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公開番号2024139687
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-09
出願番号2024005265
出願日2024-01-17
発明の名称土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法
出願人国際航業株式会社
代理人弁理士法人 武政国際特許商標事務所
主分類B09C 1/02 20060101AFI20241002BHJP(固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生)
要約【課題】本願発明の課題は、従来が抱える問題を解決することであり、すなわち従来技術に比して低コストでPFAS類に汚染された土壌や地下水を浄化することができる土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法は、有機ふっ素化合物を原位置で浄化する方法であって、注水工程と揚水工程を備えた方法である。このうち注水工程では、アルカリ性の注水液を地盤に注水し、揚水工程では注水工程で注水液を地盤に注水した後、地下水を揚水する。そして、地盤に注水された注水液によって土壌に吸着した有機ふっ素化合物が解離するとともに地下水に溶解し、これにより揚水工程で地下水を揚水すると溶解した有機ふっ素化合物を回収することができる。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項1】
有機ふっ素化合物を原位置で浄化する方法であって、
アルカリ性の注水液を、地盤に注水する注水工程と、
前記注水工程で前記注水液を地盤に注水した後、地下水を揚水する揚水工程と、を備え、
地盤に注水された前記注水液によって、土壌に吸着した有機ふっ素化合物が地下水に溶解し、
前記揚水工程では、地下水を揚水することによって溶解した有機ふっ素化合物を回収し得る、
ことを特徴とする土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
あらかじめ設定されたpH許容値となるように、前記注水液を生成する注水液生成工程を、さらに備え、
前記注水工程では、前記pH許容値とされた前記注水液を注水する、
ことを特徴とする請求項1記載の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。
【請求項3】
監視井戸で地下水のpHを計測することによって、有機ふっ素化合物の系外拡散を監視する拡散監視工程を、さらに備え、
前記監視井戸は、地下水流における下流側に配置され、
前記拡散監視工程では、計測されたpHがあらかじめ定めたpH上限値を超えるときに、有機ふっ素化合物が系外拡散したと判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。
【請求項4】
前記注水工程では、複数個所に配置された注水井戸のうち1又は2以上の該注水井戸を利用して前記注水液を地盤に注水し、
前記揚水工程では、複数個所に配置された揚水井戸のうち1又は2以上の該揚水井戸を利用して地下水を揚水し、
前記揚水工程で揚水された地下水のpHを計測することによって、系内における前記注水液の拡散状況を確認する効果確認工程を、さらに備え、
前記注水工程では、前記効果確認工程の計測結果に応じて、利用する前記注水井戸、該注水井戸ごとの注水量、又は該注水井戸における注水深度を、変更したうえで前記注水液を注水し、
前記揚水工程では、前記効果確認工程の計測結果に応じて、利用する前記揚水井戸、又は該揚水井戸ごとの揚水量を、変更したうえで地下水を揚水する、
ことを特徴とする請求項1記載の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。
【請求項5】
水処理装置を用いて、前記揚水工程で揚水された地下水から有機ふっ素化合物を除去する除去工程を、さらに備え、
前記除去工程では、揚水された地下水を前記水処理装置で処理し、
前記注水工程では、前記除去工程で有機ふっ素化合物が除去された地下水を利用した前記注水液を注水する、
ことを特徴とする請求項1記載の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。
【請求項6】
前記水処理装置は、活性炭を具備し、
前記除去工程では、揚水された地下水を中性又は弱酸性にしたうえで、前記水処理装置で処理する、
ことを特徴とする請求項5記載の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。
【請求項7】
地盤内に構築された3以上の電極井戸に印加して土壌に電流を流すことで、土壌を加温する土壌加温工程を、さらに備え、
前記注水工程では、前記土壌加温工程によって加温された状態の地盤に注水し、
前記揚水工程では、前記土壌加温工程によって地盤が加温された状態で地下水を揚水する、
