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公開番号2025178087
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-12-05
出願番号2025008520
出願日2025-01-21
発明の名称焼き入れ方法
出願人株式会社アイシン
代理人Knowledge Partners弁理士法人
主分類C21D 1/18 20060101AFI20251128BHJP(鉄冶金)
要約【課題】深い冷却槽を必要とせずに、上下方向の冷却速度の差を低減させる技術の提供。
【解決手段】支持台に載置された被処理物を冷却する焼き入れ方法であって、冷却槽内で流動されていない状態で蓄積された、沸騰段階の表面熱伝達係数の最大値が6000W/m2・K以上である冷却剤内へ前記支持台を下降させ、前記被処理物の熱によって前記被処理物の周囲に前記冷却剤の蒸気膜が形成されている間に、前記被処理物の浸漬が完了し、かつ、前記支持台が停止するように、前記支持台を制御する下降制御工程と、前記支持台の下降を停止させた後、少なくとも、前記被処理物の表面がマルテンサイト変態するまで、前記被処理物と前記冷却剤との間に相対流速が与えられないように、前記冷却剤が流動されていない状態および前記支持台が移動しない状態を維持する状態維持工程と、を含む焼き入れ方法を実行する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
支持台に載置された被処理物を冷却する焼き入れ方法であって、
冷却槽内で流動されていない状態で蓄積された、沸騰段階の表面熱伝達係数の最大値が6000W/m

・K以上である冷却剤内へ前記支持台を下降させ、前記被処理物の熱によって前記被処理物の周囲に前記冷却剤の蒸気膜が形成されている間に、前記被処理物の浸漬が完了し、かつ、前記支持台が停止するように、前記支持台を制御する下降制御工程と、
前記支持台の下降を停止させた後、少なくとも、前記被処理物の表面がマルテンサイト変態するまで、前記被処理物と前記冷却剤との間に相対流速が与えられないように、前記冷却剤が流動されていない状態および前記支持台が移動しない状態を維持する状態維持工程と、
を含む焼き入れ方法。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記冷却剤は、
前記被処理物の周囲に形成された蒸気膜が消失し沸騰開始する沸騰開始温度が600℃以下である、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
【請求項3】
前記冷却剤は、
前記被処理物の周囲に形成された蒸気膜が消失し沸騰開始する沸騰開始温度が450℃以上である、
請求項2に記載の焼き入れ方法。
【請求項4】
前記冷却剤は、
前記被処理物の周囲に形成された蒸気膜が消失し沸騰開始した後における、単位温度減少あたりの表面熱伝達係数の上昇率が100W/m

