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公開番号2024089322
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-03
出願番号2022204609
出願日2022-12-21
発明の名称生分解性樹脂成形物の処理方法
出願人大成建設株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類C08J 11/10 20060101AFI20240626BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】自然環境中、特に土壌環境中での生分解性樹脂成形物の分解期間を短縮(分解を促進)する方法を開発することを目的とする。
【解決手段】エステル結合を有する生分解性樹脂を主成分とする樹脂成形物を生分解する前処理として、樹脂成形物を弱アルカリ性剤の処理液に浸漬処理する生分解性樹脂成形物の処理方法。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
エステル結合を有する生分解性樹脂を主成分とする樹脂成形物を生分解する前処理として、樹脂成形物を弱アルカリ性剤の処理液に浸漬処理することを特徴とする生分解性樹脂成形物の処理方法。
続きを表示(約 700 文字)【請求項2】
弱アルカリ性剤を飽和濃度以上に含有する処理液であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
【請求項3】
弱アルカリ性剤が、炭酸カルシウム、苦土石灰、有機石灰のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
【請求項4】
浸漬期間が5日以上であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
【請求項5】
エステル結合を有する生分解性樹脂は、カルボキシル基と水酸基を縮重合させたポリマー、環状エステル化合物を開環重合させたポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸共重合体、澱粉ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
【請求項6】
樹脂成形物は、建設用資材、農業用資材、漁業用資材、一般包装用資材、一般用容器であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
【請求項7】
生分解は、土壌中生分解であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
生分解性樹脂成形物の処理技術に関する。特に、微生物による生分解の前処理技術である。
続きを表示(約 5,100 文字)【背景技術】
【0002】
プラスチックのほとんどが有限な石油資源からつくられ、環境中ではほとんど分解されず、燃やせばCO
2
が排出されることから、資源循環や脱炭素社会の実現に向けてはマイナスの要因となっている。さらに回収しきれずに山や河川、土壌など自然環境中に拡散したプラスチックがほとんど分解されずに微小なマイクロプラスチックになり、最終的には海に流れ着いて海洋生物に悪影響を与え深刻な環境問題となっている。
近年、環境への配慮から、生分解性樹脂が注目されており、処理技術としては、分解しやすい生分解性樹脂の開発、微生物の探索、処理促進技術の開発、処理装置の開発などが提案されている。
特許文献1(特開平9-111036号公報)には、シートなどの生分解性ポリエステル系樹脂組成物を強アルカリ性廃棄処理液によって接触分解させる処理方法が提案されている。
特許文献2(特開平6-49266号公報)には、ヒドロキシカルボン酸のポリマーまたはコポリマーを主成分とする熱可塑性ポリマー組成物を水酸化ナトリウム水溶液などのpH10以上のアルカリ性溶液中に60℃で1時間保持浸漬して溶解する方法が提案されている。
特許文献3(特開2004-292705号公報)には、生分解性樹脂を微粉砕し、粉砕後にアンモニアなどの、pH13以上の強アルカリで分解した後、生ごみ様有機物のスラリーと混合して、メタン発酵微生物とタンクなどの装置内で接触させて、メタンガスを改修する処理システムが提案されている。
特許文献4(特開2002-266340号公報)には、生分解性ポリエステル製ドレーン材が埋設されている土壌に消石灰などのアルカリ物質を散布又はドレーン材中に注入してドレーン材の分解を促進する方法が提案されている。
特許文献5(特開2015-10217号公報)には、加水分解処理工程と微生物分解工程によって生分解性ポリエステル樹脂を処理する方法において、尿素などの塩基性物質を含む溶液60~100℃、2~120時間で加水分解する処理方法が提案されている。
特許文献6(特開2003-12858号公報)には、生分解性ポリエステル樹脂をアリルアミンなどの強アルカリアミン化合物溶液に60℃6時間程度浸漬したのち、微生物入りのコンポスト装置に投入して処理する方法が提案されている。
特許文献7(特開2001-115016号公報)には、生分解性ポリエステル樹脂と特定の化合物とを共重合する方法が提案されている。
特許文献8(特開平10-219088号公報)には、生分解性ポリエステル樹脂に無機粒子を添加して、分子量低下の促進を図ることが提案されている。
【0003】
植物資源を原料とした生分解性バイオマスプラスチックも注目されている。生分解性樹脂は原料が石油、バイオマス、またはその両者に分かれ、微生物の力によってCO

