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公開番号2024169123
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-05
出願番号2023086337
出願日2023-05-25
発明の名称プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物
出願人大成建設株式会社,株式会社ビーオーセイツ・ジャパン,個人,公立大学法人名古屋市立大学
代理人園田・小林弁理士法人
主分類E04B 1/04 20060101AFI20241128BHJP(建築物)
要約【課題】壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする。
【解決手段】建物を構成するプレキャストコンクリート部材Pは、板状に形成されたコンクリート部20と、コンクリート部20の端部端面20t、または表面20fに設置される鋼管30と、を備え、鋼管30は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部31、第1板部31に対向する第2板部32、互いに対向して設けられて第1板部31と第2板部32を連結する一対の側板部33を備え、鋼管30は、第1板部31がコンクリート部20に埋設され、第2板部32がコンクリート部20から突出して設けられるとともに、側板部33にはボルト接合用の孔33hが開設されている。
【選択図】図6
特許請求の範囲【請求項1】
建物を構成するプレキャストコンクリート部材であって、
板状に形成されたコンクリート部と、
前記コンクリート部の端部端面、または表面に設置される鋼管と、を備え、
前記鋼管は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部、前記第1板部に対向する第2板部、及び互いに対向して設けられて前記第1板部と前記第2板部を連結する一対の側板部を備え、
前記鋼管は、前記第1板部が前記コンクリート部に埋設され、前記第2板部が前記コンクリート部から突出して設けられるとともに、前記側板部にはボルト接合用の孔が開設されていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
続きを表示(約 360 文字)【請求項2】
請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材同士を接合する接合構造であって、
第1の前記プレキャストコンクリート部材と、第2の前記プレキャストコンクリート部材が、各々の前記第2板部が互いに当接し、かつ各々の前記側板部が同一の平面内に位置するように設けられ、
前記第2板部を跨り、前記同一の平面内に位置する前記側板部の各々に沿うように、連結鋼板が設けられ、前記連結鋼板と前記側板部の各々とが、ボルト接合されている
ことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載の接合構造によって前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材同士が接合されることで、壁とスラブのいずれか一方または双方が形成されていることを特徴とする構造物。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を構成するプレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材同士を接合するプレキャストコンクリート部材の接合構造、及びプレキャストコンクリート部材の接合構造で形成される構造物に関する。
続きを表示(約 4,800 文字)【背景技術】
【0002】
建築構造物を施工する際に、プレキャストコンクリート部材が使用されることがある。例えば壁式構造の建築構造物の場合においては、プレキャストコンクリート部材を板状に形成しておいて、これを現場で組み立てることで、建築構造物を施工することが行われている。
建築構造物は、利用者や居住者による利用が終了した後には、解体される。この際に、建築構造物が上記のようなプレキャストコンクリート部材を用いて構築されている場合、プレキャストコンクリート部材ができるだけ原形のまま残るように解体できれば、このプレキャストコンクリート部材を用いて新たな建築構造物を構築することができる。これにより、廃材の量が大きく低減されてSDGs(持続可能な開発目標)に貢献できるとともに、建築構造物の施工費用を低減することが可能となる。次の特許文献1~3には、このようなプレキャストコンクリート部材が開示されている。
【0003】
特許文献1には、再使用が可能なリサイクル基礎であって、複数体が所定の対向面を対向させた状態で一体に接続されるプレキャストコンクリート製の基礎本体と、各基礎本体のそれぞれの対向位置に互いに対応するように設けられ、かつ、近接状態で互いに接続される接続部材と、基礎本体の対向面および接地面に積層された剥離材層とからなり、基礎本体は、接続部材で一体に接続された状態で互いに対向した対向面間に後打ちコンクリートが施工される構成が記載されている。このような構成において、一旦施工された基礎を分解して回収するに際しては、後打ちコンクリート部を、例えば削岩機等の治具を用いて斫り落とす。
また、特許文献2には、接合端面に突設部を有するプレキャストコンクリート床版同士が梁上で接合される構造において、対向するプレキャストコンクリート床版の、ダボ筋が突出する接合端面間には充填材が充填されるとともに、充填材硬化後に引抜き可能な仕切板が介挿されている構成が記載されている。
特許文献3には、リサイクルの壁体構成として、上梁と、ボルトによって上梁に固定接続される上接続ブロックと、下梁と、ボルトによって下梁に固定接続される下接続ブロックと、末端ブロックと、複数個の基準ブロックと、左立柱と、右立柱と、ボルトによって左立柱に固定接続される左接続ブロックと、ボルトによって右立柱に固定接続される右接続ブロックとを備える構成が記載されている。
壁式構造においても、これらのような構造を適用すれば、解体後にプレキャストコンクリート部材を再利用可能な状態となるように、建築構造物を構築できる可能性がある。
【0004】
しかし、特許文献1の構成においては、施工された基礎を分解して回収するに際し、上記のように、布基礎本体間に形成された後打ちコンクリート体を斫り落とす必要があり、この作業の際に、布基礎本体が損傷し、再利用できない状態となる可能性がある。
特許文献2の構成においては、床を解体してプレキャストコンクリート床版をリユースする際に、仕切板を引き抜いてプレキャストコンクリート床版を取り外した後に、プレキャストコンクリート床版の接合端面に付着した充填材を除去する必要がある。このため、特許文献1と同様に、この除去作業の際に、プレキャストコンクリート床版が損傷し、再利用できない状態となる可能性がある。
