発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、遊離脂肪酸生産微生物の培養液から遊離脂肪酸を分離する方法と、遊離脂肪酸生産微生物の培養方法に関する。 続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】 【0002】 化石燃料依存からの脱却を目指して、エネルギー物質の持続可能な生産技術の開発が世界中で進められている。その中で、遺伝子組換微生物を用いた遊離脂肪酸(FFA、Free Fatty Acid)の細胞外生産系が注目されている。細胞外生産系では、生産されたFFAが菌体外に放出されるため、細胞を破壊することなくFFAを取り出すことができるため、生産量を飛躍的に増加できると期待されている。そのため、これまでに大腸菌、酵母、シアノバクテリアといった様々な微生物を材料にして、FFAを細胞外へと放出する遺伝子組換株が作製されている(非特許文献1~3)。 【0003】 しかしながら、培養液中からFFAを分離・回収する技術に関する研究例は少なく、効率的なプロセスは構築されていない。例えば、特許文献1には、微粒子吸着体を培養液中に添加する、または、固定床カラムに詰めて培養液を通水することによりFFAを除去する方法が提案されているが、微粒子吸着体の回収方法や培養液の移送方法に課題が残っている。別の方法として、細胞毒性を示さない有機溶媒を培地に重相しながら培養する二相培養法が報告されている(非特許文献4)が、使用されている有機溶媒の物理化学的な性質がFFAに非常に近いために、有機溶媒からFFAを抽出することが不可能である。さらに、FFA濃度が高まると、遊離脂肪酸を生産する微生物(以下、遊離脂肪酸生産微生物という)自体に悪影響を及ぼし、死滅する場合がある(非特許文献5)。 【0004】 本発明者らは、培養液中の遊離脂肪酸を透析膜により培養液外に移行させる方法(特許文献2)、培養液中の遊離脂肪酸吸着剤に吸着させた後、吸着剤を溶媒で洗浄して遊離脂肪酸を脱着する方法(特許文献3、4)を提案している。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 特表2011-505838号公報 特開2022-039612号公報 特開2023-028686号公報 特開2023-157283号公報 【非特許文献】 【0006】 Rebecca M. Lennen., Drew J. Braden., Ryan M. West., James A. Dumesic., Brian F. Pfleger. (2010) A Process for Microbial Hydrocarbon Synthesis: Overproduction of Fatty Acids in Escherichia coli and Catalytic Conversion to Alkanes. Biotechnology and Bioengineering. June 1; 106(2) Yongjin J. Zhou1., Nicolaas A. Buijs1., Zhiwei Zhu., Jiufu Qin., Verena Siewers., Jens Nielsen. (2016) Production of fatty acid-derived oleochemicals and biofuels by synthetic yeast cell factories. Nature Communications. 7:11709 Liu, X., Sheng, J. and Curtiss, R. (2011) Fatty acid production in genetically modified cyanobacteria. Proceedings of the National Academy of Sciences. USA. 108: 6899-6904. Kato, A., Takatani, N., Ikeda, K., Maeda, S., Omata, T. (2017) Removal of the product from the culture medium strongly enhances free fatty acid production by genetically engineered Synechococcus elongatus. Biotechonology for Biofuels Vol. 10, 141 Kato, A., Use, K., Takatani, N., Ikeda, K., Matsuura, M., Kojima, K., Aichi, M., Maeda, S., Omata, T. (2016) Modulation of the balance of fatty acid production and secretion is crucial for enhancement of growth and productivity of the engineered mutant of the cyanobacterium Synechococcus elongatus. Biotechonology for Biofuels Vol. 9, 91 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、遊離脂肪酸生産微生物の培養液から遊離脂肪酸を分離する分離方法と、遊離脂肪酸生産微生物の培養方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。 1.遊離脂肪酸生産微生物が細胞外へ分泌した遊離脂肪酸を、水不溶性または水難溶性の脂肪酸塩として培養液から分離することを特徴とする遊離脂肪酸の分離方法。 2.前記脂肪酸塩が、カルシウム塩であることを特徴とする1.に記載の分離方法。 3.遊離脂肪酸生産微生物を、遊離脂肪酸と水不溶性または水難溶性の脂肪酸塩を形成する金属イオン濃度が0.3mmol/L以上10mmol/L以下の培養液中で培養することを特徴とする遊離脂肪酸生産微生物の培養方法。 【発明の効果】 【0009】 本発明の分離方法は、培養液中の遊離脂肪酸を、水不溶性または水難溶性の脂肪酸塩として培養液から分離する。本発明の分離方法は、培養液中の遊離脂肪酸を培養液から分離して培養液中の遊離脂肪酸濃度を低く抑えることができ、遊離脂肪酸生産微生物の生育阻害を抑えることができる。 本発明の培養方法は、培地中の脂肪酸が高濃度となっても、遊離脂肪酸生産微生物の生育阻害を抑制することができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 実施例での培養時の菌体濁度の経時変化を示すグラフ。 実施例での培養14日後の各培養液の外観を示す画像。 【発明を実施するための形態】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する