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公開番号2024144370
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-11
出願番号2024053626
出願日2024-03-28
発明の名称結晶性ゲル及びその製造方法、高分子体、並びに物品
出願人国立大学法人北海道大学
代理人個人,個人,個人
主分類C08L 101/00 20060101AFI20241003BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】結晶化したゲルでありながら、高秩序の構造を有する結晶性ゲルの提供。
【解決手段】官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、前記架橋ポリマーの一部が結晶化しており、小角X線散乱を検出した二次元画像において、延伸方向を赤道方向とするとき、散乱ベクトルの大きさが0.001~0.5Å-1の範囲に、ビーム中心から子午線方向に伸びるストリークが存在するとともに、赤道上に前記子午線に対して対称な位置にピークを有する1対以上の散乱像が存在しており、結晶ドメインが周期的に存在する、結晶性ゲル。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、
前記架橋ポリマーの一部が結晶化しており、結晶ドメインが周期的に存在する、結晶性ゲル。
続きを表示(約 1,700 文字)【請求項2】
前記架橋ポリマーが、下記P1の1種以上が架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記P2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、及び下記P2の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマーからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の結晶性ゲル。
P1:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有する多分岐ポリマー。
P2:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有する直鎖状ポリマー。
Q1:官能基を3個以上有する分岐モノマー。
Q2:官能基を2個有する2官能モノマー。
【請求項3】
前記結晶性ゲルにおける前記架橋ポリマーの濃度は、架橋した前記多官能ポリマーのうち隣り合う多官能ポリマーが互いに重なり合う濃度以上である、請求項1に記載の結晶性ゲル。
【請求項4】
前記多官能ポリマーが、3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有し、かつ1分岐鎖当たりの重量平均分子量が500~100,000である多分岐ポリマー、及び3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有し、かつ重量平均分子量が500~100,000である直鎖状ポリマーの、一方又は両方である、請求項1に記載の結晶性ゲル。
【請求項5】
前記溶媒が、前記多官能ポリマーに対する良溶媒である、請求項1に記載の結晶性ゲル。
【請求項6】
官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、延伸により結晶化した結晶性ゲルであって、
小角X線散乱を検出した二次元画像において、延伸方向を赤道方向とするとき、散乱ベクトルの大きさが0.001~0.5Å
-1
の範囲に、ビーム中心から子午線方向に伸びるストリークが存在するとともに、赤道上に、前記子午線に対して対称な位置にピークを有する1対以上の散乱像が存在する、結晶性ゲル。
【請求項7】
官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、延伸により結晶化した結晶性ゲルであって、
広角X線散乱を検出した二次元画像において、散乱ベクトルの大きさが0.5~3.0Å
-1
の範囲に、散乱スポットが20個以上存在する、結晶性ゲル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の結晶性ゲルから、前記溶媒を低減又は除去した高分子体。
【請求項9】
結晶ドメインが周期的に存在する結晶性ゲルを製造する方法であって、官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、前記架橋ポリマーの濃度が、架橋した前記多官能ポリマーのうち隣り合う多官能ポリマーが互いに重なり合う濃度以上である未延伸ゲルを、前記架橋ポリマーの一部が結晶化するように延伸する、結晶性ゲルの製造方法。
【請求項10】
前記架橋ポリマーが、下記P1の1種以上が架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記P2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、及び下記P2の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマーからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項9に記載の結晶性ゲルの製造方法。
