走光性測定システムは、藻類を収容するための培養チェンバーと、複数の光照射装置とを備え、前記藻類の挙動データ測定を可能にする走光性測定システムであって、前記複数の光照射装置は、互いに独立に照射光の波長、または波長と強度を変更可能であり、前記培養チェンバーの周囲の互いに異なる位置に設置されて前記培養チェンバーに光照射するように構成される。
【0009】
本開示の一態様の推定方法は、藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上の推定方法であって、藻類の挙動データと表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を関係付けるモデルを提供することと、対象の藻類の挙動データを測定することと、前記対象の藻類の挙動データと前記モデルに基づいて、前記対象の藻類の表現型、遺伝子型、および遺伝子発現のうちの1つ以上を推定することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、藻類の挙動データを測定するための走光性測定システムを提供することができる。また、測定された藻類の挙動データに基づいて藻類の表現型、遺伝子型、または遺伝子発現を推定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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