と水にまで分解される。バイオマス由来は、生分解や燃やすことによって発生するCO

は、原料として用いる植物が成長過程でCO

を吸収し固定化しているため相殺される。
ヨーロッパでは使い捨てのごみ袋に対し、堆肥化できる素材以外の使用を禁じる法律が施行され、おもにフィルム分野で生分解性樹脂の需要が高まっている。日本も2020年7月からレジ袋の有料化が始まった。また。建設現場では養生用などワンウェイ用途でポリエチレン製のフィルム・シート類を多く使用するため、廃プラスチックの削減が課題となり、生分解性樹脂の利用はその解決策の一つと考えられる。
生分解性樹脂の処理方法としては埋立処理のほかに、焼却処理、コンポスト処理、メタン発酵処理などがあり、農業用資材や土木・建設用資材として使用されるものの中には土壌埋設など自然処理される場合もある。焼却処理、コンポスト処理、メタン発酵処理には専用の処理施設や設備が必要であり、建設および稼働により多くのエネルギーを消費しCO

の発生量も多い。また新たに専用の処理施設を建設するには、一定量の廃棄物が定期的に発生し回収する必要があり、生分解性樹脂の流通状況から考えるとなかなか難しい。
一方、埋立処理や土壌埋設ではエネルギーの消費やCO