P1:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有する多分岐ポリマー。
P2:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有する直鎖状ポリマー。
Q1:官能基を3個以上有する分岐モノマー。
Q2:官能基を2個有する2官能モノマー。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は結晶性ゲル、結晶性ゲルの製造方法、結晶性ゲルから得られる高分子体、結晶性ゲル又は高分子体を含む物品に関する。
続きを表示(約 4,500 文字)【背景技術】
【0002】
ナノ細孔を持つ秩序のある3次元ネットワーク構造は、濾過、センシング、薬物放出、エレクトロニクス、オプティックスなどの広範な用途で重要である。
ナノメートル解像度の精密な構造体を形成する方法としては、ナノリソグラフィー、金属有機構造体などが挙げられるが、出来上がる構造体全体のサイズは数μm

に限られており、現在の技術でさえ製造できるスケールがいまだ制限されているので、手で扱える大きさ(例えば1cm

程度)の3次元構造体を構築するのは極めて困難である。
【0003】
ゲルは、溶媒中でポリマーを架橋して3次元網目状の高分子を形成し、その内部に水等の溶媒を保持したものであり、ナノ細孔を持つ材料でありながら、簡単な化学合成で、全体のサイズを手で扱えるほどまで成長させることができるという特徴を有する。
ゲルを延伸すると、ゲル内で高分子鎖が配向し、伸長誘起結晶化が生じることは報告されている。例えば非特許文献1には、3分岐ポリマーを架橋した3分岐ゲルを延伸すると、4分岐ゲルを延伸するときよりも破断するまでの延伸倍率が高く、小角X線散乱(SAXS)及び広角X線散乱(WAXS)を用いた測定において、延伸による微結晶の形成が確認されたことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Takeshi Fujiyabu et al., ‘Tri-branched gels: Rubbery materials with the lowest branching factor approach the ideal elastic limit’, Science Advances, 8, DOI:10.1126/sciadv.abk0010, 2022年4月6日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1に記載されている結晶化したゲルは、小角X線散乱測定において、単に高分子ゲルが伸長して高分子鎖が配向するときに見られるストリークが観察されるだけであり、結晶ドメイン間の周期性を示す散乱スポットは観測されていない。また広角X線散乱測定において観察される散乱スポットは2つであり、数ナノサイズの微小な結晶ドメインであることがわかる。
ゲルは高分子鎖が乱雑な架橋構造を取っており、構造欠陥も相当量存在するため、延伸によって形成される結晶ドメインは小さく、そして結晶ドメインは周期性なく配置されるものと考えられており、結晶化したゲルの利点は破壊強度の向上に限られていた。
本発明は、結晶化したゲルでありながら、高秩序の構造を有する結晶性ゲルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、前記架橋ポリマーの一部が結晶化しており、結晶ドメインが周期的に存在する、結晶性ゲル。
[2] 前記架橋ポリマーが、下記P1の1種以上が架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記P2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、及び下記P2の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマーからなる群から選ばれる1種以上を含む、[1]に記載の結晶性ゲル。
P1:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有する多分岐ポリマー。
P2:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有する直鎖状ポリマー。
Q1:官能基を3個以上有する分岐モノマー。
Q2:官能基を2個有する2官能モノマー。
[3] 前記結晶性ゲルにおける前記架橋ポリマーの濃度は、架橋した前記多官能ポリマーのうち隣り合う多官能ポリマーが互いに重なり合う濃度以上である、[1]又は[2]に記載の結晶性ゲル。
[4] 前記多官能ポリマーが、3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有し、かつ1分岐鎖当たりの重量平均分子量が500~100,000である多分岐ポリマー、及び3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有し、かつ重量平均分子量が500~100,000である直鎖状ポリマーの、一方又は両方である、[1]~[3]のいずれかに記載の結晶性ゲル。
[5] 前記溶媒が、前記多官能ポリマーに対する良溶媒である、[1]~[4]のいずれかに記載の結晶性ゲル。
[6] 官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、延伸により結晶化した結晶性ゲルであって、小角X線散乱を検出した二次元画像において、延伸方向を赤道方向とするとき、散乱ベクトルの大きさが0.001~0.5Å
-1
