発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、試料加熱ホルダーとその使用方法に関する。 続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】 【0002】 核燃料の高温での振る舞いに関心が集まっているが、核燃料の融点は非常に高く、高温域での試料の保持が難しいため、その実験手法が確立されていない。高温域の影響を回避する手法として、試料を直接保持せず、ガス浮遊させた状態で、レーザー照射により溶融させる手法が開示されている(非特許文献1)。しかしながら、試料をガス浮遊させるためには、試料の厚みが2~3mmであることが求められるため、この手法では、試料にX線を透過させるXAFS(X-ray Absorption Fine Structure)測定を行うことは難しい。一方、金属製の試料加熱ホルダーを抵抗加熱することで、ホルダー内で2000Kに加熱されたUO 2 のXAFS測定が開示されているが、こちらも試料ホルダーの形状のため透過XAFSは実施できずに蛍光XAFSに限定している(非特許文献2)。 【0003】 金属製の試料加熱ホルダーを抵抗加熱することで、ホルダー内に装填した試料の高温における透過XAFSを測定する試みは、過去に何例か報告されているが(非特許文献3、4)、約2000Kが到達最高温度である。BN等のX線をある程度透過する試料ホルダーに、試料を封入して加熱炉で加熱し、高温での透過XAFSを測定する試みも過去に報告されているが(非特許文献5~7)、2000K超の温度での測定は困難である他、ホルダーによるX線の吸収がXAFS測定に悪影響を与える問題がある。 【0004】 原子力工学関連の開発に関係して、温度2000K超の高温融体のXAFS測定のニーズは増加しているが、試料の温度を抵抗加熱法を用いて2000Kより高くする場合、次のような課題が生じる。すなわち、高温加熱に伴う試料ホルダーの熱膨張、熱歪みが大きくなり、試料に対するX線透過方向のアライメント維持が難しくなる。また、X線を透過させる方向には高温で液体状態になった試料を保持する部材を配置できず、液体状態の試料を、この方向に漏れ出さないように保持することが難しい。また、高温加熱に伴う試料の汚染、蒸発減量、試料周囲(カプトン窓等)の熱輻射による損壊を避けるため、試料の効率的な加熱が必要となる。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0005】 Skinner. L. B. et. al. ‘Molten Uranium Dioxide Structure and Dynamics’, Science 2014, 346 (6212), 984-987 Damien Prieur et. al. ‘Peculiar Thermal Behavior of UO2 Local Structure’ Inorg. Chem. 2018, 57, 14890-14894 F. Farges et. al. ‘A new device for XAFS data collection up to 2000 K (or 3700 K under vacuum)’ Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 101 (1995) 493-498 Pengfei An et. al. ‘A facile heating cell for in situ transmittance and fluorescence X-ray absorption spectroscopy investigations’ J. Synchrotron Rad. (2014). 21, 165-169 Anna L. Smith et. al. ‘In situ high-temperature EXAFS measurements on radioactive and air-sensitive molten salt materials’ J. Synchrotron Rad. (2019). 26, 124-136 Y. Okamoto et. al. ‘High-temperature XAFS measurement of molten salt systems’ Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 487 (2002) 605-611 岡本芳浩 他 「廃棄物低減を目指すガラス固化技術高度化のための放射光利用」 放射光 July 2018 Vol.31 No.4 274-280 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高温に加熱された試料のX線透過方向のアライメントを容易にし(アライメント維持性を向上させ)、また、X線透過方向以外の方向から試料を保持するとともに、試料の効率的な加熱を可能とする試料加熱ホルダーと、その使用方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。 【0008】 (1)本発明の一態様に係る試料加熱ホルダーは、主面に平行な第一の方向に一端と他端を有する導体板と、前記導体板に接続された第一の電極および第二の電極と、を備え、前記導体板は、前記一端内側に、前記第一の方向に延在し、前記他端に到達せず、かつ前記主面と垂直な第二の方向に貫通したスリットを有し、前記第一の電極、前記第二の電極は、前記導体板のうち、前記スリットにより分割された前記一端側の一方、他方にそれぞれ接続され、前記スリット幅は20μm以上、500μm以下である。 【0009】 (2)上記(1)に記載の試料加熱ホルダーにおいて、前記第二の方向からの平面視において、前記他端は、前記一端から遠ざかる方向に凸の曲線で構成されることが好ましい。 【0010】 (3)上記(1)に記載の試料加熱ホルダーにおいて、前記第一の方向における前記スリットの長さが、20mm以上、50mm以下であることが好ましい。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する