ことを特徴とする請求項1記載の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本願発明は、土壌や地下水に存在する有機フッ素化合物(PFAS)類を原位置にて浄化する技術に関するものであり、より具体的には、アルカリ性の注水液を注水するとともに地下水を揚水することによってPFASを回収する土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法に関するものである。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
PFASとは、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物のことで、代表的なペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)など、およそ4700種類以上ある有機フッ素化合物群の総称である。このPFASは、撥水性と撥油性の双方の特性を併せ持ち、また熱や薬品に強く、自然界ではほとんど分解しない、などの特性も持つもので、撥水剤や表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤など幅広い分野で1940年代頃から利用されてきた。ところが近年では、PFASは難分解性でしかも生物蓄積があるため問題視されるようになり、特に欧米を中心に規制強化の動きが進みつつある。
【0003】
昨今では我が国においても、地下水や公共用水域等でのPFOSとPFOAの存在が顕在化するなど社会の関心も高まりつつあり、水質汚濁防止法ではPFOSとPFOAが要監視項目に指定され暫定の指針値が示されるとともに、PFHxSが要調査項目に指定されている。さらに、PFOSとPFOAは、2023年2月1日より水質汚濁防止法の指定物質に指定され事故時の措置などが義務づけられた。また今後は、全国的な調査も進められ、国内の多くの場所から指針値を超過する濃度でPFOSやPFOAが確認されることも予想され、さらに近い将来においては土壌に対する基準が設定されることも十分考えられる。
【0004】
一方、PFAS類に汚染された土壌や地下水の浄化については、日本国内ではその対応事例はなく、海外においても限定的であってその多くは実験室レベルの技術である。近時の新聞報道等では、国内の水道水源や水道水中においてもPFAS類が確認されており、浄水場での対応だけではなく、その供給源となっている土壌や地下水の調査や対策も必要とされている。そこで、PFAS類に汚染された土壌や地下水の浄化する技術について、いくつか提案されるようになった。例えば特許文献1では、土壌を加温し、加温により発生した汚染水蒸気に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)を分解する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2022-30560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される技術は、土壌温度の上昇に伴い水蒸気の発生や水の体積膨張、水の粘性低下が生じることによって地下水そのものの流動性が高まり、その結果、間隙水に含まれる有機フッ素化合物の回収効率も増大する点において、極めて好適な技術である。他方、PFAS類の溶解度は温度に対し安定しており、積極的にPFAS類を地下水に溶解させる技術ではないことから、PFAS類を含む地下水を回収するという点においてはより効果的な技術が望まれていた。
【0007】
本願発明の課題は、従来が抱える問題を解決することであり、すなわち従来技術に比してより効果的にPFAS類に汚染された土壌や地下水を浄化することができる土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
PFASは、「ヒドロキシ基」や「カルボキシ基」、「スルホ基」など官能基を有していることが多く、国内で要監視項目や要調査項目となっているPFAS類は、カルボキシ基あるいはスルホ基など酸性の解離基を有するものである。そこで本願発明は、PFASを含む地下水や土壌にアルカリ成分を添加することによってPFAS類が有する官能基の解離を促進し、これによりPFAS類が地下水に溶解して揚水によるPFAS類の回収効率が向上する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0009】
本願発明の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法は、有機ふっ素化合物を原位置で浄化する方法であって、注水工程と揚水工程を備えた方法である。このうち注水工程では、アルカリ性の注水液を地盤に注水し、揚水工程では注水工程で注水液を地盤に注水した後、地下水を揚水する。そして、地盤に注水された注水液によって土壌に吸着した有機ふっ素化合物が地下水に溶解し、これにより揚水工程で地下水を揚水すると溶解した有機ふっ素化合物を回収することができる。
【0010】
本願発明の土壌地下水中の有機ふっ素化合物浄化方法は、注水液生成工程をさらに備えた方法とすることもできる。この注水液生成工程では、あらかじめ設定されたpH許容値となるように、注水液を生成する。この場合、注水工程では、pH許容値とされた注水液を注水する。
(【0011】以降は省略されています)

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