特許文献3の構成においては、壁体構造を構成する各要素をボルトによって接続するため、コンクリートの斫りや充填剤の除去作業が不要となり、解体時に、各要素が損傷する可能性が低減する。しかし、壁体構造が、上梁、下梁、上接続ブロック、下接続ブロック等の、多くの種類の構成要素で構成され、またこれらの構成要素間の取り合いも複雑なものとなっている。したがって、組み立てや解体作業が容易ではない。
壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物が、望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2001-55743号公報
特開2006-2541号公報
特開2018-162658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、建物を構成するプレキャストコンクリート部材同士の接合構造として、先ず、板状のコンクリート部の端部端面、または表面に鋼管を設置し、鋼管の一部(第1板部)をコンクリート部に埋設させ、鋼管の他方部(第2板部、一対の側板部)を突出させたプレキャストコンクリート部材を考案した。そして、其々のプレキャストコンクリート部材を構成するコンクリート部から突出させた鋼管同士を、当該鋼管に添わせる連結鋼板を介してボルト接合させることで、コンクリートや充填材の打設、溶接等を行うことなく、プレキャストコンクリート部材同士を容易に接合可能である点に着眼し、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のプレキャストコンクリート部材は、建物を構成するプレキャストコンクリート部材であって、板状に形成されたコンクリート部と、前記コンクリート部の端部端面、または表面に設置される鋼管と、を備え、前記鋼管は、各々が軸線方向に延在するように設けられた、第1板部、前記第1板部に対向する第2板部、及び互いに対向して設けられて前記第1板部と前記第2板部を連結する一対の側板部を備え、前記鋼管は、前記第1板部が前記コンクリート部に埋設され、前記第2板部が前記コンクリート部から突出して設けられるとともに、前記側板部にはボルト接合用の孔が開設されていることを特徴とする。
このような構成によれば、コンクリート部の端部端面または表面に鋼管が設けられ、鋼管の第1板部がコンクリート部の端部端面または表面の内側に埋設され、第2板部がコンクリート部から突出して設けられている。具体的には、コンクリート部の端部端面または表面から、鋼管の、軸線方向に延在するように設けられた、第2板部側の部分が突出して設けられている。これに伴って、鋼管の一対の側板部も、コンクリート部の端部端面または表面から突出している。この鋼管の一対の側板部には、プレキャストコンクリート部材を他の部材と接合するための、ボルト接合用の孔が開設されている。このように、プレキャストコンクリート部材の、他の部材との接合に使用される部分は、コンクリート部の端部端面または表面から、鋼管が部分的に突出したのみの、簡潔な構成となっている。特に、プレキャストコンクリート部材を他の部材と接合する際には、他の部材に設けられたボルト孔と、側板部に開設されたボルト接合用の孔の位置をあわせて、他の部材側からボルトを緊締することにより接合すればよい。このように、プレキャストコンクリート部材を他の部材と接合する際に、コンクリートや充填材の打設、溶接等の作業が不要となる。したがって、プレキャストコンクリート部材を用いた組立作業が容易となる。
また、他の部材からプレキャストコンクリート部材を分離し、解体する際には、ボルトによる接合を解除すればよく、コンクリートや充填材の斫り作業が不要である。したがって、解体作業が容易である。特に、斫り等の、構成要素を破壊する作業が不要であるため、このような破壊作業に伴うプレキャストコンクリート部材の損傷が抑制される。したがって、プレキャストコンクリート部材の再利用をより容易とすることができる。
このようにして、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材を提供することができる。
【0008】
また、本発明のプレキャストコンクリート部材の接合構造は、上記したようなプレキャストコンクリート部材同士を接合する接合構造であって、第1の前記プレキャストコンクリート部材と、第2の前記プレキャストコンクリート部材が、各々の前記第2板部が互いに当接し、かつ各々の前記側板部が同一の平面内に位置するように設けられ、前記第2板部を跨り、前記同一の平面内に位置する前記側板部の各々に沿うように、連結鋼板が設けられ、前記連結鋼板と前記側板部の各々とが、ボルト接合されていることを特徴とする。
このような構成によれば、第1のプレキャストコンクリート部材の第2板部と、第2のプレキャストコンクリート部材の第2板部とを互いに当接させ、連結鋼板を、双方の第2板部を跨がり、同一の平面内に位置する側板部の各々に沿うように設けて、連結鋼板と側板部の各々とを、ボルト接合することで、第1のプレキャストコンクリート部材と第2のプレキャストコンクリート部材とが接合される。このように、第1のプレキャストコンクリート部材と第2のプレキャストコンクリート部材とを接合する際に、コンクリートや充填材の打設、溶接等の作業が不要である。また、第1のプレキャストコンクリート部材と第2のプレキャストコンクリート部材とを分離し、解体する際には、ボルト、及び連結鋼板による接合を解除すればよく、コンクリートや充填材の斫り作業が不要である。このため、このような破壊作業に伴うプレキャストコンクリート部材の損傷が抑制される。したがって、プレキャストコンクリート部材の再利用をより容易とすることができる。
このようにして、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材の接合構造を提供することができる。
【0009】
また、本発明の構造物は、上記したようなプレキャストコンクリート部材の接合構造によって前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材同士が接合されることで、壁とスラブのいずれか一方または双方が形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、上記したようなプレキャストコンクリート部材の接合構造によって第1及び第2のプレキャストコンクリート部材同士が接合されることで、壁とスラブのいずれか一方または双方が形成されている。したがって、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、構造物を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁式構造を実現するに際し、簡潔な構造で実現されて組立や解体が容易であり、解体時の損傷を抑制して再利用をより容易とする、プレキャストコンクリート部材、プレキャストコンクリート部材の接合構造、及び構造物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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