の発生を比較的抑えることはできるが、分解期間が長く、大きな埋立面積が必要になるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開平9-111036号公報
特開平6-49266号公報
特開2004-292705号公報
特開2002-266340号公報
特開2015-10217号公報
特開2003-12858号公報
特開2001-115016号公報
特開平10-219088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、廃棄物の発生が少ない前処理によって、自然環境中、特に土壌環境中での分解期間を短縮(分解を促進)する方法を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.エステル結合を有する生分解性樹脂を主成分とする樹脂成形物を生分解する前処理として、樹脂成形物を弱アルカリ性剤の処理液に浸漬処理することを特徴とする生分解性樹脂成形物の処理方法。
2.弱アルカリ性剤を飽和濃度以上に含有する処理液であることを特徴とする1.記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
3.弱アルカリ性剤が、炭酸カルシウム、苦土石灰、有機石灰のいずれかであることを特徴とする2.記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
4.浸漬期間が5日以上であることを特徴とする1.記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
5.エステル結合を有する生分解性樹脂は、カルボキシル基と水酸基を縮重合させたポリマー、環状エステル化合物を開環重合させたポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸共重合体、澱粉ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする1.記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
6.樹脂成形物は、建設用資材、農業用資材、漁業用資材、一般包装用資材、一般用容器であることを特徴とする1.記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
7.生分解は、土壌中生分解であることを特徴とする1.記載の生分解性樹脂成形物の処理方法。
【発明の効果】
【0007】
1.ポリエステルなどのエステル結合を有する樹脂成形物を生分解するにあたり、前処理として、弱アルカリ性処理液で処理することにより、生分解期間を短縮できる。アルカリ処理として弱アルカリ性剤の処理液を用いるので、強アルカリ性剤のような廃液処理などの後処理が不要となる。
本発明は、強アルカリ性剤などの危険物を使用することなく、簡易な仮設の設備を用いて屋内外で実施できるため、専用の処理施設は不要であり、実施場所の自由度が高い。本発明は自然環境中、特に土壌環境中における生分解性樹脂の生分解期間の短縮(生分解の促進)ができる。
2.弱アルカリ性剤を飽和濃度以上に含有することにより、浸漬期間中、アルカリ濃度を十分に保つことができる。弱アルカリ性剤として、炭酸カルシウム、苦土石灰、有機石灰を処理液中に溶解濃度以上の量を浸漬槽に存在させることにより、消費されたアルカリ成分を溶液中に補充でき、浸漬期間中、弱アルカリ性を飽和濃度に保つことができる。処理液の管理が極めて容易である。
弱アルカリ性処理液は炭酸塩を飽和濃度以上に含有するため、pH調整をしなくても常に所定のpH値に近い溶液を作製でき、また緩衝力が十分であることからpHの変動が小さく、それによって処理過程でのpH低下(十分な処理効果が得られない)によるアルカリ成分の追加・pH調整などを最小限にとどめられ、また繰り返し利用も容易となる。
3.炭酸カルシウム、苦土石灰、有機石灰は、農地の酸性中和剤など農業用剤としても使用されているので、生分解を行う土壌に対して、安全であり、土壌をそのまま利用することができる。
4.エステル結合を有する多くの生分解性樹脂の前処理として、5日以上の浸漬処理することにより、一月程度の生分解に短縮できる。土壌中での生分解期間を短縮できるので、生分解処理施設を小型化できる。あるいは、処理用土地面積を少なくすることができ、栽培用農地や公園の場合、遊休期間が短くなり再利用期間を短縮することができる。
建設用養生フィルムや農業用マルチフィルムなど各地で大量に発生する樹脂成型材を発生地の近くで、簡易な仮設の設備を用いて屋内外で実施できるため、専用の処理施設は不要であり、実施場所の自由度が高い。
5.エステル結合を有する生分解性樹脂は、カルボキシル基と水酸基を縮重合させたポリマー、環状エステル化合物を開環重合させたポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシ吉草酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸共重合体、澱粉ポリエステル樹脂などを対象とすることができる。
6.本発明は、簡易な仮設の設備を用いて屋内外で実施でき、専用の処理施設や専門知識は不要であり、処理による環境負荷が小さく、実施場所の自由度が高い発明である。
そして、本発明は、強アルカリ性剤などの危険物を使用することなく、処理のために加熱などのエネルギーや廃棄物処理などの事後処理も必要とせず、発生するCO

を抑制できる実用性の高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
苦土石灰水溶液のpHの推移を示す図
実施例の生分解の様子を示す図
【0009】
本発明は、ポリエステルなどのエステル結合を有する樹脂成形物を生分解するにあたり、前処理として、弱アルカリ性処理液で処理することにより、生分解期間を短縮できる。アルカリ処理として弱アルカリ性剤の処理液を用いるので、強アルカリ性剤のような廃液処理などの後処理が不要となる。
【0010】
本発明は、強アルカリ性剤などの危険物を使用することなく、簡易な仮設の設備を用いて屋内外で実施できるため、専用の処理施設は不要であり、実施場所の自由度が高い。本発明は自然環境中、特に土壌環境中における生分解性樹脂の生分解期間の短縮(生分解の促進)ができる。
処理液は、弱アルカリ性剤を飽和濃度以上に含有する処理液である。
弱アルカリ性剤は、炭酸カルシウム、苦土石灰、有機石灰などの固形物である。
浸漬期間が長いほど生分解期間は短縮でき、5日以上であればよく、好ましくは7日以上であり、さらに好ましくは14日以上である。
なお、本発明の弱アルカリ性剤の処理液は、弱アルカリ性剤が溶解した状態を示しており、水溶液、弱アルカリ性剤を飽和以上添加された状態を含んでいる。処理液の弱アルカリ性剤の溶解量が減少したら、補給することもできる。また、飽和溶解量以上の弱アルカリ性剤が含まれていれば、随時、水溶液中に補充されることとなる。
(【0011】以降は省略されています)

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