・K

以上である、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
【請求項5】
前記冷却剤は、水に高分子化合物が溶けている水溶性冷却剤である、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
【請求項6】
前記高分子化合物は、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンの少なくとも一つを含み、
前記冷却剤は、水に5体積%~30体積%の前記高分子化合物が溶けている水溶性冷却剤である、
請求項5に記載の焼き入れ方法。
【請求項7】
前記蒸気膜が形成されている期間は、
前記被処理物において最初に浸漬された部位が浸漬開始されてから、当該部位の周囲において蒸気膜が消失し沸騰開始するまでの期間である、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
【請求項8】
前記蒸気膜が形成されている期間は、
前記被処理物が浸漬開始されてから、周囲の蒸気膜が消失し沸騰開始した部位が生じるまでの期間である、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
【請求項9】
前記蒸気膜が形成されている期間は、
前記被処理物が前記冷却剤に浸漬され、温度が低下していく過程における、温度低下量に対する前記冷却剤と前記被処理物との間の表面熱伝達係数の変化量が、最初に既定値以下となった後、既定値を超えるまでの期間である、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
【請求項10】
前記下降制御工程における前記被処理物の下降速度は、
前記冷却剤の液面から下降停止位置における前記被処理物の下端までの距離/前記蒸気膜が形成されている期間より速い、
請求項1に記載の焼き入れ方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き入れ方法に関する。
続きを表示(約 1,900 文字)【背景技術】
【0002】
従来、冷却能力が高い水を冷却剤として焼き入れを行う際に、被処理物と、被処理物の周囲の冷却剤と、の間の相対速度を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1においては、平均速度1.0m/秒以上の流速がある冷媒に被処理物を浸漬することにより、蒸気膜段階を形成しないで全表面が沸騰段階から冷却されるようにする構成が開示されている。
【0003】
特許文献2においては、被処理物を水系の冷却剤の内部に移動させて焼き入れを行う際に、少なくとも被処理物がマルテンサイト変態するまで被処理物と冷却剤との相対速度を被処理物の移動速度より遅くする構成が開示されている。特許文献3においては、金属製部材を熱処理用油に浸漬して焼入れを行う焼入れ方法において、金属製部材を熱処理用油内で下降させ、最初に熱処理用油中に油没する部位である油没開始部位が蒸気膜で覆われた蒸気膜段階であるときに、金属製部材を停止させ、その後上昇させる構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献4においては、焼入れの結果に与える蒸気膜の影響を抑制するために、棒体に吊り下げた状態で焼き入れ対象物を浸漬し、焼き入れ対象物から蒸気膜を積極的に剥離させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2002-97520号公報
国際公開第2020-203226号
特開2021-147626号公報
特開2023-153496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被処理物の内部硬さまたは硬化層の深さが要求される焼き入れを行う際には、被処理物を急冷して被処理物の内部の冷却速度を高めることが必要であるため、冷却能力が高い各種の冷却剤が用いられている。しかし、冷却能力が高い冷却剤を用いる場合、被処理物の場所毎の冷却速度に差が生じないようにしないと、焼き入れ後に歪みが残ってしまう。
【0007】
例えば、特許文献1に開示された技術においては、冷却剤に対して大きな流速を与えることにより、蒸気膜段階を形成しないで全表面が沸騰段階から冷却されるようにしている。しかし、特許文献1においては、処理品の冷却が終了するまで、水に流速を与えるための吸引機構の運転が行われている。従って、蒸気膜段階から沸騰段階に移行した後においても、冷却が終了するまで冷却剤に流速が与えられている。また、特許文献1に開示された技術においては、処理品の上から下に向けた流速が与えられている。この場合、処理品の下部においては冷却剤が滞留し処理品との相対流速が小さく、処理品の上部においては冷却剤が攪拌されて相対流速が大きくなる。従って、処理品の上部は下部と比較して高速に冷却される。このため、処理品の上下でマルテンサイト変態するまでの冷却速度に差が生じ、焼き入れ完了後に処理品に歪みが生じてしまう。
【0008】
一方、特許文献2に開示された技術によれば、被処理物と冷却剤との相対速度が被処理物の移動速度より遅いため、被処理物の上下方向で冷却の速度が均一化される。しかし、特許文献2においては、マルテンサイト変態するまで被処理物を下降させ、かつ、冷却剤を下方に流動させることで被処理物と冷却剤との相対速度が被処理物の移動速度より遅くなるように構成されている。従って、マルテンサイト変態するまで相対速度が遅い状態を維持するためには、被処理物を下方に深く移動させる必要があり、深い冷却槽が必要である。
【0009】
また、特許文献3においては、冷却槽内で金属製部材を下降させ、さらに、上昇させ、当該上昇の過程で焼き入れを完了させる必要がある。このため、マルテンサイト変態するまでの間で処理物と冷却剤との間で相対流速が生じ、焼き入れ完了後の処理物に歪みが生じてしまう。また、下降の深さであるストローク量が100~700mなどという非常に深い冷却槽が必要になる。
【0010】
なお、特許文献4においては、焼き入れ対象物を不安定な状態で保持することで蒸気膜をできるだけや早く剥離させており、蒸気膜を積極的に利用するという思想は開示されていない。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、深い冷却槽を必要とせずに、上下方向の冷却速度の差を低減させ熱処理変形を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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