の範囲に、ビーム中心から子午線方向に伸びるストリークが存在するとともに、赤道上に、前記子午線に対して対称な位置にピークを有する1対以上の散乱像が存在する、結晶性ゲル。
[7] 官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、延伸により結晶化した結晶性ゲルであって、広角X線散乱を検出した二次元画像において、散乱ベクトルの大きさが0.5~3.0Å
-1
の範囲に、散乱スポットが20個以上存在する、結晶性ゲル。
[8] 前記[1]~[7]のいずれかに記載の結晶性ゲルから、前記溶媒を低減又は除去した高分子体。
[9] 結晶ドメインが周期的に存在する結晶性ゲルを製造する方法であって、官能基を2個以上有する多官能ポリマーが3次元網目構造を形成するように架橋した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、前記架橋ポリマーの濃度が、架橋した前記多官能ポリマーのうち隣り合う多官能ポリマーが互いに重なり合う濃度以上である未延伸ゲルを、前記架橋ポリマーの一部が結晶化するように延伸する、結晶性ゲルの製造方法。
[10] 前記架橋ポリマーが、下記P1の1種以上が架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記P2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、下記P1の1種以上と下記Q2の1種以上とが架橋した架橋ポリマー、及び下記P2の1種以上と下記Q1の1種以上とが架橋した架橋ポリマーからなる群から選ばれる1種以上を含む、[9]に記載の結晶性ゲルの製造方法。
P1:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有する多分岐ポリマー。
P2:3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有する直鎖状ポリマー。
Q1:官能基を3個以上有する分岐モノマー。
Q2:官能基を2個有する2官能モノマー。
[11] 前記多官能ポリマーが、3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有し、官能基を3個以上有し、かつ1分岐鎖当たりの重量平均分子量が500~100,000である多分岐ポリマー、及び3以上の分岐鎖が出ている分岐点を有さず、官能基を2個有し、かつ重量平均分子量が500~100,000である直鎖状ポリマーの、一方又は両方である、[9]又は[10]に記載の結晶性ゲルの製造方法。
[12] 前記溶媒が、前記多官能ポリマーに対する良溶媒である、[9]~[11]のいずれかに記載の結晶性ゲルの製造方法。
[13] 前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の結晶性ゲルを含む、物品。
[14] 前記[8]に記載の高分子体を含む、物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結晶化したゲルでありながら、結晶ドメインが周期的に存在するという、高秩序の構造を有する結晶性ゲルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
実施例で結晶性ゲルを製造する過程において、小角X線散乱(SAXS)及び広角X線散乱(WAXS)を測定した結果を示す二次元画像である。
図1の各画像の図2(A)で示す領域を部分円環平均して一次元化した1Dパターンである。
図1と同じ結晶性ゲルを製造する過程において、広角X線散乱(WAXS)を測定した結果を示す二次元画像である。
図3から選択した二次元画像を座標変換して示した加工画像である。
他の実施例で結晶性ゲルを製造する過程において、小角X線散乱(SAXS)及び広角X線散乱(WAXS)を測定した結果を示す二次元画像である。
図5の各画像を部分円環平均して一次元化した1Dパターンである。
他の実施例で結晶性ゲルを製造する過程において、小角X線散乱(SAXS)及び広角X線散乱(WAXS)を測定した結果を示す二次元画像である。
図7の各画像を部分円環平均して一次元化した1Dパターンである。
未延伸ゲルの例の引張試験結果を示すグラフである。
結晶性ゲル及び高分子体の例の引張試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「モノマー」とは、反応によって化学結合を形成する化合物であれば制限なく用いることができ、たとえば、縮合反応、付加反応又は重合反応をおこなうことができる化合物をいう。
「ポリマー」は、モノマーに基づく単位の2個以上からなる重合鎖を有する化合物である。
「モノマーに基づく単位」は、モノマーが重合することによって直接形成された原子団と、該原子団の一部を化学変換することで得られる原子団との総称である。
「(メタ)アクリル」はアクリル、メタクリル、またはその両方を指す。
「重量%」は「質量%」と互換的に使用することができる。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0010】
<結晶性ゲル>
本実施形態の結晶性ゲルは、一部が結晶化した架橋ポリマーと、溶媒とを含み、結晶ドメインが周期的に存在するゲルである。架橋ポリマーの分子鎖には結晶化した部分とアモルファスの部分とが交互に存在する。
(【0011】以降は省略されています)

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